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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

検証金融政策⑤ 国民と経済に弊害

2021-06-13 07:19:06 | 経済・産業・中小企業対策など
検証金融政策⑤ 国民と経済に弊害
東京工科大学名誉教授・工藤昌宏さん

日銀の金融政策は的外れであっただけでなく、さまざまな弊害をもたらしました。
第1に、国民生活への影響です。緩和策は、住宅ローン金利の引き下げにつながりましたが、住宅需要自体が低迷している中ではわずかな効果しかありません。また、預金金利を低下させ、預金者の金利を奪い(金融資産課税と同じ効果)、消費意欲を減退させました。その上、所得環境の好転を伴わない中で物価をつり上げれば、消費をさらに押さえつけます。加えて、日銀による株価つり上げは所得格差を拡大させました。

収益悪化深刻に
第2は、金融機関への影響です。長期にわたる低金利は、銀行の利ザヤをも縮小させ収益を圧迫します。銀行は貸し出しを細らせ、金融を引き締めることになります。また、長期金利の低下は、金融機関の国債運用利回りを低下させ、金融機関の資金供給力を低下させるだけでなく、公的年金資金運用を困難にさせ、年金財政にも影響を及ぼします。収益悪化に陥った金融機関、特に地方銀行は、経済停滞による不良債権の増大に加え、合併・提携、大幅な人員削減に追い込まれることになります。
第3は、企業経営への影響です。慢性的な低金利は、資金調達コストを低下させた一方で、経営規律の緩みをもたらし、企業債務を増大させます。債務の増大は、やがて不良債権問題を引き起こします。
第4は、国家財政への影響です。日銀による長期に及ぶ国債大量購入は、財政規律を緩め、慢性的な赤字財政、国の累積債務の増大、それによる国民負担の増大、行政サービスの低下をもたらします。逆に、日銀の国債購入が減少傾向を示すと国債価格の下落、長期金利の上昇、国の国債利払いの上昇を引き起こします。
第5は、金融市場への影響です。日銀による国債の大量購入によって、長期金利はゼロ%付近に張り付き、金利変動による金融調整機能が奪われただけでなく、長期金利の経済の体温計としての機能も奪われてしまいました。2014年4月と17年5月には、日銀の国債大量購入で市場に出回る国債が品薄となり、国債取引が不成立となる事態が起きています。さらに18年以降、日銀は徐々に国債購入を減らしはじめたとはいえ、長期金利がゼロ%近辺で動かなくなり、国債価格の変動が読みづらくなったために、国債取引の不成立が繰り返し起きています。これは、国債市場がいわば「仮死状態」に陥り、日銀による国債購入が限界に近付いていることを意味します。背景には、国債市場に対する金融機関の不信感があります。やがて、購入する国債がなくなれば長期金利の急激な上昇は避けられません。
日銀のETF(株価連動型上場投資信託)購入などを通じた株価つり上げ策は、株価を「官製相場」といういびつな姿に変えてしまいました。株式市場の資金配分機能、経営監視機能が損なわれただけでなく、株式市場の経済実態表示機能までも奪われてしまいました。しかも、株価が日銀に振り回されることになり、株価暴落のリスクが高められました。14年4月8日、黒田東彦日銀総裁が追加緩和を見送る発言をしたとたんに、株価は下落しました。



店頭で品定めする買い物客=東京都内

偽装の責任重く
第6は、金融政策自体への影響です。金融緩和の「常態化」は、市場の金融政策への反応を弱め、日銀の金融政策自体の機能低下を引き起こします。他方、日銀が緩和から出口に向かおうとすれば、市場は警戒して国債の売却、長期金利の上昇をもたらしかねません。こうして、金融緩和を続ければ弊害をもたらし、かといって出口に向かえば市場は混乱に陥ります。このことは、日銀が身動きのできない状態に追い込まれていることを意味します。
日銀の長期の金融緩和策は、日本経済の再生に効果がないばかりか、弊害をもたらしました。さらに日本経済が停滞し続けていることを印象付け、国民のデフレ心理を助長し、消費意欲を押さえつけています。効果がさほど期待できないにもかかわらず、効果があるかのように偽装し続けてきた日銀の責任は軽くはありません。
(おわり)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2021年6月12日付掲載


日銀の金融政策によって、庶民は預金の金利が無くなり消費意欲を減衰させました。金融機関は本来業務である利ザヤで稼ぐことができなくなり収益悪化へ。
日銀の国債の大量購入は、本来の国債の在り方がなくなっています。
日銀の金融政策自体が機能しなくなっています。
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