一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

「将棋ペン倶楽部 第81号 2024年春号」

2024-04-15 23:51:19 | 将棋ペンクラブ
冒頭、私事を書く。きょう、オヤジからウチのクルマを処分するよう促された。ウチにはクルマが1台あるが、オヤジはとうに免許を返納したし、私はほとんど運転しない。維持費を考えたら処分するのがベスト、というのがオヤジの考えだった。
まことにもっともなのだが、私は頼みこんで保留にしてもらった。
このクルマには私なりの思い入れがあり、家族同然である。カネがかかっても、もう少し保持しておきたいのだ。
こうして私は、またムダ金を遣ってゆく。

   ◇

先月、「将棋ペン倶楽部 第81号 2024年春号」が発行された。
まず表紙だが、挿絵を担当していた小川敦子さんが勇退し、今号はピノー隆子さんが担当している。辰年なので竜がデザインされている。青を基調とし、とても涼しげだ。
今号は81号で、将棋盤のマス目にあたる。よって私は、この号には何か投稿したいと数年前から思っていた。題材は「大山×中原戦」で、文章もほぼ頭の中でできてはいたのだが、紙に印刷となれば細かな下調べが必要で、結局何もできぬまま締切日が過ぎてしまった。
最近は何をやるにも億劫で、面倒臭さが先に立つ。これが歳を取ることなのかと思う。というか、もう人生を投げているのだ。
この原稿にいつ取りかかれるか分からぬが、要はヤル気が出るかどうかである。
冒頭は、「将棋ペンクラブ関東交流会」のお知らせ。今年は5月25日(土)で、場所はおなじみの御徒町将棋センター研修室(5階)。10時10分受付開始で、会費は3,500円(会員料金)。ゲストは堀彩乃女流初段、加藤結李愛女流初段。指導対局には1,000円かかる。今年は私も、何とか参加したいと思っている。
本文に入り、新春恒例の対談は、郷田真隆九段×木村晋介将棋ペンクラブ会長。なぜいま郷田九段か? と思ったら、今回の将棋ペンクラブ大賞で、郷田九段著の「一刀流 郷田真隆矢倉勝局集」が技術部門大賞を獲ったからだった。
対談は、藤井聡太竜王・名人の八冠達成について、AI観、観戦記論、矢倉に対する思いなど、多岐に渡った。木村会長が聞き上手なので、専門誌にはない対談になっている。
連載記事は、美馬和夫氏の「将棋狂の詩」が連載24回目。今回と次回は番外編で、美馬氏の娘さん2人の将棋が取り上げられている。大会に出たときのものだ。
長女さんは振り飛車穴熊をマスターし、うまく捌く。そこで相手がココセを指し、1手トン死勝ち。
次女さんは、相手の飛車打ちの王手に玉を躱す。相手は頭金を打ち、次女さん投了。ところがこれが不思議な局面で、相手玉にも王手がかかっている。すなわち、次女さんが玉を躱したとき、玉の下にいた香の利きが通り、相手玉に王手がかかっていたのだ。相手はそれに気づかず、王手をかけてしまったというわけだ。
次女さん、自分が勝っていたのに、投了を告げてしまった……。
ここで「続く」となっているのがニクイ。次号が楽しみである。
ひとつ気になったことを記しておく。ある人の投稿に「将棋竜王戦」とあった。囲碁に竜王戦はないので、ここはふつうに「竜王戦」でいいと思う。これは編集時にカットしたら、作者の意に反してしまうのだろうか。よく分からない。
今号は60頁。いかにも薄く、自分が投稿していたらキリのいい64頁(4折ピッタリ)になっていたと思うと、我が怠惰がうらめしくなる。
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「将棋ペン倶楽部」掲載タイトル一覧・2023年版

2023-12-25 00:18:07 | 将棋ペンクラブ
「将棋ペン倶楽部」に掲載されたタイトルをまとめておこう。前回のアップが2021年2月16日だったから、2年10ヶ月ぶりの更新である。

