天地わたるブログ

ほがらかに、おおらかに

第43回徳島歌壇賞の俳人

2022-02-16 06:55:24 | 短歌


ひこばえネットで句座を共にする鷹俳句会の松尾初夏からチョコレートと共に、徳島新聞の切り抜きが届いた。以下がその内容。

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第43回徳島歌壇賞の顔

松尾初夏さん(70)
徳島市国府町府中


コインランドリーは要塞のやう舞ふ雪を見知らぬ人と飽かず見てをり

「古希の節目の年に受賞できて感激。思い入れがあり、お気に入りの一首なので、最高の気持ちです。今もじわじわうれしさが込み上げています」。はじける笑顔であふれる喜びを爆発させた。
2021年1月、病気で入院中の姉の洗濯物を洗うために訪れたコインランドリーでの出来事。突然、強く降ってきた雪に、たまたま居合わせた女性と見入った情景を表した。
徳島には珍しく一時吹雪になったものの、コインランドリーの待合室は暖かく、まるで要塞のように守られている気分だった。大きなガラス越しで、雪見には抜群の環境。しばらくすると、空は明るくなり雪はやんだ。その天気のように姉の病状も回復してほしいとの願いを込めた。
本名岡本信子。短詩型文学の愛好者だ。短歌歴は7年余り。14年3月、徳島歌壇に初めて送った作品が掲載されて以来、投稿を続ける。年間掲載回数は6、7回で、紙上では知る人ぞ知る存在になりつつある。20年の第18回とくしま文学賞は、短歌と川柳で優秀賞に輝いた。
力まず自然体をモットーに日常の体験や思ったことを詠む。旧仮名遣いにこだわりながら情景が目に浮かぶような作品づくりを目指す。小説や随筆を2日1冊は読む。読書で得た言葉や表現を短歌作りに生かしている。
短歌、俳句、川柳を3姉妹になぞらえるユニークな発想も持つ。しとやかな長女が短歌、次女は冷静で完結に言い切る俳句、末娘は自由奔放な川柳と語る。「それぞれ魅力がある。受賞を励みに、三つとも続けたい」と意気盛んだ。(奥村靖之)
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新聞の日にちがはっきりしないが表彰式が1月7日であるからその近辺であろう。よくもまあ俳句を書きながら短歌ができるものである。さらに川柳までやるとは。
徳島新聞には短歌と川柳のみ出しているのか。俳句でめざましい賞を取ったということは聞いていない。
初夏は俳句もおもしろいので以下に紹介する。
五分だけ待つ革手套きつく嵌め
花柊ことばの綾の解せぬひと
潮時か冬のふらここ漕いでをり
いきものの舌なまなまと霜夜かな
(鷹2月号)

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歌会始の歌に思う

2022-01-19 09:25:37 | 短歌



新春恒例の宮中行事「歌会始の儀」がきのう、皇居の「松の間」で催された、という。題は「窓」。

世界との往き来難(がた)かる世はつづき窓開く日を偏(ひとへ)に願ふ
天皇陛下


一読して「往き来難(がた)かる」は大胆な語法と感じた。「難し」は普通、動詞の連用形について「信じ難い」「有り難い」のように使うのではなかった。したがって小生なら「往き来し難き世」とするなあ、と思った。しかし陛下の語法で間違いではないかもしれない。周囲に選者の先生方もついているのであるから。日本語はまことに難しい。
他の皇族方の作でまあまあと思ったのが以下の二首。

新しき住まひとなれる吹上の窓から望む大樹のみどり
皇后さま

しまいに置いた「大樹のみどり」が具体的でよく見えるし、大上段にふりかぶって観念的なことを言わないのが気に入った。

車窓より眺むる能登の広き海よせくる波は雪降らしめつ
高円宮妃久子さま

「よせくる波は雪降らしめつ」というフィニッシュに身震いした。あの荒れた日本海を見てここまで目の効いた言葉はなかなか引き出せない。波が雪になるんだ、というのは情念が籠った大胆な見方であるが能登の波の高さを思うと浮ついていない。皇族方のなかではずば抜けて巧い。選者クラスの技量である。

