294)糖と脂肪とがん(その1):高炭水化物食ががんを悪化させる

図:体が必要なエネルギーは炭水化物、脂肪、蛋白質が分解(代謝)されて作り出される。現代の食事は、全エネルギーの60~70%を炭水化物から得ているが、このような食生活になったのは新石器時代に農耕が始まってからで、まだ1万年程度しか経っていない。その前の数百万年の間は狩猟採集によって食物を得ていたため、現代に比べて、炭水化物からのエネルギー摂取は少なく、脂肪や蛋白質からのエネルギー摂取が大きかった。狩猟採集社会ではがんが少ないという報告がある。がん細胞はグルコースに対する依存度が高いので、高炭水化物食ががんの発生や進行を促進している可能性が指摘されている。低炭水化物食ががんの予防や治療に有効であるという報告が多く発表されている。

294)糖と脂肪とがん(その1):高炭水化物食ががんを悪化させる

【ワールブルグ効果をターゲットにした治療と食事療法】
がん細胞のエネルギー産生と物質代謝における特徴として、1)グルコースの取り込みが多い、2)酸素がある状況でも嫌気性解糖系でエネルギーを産生している、3)ミトコンドリアでの酸化的リン酸化が抑制されている、という3点が上げられます。この特徴は「ワールブルグ効果」という名称で知られています。ワールブルグ効果についてはこのブログで何回も繰り返し解説しています(168話175 話など)。
それは、「体にやさしいがん治療」の実践において、がん細胞のエネルギー産生と代謝の特徴をターゲットにすることが最も可能性が高いと考えられるからです。
今まで、ワールブルグ効果をターゲットにした治療法として、
ジクロロ酢酸ナトリウム175話)、半枝蓮176話)、R体αリポ酸215話)、紫根のシコニン266話)、発酵小麦胚芽エキスのAvemar281話)、シリマリン267話)、冬虫夏草232話)、さらにインスリン感受性を高める糖尿病治療薬のメトホルミン217話などを紹介してきました。
これらを組み合わせた治療を4年以上前から行っていますが、がんを縮小させる効果があることを確信しています。上記の代替医療の組合せだけで腫瘍マーカーが減少したり、腫瘍が縮小する例を実際に経験しています。そこで、このような治療法の効果をもっと高めるためにはどうしたら良いかというのが次の課題になります。
がん細胞にグルコースを与えないようにすれば良いので、断食療法カロリー制限は効果がありそうですが、断食療法は栄養素が欠乏する欠点があり、カロリー制限も体力を低下させる欠点があります。絶食と同じような効果があって体力も栄養状態も悪化させない食事療法として「ケトン食」があります。これはてんかんの食事療法として確立されている食事療法です。炭水化物(糖類)の摂取を極端に減らし、脂肪を多く摂取しケトン体を産生させるという食事療法です。また、カロリー制限と同じ効果が得られる薬に糖尿病治療薬のメトホルミンがあります(216話参照)。低炭水化物食やケトン食にメトホルミンを併用すると、がん治療に有効ではないかというアイデアも報告されています。(Medical Hypotheses 77: 171-173, 2011)
ケトン食療法は脳腫瘍などで実際に試みられ、有効性が報告されています。炭水化物を極端に減らし、脂肪(特に中鎖脂肪酸)を多く摂取すると、グルコースが低下してがん細胞は死滅しますが、正常細胞は中鎖脂肪酸が代謝されて産生されるケトン体を利用してエネルギーを産生できるので問題ないというのが、このケトン食療法の根拠です。グルコースは、がん細胞の増殖を促進するインスリンインスリン様増殖因子(IGF-1)の分泌を高めるため、低炭水化物食によってインスリンやIGF-1の分泌が減少すると、がんの進行が抑えられるという作用もあります。
ケトン食でがんが縮小したという報告はいくつもあります。抗がん剤治療の効き目を高めるという報告もあります。私自身も、このケトン食療法を併用しながら、前述のワールブルグ効果をターゲットにした治療を行うと、さらに抗腫瘍効果が高まることを経験するようになりました。そこで、数回に分けて、この治療法の理論と根拠を紹介したいと思います。

