天地わたるブログ

ほがらかに、おおらかに

冬ぬくし季語に誘はれ野へ山へ

2017-12-29 13:26:10 | 芸能

八重寒紅


象という兼題が出て先日、多摩動物公園へ赴いた。今回シベリウス句会の幹事の月読くんが探梅と凍蝶という兼題を出した。
題が出てそれを見に出かけることが多くなった。
自転車で行くことのできる梅の名所は、郷土の森博物館である。府中市の南端に位置しすぐ先に多摩川を望む。
きのう出かけた。凍蝶はめったに目にしないが梅は大丈夫だろう。



藤田湘子の蝋梅はおもしろい。

蝋梅を老梅と書く花屋は駄目 湘子

若いころ「花屋は駄目」という蓮っ葉な言葉遣いは絶対しなかった先生の新境地を思う。第十句集『神楽』あたりから先生はさばけてきて、死後、小川軽舟がまとめた『てんてん』は自由自在の先生がいる。
この句を世の人が秀句とはいわないだろがぼくは一番好き。先生にはもう少し長生きしてもらってさらにおもしろい句を見たかった。
蝋梅や奈良にしあればほとけ雨 湘子

ほとけ雨は慈雨のことだろう。裃を脱いだ先生の生地が出ている。



ここからは小生。

蝋梅や数珠玉破裂せし如く

蝋梅に鼻くつつけて笑む子かな



蝋梅の玉の蕾のしづくかな

馥郁と蝋梅の香の濡れてをり

探梅行すなはち日向歩きかな


「白加賀」という品種が多い中で、「八重寒紅」はすでに花がひらきかけている。飯田龍太に<白梅のあと紅梅の深空あり>がある。これが嘘だとは思わないがここに来ると毎年、白梅より先に咲く八重寒紅に会う。



博物館の庭園にある民家が風情があっていい。江戸時代、ハケにあった農家が保存されている。煙が出ているので入ると、白いひげの古老が竃で火を焚いている。そこらを掃いて集めた枯葉や枯れた枝などをくべている。



年惜しむ展示民家の竈の火
火吹竹ふき白髯を撫でにけり


いまどき都会で赤い火を出すことは最高の贅沢。
聞くと彼は是政橋さきの競艇場付近に住んでいてボランティアで民家の管理をしているとか。この仕事は無給でいいからぼくもやりたい。自由に火を焚けるとはすばらしい。秋から冬にかけての季節労務はないか年が明けたら聞きにいこう。



火吹竹頬ふくよかに吹くことよ
貸してもらふ髭の翁の火吹竹

茶を淹れもして白髯の焚火翁


竈に乗せた釜ふたつのなかは湯。ぐつぐつ沸騰している。ここで茶を喫しつつ句会をやったら乙だろう。
郷土の森博物館、ここはいろいろな楽しみ方がまだ埋もれている気がした。
コメント    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« いじめる快感を世の中が覚えた | トップ | 鷹1月号2句欄を読む――その1 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

芸能」カテゴリの最新記事