ほんの数日前のこと、夫婦連れで国道493号崩落地を山越えして柚子畑の世話をしにいっているかたが、私に問うたのだ。
「あのモーターや自転車、どうやって持っていったがですか?」
おそらく、私が上流の平鍋工区へとカブや自転車で通っているのを見ていたのだろう。
「あ、あれ、担いでいったがです」と私が、若い衆が青息吐息で山中を持って行ってくれたのにもかかわらず、さも自分が担いでいったかのように涼しい顔をして答えると、
「私らも自転車でも持って行きたいねえと話よったところながですよ」と旦那さんが言う。
「持って行ってあげましょうか?」と(若い衆に担がせるくせに)私が訊くと、二人して、申し訳なさそうに首を横に振るのだった。
そのあと二三の会話をして別れたのだが、別れ際にまた、「遠慮せんと言うてください、手伝いますから」と(若い衆の顔を思い浮かべつつも)私は声をかけたが、「いえいえ、それには及びません」と、またまた申し訳なさそうに首を横に振った。
「そりゃそんなことやないわな」と独りごちる。自転車を担いで持って行くよりも、一日でも早く道路が通れるようになることのほうが、あの人たちのためになるのである。
いろんな方たちがこの道路の復旧を待っているのだ。
さあ、がんばるべ。