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本好きholyの覚え書き的日常のあれこれ

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19年目のholyのブログをそのまま残します。 同じ時は二度とやって来ない。これからも毎日を「一期一会」の心で過ごします♪

中島京子 著 『夢見る帝国図書館』

2020-02-14 | 本の紹介
中島京子 著 『夢見る帝国図書館』(文藝春秋)読了いたしました。

作家志望の女性が上野公園で偶然知り合った年配の女性から「上野の図書館を主人公にした小説を書かない?!」
と依頼されます。
謎めいたその女性との日常に、日本の図書館の歴史が挿話され、最後に一つにつながります。
上野恩賜公園は、明治維新の上野戦争までは寛永寺というお寺の広大な敷地だったそうで、
上野戦争によって寛永寺伽藍の大部分が焼失、そこに公園、大学、博物館、動物園、美術館が次々と造られます。
戦後は東京大空襲によって焼け出された人々のバラックが建ち並ぶ地となります。
古い時代の男尊女子社会で苦しんだ女性、戦争中戦後の混乱した社会・風俗、
かつての姿を伺い知れないほどアカデミックになった上野、谷中界隈での、主人公の不思議な思い出、
それは時代を写すものでした。

図書館の歴史部分には、図書館の創立に向けて奮闘した永井荷風の父 永井久一郎をはじめ、
古くは樋口一葉、淡島寒月、幸田露伴、和辻哲郎、宮本百合子、等、著名な文人たちの逸話もあります。
図書館司書の資格試験のため必死で「図書館史」を勉強していた頃に読んでいたら、
より真剣に覚えようとしかたもしれません。

本の帯には「本がわれらを自由にする」とあります。
永田町の国立国会図書館図書カウンター上部には「真理がわれらを自由にする」という日本語と
それを意味する「Η ΑΛΗΘΕΙΑ ΕΛΕΥΘΕΡΩΣΕΙ ΥΜΑΣ」というギリシャ語銘文が刻まれています。
この言葉が国立国会図書館法の前文として明記され、図書館の精神として70年もの間生き続けています。
学生の頃、卒論を書くために何度も国会図書館へ行きましたが、なぜギリシャ語銘文なのか知りませんでした!

上野に図書館ある?と不思議に思われる方もいらっしゃるかもしれません。
今は国立国会図書館の支部図書館である「国際子ども図書館」のことです。
以前、行ったことがありますが、落ち着いた風格のある建物で、一日をゆっくり過ごせそうな図書館でした。
この作品中にも出てきましたが、博物館や美術館と比べると、今でも図書館は軽く扱われている気がします。
予算も働く人も少ない中、誰でも無料で入場出来、無料で本を借りられるのは、とても素晴らしいことです。
そして、女性が(法律上は)「男女同権」となった現代に生きられることを幸せに思いました。

次に上野へ行く機会があったら、また子ども図書館へ行ってゆっくりしたいなぁ、と思ったのでした♪