・「青春の大阪」(会報37号・2002年春号)
・「運命の端歩」(会報39号・2003年春号)
・「旅先での将棋」(会報41号・2004年春号)
・「『まった』の是非」(会報43号・2005年春号)
・「将棋のご縁 関東交流会レポート」(通信25号・2005年夏号)
・「『共感の法則』とその周辺」(会報45号・2006年春号)
・「『LPSA』の未来はバラ色」(通信29号・2007年夏号)
・「文化祭1982」(会報48号・2007年秋号)
・「真部一男九段との思い出」(会報49号・2008年春号)
・「勇者の涙と己の恥」(通信31号・2008年夏号)
・「船戸陽子女流二段の決心」(会報50号・2008年秋号)
・「金曜日の楽しみ」(会報51号・2009年春号)
・「聖夜前日のドラマ」(会報52号・2009年秋号)
・「手つきについて」(通信34号・2009年冬号)
・「第六回将棋寄席」(会報53号・2010年春号)
・「奇跡の光景」(会報54号・2010年秋号)
・「将棋の文庫本」(通信36号・2010年冬号)
・「天童の美女」(会報55号・2011年春号)
・「忘却の角」(会報56号・2011年秋号)
・「忘却の角<完結編>」(会報57号・2012年春号)
・「聖夜の将棋寄席」(会報59号・2013年春号)
・「天狗の鼻を折られた日」(会報60号・2013年秋号)
・「女流棋士と駒落ちの話」(会報63号・2015年春号)
・「米長哲学の真意」(会報65号・2016年春号)
・「元日の観戦記2017」(会報67号・2017年春号)
・「将ペン駒落ち道場 天使か、鬼か」(会報68号・2017年秋号)
・「15歳の将棋」(通信51号・2018年夏号)
・「新春CI寄席」(会報73号・2020年春号)
・「ライバルとの戦いでの連敗記録」(通信56号・2020年冬号)
・「プロ棋戦での詰め上がり」(会報75号・2021年春号)
・「銀の妙手」(通信57号・2021年夏号)
・「投了図で双方持駒なしはあるか」(会報76号・2021年秋号)
・「美馬和夫祝勝会レポート」(会報78号・2022年秋号)
・「第35回将棋ペンクラブ大賞贈呈式レポート」(通信62号・2023年冬号)

前回より5本増えて、34本になった。2021年春号から秋号まで連続掲載。その前の2020年冬号を合わせると、怒濤の4号連続掲載である。
「プロ棋戦での詰め上がり」は、プロの実戦で詰み上がりまで指してしまった局面を載せた。プロでそこまで指すことは滅多にないが、思わぬ見落としや、投げるに投げられない悔しさなどが相まって、稀に出現する。
掲載した局面は雑誌に掲載されたものを、私の記憶を頼りに編集した。プロが探せばもっとあると思う。
「銀の妙手」は、名棋士の銀の妙手を載せた。升田幸三九段の「△3五銀」、中原誠名人の「▲5七銀」、羽生善治五段の「▲5二銀」、藤井聡太七段の「△6二銀」などである。銀はフットワークがいいので、妙手が出やすいのかもしれない。
「投了図で双方持駒なしはあるか」は、表題通り、投了の局面で双方に持駒がない場合を調べた。
結論から言うと、極端に早投げした場合を除き、そのケースはなかった。でもそこはそれ、これは……という局面も載せている。
「ライバルとの戦いでの連敗記録」も含め、この4本は我ながら面白い。よく書き切ったと思う。
「美馬和夫祝勝会レポート」は、第29回シニア名人戦東地区大会で優勝した、美馬和夫氏の祝勝会の模様を書いている(発起人:将棋ペンクラブ)。
…と、こう書けば威勢がいいが、実際は美馬氏が東西決戦で負けている。それには目をつぶり、「祝勝会」と銘打つところが、将棋ペンクラブ流である。
当日、美馬氏による東西決戦の自戦解説は爆笑モノだった。
そして今号の「第35回将棋ペンクラブ大賞贈呈式レポート」である。実はこの冊子を居間にほっぽっといたら、オヤジが「お前、文章がうまいじゃないか」と言った。表紙に私の名前を見つけ、読んだようだ。
オヤジが拙文を読んだのは初めて。オヤジは、同誌に33回も投稿が掲載されたことは知らない。もちろん、私がブログを15年近く書き続けていることも知らない。それでいいと思う。
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「将棋ペン倶楽部 通信62号」

