天地わたるブログ

ほがらかに、おおらかに

富士山のほとり雪を歩く

2021-01-14 03:10:22 | 紀行
きのうとおととい、富士山を見に行った。12日正午を過ぎ河口湖駅のホームが濡れていてうしろの山が雪雲で霞んでいた。だんだん雪が降ってきて、大月で富士急線に乗り換えると雪景色になった。



雪激しいよいよ屈む婆の腰
土地のおばあさんのかいがいしい生活ぶりが見える。なつかしい。

初雪に石の片側濡れにけり
どか雪ではなくすべてが濡れるわけでない。




富士急ハイランド駅で降りて駅員に「ホテルスマイルズ富士山」の方向を訊くと「ホテルマイステイズ富士山」ならある、という。面食らったが結局ぼくの記憶違い。なんというボーンヘッドか、泡を食った。
東京近辺では珍しい雪に心躍り、あたりを散策する。

初雪の小さな橋をわたりけり
旅をするとその土地の人が何をなりわいにして飯を食っているのかいつも考える。橋をわたりそう思う。

寒村や雪掻いて人居なくなり

傘放り子ども駆けだす雪景色

はやめに雪掻きをしてあり感心したが人の姿が見えない。子どもはいるがカメラを向けると逃げた。








雪女ぽつかりと森口を開き
この集落の背後に山が迫る。通り抜けできそうな森があり中は暗く雪が来ていない。

雪暗の一本道を一人ゆく
雪が降るとひとすじの道を好ましく感じるし故郷を濃厚に思い出す。







翌朝、ホテルの7階から俯瞰する景色は乙であった。朝風呂から出て裏を歩く。雪の水分が凍みて減って音がする。

しののめやきしきしと踏むよべの雪




7時すぎると雪の靄の中から次第に富士が姿を見せはじめる。靄は去ったかと思うとまた盛り返し1時間ほど幽玄の景色であった。
門前に大きな富士や年新た
このへんに住んでいると常に大きな富士山がそばにあるんだなあ。



玲瓏と富士の肌や寒に入る
雪は富士山にそうは溜まらず黒い地肌と硬質な光を発する。

富士快晴湯煙のごと雪煙
日中になると稜線に動きが出てくる。





バスの本数が少ない。富士急ハイランドで下部温泉行きバスを40分待って乗り、鳴沢氷穴を見に行く。そのバス停から氷穴にいたる道が最高の雪景色であった。
森けぶるあちらこちらに雪ちりて





森深く玉の日差せりしづり雪
見ていて飽きない。からからの関東に恵みの水分である。気持ちもうるおう。






自販機の釣銭氷まみれなる
寒いのでホットコーヒーを買うと釣銭が氷の中へ落ちた。ひゃっ、冷たい!




岩よけて穴を降りゆく冬灯
途中、頭に岩が当たる。

洞窟の凍りて太き手摺かな
ところどころ凍っていて摑みにくいし冷たい。はやく出たい。やはり夏来るところか。

物影に髪のごときが氷りをり
不気味な感じだが髪というのは錯覚だろうな。



百本の氷柱の下の屑氷
氷のさまざまな姿がおもしろい。下は巌とどのようにからまっているのか。

実にぞくそく氷垂れをり氷穴は
骨身にしみるような氷の刃ども。

わが死後も溶けぬ氷や地下深く
遭難してマッキンリー死んだであろう植村直己のことを思った。永遠の氷漬けはいいのか悪いのか。


洞窟のもつとも奥の氷柱かな
これ以上行かなくいいかと思うとほっとして上りにかかる。

雪散るや洞窟を出し涙目に

雪が散るところである。帰るころになると木々の雪がだいぶ減ってあたたかくなる。






初雪やあたたかさうに溶け初めし
バス停は南に向いた日溜り。行き交う車両の音がうるさいが割と気分いいところ。思いがけない雪見ができたのは幸運。新潟など豪雪地帯の人には申し訳ないよいお湿りであり眼福であった。



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