「こうえんじ」は読める結
9月は暑いうえに14,15,16日と21、22、23日と3連休が2度もある。世間の3連休を子守りする爺にはきつい月である。
行くあてが尽きかけた22日、自転車に乗った結が「高円寺に行きたい」という。先方から要求があるのはありがたい。自転車を西国分寺駅へ向ける。
中央線に乗る。祭日、中央線は高円寺に停車しない。並走する総武線に乗り換えるのだが長い間、結はこれに乗ることを拒んだ。理由は知らない。
電車は総じて好きで、挨拶代わりに「常磐線は乗ったことがある?」と聞くほど。総武線も東西線も会話にしゅっちゅう出る。
三鷹へ行くと総武線と東西線が出ることは知っていて吉祥寺の動物園、水族館へ行く際、ホームでしばらく総武線と東西線の行き来を眺める。すごく興味を示すがどちらかへ乗ろうとすると爺の手をしっかり握りそれを阻止する。足を踏ん張って。そういうことを何度か経験した。不思議な子である。
ある日、突如、「高円寺に行きたい」といった。なぜ高円寺なのか。どうしてその駅を知ったのか不思議だ。「高円寺に行くには休日中央線が止まらないから総武線に乗らなきゃだけど、いい?」と聞くと「いい」といい、そのとき総武線へ乗ることを拒否しなかった。22日は2度目の総武線であり2度目の高円寺下車となった。
ねじめ正一のヒットした小説に『高円寺純情商店街』があるが、結に駅から出て何かを見たいという発想はない。この日高円寺から新宿まで行った。
新宿には山手線が走っていいることは知っているがこれに乗ることは拒否する。不思議な子である。
埼京線に乗ってご満悦
23日、自転車に乗ると結が「埼京線に行く」と言う。
埼京線は結の父が通勤で使っているから会話で出たのであろう。ヒトはあらゆる契機に学習する。新宿は爺と結には長旅であり連日の新宿である。
座りたいので一番後ろの車両に入る。座席は空いていて座ろうとすると結が運転席(車掌席)を見るという。そんなもの見ていたら座席が埋まってしまうがいたしかたない。結は「ワイパー、ワイパーが動いている」と感動する。子供っていいなあ。この感覚で俳句を書くんだな、と思い知らされる。
新宿駅へ行っていまの山手線は扉だけが緑であることを知る。むかしはぜんぶ緑であった。世の中は常に動いている。
中央線から降りると埼京線がすぐ見える。結は「あれに乗る」といってどんどん歩き、同じホームに湘南新宿ラインがあるとそれにも好意を持ち、乗る。興味を持ったことを妨げないのが爺の仕事。
湘南新宿ラインが東海道へ入り小田原行きであることをお知り、渋谷で下車し今度は埼京線に乗り引き返す。
池袋で下車し帰りは山手線に乗せようとしたら電車が来ないのにここが山手線ホームであることに気づき、「山手線は乗らない」という。勘がいい。なぜ山手線を拒否するのか、わからない。
結がいま興味あるものは何なのか、目の動きを見るのがおもしろい。理由がわからない領域で結がいろいろな反応するのを楽しんでいる。
けれど新宿へ行ってそこでむやみにいろいろな電車に乗ってまた帰るのは疲れる。歩行や水泳より疲れる。
やっと3連休が終わった。
新宿は忙しい駅である