2023-12-21 23:28:15 | 将棋ペンクラブ
「将棋ペン倶楽部 通信62号」が発行された。全52頁。
巻頭記事は「第35回将棋ペンクラブ大賞贈呈式レポート」で、不肖私が書いている。当ブログでは10月9日~11日に、同記事「B面」を上げている。これは私的な要素が満載だったので、通信号ではそれを極力排除し、客観的エピソードを加えた。これで「A面」になった。
じゃあそのぶん面白くなっているかといえば、さにあらず。やはり文章は、多少遊びがあったほうが面白いのだ。本文、とくに瑕疵はないと思うが、真面目すぎて面白くない。
ちなみにこうしたレポートを書く際、私は登場人物を多くするようにしている。そのほうが賑やかさが出ると思うからだ。同じ考えの人がいたらうれしいのだが……。
同レポートでは、バトルロイヤル風間氏も4コママンガで参加している。受賞者5名がそれぞれ主役になっているものだ。バトル氏のマンガに載るとは光栄なこと。これもペンクラブ大賞受賞の特典といえようか。
今号の目玉は、詰将棋作家・若島正氏のインタビューである。「詰将棋作家」と一括りにするにはあまりにも多彩な才能の持ち主で、とくに詰将棋創作にかけては、大大大天才だと思う。
本文に「詰将棋は頭を使わないのですぐにできちゃう」の一文が出てくるが、凡才の私は唸るのみである。宇崎竜童は「天から音符が降りてくる」と言ったし、手塚治虫は「マンガのネタは売るほどある」と言った。若島氏も然りで、新題が泉のごとく、次から次へと湧いてくるのであろう。
若島氏の才能は、もっともっともっと評価されていい。
美馬和夫氏の「将棋狂の詩」は、湯川博士氏との飛車香落ち対局。美馬氏は湯川氏と対局をしたのは初めてらしい。ちょっと意外な気もするが、私は湯川氏が将棋を指しているのを見たことがないので、頷けるところもある。
両者の対局は熱戦になったのだが、結果は読んでのお楽しみである。
そのほか、新人氏の投稿も2編。会報は書き手が限られちゃってきているので、新たな書き手は歓迎である。
そうそう、原稿の送り先がどこに掲載されているのか分からず、毎回探すのに苦労していたのだが、今回通信号の末尾に、送り先の掲載頁が記してあった。このさりげない親切がうれしい。
今号も面白い一冊だった。
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第35回将棋ペンクラブ大賞贈呈式に行く(B面・後編)