【3大栄養素の摂取量の適正比率とは】
私たちが生きていくために必要なエネルギーと物質(細胞構成成分やホルモンなど)は、食事からの炭水化物と脂肪と蛋白質の3大栄養素から作り出しています。すなわち、食事から摂取した炭水化物・脂肪・蛋白質を燃焼(酸化)させることによって生命のエネルギー源であるATP(アデノシン3リン酸)を作り、さらにこれらの栄養素を原料にして細胞膜や核酸などの生体高分子を合成して新しい細胞を作ったり、細胞の働きを調節するホルモンや成長因子などの生理活性物質を産生しています。
体が消費するエネルギーの量や、食事に含まれる熱量を表す単位として「カロリー」が使われます。人間が何もせずじっとしていても、生命活動を維持するためには成人女性で1日約1200キロカロリー、成人男性で約1500キロカロリーのエネルギーが消費されており、これを基礎代謝量と言います。仕事や運動をするとその身体活動に応じたエネルギーが必要になります。例えば、デスクワークは1時間当たり約100キロカロリーを消費し、普通に歩行すると1時間当たり150~200キロカロリーを消費します。エアロビクスやジョギングなどの運動はその運動強度に応じて1時間に200~500キロカロリー程度を消費します。
私たちは、消費するエネルギーに見合ったカロリーを食事から摂取することによって生命活動を維持することができます。3大栄養素の1g当たりの熱量(カロリー)は、炭水化物と蛋白質が4キロカロリー、脂肪が9キロカロリーで計算されます。つまり、炭水化物を100グラム食べると400キロカロリーを摂取し、脂肪を100グラム食べると900キロカロリーを摂取したことになります。
現代栄養学では、摂取カロリーから計算した3大栄養素の好ましい摂取比率として、炭水化物が60~65%、脂肪が20~25%、蛋白質が15%という数字が提唱されています。日本食はこの適正比率に近いので、非常に健康的な食事であると言われています。
蛋白質はエネルギー源としてより細胞を構成する成分や酵素などの材料として使われ、1日に体重1kg当たり1~2gが必要です。体重60kgの人で60g~120gになり、これは240キロカロリーから480キロカロリーに相当します。体重60kgの人の平均的な摂取カロリーを2400キロカロリー程度とすると、蛋白質のカロリー比率は10~20%になります。
脂肪は、細胞膜や神経組織などの構成成分の材料として必要ですが、摂り過ぎると動脈硬化やがんを促進することから、摂取量を総エネルギー量の20~25%に抑えるのが望ましいと言われています。1日の摂取総カロリー量を2400キロカロリーとすると、脂肪からのエネルギー摂取は480~600キロカロリーになり、脂肪1g当たり9キロカロリーなので、脂肪の1日の摂取量は53g~66g程度になります。脂肪は肉や乳製品やナッツ類に多く含まれています。大豆や魚にも脂肪分は多いので、肉や乳製品を制限し調理に油脂を使わなくても、摂取エネルギーの10%程度は脂肪から摂取しています。肉や脂肪の多い食事では、脂肪のカロリー比率は簡単に30%を超えてしまいます。
蛋白質と脂肪からの摂取エネルギーの足りない部分を炭水化物で摂取します。2400キロカロリーの60%は1440キロカロリーで、炭水化物1gが4キロカロリーなので、1日360グラムの炭水化物を摂取する必要があります。炭水化物は米や麦などの穀物やイモ類に豊富に含まれ、穀類を主食とする食事が多くの国で基本的な食生活になっています。

