吉祥寺恋色デイズ 茶倉譲二の妄想小説。譲二目線から本編のお話を眺めてみました。
ネタバレありです。
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茶倉譲二プロフィール 喫茶クロフネのマスター
身長:183cm 体重:70kg
血液型:O型 特技:歴史語り
特徴:歴史オタク
ヒロインの初恋の人。公園でサンドイッチをもらったり、抱っこしてもらったりしてた。
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8話その1
翌朝、起きて来た百花ちゃんは目の下にクマを作って、いかにも寝不足だった。
恐る恐る聞いてみた。
譲二「宿題がそんなに大変だったの?」
百花ちゃんは大量の宿題のせいで寝不足なのだと言う。
(一応…、嫌われてはないのかな?)
そんな百花ちゃんのために、濃いめの紅茶と目を温めるホットタオルを用意した。
ホットタオルで温めていると珍しく剛史が現れた。
漫画本を返しに来たのだという。
百花ちゃんみたいにクマを作った悲惨な顔で、こちらは漫画を読みきったせいで寝不足だったと告げた。
(え? 剛史って百花ちゃんと同じクラスだよな? )
剛史にそんなに漫画を読んでて宿題は大丈夫か聞いてみたら、どうも2人の様子が変だ。
2人のやり取りを観察してたら、実はたくさんの宿題なんか出てなかったようだ。
(そうか…やっぱり)
たくさんの宿題というのは、俺から逃げるための口実だったんだな。
百花ちゃんは優しい子だから、いつもと同じように俺と接してくれてるけど。
これは完全に嫌われちまったみたいだ。
やっぱり、あんなことを聞こうとするんじゃなかった。
自分の愚かさに、今日は一日落ち込んでいた。
10代の女の子が俺みたいなオジサンなんか好きになるわけはないよな。
もう一緒にいるのもキモチワルイと思われたんじゃないだろうか…。
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学校で開いた両親からのエアメール。
そこに書いてあった「イギリスに来ませんか?」という一行が後の伏線になります。
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8話その2
ため息ばかり付きながら夕方になった。
百花ちゃんはいつもより遅くて、なかなか帰ってこない。
先にリュウたちが集まって来た。
ひどく落ち込んでいた俺は、みんなの前で「俺、百花ちゃんに嫌われたかも。」とぽろっと口にしてしまった。
からかってるのか慰めてるのか分からないようなあいつら。
だけど、それなりに親身になって話を聞いてくれて、少し気分が楽になった。
そして、帰ってきた百花ちゃんは普通に接してくれた。
それだけでもとても嬉しい。
(ごめんね。オジサン、これからは君に嫌われないように気をつけるから)
お詫びの気持ちを込めて、ハチミツ入りのミントティーを出す。
これで許してもらえるといいんだが。
ちょうど電話があり、出かけなくてはいけなくなった。
ワイワイと何かで盛り上がっている百花ちゃんとあいつらに店番を任せ、外へ出た。
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1人になって頭を冷やして考える。
百花ちゃんが明里のことを気にするのは、俺が好きだからかもしれないと思ってしまった。
実のところ、それは俺の願望だ。
けど、そうではなくて、百花ちゃんが明里を気にする本当の理由は別にあるんじゃないだろうか?
例えば……?
彼女はせっかく再会した幼馴染たちと別れることになるのを心配しているのかもしれない。
確か以前明里に連れて行かれた時、明里に「ここを出て行ってくれ」と言われたと言っていたよな。
あいつらと百花ちゃん、和気あいあいとしたいい仲間だものな。
今日だってみんなで楽しそうに話していた。
だけど、俺が実家に帰ったら、百花ちゃんはクロフネを出て行かないといけなくなる。
そうか…!
もしかしたら、ハルや一護たちと別れなきゃ行けなくなるから、俺と明里のことを気にしているんじゃないだろうか?
きっとそうだ!
だから、俺が明里と結婚するのか?なんて聞いてきたんだ。
クロフネを閉めてしまうんじゃないかって。
それが心配だったんだ。
じいさんのことは気になるが、百花ちゃんが高校を卒業するまでは、なんとかこのクロフネでがんばらないとな。
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譲二さんが外出してる間に、幼なじみたちは譲二さんとヒロインのことを「あーでもないこーでもない」と相談にのってくれてます。
なんだかんだいいながら、相談にのってくれる仲間がいるのはいいよね。
譲二さんの方はヒロインが自分のことを好きなんじゃなくて、幼なじみたちや吉祥寺を離れたくないから明里さんのことを気にしてるのかもと思い始めます。
本音で話し合えばなんということもないんだけど、それぞれ自分だけで思い悩んでしまう性格だから、すれ違いがつづいちゃうんだよね。
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8話その3
俺が用で店を離れている間に、明里が店に来て待っていた。
俺たちを残して、みんな口々に用があると言って店を出て行く。
百花ちゃんも気を遣って、早めに銭湯に行ってくるとみんなと外へ出かけてくれた。
譲二「で? 今日は何の用なんだ?」
ぶっきらぼうに問いかける俺に明里はにっこり微笑んだ。
明里「私ね、結婚することになったの」
譲二「結婚?! あいつとか?」
明里「もちろん! だから今日はその報告とお礼に来たの」
明里の恋人は俺の親友でもある。
奴は優柔不断なところがあり、ずっと煮え切らなかったのだが、やっと結婚を決心してくれたらしい。
前に俺が「本当に大切な人と結婚することが家よりも大事だろう。」と言ったことで、明里も恋人をプッシュする気になったらしい。
明里は「家から勘当されることになったけど」、と笑っていた。
俺との婚約の継続は恋人以外との結婚話が進まないようにするための偽造でもあったから、肩の荷がおりたようで正直ホッとした。
明里が帰った後、俺も気分が軽くなって、百花ちゃんを迎えに福の湯に行くことにした。
のれんをくぐると剛史が「あれ、百花は?」と聞く。
財布を忘れたと言って随分前にクロフネに戻ったという。
あわててクロフネに戻ったが、百花ちゃんはいなかった。
財布もそのままだったので、それを持って探しに行く。
(いったいどこに行ってしまったんだろう?)
足は自然と百花ちゃんと初めてであったあの公園に向かっていた。
公園のタコのすべり台の中をのぞくとやっぱりいた。
膝を抱えてポツリと座り込んでいる。
それは昔の百花ちゃんの姿と重なって見えた。
譲二「子猫かと思ったら、お姫様だった。」
なんだか元気のない百花ちゃんに声をかけて、すべり台を降りるよう手を差し伸べた。
百花ちゃんは手を伸ばしたものの、俺の手を取るのをためらった。
そっか…。
お年頃の女の子がこんなオジサンの手をとるのはちょっと嫌なのかもね。
昨日は変な誤解をしてしまったばかりだし…。
元気の無い百花ちゃんに「下宿を出ることは心配しなくていい」と伝えたくて、『デート』に誘った。
本編9話へ
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財布を取りに戻ったヒロインは偶然、譲二さんと明里さんが抱き合っているのを目撃したんだよね。
本当は抱き合っているわけでもなくて、おめでとうのハグなんだけど。
ずっと明里さんのことを婚約者と思い込んでいるヒロインにはとてもショックな出来事だよね。
譲二さんの「子猫かと思ったら、お姫様だった。」という言葉も昔の思い出に繋がる言葉です。
その時の譲二さんはもっとキツい言い方で言ったわけだけど…。