2023-10-11 15:20:23 | 将棋ペンクラブ
別室では、バトルロイヤル風間氏と渡部愛女流三段が仕事中。渡部女流三段は3面指しでもちろん埋まっているが、バトル氏は手持無沙汰だ。そこで先ほどの女性に入ってもらった。
聞くと、その女性――Fさんは、将棋アイドルをやっているという。そういえばFさんと同じ苗字の女性会員がいたが、血縁関係はないらしい。傍らにいたIn氏によると、Fさんはこの筋でかなり有名だそうである。まだまだ私の知らない将棋の世界があるのだ。
バトル氏、Fさんを目から描き始める。その目がそっくりで、ここが決まれば、あとはどうにでもなる。かくして見事な似顔絵が完成した。バトル氏、本当に、知られざる?天才である。
Akuさんがいたので、挨拶する。今年は社団戦が3回行われたが、私が参加するとAkuさんが不参加、Akuさんが参加したときは私が不参加で、お会いするのは、昨年の社団戦以来ということになる。
10月22日の社団戦最終日は頑張りましょう、となった。
私は上野裕和六段のご尊父と話をする。ご尊父は自転車の事故でけっこうなケガを負ったのだが、奇跡的に全快したという。聞くと、手術後のリハビリがよかったのだという。手術ももちろん大事だが、リハビリもより重要らしい。その的確なアドバイスをしてくれたお医者さんが、名医だったということだ。
ところで、先ほどから湯川博士氏が私の近辺をうろうろしていたのだが、ご尊父との話が一段落したところで、話しかけられた。
「今回の贈呈式のレポートを書いてもらいたい」
そう切り出されて面食らったが、7月の金婚寄席の例もあり、一概には信用できない。「あんたさっきメモ取ってたじゃない。大丈夫だよ、Wasさんからも大沢さんに書いてもらえって、推薦受けてるから」
うーむ、私がメモを取っていたのは、あくまでも自分のブログ用で、レポートを書くなら、それなりの取材はしなければならなかった。
ただ、私はOKした。となれば、ブログに書く内容はおのずと削られる。ここでネタを出し切ったら、会報への投稿の価値がなくなってしまうからだ。よって、裏話を主としたブログ記事をB面、真面目な会報記事をA面とするしかない。
しばらくすると、抽選会が始まった。参加者はたいていの賞品がもらえるが、先に当たるほど、目当ての賞品が選べる。
近くにいたOsa氏の番号は「1」。いの一番に受付を済ませたのだ。Osa氏といえば、だいぶ前の関東交流会で、室田伊緒女流二段の色紙を巡って、じゃんけんで取り合ったことがある。結果は私が負けて、お宝をゲットし損ねたのだが、いまもOsa氏は高い壁である。
「1番!」
お、Osa氏が呼ばれた。くっそ、またも……と悔しがっていると、「17番!」。なんと、私もすぐ呼ばれた。
前方に行くと、棋書と扇子があった。え? これだけ? と思いきや、右手(正面)に、多くの直筆色紙があった。
Osa氏は渡部女流三段の「将棋ペンクラブ」という揮毫をゲットし、ご満悦である。チッ、またいい色紙を持ってかれた、と思いきや、左端に、渡部女流三段の「磨斧作針(まふさくしん)」があり、これをいただいた。よっしゃ、この色紙だけで、参加費の価値がある。私は相変わらず、将棋イベントでのクジ運がいい。だから私生活はからっきしダメなのだが。
三上氏がいたので、色紙を自慢する。やはり会食があるといいですね、という話をし、でも開演時間が2時間は短すぎますね、という話になった。乾杯を終えて4分の1が消化されちゃうのはまずい。せめて2時間半に延長できないものか。
バトル氏のところに行くと、また空きが出たので、私を描いてもらうことにした。私がバトル氏にお願いしたのは今回が初めて。むかしバトル氏が、対局中の私を戯れに描いてくれたことがあって、そのブスットとした表情がよく似ていたが、今回はどうか。
対面で見るバトル氏は眼光が鋭くなり、「ああ、そうか。ほう……」とつぶやきつつ、サラサラと描いてくれる。画家としてモデルを見ると、ふだんとは違う発見があるのかもしれない。
私の似顔絵は、よく似ていた。感心したのは、私のハゲ頭を、ことさら強調しなかったことだ。この細かい配慮が、バトル氏の漫画人気の根底にあるのではなかろうか。
Mori氏に挨拶する。Mori氏には、将棋ペンクラブ会員のエリア分布などを教えてもらい、唸らされた。
そのMoriさんの案内で、新規会員の女性を紹介される。彼女は瀬川晶司六段の「挑戦」色紙をゲットした。
「いまの私には、この言葉がピッタリなんです」
それぞれがこの贈呈式を愉しんだようだった。
そろそろ中締めの時刻である。最後に別室に顔を出すと、出入り口のところで、大川慎太郎氏とばったり会った。
「いつも(大沢さんの)ブログを読んでいます」
社交辞令とはいえ、大川氏が拙ブログをご存じとは、恐縮である。となれば、私も「いかがわしいビデオを買う・2023」などという記事は書けないと思う。書きますけど。
渡部女流三段には、
「アッ、大沢さん、(誕生日プレゼントの)マグカップありがとうございました! 大事に使ってますぅ」
ああ、渡部女流三段にも気を遣わせてしまった。
楽しかった贈呈式も、これにて終了。来年の同会まで、大過なく過ごせればよい。
私は晴海通りまで出ると、有楽町方面行きの路線バスに飛び乗れた。きょうは最後まで運がよかった。
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第35回将棋ペンクラブ大賞贈呈式に行く(B面・中編)