ほかに目についた歌。
一本のザイルたぐりて窓を拭く岩場をこなす若者の腕
選者 篠 弘

高層ビルの窓拭き作業と思ったがあれはゴンドラに乗ってやるので「ザイルたぐりて」ではない。ときにザイルを持つこともあるならば高層ビルか…。それはいいとして「岩場をこなす若者の腕」はまったく別の要素でありその若者が窓拭き作業員ではなかろう。前段の作業を後から形容していると判断した。しかし形容するにしては近いと思う。俳句でいう付き過ぎの感じ。

ベランダに鯉幟ゆれる窓を指し君は津波の高さ教へる
茨城県 芳山三喜雄

鯉幟というめでたい物に津波という災害をぶつけた手腕に唸った。同じ空間に光と闇とをまざあざと描きあっぱれ。
国語の古格の味わいでなした叙景歌の高円宮妃久子さま、と災害を悲壮的にならずに詠んだこの作者は今年の歌会始の双璧と感じた。

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2020歌会始拾い読み

2020-01-18 05:45:31 | 短歌


歌会始の歌は毎年興味を持って読んでいる。美智子さまの歌の素質を買っているが上皇后となられてここへは参加しないようで残念である。代って秋篠宮家長女眞子さまの素質がいいと感じた。
自分が気に入ったいくつか取り上げる。



秋篠宮家長女眞子さま
望月に月の兎が棲まふかと思ふ心を持ちつぎゆかな
「望月に月の兎が棲まふかと思ふ心」は、むろん問題の婚約者への希望であろう。自分の今の心境を隠さず詠んでいて好感を持った。世界が平和であってほしいとかいう理想論に走らなかったのがいい。月に兎が住んでいないことは小学校に上がる年齢で理解する。したがって「持ちつぎゆかな」とはいっているものの内心でそれを疑っているふしもあって複雑な心のうち……ともかく恋心濃厚で主題に紛れがない。



三笠宮家彬子さま
言の葉のたゆたふ湖の水際から漕ぎ出ださむと望月の舟
波のそよぐ形や音を言葉の始めととらえたレトリックが優れている。要するに満月の夜、舟遊びを楽しんでいるということだが、「言の葉のたゆたふ湖の水際から」で読み手をうっとりさせてたぶらかすのがいい。読み手はあやかしの世界に引き込んで欲しいのである。



森教子
今よりも人々の文字うつくしき平和を望む戦時下の日記
たとえば「知覧特攻平和会館」でうら若き特攻隊員の遺した手紙を見るとその字のすばらしさに呆然とする。漢字も多く使い文章にも品格がある。筆と墨で字を書けた昔の人にキーボードを打つ現代人はかなわないのでないかと思ってしまう。そういう視点がはっきりある歌は見どころがある。



土田真弓
眺望はどうだ晩夏に鳴く蝉を咥へて高く高く飛ぶ鳥
「望」という題を「眺望はどうだ」と鳥への呼びかけにした冒頭の技が光る。加えて「晩夏に鳴く蝉」の哀愁。その哀愁を払うかのように「高く高く」と転じる発想もいい。哀愁を爽やかに転化して恰幅のある風景を見せてくれた。



篠田朱里
助手席で進路希望を話す時母は静かにラジオを消した
実感という点でナンバーワン。母が運転する横に座っていて進路の話を切り出した。茶の間で改まっては言いにくいのである。難しい話をするにはブランコのように横にいて並んでいるというがいい。母もそのへんは心得ていてラジオを消した。フィニッシュを文語にせず口語で素っ気なくしたのが技あり。これで作者の旺盛な若さを出した。



今野寿美
港から汽笛とどけば手にとれる望遠鏡なり蝶々夫人も
選者の中ではこの人がだんとつ。なんといってもしまいの「蝶々夫人」の切れ味抜群でその余韻が冒頭の「港」へ帰り共鳴する。作者が港の背後の小山に立ち入港するいろいろな船を見てうきうきしている。そのときふとかの帰れなかった蝶々夫人に思いが行ったのである。ゆったりと歴史の女性をトレースしていく自分。同じ女性としての親近感を抱いた時間。

