一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

田中寅彦九段、引退確定

2022-02-06 14:20:37 | 男性棋士
田中寅彦九段の引退が確定した。
田中九段は1976年、四段。1980年度の第39期C級2組順位戦で9勝1敗の成績を取り、C級1組に昇級した。以後、毎期昇級。1984年、26歳でA級八段となった。
田中九段の昇級の原動力になったのは、対振り飛車戦における居飛車穴熊の採用である。この囲い自体は以前から知られていたが、田中九段が連採し、連戦連勝した。当然ほかの棋士も追随し、新型コロナのごとく猛威を振るった。
その中心にいる田中九段は、将棋大賞・勝率第一位賞を1978年度、1980年度、1981年度、1983年度と4回も獲った。
私が高校時代、将棋大会で将棋会館に行ったときのこと。入口から、若い男性が出てきた。それが田中寅彦六段(当時)で、私は級友と顔を見合わせ、歓喜した。飛ぶ鳥を落とす勢いの田中六段、現在の藤井聡太竜王に匹敵する輝きだった。
以後も6~7割の勝率を維持し、1988年度には棋聖も獲り、このあたりまでが田中九段の絶頂だった。
翌1989年度は突然の不調にみまわれ、12勝23敗と散々な成績となった。
同年、田中九段は不動産関連の書籍を出版したが、個人的にはこれが悪手だったと思っている。ライバル棋士に、「田中さんはもうタイトルは欲しくないようだ」と取られてしまったのが痛かった。田中九段が不動産にうつつを抜かしている間(失礼)、ライバル棋士は「打倒田中」に研鑽したのである。
その後田中九段はなだらかに降級を続け、2017年度・第76期C級1組順位戦で、3勝7敗ながら順位1枚の差で降級点を取った。ここで緊張の糸が切れたようだ。
翌第77期も3勝7敗に終わったが、順位下位のため降級点に引っ掛かり、C級2組に降級した。
そして第78期、第79期とも2勝8敗で、たちまち降級点2。田中九段がC級2組に降級したときは61歳だったから、フリークラスに行っても定年が65歳になるだけである。そもそも当人はC級2組で何年も踏ん張るつもりだったから、フリークラス転出は眼中になかった。
ところが今期もその意に反し、8局を終え1勝7敗となった。今期C級2組参加は53名で、降級点は11名。そして現在、田中九段より上位が確定しているのは41名である。まさに降級点スレスレだが、上位で2勝6敗者の直接対決があり、3勝者がもうひとり出る。ここで田中九段の降級が確定したわけである。
田中九段は竜王戦も6組で、初戦に負けている。ということは、竜王戦の延命は昇級決定戦で昇級するしかないが、これは難しい。
しかし田中九段、なんでこんなに弱くなってしまったのか。あの勝率第一位男がC級2組から降級とは、信じられない。単純に加齢によるものだとしたら、加齢というのは本当に恐ろしい。
いずれにしても、寅ちゃん流の将棋を、最後まで期待するものである。
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