【炭水化物が主食になったのは新石器時代以降】
前述のように、近代栄養学では、全カロリーの60~65%を炭水化物から摂取することを推奨しています。これは肉類や脂肪の摂り過ぎが健康に良くないというのが主な根拠です。しかし、穀類やイモ類を主食にする食事で人類が生活してきた期間は、数百万年に及ぶ人類の長い歴史の中の1%にも満たないという事実があります。
人類が他の霊長類と分岐して以降の数百万年もの長い間、狩猟、採集、漁労などによって食物を得ていました。これを狩猟採集社会(hunter-gatherer societies)と呼んでいます。狩猟採集社会では、摂取カロリーの45~65%が狩猟によって得た動物性食品で、残りは採集した木の実や果物や野菜や豆などでした。このような食事では3大栄養素のカロリー比率は炭水化物が20~40%程度で、蛋白質が20~30%、脂肪が40~50%程度になると報告されています。
この食事の内容が変わったのは、新石器時代に入り農耕が始まってからです。地球上で農耕が始まったのは今から15000年くらい前と言われています。日本では、稲作が始まったのは紀元前5世紀頃の弥生時代からになります。
農耕によって穀物が安定的に得られるようになって、食事中の炭水化物のカロリー比率が上がりました。つまり、人類の歴史の中で、99%以上の期間は脂肪が炭水化物より摂取量が多い食生活に適応するように進化し、炭水化物が豊富な食生活で人類が進化した期間は1%未満ということです。
さらに、摂取する炭水化物の質にも変化が起こります。炭水化物が消化されて糖に変化する速さを示す数値にグリセミック指数(glycemic index)があります。グリセミック指数の高い炭水化物は食後に血糖が上がりやすく、そのためインスリンの分泌が増えるので、がんや動脈硬化を促進する作用があります。豆やナッツや雑穀の炭水化物はグリセミック指数が低く、精白した穀物や砂糖はグリセミック指数の高い炭水化物です。消化吸収の効率や味を良くする目的で精製加工したり砂糖を多く使ったグリセミック指数の高い食品の摂取が近年多くなっています。このようなグリセミック指数の高い食品は肥満や糖尿病やがんのリスクを高めることが明らかになっています。

【高炭水化物食ががんの発生を高める】
脂肪の摂り過ぎががんのリスクを高めると一般的に考えられていますが、これは炭水化物の摂取量や摂取総カロリーが高い場合に限ったことのようです。炭水化物や摂取総カロリーが高ければ、摂取した脂肪は体内に蓄積して肥満や動脈硬化の原因となります。しかし、炭水化物の摂取が少なければ、脂肪はエネルギー源として利用されます。特に、中鎖脂肪酸を多く含む脂肪を多く摂取すると、脂肪を多く摂取しても体内に蓄積することはありません。長鎖脂肪酸でもドコサヘキサエン酸(DHA)エイコサペンテン酸(EPA)のようなω3不飽和脂肪酸オリーブオイルなどがん予防効果がある脂肪酸もあります。
狩猟採集社会ではがんが少ないということが多くの疫学研究で明らかになっています。脂肪摂取量よりむしろ、炭水化物、とくにグリセミック指数の高い炭水化物の摂取量が増えたことが、近代社会においてがんが増えた原因として重要であると言えます。グリセミック指数の高い炭水化物の摂取量が増えると、がん細胞の増殖を刺激するインスリンの分泌が増えます。またがん細胞のエネルギー産生は正常細胞に比べて何十倍もグルコースの依存度が高いので、炭水化物の豊富の食事はがん細胞の増殖を促進すると考えられます。がんはグルコース過剰が引き起こす病気であり、炭水化物の少ない食事はがんの発生予防や治療に効果があると言えます

