一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

悪夢の社団戦2021・3日目(2)

2022-01-31 00:30:04 | 社団戦

第4図以下の指し手。△2三同馬▲同飛成△同銀▲4三角成△1二飛▲3七桂△3二銀▲4四馬△4一香▲3五馬△3九飛▲3六馬△3五歩▲2七馬△1九飛成▲4五桂(第5図)

第4図で△2三同銀は▲4三桂成△同馬▲2三飛成となるが、これは先手も十分。そこで丸紅OKI3氏は△2三同馬と取った。しかし私はよろこんで▲同飛成。強力な馬が消えて、気分的にはラクになった。
しかし△2三同銀に▲4三角成がつらいところ。ここは桂成でいきたいのだが、それは△4一飛で角の処置に困る。
でも△1二飛に▲3七桂はいい活用か。しかし丸紅OKI3氏の△3二銀~△4一香がいい粘りで、冷静に見ればまだ私のほうが悪い。
▲3五馬には黙って△5四歩と桂を取りに来られても困ったが、丸紅OKI3氏は△3九飛。これも厳しい。
▲2七馬には△1九飛成だが、ここは一本△2二飛もあったかもしれない。
私は目をつぶって▲4五桂。これには△4四歩がイヤだったが……。

第5図以下の指し手。△4五同香▲同馬△8四香▲6六銀△2二飛▲2三歩△同飛▲同馬△同銀▲7七銀引△7四歩▲8五歩△同香▲8六歩(第6図)

丸紅OKI3氏はアッサリ香を取り、△8四香。いろいろな手があるのでビビッていたから、拍子抜けしてしまった。だが▲6六銀は悠長で、やや形勢を損ねた。ここは▲8五歩△同香▲8六歩と、早々に香を除去してしまうのだった。
△2二飛には▲2三歩から飛車馬交換をし、私は待望の▲8五歩。これで後手の攻めが切れ気味で、受け切り勝ちが見えてきた。

第6図以下の指し手。△7五歩▲8五歩△7六歩▲同銀△7五歩▲同銀△5四角▲7六歩△7四歩▲8六銀△7五歩▲同銀△6三桂▲同桂成△同金(第7図)

丸紅OKI3氏は△7五歩。すでに秒読みで、指す手に困ったようだ。このくらいの手なら、自然に応じれば私が勝てると思った。
△7四歩▲8六銀に△7五歩は、丸紅OKI3氏の予定変更だろう。だが▲同銀に△6三桂も意味不明で、私はありがたく▲同桂成。
相手は明らかに焦っていて、それが私の心の拠り所でもあった。

第7図以下の指し手。▲5五香△6五角▲7七桂△5六角▲5七歩△3四角▲5三香成△同金▲7四桂△7三玉▲8二角△6三玉▲4一飛△5一歩▲9一角成△7三歩(第8図)

第7図ですぐ▲7四桂は、△同金▲同銀△7三歩がある。私は邪魔な角(筋)をどけるべく、▲5五香と打った。
角を追い回し▲4一飛はこれといった狙いがないが、私も秒読みで、具体的な寄せが分からなかった。ただ、△5一歩は受けすぎだった気もする。底歩も固いが、5筋に歩が利かなくなったのが痛い。

第8図以下の指し手。▲5六香△同角▲同歩△9五歩▲4五角△5二玉▲2三角成△7四歩▲6四銀△8六香▲同玉△9四桂▲9五玉△6四金▲同馬△5三銀▲5五香(投了図)
まで、127手で一公の勝ち。

私は△5一歩の裏をかいて▲5六香。対して△同角はやむを得なかったのかもしれないが、△5四桂とか辛抱する手はあったと思う。こちらも何かのときの△5二玉が飛車取りに当たるから、意外に忙しいのだ。
△9五歩は油断のならない手。気付くのが遅れたが、△8六香▲同玉△9四桂からの一発逆転を狙っている。
私は▲4五角の王手銀取り。△5二玉には▲2三角成がピッタリだ。あとはトン死に気を付ければよい。
△6四金に▲同馬が8六の地点に利き、先手玉は詰まない。ここで△8六銀から馬を除去する手もあったが、丸紅OKI3氏は△5三銀。これは受けになっておらず、▲5五香があった。ここで丸紅OKI3氏の投了となった。

