内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

ブリュッセルでの4月の集中講義と東京での夏期集中講義のためのシラバス作成

2018-01-09 18:26:01 | 講義の余白から

 ストラスブールに帰り着いた一昨日の夜、荷物を片付けた後、風呂にゆっくりと入り長旅の疲れを少し癒やしてから、4月の復活祭の休暇中にブリュッセル自由大学で二日間に渡って行う日本思想についての修士課程での集中講義のシラバスを深夜に作成し、翌朝責任者に送信しました。まだ疲れが残っていて頭がよく働かなかったこともありますが、講義内容について数行書くのに、あれこれ悩んで数時間かかってしまいました。結局、上代・中古の文学作品の読解を通じて、日本思想の基底的要素、とりわけ自然観のそれをいくつか取り上げて考察するという、すでに馴染みのある内容にしました。
 昨日は、雑務の合間を縫って、東洋大学大学院で担当する夏期集中講義「現代哲学特殊演習②」のシラバスを作成しました。こちらは今月17日が締切りなのですが、今月のその他の仕事と昨日の記事で話題にした原稿のことを思うと、ぐずぐずせずに少しでも時間に余裕があるうちに仕上げてしまおうという気が自ずと起こり、二時間ほどで一気に書き上げました。送信するのは17日まで待って、その間に推敲するつもりです。
 こちらも何をテーマとして取り上げようか、あれこれ選択に迷ったのですが、西田幾多郎、田辺元、三木清など京都学派の哲学者を取り上げてきた過去4年間とは違って、日本ではいまだに一般にはほとんど知られていないフランスの哲学者、ジルベール・シモンドンを正面から取り上げることにしました。
 昨年一昨年と集中講義、研究発表、講演などで繰り返しシモンドンの技術の哲学を取り上げてきましたが、この集中講義では、その技術の哲学に対してそれを可能にしている基礎理論であるところの個体化の哲学を中心的に扱います。
 このブログでも、一昨年2016年に152回に渡って「ジルベール・シモンドンを読む」という連載を行い、さらに「シモンドン研究を読む」と題した32回の連載も同年に行いました。それらを基にしてもう一度、主著 L’individuation à la lumière des notions de forme et d’information (Jérôme Millon, 2005)を5日間集中的に読むことにしました。
 といっても、東洋の哲学科修士課程にはフランス語既習者はほとんどいませんし、いたとしても初級を終えた程度なので、とても原文を読ませるわけにはいきません。邦訳もまったくありません。研究論文も邦語では数えるほどしか発表されていません。ですので、シモンドンのシの字も知らない学生たちに少しずつ私訳を与え、それに注解を加えながら、主著をゆっくりと読んでいきます。
 この演習が、シモンドンの個体化の哲学が日本でよりよく知られるようになるための一つの入門の役割を果たすことができればと願っています。