シャンテ サラのたわ言・戯れ言・ウンチクつれづれ記

"独断と偏見" で世相・経済からコミックまで 読んで楽しい 面白い内容を目指します。 

そんなもんだよ __ 開発秘話なんて

2008年07月16日 | テクノロジふ~ん
「語る」を聞いたことはありますか?
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「ウォークマンの発明者が100人いる理由」(7月14日 鈴木貴博 / bp special) _ ●「実は、僕が本当の発明者なんです」という話は本当か? ● (※追加1へ続く)
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人間、誰しも自分のことはよくいうものです。 謙遜しても、結局は自分がこんなにも素晴しいものを持つ人間だと表明していることが多く、それを他人に同意してもらいたいものです。 そうでなければ、自分は何も素晴しいものを持たない人間だということになり、大概の人は絶望的な気持ちになってしまうでしょう。

「語る」を聞く他人も、自慢話だなと気付いて、「そうですね すごいですね」と普通は相づちを打つでしょう。 ただ 自慢の度が過ぎると、その話しには乗らなくなり、他人から話題を変えるものです。 多くの場合、他人も「私もこういう製品のヒントを開発者に提供したことがあるんですよ」と応酬することでしょう。
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また21世紀の今 画期的な新製品を一人だけで開発して、そのまま世の中へ大量工業製品として出荷されることはありません。 手工業時代ではないんですから。

必ず様々な角度から検討 __ 市場性/他の特許を侵害しないか/安全性/最適の形・重さ・電池寿命/最適パーツの選定とコストの絞り込み/標準添付品とオプション品の切り分け/分かり易いマニュアルの作成/大量製造販売に向けて工場や営業との折衝/広告会社との打ち合わせ __ などなどを100人位の人が掛かり切りで 発売日に向けて協力しあい、最終製品を作り上げます。

そこに関わった人達100人位全員が、「私があの製品のアイデアを考えたんだ」と思っても不思議ではありません。 この製品プロジェクトの形態は、規模の大小はあっても、100円の製品でも、100万円の車でもほぼ同じでしょう。
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但し、10人位の会社が作る「単品のカスタム仕様の製造品」は違います。 あれは1台か数台こっきりの手工業品ですから、不具合が生じても その都度 手直しするのです。

それでも顧客は普通 文句をいわないものです __ 致命的な不具合や度重なる不具合を除いて。 顧客もそんなものと思っていますし、大体「単品のカスタム品」製造を引き受ける会社自体が少ないですから、文句をいいすぎると、「そんなに色々いうんでしたら、製造を引き受けるのをヤメさせていただきます」となります。

大手の会社とは違って、そういった10人位の会社は、大きく利益を出すことはまれですから、文句をあまりいわず そこそこ利益を出せる、大手からの注文しか引き受けないものです。

だったら、大手はそんな10人位の会社に発注せず、自分達で作れば __ という意見もあろうかと思いますが、大手はそんな「単品のカスタム品」製造に社内の人手を割くよりは、もっと利益の上がる大量工業製品を作るのに人手が足りないものです。

次は、「アップルの iPod 開発話し」を拾い上げてみたいと思います。 あれは、社内開発じゃなかった …
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07年4月9日:iPod の累計出荷台数が発売より約5年半で1億台を突破。 これは、ウォークマンの13年半で1億台到達という記録を抜き、ミュージックプレーヤー史上最速の販売ペースである (ウィキペディアから)。
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以上


※追加1_ ある日 夜もずいぶん更けてきたころ。 芸能史に残るあるムーブメントの話をしていたら、同席していた初対面の若者がこう切り出した。
「あの仕掛け人、Aさんだっていわれてますけど、本当はボクなんです」
「へえ、そうなんだ」と相槌を打つ友人に、「Aさんと食事をしていた際に、ふとボクがつぶやいたひとことがアレの始まりなんですよ」と、若者は少し誇らしげに話を続ける。 そうして、そのムーブメントが起こるきっかけとなったイベントの “誕生秘話” が始まる ---。
 
実は、このような話に僕は過去、数十回以上も遭遇してきた。 あのヒット商品の本当の開発者は僕です。 あの大企業の画期的な商品が誕生したのは、実は我が社にこの独自技術があったことから始まっているのです …… もう何回、こういった話を聞いたことだろう。

まだ20歳代のころは、そんな話を聞くたびに「すげー」と感心していたものだ。 だが30歳代にもなると、だんだん「世の中には嘘つきが多いんだな」とうがった見方をするようになった。 確かそのころ 仲良くなったソニーの人から、「ソニーの本社には『自分がウォークマンを発明した』と主張する人が100人以上いるんだよ」と聞いたのが、この手の話を懐疑的に見始めるようになったきっかけだったように思う。
 
ところが40歳代に入って、この現象の意味するところがようやく見えてきた。 実は、彼ら “真の発明者” がたくさん存在するのには、きちんとした理由がある。 そのことを話す前に、1979年に発売されたウォークマンの発明者が誰なのか、簡単に整理しておこう。 いくつか通説があって、実はどれも間違いではない。

