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安部龍太郎 『等伯 上・下』

2013-02-09 | 本の紹介
直木賞受賞作 『等伯 上・下』 読了しました。
面白かったです!

苦手な歴史小説、分厚い上下巻、読み始めるまでちょっと心配でしたが、
作品に引き込まれ、佳境に入った下巻はやめられずに一気読み!
直木賞受賞に納得です。

桃山時代の画家、長谷川等伯の人生を描いたものですが、
等伯と言えば本の表紙絵にもなっている「松林図屏風」(国宝)がとにかく有名です。
水墨画の最高峰とも言われ、東京国立博物館に収蔵されています。
3年前に等伯没後400年を記念して展覧会が開かれた際に一般公開されたのですが、
展覧会に足を運んだもののあまりの混雑で中に入れなかった私・・・
この本を読み終えて「あぁ~どうしても見ておきたかった!!」と悔やむことしきりです。

この作品は、等伯が絵師として大成するまでを描いたものですが、
等伯とその家族、師匠、弟子、ライバルなど、人間味にあふれています。
等伯は能登に生まれ、その才能から若くしてある程度の成功を収めますが、
都(京都)へ行って、更なる技術の向上を目指したいとの思いが止められなくなります。
そこから、時の権力者である信長や秀吉や利休、絵師として最高であった狩野永徳らと関わっていきます。

古今東西、芸術はパトロンである権力者と関わらざるを得ない部分がありますね。
どの時流に乗るかによって、成功したり、才能がありながらも認められなかったりします。
また、才能があるがゆえにライバルとの激しい戦いに巻き込まれることも。
等伯と狩野派とは熾烈な争いがあったのだと初めて知りました。
等伯と言えば水墨画と思っていましたが、秀吉に取り立てられて豪華絢爛な襖絵も描いていたのですね。

数々の苦悩、争い、辛い別れののち、「松林図屏風」完成にたどり着いたところは感動しました。
片時も忘れなかった生まれ故郷の能登、その能登での様々な気持ちの表れがこの水墨画だったのです。
作者の安部さんは等伯に関係するたくさんの文献、史料を研究し、ゆかりの地を訪れ、
ほぼノンフィクションとも言ってよいほど史実に忠実に書かれたそうです。
絵が好きな方には特にお薦めです。

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