結果は幸いしたが、どうであろう。私の指し方が雑で、勝てたのは僥倖というしかない。実戦不足もあるが、もっと丁寧に指さねばと思った。
チームは4勝1敗で勝ち。私の勝敗は関係なかった。

2局目は吉本興業との一戦である。吉本興業とは、あの吉本興業だろうか。いずれにしても、2021年最後の社団戦である。力いっぱい指そうと思った。
本局も私が大将。以下、Yam氏、新顔氏、木村会長、Akuさんである。Akuさんは早々に席に着き指す気満々だが、相手がいない。相手は4人しかいなかったのだ。実戦を指したいAkuさんには気の毒だったが、In氏が向かいに座り、プチ将棋講座を行うことになったようだ。
私の相手はサングラスを掛けていて、「このままでいいでしょうか?」と断りを入れてくる。むろんOKである。
吉本興業氏の先手で、対局開始となった。

初手からの指し手。▲7六歩△3四歩▲1六歩△8四歩▲6六歩△6二銀▲7八飛△8五歩▲7七角△4二玉▲6八銀△3二玉▲4八玉△5二金右▲3八銀△5四歩▲5六歩(第1図)

3手目▲1六歩の様子見に、私は△8四歩。これで相居飛車に来られたら仕方ない。
吉本興業氏は三間飛車に振ったがここが作戦の岐路で、あえて石田流に組ませ、私得意の△5四銀左に組む指し方もある。しかしここは△8五歩▲7七角を決めた。
▲5六歩に次の一手は。

第1図以下の指し手。△4二銀▲3九玉△7四歩▲5八金左△5三銀左▲5七銀△1四歩▲2八玉△4二金直(第2図)

ここは△5三銀から持久戦にする手もあるが、まあ△4二銀であろう。
△5三銀左には▲5七銀。ここ、▲6八銀型のままだったら△5五歩~△6五歩と仕掛けたのだが……。
△4二金直に次の手が意外だった。

(つづく)
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悪夢の社団戦2021・3日目(1)

2022-01-30 15:09:10 | 社団戦
昨年11月28日(日)に行われた、社団戦3日目の模様を記す。実は、そのときのメモを紛失してしまったため、書く踏んぎりがつかなかった。記憶を頼りに、ともかく書こう。

ここまで我が将棋ペンクラブは4組で、2日目を終え4勝4敗。もう入賞の望みはないので、3日目は楽しんで指すよりない。
しかし当日は急遽、めいとおいが遊びに来ることになり、私は社団戦に臨むテンションが若干低くなった。将棋より、めいとおいと遊んでいるほうが楽しい。
3日目は設営の当番だったので、11時30分には産業貿易センター台東館に入った。
今年は参加チームも少ないし、設営はすぐに完了する。
Kan氏やAkiさんの姿があった。Akuさんは昨年、コロナ禍につき不参加だったので、久しぶりの再会である。
Kaz氏が「今回は参加選手が多いので、参戦は2局」と言った。それで、最初の2回戦だけ参加させていただくことにした。すなわち打ち上げの席を辞退し、一刻も早く帰宅するということである。Akuさんとも交流を図りたいが、私の早退の意思は変わらない。ここが私の融通の利かないところである。
1回戦の相手は「丸紅OKI3」。開始の前に、今西修理事長の挨拶があった。2022年は通常の大会に近くなり、4日間行われることが発表された。
LPSAからは島井咲緒里女流二段(理事)、船戸陽子女流三段が参加した。島井理事が挨拶に立ったが、蛸島彰子女流六段の著書「駒我心(こまわがこころ) ~初代女流名人 蛸島彰子の歩み~」の宣伝だった。
さて、対局である。私は大将で出場。副将は藤宮氏。あとは忘れた。
私の先手で対局開始となった。

初手からの指し手。▲7六歩△3四歩▲2六歩△4四歩▲4八銀△3二銀▲5六歩△4二飛▲6八玉△6二玉▲7八玉△7二玉▲5八金右△8二玉▲9六歩△9四歩(第1図)