【がんはグルコースを多く取り込んでいる】
がん細胞がグルコースを多く取り込むことはよく知られています。がん細胞が数を増やしていくには、莫大なエネルギー(ATP)の産生と、細胞を構成する成分(核酸や細胞膜など)の合成が必要です。エネルギー産生と細胞構成成分の合成の主な材料がグルコースなのです。
がんの検査法で
PET(Positron Emission Tomography:陽電子放射断層撮影)というのがあります。これはフッ素の同位体で標識したグルコース(18F-fluorodeoxy glucose:フルオロデオキシグルコース)を注射して、この薬剤ががん組織に集まるところを画像化することで、がんの有無や位置を調べる検査法です。正常細胞に比べてグルコースの取り込みが非常に高いがん細胞の特性を利用した検査法です。
がん細胞がグルコースを多く取り込むことが最初に報告されたのは1921年です。糖尿病患者ががんを発症すると尿糖が減ること、グルコースの入った培養液にがん組織や正常組織を入れて培養する実験で、正常の筋肉組織や肝臓組織に比べてがん組織ではグルコースの消費量が高いことが報告されています。(Braunstein A: Wratschebnaje obosrnije. 7:291. 1921年)
翌年の1922年には、がん組織には乳酸が大量に蓄積していることが報告されています。(Bierich R: Virchows Archiv f Pathol Anatom und Physiol.  23:1-19.1922年)そして、1923年から
オットー・ワールブルグ博士のグループが、「がん組織では、ミトコンドリアでの酸化的リン酸化が低下し、酸素がある状態でも嫌気性解糖系でのエネルギー産生が主体である」という現象について一連の論文を発表しています。
オットー・ワールブルグ(Otto Warburg:1883年~1970年)博士は呼吸酵素(チトクローム)の発見で1931年にノーベル生理学・医学賞を受賞したドイツの生化学者です。細胞生物学や生化学の領域で重大な基礎的発見を次々に成し遂げ、呼吸酵素以外の研究でも何回もノーベル賞候補になった偉大な科学者です。そのワールブルグ博士が最も力を注いだのががん細胞のエネルギー代謝の研究です。がん細胞の異常な増殖を解明するためには、エネルギー生成の反応系を研究しなければならないということから、呼吸酵素を発見しています。そして、がん細胞ではグルコースから大量の乳酸を作っていること、がん細胞は酸素が無い状態でもエネルギーを産生できること、さらに、がん細胞は酸素が十分に存在する状態でも、酸素を使わない方法(嫌気性解糖系)でエネルギーを産生していることを見つけています。現在ではこの現象はワールブルグ効果(Warburg effect)と呼ばれ、がん研究の重要なテーマになっています。

【ワールブルグ効果はがん細胞の増殖と生存に有利になる】
ワールブルグ効果が起こる理由として、ワールブルグ博士自身は「がん細胞ではミトコンドリアでのエネルギー産生に異常があるため」と考えていました。しかし、その後の研究で、多くのがん細胞においてミトコンドリアの機能自体は正常であることが明らかになっています。それではなぜ、がん細胞においてミトコンドリアでの酸化的リン酸化が低下し、酸素が存在する状況でも嫌気性解糖系が亢進するのかが長い間謎となっていました。
嫌気性解糖系が亢進するのは、「がん細胞が低酸素状況に適応するための単なる結果」だとする意見が昔は主流でしたが、最近の研究では、このワールブルグ効果は細胞のがん化において重要かつ必要な変化だという考えが主流になってきています。つまり、ワールブルグ効果によって、「がん細胞が増殖するために必要な核酸や脂肪酸やアミノ酸の合成量を増やすことができる」、「血管が乏しい低酸素状況でも増殖できる」、「ミトコンドリアでの酸化的リン酸化を抑制すると細胞死(アポトーシス)を起こりにくくなる」、「がん組織の周辺を酸性化することによってがん細胞が浸潤しやすくなる」などのがん細胞の生存と増殖に有利になることが明らかになっています。 
がん細胞が数を増やしていくには、莫大なエネルギー(ATP)と、細胞を構成する成分(蛋白質や脂質や核酸)が必要です。がん細胞では正常細胞に比較して、数倍から数十倍のエネルギー産生と物質合成が行われているのです。酸素を使った酸化的リン酸化では1分子のグルコースから32分子のATPを産生できるのに、嫌気性解糖系では2分子のATPしか産生できません。したがって、嫌気性解糖系でのエネルギー産生に依存しているがん細胞ではより多くのグルコースが必要となっているのです。
嫌気性解糖系に依存したエネルギー産生は非効率的で、増殖には不利のはずですが、敢えてその方法をがん細胞が選択しているのには訳があります。それは、核酸や脂肪酸やアミノ酸などの細胞の分裂・増殖に必要な物質を合成する材料として多量のグルコースが必要になっているからです。つまり、
エネルギー産生と物質合成を増やすという2つの目的を両立させるためにグルコースの取り込みが増えているのです。
また、ミトコンドリアでの酸化的リン酸化が低下するとがん細胞が死ににくくなる(アポトーシスに抵抗性になる)ことが知られています。細胞分裂しない神経や筋肉細胞を除いて、正常の細胞は古くなったり傷ついたりするとアポトーシスというメカニズムで死にます。このアポトーシスを実行するときに、ミトコンドリアの電子伝達系や酸化的リン酸化に関与する物質が重要な役割を果たしています。つまり、がん細胞ではアポトーシスを起こりにくくするために、あえてミトコンドリアにおける酸化的リン酸化を抑え、必要なエネルギーを細胞質における解糖系に依存しているという様に解釈できると言うことです。

