散文的で抒情的な、わたくしの意見

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麒麟がくる・信長と足利義昭・殿中御掟追加5か条

2020年05月24日 | 麒麟がくる
足利義昭さん。向井さんじゃないですよ。弟です。滝藤さん。

織田信長がこの義昭さんを奉じて上洛するのは、1568年の末です。10月。そしてその翌年の1月には殿中御掟というのを義昭さんに認めさせています。

ここで「信長は初期から義昭を傀儡にしようとしていた」とか書くと、間違いだと言われます。「信長の心は分からないから間違いじゃなくてもいい気もします」が、将軍として守るべき心構えのようなものだと言われれば、そう読めるのも確かです。

信長は幕府に対して「こうあるべきだという理想」があったことにいつの間にかなってます。

しかし、そもそも足利幕府の中に信長は入っていきません。そんなに高い理想があるなら、内部から改革すればいい。でも「実際の行動では」やってません。建前と実際は違います。

さて問題はその一年後に出した殿中御掟追加5か条

① 諸国へ御内書を以て仰せ出さる子細あらば、信長に仰せ聞せられ、書状を添え申すべき事
② 御下知の儀、皆以て御棄破あり、其上御思案なされ、相定められるべき事
③公儀に対し奉り、忠節の輩に、御恩賞・御褒美を加えられたく候と雖も、領中等之なきに於ては、信長分領の内を以ても、上意次第に申し付くべきの事
④天下の儀、何様にも信長に任置かるるの上は、誰々によらず、上意を得るに及ばず、分別次第に成敗をなすべきの事
⑤天下御静謐の条、禁中の儀、毎時御油断あるべからざるの事

①と②は勝手に命令するなという内容 ③は恩賞をあげようにも領地がないだろ、代わって信長がやるからという内容

④天下のことは何事も信長に任せられたのだから、誰に相談することもなく、義昭に承諾を得ることもなく、信長の考えで成敗ができる
⑤天下静謐になったのだから、宮中行事などは義昭がやるべきだ(天下は静謐になったのだ、よって、宮中行事などは油断なく)

⑤の「の条」は分かりにくいですね。条は「よって」ですが「こと」とも訳せます。

⑤天下静謐のこと、宮中行事などは義昭がやるべきだ

私はこうも訳せると思います。なぜって1570年にはどこも静謐になんかなっていないのです。むしろ騒乱の最中、建て前としても「静謐になったのだから」なんて言うのだろうか。まあ言うかな。あくまで建前としてはそういうことになっていたかも知れない。

宮中行事と天下静謐が同じ文脈にあって、④には「静謐」という文字はない。つまり「将軍は宮中行事のお祈りや、天下静謐の為のお祈りでもしてればいいのだ、現実の行動は信長がやるから」という風に私は解釈しました。

天下静謐なんてのは所詮は建て前だと思います。現実とは乖離しています。そういう必要があったのです。建前が必要なんです。

実際は越前の朝倉を攻め、畿内を平定した後は、毛利、武田、上杉、長曾我部などを侵略していきます。

言葉など所詮は建て前に過ぎません。実際に問題にすべきは織田信長がどう「行動」したかでしょう。「我慢したが、説得したが、結局はやった」なら「やった」のです。