私は先手がほしい派だが、初対局の相手とは、後手番でもいい派である。たとえば私の先手で▲7六歩△3四歩▲2六歩とした場合、△8四歩とされたら困る。私は相掛かり系を指したくないからである。
しかし本局は4手目に丸紅OKI3氏が△4四歩としたため、何となく安心した。以下、丸紅OKI3氏の四間飛車となる。
△9四歩で、次が作戦の岐路だ。

第1図以下の指し手。▲8六歩△7二銀▲8七玉△5二金左▲7八銀△3三角▲2五歩△6四歩▲3六歩△6三金▲1六歩△1四歩▲5七銀△4三銀(第2図)

私は急戦を考えているが、舟囲いで仕掛けた場合、玉の薄さが気になる。それで、天守閣美濃を目指した。
OKI3氏は自信なさげに指しているが、昨今はネットで将棋を勉強する手合いが多いので、手つきの巧拙はアテにならない。
▲3六歩は緩急の岐路だったが、初志貫徹でそう指した。

第2図以下の指し手。▲4六銀△3二飛▲3五歩△4五歩▲3三角成△同桂▲5七銀△4四角(第3図)

私の▲4六銀は、▲3六歩からの継承。△3二飛は当然の一着だが、やはり大将だけあって、高段者のような気がした。
私は▲3五歩。しかし相手が△3二飛と備えているところへの仕掛けだから、厳密に言うと疑問手であろう。
丸紅OKI3氏の△4五歩も最強の応手で、私は角を換わって▲5七銀と引かざるを得ない。
そこで△4四角。ここで次の手が大悪手だった。

第3図以下の指し手。▲3四歩△9九角成▲2一角△4二飛▲3三歩成△同馬▲5五桂△6二金引▲2四歩△3二銀▲2三歩成(第4図)

第3図は▲7七角が相場だが、△3五角と歩を取られるのが気に入らない。実際はそれでもいい勝負なのだが、私は相手をナメて、▲3四歩。相手がビビッて△3四同銀と取ったら、そこで▲7七桂と跳ねようと思った。
ところが丸紅OKI3氏は平然と△9九角成。これが大きい手で、クサッタ。いくら何でも、玉側の香を取らせる手はあり得ない。何年将棋を指してるんだと自己嫌悪に陥った。
ここですぐに▲3三歩成は△同馬と引き揚げられてつまらない。そこで一本▲2一角と打ったが、これもつまらなかった。丸紅OKI3氏は△4二飛と逃げたが、ここは飛車角交換辞さずと放っておく手もあった。後手は角が入れば△9八角がある。ただまあ、△4二飛は自然な手だ。
いずれにしても、9九に馬を威張られてはかなわない。私は▲3三歩成と桂を取り、香損の代償を得る。
返す刀で▲5五桂。△4三銀・△6三金型を見た時から狙っていた手だが、どのくらい効いているのか。
これに丸紅OKI3氏の△6二金引がどうだったか。ここは△3二銀と角取りに引く手もあったと思う。
▲2四歩には△同歩もあったが、丸紅OKI3氏はここで△3二銀。私は▲2三歩成とし、ごちゃごちゃした戦いになれば何とかなると思った。

(つづく)
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第44期女流王将戦予選の枠抜け予想の、答え合わせ

2022-01-29 23:42:14 | 勝敗予想
第44期女流王将戦予選は27日にすべて終わった。開幕が20日だったから、ずいぶんなハイスピードである。
当ブログでは18日に枠抜け予想をやったので、答え合わせをしてみよう。
赤字が予想、青字が結果である。予想と結果が当たった場合は、2色にした。

【1枠】
本田小百合女流三段VS加藤圭女流二段
(渡辺弥生女流初段VS中村桃子女流二段)VS小高佐季子女流初段
本田VS加藤戦は本田女流三段が勝った。本田女流三段も実力がある。

【2枠】
塚田恵梨花女流初段VS山口恵梨子女流二段
(加藤結李愛女流初段VS船戸陽子女流三段)VS山田久美女流四段
塚田女流初段が枠抜け。塚田女流初段は着実に実力を付けている。

【3枠】
上田初美女流四段VS和田あき女流初段
磯谷真帆女流初段VS安食総子女流初段)VS野原未蘭女流初段
礒谷女流初段が上田女流四段に勝った。これは礒谷女流初段の殊勲といってよい。