短歌も俳句も主題を明確に詠むことが大事である。あまり紆余曲折が過ぎた作品は好まない。作品はあまり読み手に負担をかけない程度のレトリックが望ましいと思った。

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KBJKITCHENのクリスマス句会

2019-12-23 05:22:20 | 短歌


【日時】12月25日(水)15:00~17:30

店はこの時間を句会のためだけにオープン(貸切句会)

【会場】KBJKITCHEN(カフェレストラン)
中央線・国分寺駅南口に出て左へ200mバス停先。通りをはさんで都立殿ヶ谷戸庭園。国分寺市南町2-18-3国分寺マンション102


【参加費】500円+飲み物代



【出句数】1~8句
あらかじめ短冊に書いてきてください


【初心者歓迎】
俳句は書けないがいずれ書きたい方もどうぞ。
すべての句を天地が解説。それを聴くことで俳句の楽しさ、おもしろさ、深さを感じるのがいいでしょう。
あらたに参加を希望する方は天地のパソコン(youyouhiker@jcom.home.ne.jp)へ連絡するか、店へ電話(042-349-6234)へ。


【参加予想人数】5名
ひこばえ句会、いやさか句会の常連も歓迎。



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国分寺に銘茶あり

2019-12-15 13:12:37 | 短歌


長男の国分寺を盛り立てる運動(KBJ活動)に触発されたのではないが、国分寺で一番の特産品といえば、「国分寺茶」である。
煎茶好きの小生は現役時代、8年前まで新宿の職場近く(代々木3丁目)のお茶屋さんで買っていた。番頭が茶を良く知っていた。(当然と思うが昨今は売る商品を知らない売り子が多い)
茶は同じ包装の同じ値段のものを買ってもばらつきがある。ときによくないときそれを報告すると番頭は生産者に不満を伝えた。すると生産者から天候不順であったとかの詫びが返ってきたりした。そういうやりとりがあってその店で煎茶を買う楽しさ、味わう楽しさがあった。

退職後、お茶を買う店に困った。国立市、府中市と探索して求めたが代々木3丁目に匹敵する店に遭遇しなかった。
ある日何かの用で自転車を走らせていた。府中街道である。西国分寺駅を過ぎて2km弱北上したとき右手に「国分寺茶」の幟が目に入った。
国分寺でお茶が栽培できるのか? そんなお茶美味いはずないだろう、と思ったが試しにひと袋買った。煎茶といえば静岡というのが摺り込まれていた……。
予想に反して美味かった。退職以来買った煎茶の中ではずば抜けていた。このときあらゆるブランドないし価値観を疑わないといけないと思ったのであった。静岡茶といっても今はあらゆる産地からのものを集めてレッテルを貼っているにすぎない。
「国分寺茶」のブランド力は低い。息子は小生に茶をくれるとき世評に従い必ず「一保堂」を持ってくる。それもきちんと缶に入っている格式のある体裁で。
けれど「一保堂」なんてそう美味くない。代々木3丁目よりはるかに落ちる。

先日、旧知の女性の夫が亡くなったので弔問に行った。
そのときお茶を土産にしたがブランドで行くか(一保堂)、実質で行くか(国分寺茶)で行くかすこし迷って実質で行った。
彼女はすぐに国分寺茶を封切って飲んだらしい。美味かったとメールが来た。旧友がお茶の味を知る人であってよかった。ちなみに松本製茶の国分寺茶は代々木3丁目を凌ぐ。
国分寺を盛り立てる運動をしている長男はなぜ俺に国分寺茶を持って来ないのか。あいつの運動はまだまだである。

1500円の詰め合わせ

松本園製茶工場
185-0002 国分寺市東戸倉1-6-3
電話042-321-8548
営業時間9:30~18:30 定休日:日曜・祭日


 店の裏に広がる畑
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