2023-10-10 00:39:01 | 将棋ペンクラブ
まずは表彰式である。木村晋介会長が登壇する。木村会長、髪型が変わって、ちょっと若々しくなった。
室内後方の参加者は立っているが、私たち壁際の者は、そのまま座って拝聴する。
木村会長が、おのおのの受賞者に、文面を読み上げる。それが飄々としていて、なんだか可笑しい。
続いて、西上心太氏の選評である。西上氏は恰好をつけず、原稿を拡げて丁寧に読み上げる。これを聞くと、選考委員の四氏が喧々諤々で各賞を選出したのがよく分かる。
続いて受賞者のスピーチである。観戦記大賞の大川慎太郎氏は「第70期王座戦第4局・豊島将之VS永瀬拓矢(日本経済新聞)」で、歴代最多の3回目の受賞。将棋ペンクラブ草創期は、大賞受賞者は向こう10年間、同賞の受賞を遠慮していただく、という決まりがあった。だから単純に比較はできないが、3回受賞は素晴らしい。大川氏、今回も熱いスピーチだった。
私は自分のブログ用に、受賞者のコメントをメモする。いつだったかA氏に、「大沢さんは、将棋ペン倶楽部への投稿文より、ブログのほうが面白い。ボクはそれが面白くない」と言われたことがある。
その通りで、私は自分のブログが大事なのである。
観戦記優秀賞の加藤まどかさんは、「第80期名人戦第2局・斎藤慎太郎VS渡辺明(毎日新聞)」で受賞。元「週刊将棋」スタッフで、かつては(取材で)受賞者を撮影する側だったという。それが逆の立場になったわけで、こんなシンデレラストーリーも珍しい。加藤さんのスピーチはちょっと感動的で、私は涙腺を抑えきれなかった。
文芸部門大賞は、ぶっちぎりで橋本長道氏の受賞(「覇王の譜」(新潮社))。「サラの柔らかな香車」で同賞を受賞したのが11年前。そこから順調に作家生活が進行したと思いきや、停滞時期もあったようだ。
と、先ほどまであちら側で立っていた湯川博士氏が、私の左にすわった。なんとなく緊張してしまう。
技術部門大賞の郷田真隆九段は、「一刀流 郷田真隆矢倉勝局集」(マイナビ出版)で受賞。なぜいま矢倉なのか? という疑問は残ったが、そもそも郷田九段に矢倉本の依頼があったのは数年前だったという。今回、満を持しての発行、受賞となったのだった。
同優秀賞の上野裕和六段は、「将棋・終盤完全ガイド 速度計算編」(マイナビ出版)。上野六段といえば個性的なスピーチが代名詞で、今回も、明らかに笑いを狙っていた。ただ、あまりに狙い過ぎて、やや空回りになったのが惜しい。ここは、淡々とスピーチをしたほうが、むしろ多くの笑いが取れたのではなかろうか。
なお上野六段は、ご尊父を招いていた。ご尊父が客席側から挨拶すると、それは先ほど、湯川博士氏と談笑していた老紳士だった。
さて、いよいよ乾杯である。まずはそれぞれビールを注ぎあう。私も男性氏にビールを注いだが、加減が分からず、泡があふれてしまった。ビールさえ満足に注げないのである、私は。ひどく自己嫌悪に陥った。
音頭は所司和晴七段。氏はいつも乾杯前のスピーチが長いのでイヤな予感がはしたが、今回は適当なところで切り上げてくれた。
乾杯! 私はふだんビールは飲まないが、最初の一口は美味いと思う。
しかしここまでで30分である。贈呈式は20時30分までなので、もう4分の1が経ってしまったことになる。毎年思うのだが、もう少し会の時間が長くできないか。
バトルロイヤル風間氏と、渡部愛女流三段が紹介された。
バトル氏「これから別室で、似顔絵を描きます。誰も来てくれないと、私と愛ちゃんのふたりだけということになります」
それはまずいと、微苦笑が起こる。
渡部女流三段「将棋ペンクラブ様には、私が十代のころからお世話になっております」
それはけっこうな年月だが、いつもピュアな愛ちゃんである。
ここからしばしの談笑タイムとなるが、今回はA氏は来てないし、とくに話し相手もいねぇなぁ、と思っていたら、美馬和夫氏が近くに来てくれた。
私はかねてから聞きたかったことを聞く。
「美馬さんの連載している『将棋狂の詩』ですが、あのタイトルは、水島新司さんの『野球狂の詩』のモジリでいいんですよね?」
「そう」
「やっぱり!」
「だけどあのタイトルもねえ、『狂』の文字が入っているから、編集部には反対されたんだ」
「……」
昨今のコンプライアンスは度を越していると思う。日本はまだそれでも自由な国だが、このままエスカレートすると、日本人は何も表現できなくなってしまう。
すると、美馬氏の隣に、金子タカシ氏が来た。まさにアマ棋界のレジェンド揃い踏みで、私から見れば、その辺の棋士(失礼)よりはるかにまぶしい。重ね重ねになるが、私がこうした席にいていいのかと思う。
同じテーブルには、妙齢の女性がきて、ビールを注いでくれた。将棋ペンクラブ関東交流会でもそうだが、ここ数年で変わったことといえば、女性の参加比率と、その年齢だ。明らかに将棋とは無縁に見える若い女性が、ごく普通に参加している。
そしてその彼女が、けっこうな有名人だった。
(つづく)
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