内的自己対話-川の畔のささめごと

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心理活動の意味を環境の中で捉えるために必要な作業 ― ジルベール・シモンドンを読む(29)

2016-03-19 06:29:15 | 哲学

 個体化理論の中で、或る準安定状態が孕んでいる葛藤に対する解決としての心理活動とはどのようなものなのでしょうか。それを理解するためには、生命における一連の準安定的システムが、あるシステムから別のシステムへと、どのようにして段階を追って成立・機能するに至るのか、その本当の道筋を発見しなくてはなりません。
 その発見のために必要な作業が順次述べられている文章の最初の二文が今日読む箇所です。この文章は、始まりからピリオド(ポワン)まで十四行もありますが、途中六つのセミコロン(ポワンヴィルギュル)で句切られていて、七つの文に分かれています。

Pour comprendre ce qu’est l’activité psychique à l’intérieur de la théorie de l’individuation comme résolution du caractère conflictuel d’un état métastable, il faut découvrir les véritables voies d’institution des systèmes métastables dans la vie ; en ce sens, aussi bien la notion de relation adaptative de l’individu au milieu que la notion critique de relation du sujet connaissant à l’objet connu doivent être modifiées ;

 上に述べた発見のためにまずしなければならないことは、二つの既存の考え方に変更を加えることです。
 一つは、個体の生成と生存とは、個体がそこで己が生きる環境に自分を適応させることにもっぱらかかっているという考え方です。
 この箇所には脚注が付いていて、それによると、特に環境を一つの等質的なものとする考え方が批判されています。環境自体が複数の現実の階層を統合化したシステムなのであり、しかも、それらの階層間のコミュニケーションは個体化過程以前にはまだ成り立っていません。つまり、環境は、個体化過程とともに環境としてのダイナミズムを獲得するのであって、個体発生以前にすでに所与の条件として在るのではないということです。
 批判的に検討されるべきもう一つの考え方は、認識主体の認識対象に対する関係という批判哲学に典型的に見られるシェーマです。いわゆる主客二元論の枠組みに留まるかぎり、個体化過程をその全体として総合的かつ妥当な仕方で把握することはできないからです。






















































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