がん細胞におけるミトコンドリアの機能抑制は不可逆的なものではなく、機能を可逆的に正常に戻すことができるという研究結果が報告されています。そして、がん細胞におけるミトコンドリア内での酸化的リン酸化を活性化すると、がん細胞のアポトーシス(細胞死)が起こりやすくなることが報告されています。
以上のような複数の理由で、
がん細胞ではグルコースの取り込みが増えているのです。そこで、がん細胞が利用できるグルコースの量を減らし、がん細胞が利用できないケトン体を利用してがん細胞を死滅させる食事療法がケトン食です。このケトン食のとき、脂肪として中鎖脂肪酸やω3不飽和脂肪酸(DHAやEPA)を多く使い、タンパク源としてはがんを促進する赤身の肉(牛肉など)は控え、大豆製食品(豆腐や納豆)や魚や卵や鶏肉などを利用すれば、抗腫瘍効果が高まります。(具体的な方法は次回以降に解説予定)
さて、低炭水化物食は糖尿病の治療やダイエットの目的で急速に普及しています。しかし、行き過ぎた低炭水化物食は危険だと日本糖尿病学会が先日(7月26日)緊急で見解を発表しています。その新聞記事が27日に載っていました。

7月27日(金曜日)読売新聞
極端な糖質制限 健康被害の恐れ 日本糖尿病学会が警鐘
主食を控える「糖質制限食(低炭水化物食)」について、日本糖尿病学会は26日、「極端な糖質制限は健康被害をもたらす危険がある」との見解を示した。糖質制限食は、糖尿病の治療やダイエット目的で国内でも急速に広まっている。
同学会の門脇孝理事長(東大病院長)は読売新聞の取材に対し、「炭水化物を総摂取カロリーの40%未満に抑える極端な糖質制限は、脂質やたんぱく質の過剰摂取につながることが多い。短期的にはケトン血症や脱水、長期的には腎症、心筋梗塞や脳卒中、発がんなどの危険性を高める恐れがある」と指摘。「現在一部で広まっている糖質制限は、糖尿病や合併症の重症度によっては生命の危険さえあり、勧められない」と注意した。
一方、同学会では糖尿病の食事療法として、炭水化物を総摂取カロリーの50~60%にするカロリー制限食を勧めているが、この割合を個々の患者の病態に合わせ、さらに減らせるどうか検討を始める。

この門脇先生のコメントの中の「心筋梗塞や脳卒中、発がんの危険性を高める」というのは、「高脂肪食のリスク」を指しており、肉などの動物性脂肪を多く摂取するとその可能性はあります。しかし、体脂肪として沈着せずエネルギー源として利用される中鎖脂肪酸や、DHA(ドコサヘキサンエン酸)やエイコサペンタエン酸(EPA)のようなω3不飽和脂肪酸、オリーブオイルのような、がんや動脈硬化の予防に効果が証明されている油脂を多く摂取し、飽和脂肪酸やω6不飽和脂肪酸のような動物性脂肪の摂取を少なくすれば、むしろ、がんや動脈硬化性疾患のリスクを減らせます。蛋白質も大豆製品や魚など赤身の肉以外を利用すれば問題ありません。
しかし、重度の糖尿病がある場合には、意図的にケトン体を増やすケトン食が危険であるのは確かです。腎臓機能が低下している場合は禁忌と言えます。また、薬物療法を行っている糖尿病患者は低血糖に陥る危険もあります。つまり、低炭水化物食やケトン食は、重度の糖尿病が無いことと、この食事療法の経験がある医師のもとで行うことが大切です。そのような注意を十分に知って行うと、がん治療に極めて有効な治療法となるように思います。(続きは次回予定)


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