【4枠】
山根ことみ女流二段VS藤田綾女流二段
(高浜愛子女流1級VS小野ゆかりアマ)VS中井広恵女流六段
予想では山根女流二段を推すも、「小野アマも実力がある」と書いた。事実小野アマは中井女流六段に勝ったわけだが、改めて小野アマの実力に舌を巻く。もうプロ入りしてほしいが、彼女はアマ枠で自由にやるスタイルが合っているのだろう。

【5枠】
頼本奈菜女流初段VS伊奈川愛菓女流二段
(長沢千和子女流四段VS島井咲緒里女流二段)VS岩根忍女流三段
決勝のカードは合っていたが、結果は頼本女流初段の勝ち。この結果も、不思議ではない。

【6枠】
渡部愛女流三段VS清水市代女流七段
(和田はな女流1級VS飯野愛女流初段)VS千葉涼子女流四段
渡部女流三段が枠抜け。清水女流七段に勝ってだから、より価値がある。

【7枠】
甲斐智美女流五段VS(中倉宏美女流二段VS相川春香女流初段)
(内山あや女流2級VS上川香織女流二段)VS中村真梨花女流三段
甲斐女流五段が実力を発揮して枠抜けした。

【8枠】
鈴木環那女流三段VS(堀彩乃女流1級VS貞升南女流二段
(石高澄恵女流二段VS北尾まどか女流二段)VS竹部さゆり女流四段
鈴木女流三段が安定の枠抜け。抜けるべくして抜けた感じだ。

【9枠】
矢内理絵子女流五段VS室谷由紀女流三段
斎田晴子女流五段VS田中沙紀女流2級)VS脇田菜々子女流初段
思い切って斎田女流五段を推したが、矢内女流五段が意表の枠抜け。室谷女流三段は残念だったが、新婚だからいいか。

【10枠】
武富礼衣女流初段VS藤井奈々女流初段
(村田智穂女流二段VS木村朱里アマ)VS室田伊緒女流二段
武富女流初段を推したが、枠抜けした。これは我ながらよく当てた。

【11枠】
北村桂香女流初段VS(里見咲紀女流初段VS山口絵美菜女流1級)
(山口仁子梨女流2級VS木村野乃花アマ)VS石本さくら女流二段
石本女流二段が実力を見せて枠抜け。

【12枠】
中澤沙耶女流初段VS(川西彩遥アマVS長谷川優貴女流二段)
(大島綾華女流1級VS山口稀良莉女流1級)VS水町みゆ女流初段
若手実力者の中澤女流初段が抜けた。

以上、12枠中7枠で当たり。もう少し当たってもよかったと思うが、こんなものか。とはいえ、本命が抜けた例が多かったと思う。
本戦トーナメントは西山朋佳女流二冠や加藤桃子清麗が加わるので厳しさは増すが、挑戦権獲得まであと4勝。皆様頑張ってください。
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大山名人と升田九段のカラー写真

2022-01-28 23:10:47 | 将棋雑記
最近は落ち着いて夕刊(読売新聞)を読むヒマもない。ところが25日(火)は珍しく、寝る前にザッと見た。
すると2面に、大山康晴名人と升田幸三九段の対局姿が載っていて、ビックリした。
これは「Color the News」という企画で、むかし同紙に載った写真(当然モノクロ)をカラー化するものらしい。毎月第4火曜日掲載で、私は本当に偶然にこの面に当たったというわけだ。
写真は1962年11月21日撮影で、第1期十段戦第3局である。自動色付けシステムを用いて色付けされているが、カラーのポジフィルムで撮影されたのではと見紛うほど綺麗である。モノクロでもドット(点)の大きさなどで色の判別ができる、と聞いたことがあるが、AIの威力恐るべし、という感じだ。
あらためて、大山名人、升田九段の雄姿が素晴らしい。鑑賞するだけでご利益がありそうだ。
なおキャプションでは、観戦記者の姿もあることから、感想戦ではないか、と記してあった。
ちなみに第1期は大山名人が4勝3敗で優勝し、初代十段に就いた。
別の小さな写真では、加藤一二三八段の結婚披露宴が掲げられている。1960年のものである。
加藤現九段は18歳でA級八段、20歳で名人挑戦という、現代でも考えられない記録の持ち主だが、結婚も20歳と早かった。この決断力も含めて、あらためて加藤九段は天才だった、と認識する。
さて現在ではカラー写真はもちろん、動画さえふんだんに記録される。藤井聡太竜王なぞ、公式戦のほとんどがビデオ録画されているのだ。
まさに、写真の価値が薄くなりつつある。名棋士のカラー写真を見て唸る。そんな感慨を抱くのは、私たち世代で終わりかもしれない。
なお本日(28日)朝刊には、「ふるさと」という連載物の中で、藤井猛九段が、故郷の群馬県沼田市での思い出を語っている。これも必読である。
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藤井九段の逆転負け?

