イギリスのTVドラマ「ヴェラ~信念の女警部」をはじめて見た。第5話「裏切りの代償」である。
太った中年の女刑事は主役。演じるはブレンダ・ブレッシン。大英帝国勲章の称号を持ち、ゴールデン・グローブ賞ほかBAFTAなどの受賞歴を誇る名優とのこと。世評は知らずに見たがテンポ良い喋りにぐいぐい引き込まれた。美形でも華やかでもないが知恵、洞察力に秀で、その場その場でやるべきことが浮かぶ。それを回りの同僚に矢継ぎばやに指示する。
結構頭のよさそうな部下たちが嫌な顔をせずハイハイと従っててきぱきと動いて成果を出す。指示するだけでなく自身が難局に切り込んでゆく。型破りでウィットに満ち、策略家である。 愛嬌に欠けるが実績で周囲をうならせる敏腕刑事である。
こんなにしゃべり通しの主役というのは日本の刑事ものでは稀。「男はつらいよ」の車寅次郎を彷彿とさせる。違いは寅さんに愛嬌と間があるに対し、女警部にはそれがなく台詞が機関銃のように要点を突いて発せられること。しかし、そのそっけなさ、無愛想が事件解決という目的のためには心地よいのである。
脚本家はブレンダ・ブレッシンの資質を知って台詞を書いたのであろう。これは寅さんを演じる渥美清にもいえるが、脚本家と俳優の幸せな関係を感じるしゃべりである。
このTVドラマは複雑なトリックなどないが女優のしゃべりがずば抜けている。