当事、名誉会長だったソニーの創業者・井深大氏は、海外出張の際、飛行機の中で好きな音楽を聴きたい (当時の飛行機にも機内で音楽を聴くための設備はあったが、決まりきった音楽しか流されていなかった) と思い立つ。 そこで自社の小型モノラルカセットレコーダー「プレスマン」から録音機能を取り去って、代わりにステレオ再生ができるようにするよう命じたという。 これが1つの定説。
 
別の説もある。 ソニーの創業者の1人で、3代目社長でもある盛田昭夫氏。 彼の著書によれば、自身がニューヨークに赴任していたころ、路上を歩く米国人が、大型のラジカセを肩に担いで大音量で音楽を流しながら楽しそうに歩いているのを目撃した。 それを見て、「音楽を持ち歩ける機器」というアイデアを思い付いたのだという。

また盛田氏は、商品名の「ウォークマン」を “発明” した人物だともいわれる。 先述のプレスマンはプレス (記者) が持ち歩く録音機器だったのに引っ掛けて、歩きながら音楽を聴くウォークマンというネーミングならば、世界中のソニーユーザーに分かりやすいだろうと考えたのは、盛田氏の功績だという。

さらに別の説。 ソニーの元取締役で、実際にウォークマン開発を指揮した黒木靖夫氏の著書によれば、両氏の発案よりも先に、ソニーの若手技術者がプレスマンを改造して、ウォークマンの原型を開発していたという。 それを黒木氏が井深・盛田両氏に見せたところ、2人の創業者は感銘を受けて、商品化が決まったというのだ。

● 画期的な商品のアイデアが生まれる場所 ●
若いころの僕だったら、これらの話を聞いて「じゃあ、本当の発明者はソニーの若手技術者じゃないか」と決め付けたことだろう。 だが最近は、そうではないことが分かってきた。 画期的な新商品を発売しようとすると、どうしても発明者が100人ぐらい生まれてしまうものなのだ。

どういうことかというと、実は 画期的なアイデアから画期的な新商品を生み出すには、3つのビジネスプロセスを経なければならない。 まずは、その “画期的なアイデア” に市場性があるかどうか、少人数で確認する段階。

そこで市場性があると思われたら次に、アイデアを「事業計画」にまで組み上げる段階。 準備室などが組成され、数千万円から数億円の資金が投下される。 会社の中で、プロジェクトが動き始める瞬間だ。
 
そしてようやく、3つ目の段階「商品化」に入る。 商品の実現に向けて、様々な困難を乗り越えていく段階だ。 この3つの段階を経るなかで、新商品の “真の発明者” の数はどんどん増えていくことになる。 それはもはや自然現象に近い。
 
もう少し詳しく見ていこう。 最初の段階では、例えば「すぐに繊維が崩れて分解する紙」だとか、「ぜんぜん強力ではない糊」だとか、「録音できないカセットレコーダー」といった断片的なアイデアだけがある。 それだけでは、何の役に立つかさえまだ分からない。 どうすれば商品になるのか、商品になるのかさえはっきりしない段階で彼らが何をするかというと、色々な人にヒアリングするのである。
 
そこで実際に商品の原型を見せて、「こんなものが出来たのだけど、売れるかな?」という直接的な聞き方をすることもあるだろう。 だが通常、少なくともこの段階では、友人や取引先など、社外の人にそんな直接的な聞き方はしない。
 
もっと婉曲的に、食事でもしながら「こうやって演歌の有線放送が流れているお店で、このテーブルだけ違う音楽が聞けたらいいよな」とか、「車の中だとラジオが聞けるけど、通勤電車の中はヒマだよな」などと、ニーズを探るような会話を投げ掛けるのが常套手段である。

ちなみに、上記のシーンは1970年代から80年代に掛けてといったところをイメージしていただきたい。 そんなときに、「ああ、小さなラジオを持ってきて、このテーブルの上で野球中継でも聞くようにしたら楽しいかもな」などと友人が言ってくれたら、「じゃあ、音楽はどうだろう?」と水を向けてみる。

「音楽? それじゃ店の有線放送と音が混じっちゃうよ」というような否定的な言葉が返ってくることもあるだろう。 一方、「そういえば友だちのBな、あいつ、通勤中も FEN ラジオ (現 AFN 米軍放送) で音楽聴きながら会社に来るぜ」といった有益そうな情報が返ってくる場合もある。
 
そうして、「そうか。 店じゃだめだけど、歩いているときにも “音楽を持ち出せる” っていうのはいいな」というように、話をまとめて友人への市場調査を終えたとする。
 
それがその後、無事に「ウォークマン」という商品となって発売されると、その友人は「実はアレな、開発者がおれの友だちでさ、“音楽を持ち出して歩く” ってのは、おれのアイデアなんだぜ」と、事あるごとに周囲に漏らすようになる (ちなみに、先に挙げた「すぐ分解する紙」は後にトイレットペーパーとなり、「くっつかない接着剤」は「ポストイット」という商品として世の中に登場する)。