2022-01-27 23:13:11 | 将棋雑記
26日は第70期王座戦二次予選・羽生善治九段VS藤井猛九段戦が行われた。
現在「藤井」といえば藤井聡太竜王を指すが、将棋ファン限定で「藤井ファン」を投票すれば、このふたりはいい勝負になる気がする。
当日はABEMAで放送があったが、これはよい選択である。藤井竜王の中継もいいが、たまにはこういう注目のカードも中継してもらいたいものだ。
将棋は羽生九段の先手で、居飛車明示に、藤井九段が四間飛車に振った。対して羽生九段は▲7九銀形のまま▲6八金直と立つ独特の形。これは△8八角成を形よく▲同銀と取るハラである。
将棋は互角のまま中盤に進んだが、王座戦は持ち時間5時間。とても私は付き合いきれず、途中でテレビを見たりしていた。
羽生九段は▲4五歩~▲4四歩とし、角銀総交換になった。しかしこれは高美濃囲いになっている後手が十分だろう。これは藤井九段が勝つと思った。
そこから局面は飛び、夜に見ると羽生九段が▲8九玉と引いたところらしかった(図)。

この局面でAIの評価は「藤井九段96%・羽生九段4%」だった。次は誰が指しても△8七銀成である。対して▲5一竜が恐いが△5二角が妙防で、藤井九段が勝つらしい。
△5二角は打ちづらいが、プロなら読み切れる順である。両者の対戦成績は、羽生九段の37勝、藤井九段の16勝。藤井九段の持ち時間は26分に減っていたが、これはいよいよ藤井九段が一矢報いると思った。
ところが、それからしばらく経ってPCを見ると、「羽生九段の勝ち」と出ていたので、唖然とした。
藤井九段、なんでこの将棋を巻ける? 藤井九段、またやっちまったのか?
感想戦を聞くと、実戦は図から△8七銀成▲5一竜と進んだが、そこで藤井九段は△5二桂合としたらしい。
「だって△5二角じゃ▲4二銀△5四玉▲5二竜で、角を取られちゃうもんね。
それより△5二桂のほうが4四にも利くから、よろこんで打ったんだ」
と藤井九段。その気持ち、よく分かる。
実戦は後日の調べで、△5二桂以下▲4四馬△同玉▲4二竜△4三歩▲4六飛と進んだことが分かった。この飛車打ちが後手は痛く、後に▲8六飛と桂を外す手がある。このとき後手の持駒に桂が残っていれば、△9七桂▲同香△9八銀で先手玉が詰むのだ。だから後手は桂を温存しておかなければならなかったのだ。
実戦も羽生九段が巧みな手順で後手玉を追い角を取ると、藤井九段が投了してしまった。
これがまた早い投了に思えたのだが、実際はどうなのだろう。
藤井九段が△5二角合に気付いていなかったわけだから、藤井九段は難しい形勢、と捉えていたわけだ。そして羽生九段もまた、ここまで悪いとは思っていなかった――というかむしろ、先手有利、くらいに考えていた。
となれば、不利の時間が長かった藤井九段が戦意喪失し、投げてしまったとしても不思議ではない。
つまり、AIは後手勝勢と断じていても、それは別世界の話であって、人間の戦いでは、先手がそのまま押し切った、という構成にならないか?
いや、藤井竜王ならどう指したか。平然と△5二角と打った気がする。そしてそれ以外の順では後手に勝ちがなかったことが分かり、さすが藤井竜王と、後世に語り継がれた気がするのだ。
AIの評価価のあり方、この将棋にまったく関係ないのに、なぜかある藤井竜王の存在感。いろいろ考えさせられてしまった。
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