内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

小プラトン対話

2015-03-16 17:55:11 | 読游摘録

 二年ほど前からだろうか、 « Les Dialogues des petits Platons » (「小プラトン対話」)という、ちょっと変わった名前のコレクションが出版されている。出版社もこのコレクションと同じ名前で、奥付によれば、パリにある。
 一冊ごと、現役のフランス人哲学者たち一人一人に、その人をよく知る研究者が質問するという形式になっている。その人の哲学との出会いから、若き日の学業、様々な人との出会い、その哲学者が特に大切にしているテーマ等について、エピソードを混じえて話が展開されていく。ときにはかなり突っ込んだ議論も展開されているが、一般読者を対象としているので、文章は概して平易で読みやすい。好企画だと思う。
 私が最近読み終えたのは、その人を直接知ってもいるフランソワーズ・ダスチュール先生とフィリップ・カベスタン氏との対談である。その他すでに購入してあり、これから読むつもりなのは、私のDEAの指導教授でもあったジャン・リュック・ナンシー先生、ご本人とは面識がないが、その日本人の奥様を存じ上げているヴァンサン・デコンブ氏、書物でのみ学恩を受けているピエール・マニャールやジャン・フランソワ・マルケなどある。
 それぞれその哲学者の関心の焦点を示唆するようなタイトルが付けらていて、ダスチュール先生のは、Penser ce qui advient となっている(二〇一四年出版)。よき対談相手を得て、先生のお人柄がよく出た好対談である。カベスタン氏の切り込みはときに鋭く、ダスチュール先生もそれを真正面から受け止めて、真摯に応えている。特に、ハイデガーに割かれたページ数は多く、そこでは、教育的配慮とでも言おうか、非常に懇切丁寧な仕方で、かつ平明なフランス語で、ハイデガー哲学についての一般の誤解を解きつつ、彼女がハイデガーをどう読み、どう評価しているかを説明している。
 明日から、何回か、原本のフランス語そのものをところどころ引用しながら、同書を紹介していこう。
 因みに、この五月末にパリで開かれる研究集会で私も発表する École française de Daseinsanalyse(現存在分析フランス学会)の名誉会長がダスチュール先生で、二人の会長のうちの一人がカベスタン氏である。