● 会社の上層部を操るテクニック ●
だがこの段階では、あらゆるマーケティングニーズの可能性が日常会話のレベルで試される。 リサーチする側は、「ふーん面白いね」「へえ、そういう使い方があるんだ」「それは気付かなかったな」などと、やや大げさに反応してみせる。 そうやって相手を乗せながら、話を引き出していくのがテクニックだからだ。
 
ところが、それを相手が額面どおりに受け取ると、「そういう使い方があるんだと、あのとき、あいつは初めて気付いたみたいだぜ」ということになる。 実際には、その意見を言った本当に最初の1人かもしれないし、同じ意見を言った3人目かもしれないのだが。
 
最終的には、「外に持ち歩く」「ヘッドフォンで聴く」「録音機能はいらない」…… 色々な友人の声が組み合わされて、1つの商品アイデアが生まれていく。 だから、ある発明の初期段階でヒアリング相手として付き合わされた人はすべて、潜在的には自分を「たった1人の真の発明者だ」と “誤解” する現象が起きるのである。

こうして、「音楽を外に持ち出せる」「小型ステレオカセットレコーダーの音をイヤホンで聞く」「コストを下げるために録音機能は付けない」といった基本構想が固まると、ようやく事業化の第2段階に入る。 事業計画として上層部から承認を受け、投資資金を引き出すのだ。

ここでソニーの若い技術者は、上司である黒木氏に商品を見せ、黒木氏はさらにその上の井深氏や盛田氏に商品を見せることになる。
 
未知の商品を事業化するために必要なのは、組織の中でのコンセンサスを形成していく技術。 そのためにはどうすればいいかというと、ベータ版を見せて改善アイデアを相手に出させること。 これが1番、有効とされるセオリーだ。
 
誰でもそうだが、他人の考えたアイデアを実行するのは億劫なものである。 だが、自分の考えたアイデアを実行するときには、とても前向きになる。 例えば、子供が親から勉強しろといわれて勉強机に向かうのは気が乗らないが、自分で「あの高校に入りたい」と思った場合には、自分で計画を立てたり、自発的に勉強するようになる。

だから親の側のテクニックとしては、ただ「勉強しなさい」というよりも、子供に「お前は何をやりたいんだ?」と尋ねて、自分から「ソニーに入社したい」みたいなことをいわせたほうがいい。 そのうえで、「ソニーに入社するんだったら、早稲田大学の理工学部ぐらい受からなきゃな」などとゴールをインプットさせたほうが、効果的に勉強に向かわせることができる。

あれと同じテクニックを、社内でのコンセンサス形成に使うのである。

● こうして誕生する100人の “真の発明者” ●
例えば 初期のウォークマンをわざわざ重たいラジカセ型にして肩からバンドで吊るし、そこにヘッドフォンを挿して、「こうやって音楽を外に持ち出すというアイデアはいいんじゃないかと思うんですけど」などと相談する。
 
するとそれを見た上司は、「もっと小さいほうがいいんじゃない」とか、「ラジオや録音機能はいらないだろう」とか、「ヘッドフォンは屋内で聞くような大きい奴じゃない軽くて小さいやつがいいだろう」とか、より良いアイデアを出してくれるものだ。

そういう声を引き出しておいてから、「では、こんな感じですか?」といって本当は最初から出来ていた若い技術者の作ったウォークマンを持って行く。 そうすれば、「そうそう、私が言いたかったのはまさにこんな感じの商品だ」と上層部はいってくれるだろう。

そうなったら、しめたもの。「上層部がアイデアを出した商品だから」ということで、事業化予算は数千万円ではなく数億円の規模に拡大することができる。 さらに営業部門や宣伝部門にも、同じテクニックを使ってコンセンサスを作っていく。 こうすることで、この画期的な新商品の味方を社内にたくさん作り出すことができる。

というのも 画期的な商品というものは普通、それまでの常識を覆すいわば “非常識” な商品でもあるがゆえに、本来は敵や反対者を作りやすいものなのだ。 だからこそ これまで実際に成功した商品では、その拒絶反応を回避するためにこのようなテクニックを使っているケースが多く見られる。
 
そして、そのプロセスの “代償” として生まれるのが、新たな数十人の発明者なのである。 さらに本格的な商品化につながる第3の段階でも、新たな発明者が数多く出現する。
 
それまでにない軽量ヘッドフォンを開発するために必要だった音響心臓部の技術、市場に売り出すために若者にウォークマンを使わせる宣伝アイデア …… そうした「実は、この発明こそが、ウォークマンを世に出すために必要だった真のブレークスルーだったのである」と後世にいわれるような “小発明” が、第3段階、つまり本格的な商品開発・商品発売の段階では頻発するからだ。
 
加えて、「初代ではなく、小型スタイリッシュにまとめた2代目ウォークマンの発明こそが爆発的に伸びる起爆剤だった」などという “新たな発明” が続くことで、商品はどんどん世の中に広がっていく。 忘れてならないのは、これら商品を世に出すために生まれた100人のアイデアがなければ、結局のところ画期的な商品というものは生まれなかったということである。
 
つまり、ウォークマンには、やはり発明者が100人いるのだ。 だが、それでいい。 これが、“真の発明者” や “真の仕掛け人” がたくさん存在するという不思議な現象の真実なのだから --。

以上

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