一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

第48回将棋大賞を予想する

2021-03-31 00:15:40 | 将棋雑記
第48回将棋大賞の受賞者を予想する。
まずは今年度主要棋戦の結果を記す。

第78期名人戦 渡辺明二冠4-2豊島将之竜王
第5期叡王戦 豊島将之竜王・名人4-3永瀬拓矢叡王
第91期棋聖戦 藤井聡太七段3-1渡辺明棋聖
第61期王位戦 藤井聡太棋聖4-0木村一基王位
第68期王座戦 永瀬拓矢王座3-2久保利明九段
第33期竜王戦 豊島将之竜王4-1羽生善治九段
第70期王将戦 渡辺明王将4-2永瀬拓矢王座
第46期棋王戦 渡辺明棋王3-1糸谷哲郎八段
第28期銀河戦 藤井聡太二冠○-●糸谷哲郎八段
第41回将棋日本シリーズ 豊島将之竜王○-●永瀬拓矢王座
第14回杯将棋朝日オープン戦 藤井聡太二冠○-●三浦弘行九段
第70回NHK杯 稲葉陽八段○-●斎藤慎太郎八段
第51期新人王戦 池永天志四段2-0齋藤優希三段
対局数1位 永瀬拓矢王座 69局
勝数1位 藤井聡太二冠、永瀬拓矢王座 44勝
勝率1位 藤井聡太二冠 0.846(44勝8敗)
連勝1位 藤井聡太二冠 17連勝(継続中なので、2位・澤田真吾七段の14連勝が表彰となる)

8タイトル戦は、前半4つが奪取だったが、後半は一転して、すべて防衛となった。
さて今年度の最優秀棋士賞は、渡辺名人と藤井王位・棋聖の一騎打ちであろう。
まず渡辺名人は初の名人を含む三冠で、タイトル保持者4名の中で最多冠数である。棋聖は失ったものの初の名人を獲り、これは殊勲だ。
いっぽう藤井二冠も高校生にしてタイトル2つを獲り、さらに朝日オープンと銀河戦で優勝した。また順位戦は10戦全勝でB級1組昇級を決め、竜王戦ランキング戦でも1組昇級を決めた。記録部門はとりあえず二冠である。とくに勝率は4年連続の8割越え。まったく手がつけられない。
どちらも甲乙つけがたい活躍なのだが、藤井七段が棋聖を奪取した相手が渡辺名人だったことを重く見て、私は藤井二冠を最優秀棋士賞に推したい。
よって、優秀棋士賞は渡辺名人となる。
敢闘賞はいまさらという気もするが、豊島竜王とする。
新人賞は、よく分からないが、新人王戦で優勝した池永四段としようか。
名局賞は、名局というより奇局なのだが、叡王戦第4局を推す。この将棋、横歩取りから始まったのにゴチャゴチャした戦いになったあと、147手目の局面では中盤の入口に戻るという、奇々怪々な展開となった。コロナ禍で日程がギチギチなのに「第9局」までもつれたことも含めて、印象深いシリーズだった。
名局賞特別賞は、王位戦第1局としたい。木村王位と藤井棋聖のキビキビとした指し手が印象的。藤井棋聖のちょっと異質な寄せも参考になった。
升田幸三賞は、戦法については分からないが、名手や妙手にも贈られることがあるので、棋聖戦第2局の「△3一銀」を推したい。形に捉われない柔軟な発想に感服した。
東京将棋記者会賞は、今年度で引退する東和男八段とする。
整理すると、こうなる。

最優秀棋士賞 藤井聡太王位・棋聖
優秀棋士賞 渡辺明名人
敢闘賞 豊島将之竜王
新人賞 池永天志四段
升田幸三賞 棋聖戦第2局58手目「△3一銀」
東京将棋記者会賞 東和男八段
名局賞 叡王戦第4局 ▲豊島将之竜王・名人-△永瀬拓矢叡王
名局賞特別賞 王位戦第1局 ▲藤井聡太棋聖-△木村一基王位
(最多対局賞 永瀬拓矢王座 69局)
(最多勝利賞 藤井聡太二冠、永瀬拓矢王座 44勝)
(勝率1位賞 藤井聡太二冠 0.846(44勝8敗))
(連勝賞 澤田真吾七段 14連勝)

続いて女流棋士編。

第13期マイナビ女子オープン 西山朋佳女王3-2加藤桃子女流三段
第31期女流王位戦 里見香奈女流王位3-0加藤桃子女流三段
第2期清麗戦 里見香奈清麗3-2上田初美女流四段
第10期女流王座戦 西山朋佳女流王座3-2里見香奈女流四冠
第42期女流王将戦 西山朋佳女流王将2-1室谷由紀女流三段
第28期倉敷藤花戦 里見香奈倉敷藤花2-0中井広恵女流六段
第47期女流名人戦 里見香奈女流名人3-0加藤桃子女流三段
対局数1位 加藤桃子女流三段 43局
勝数1位 山根ことみ女流二段 31勝
勝率1位 里見香奈女流四冠 0.800(28勝7敗)
連勝1位 山根ことみ女流二段 17連勝

7大タイトル戦はすべて防衛という結果になった。
女流棋戦は西山女流三冠が選考対象外らしいので、それが今年度も継続されると、里見女流四冠が最優秀棋士賞となる。
優秀棋士賞は、3タイトル戦に登場した加藤女流三段と予想する。もし敢闘賞があれば、山根女流二段を推したいところだ。
女流名局賞は、女流王将戦第2局を推したい。これは室谷女流三段が会心の将棋で競り勝った。タイトルを奪取できなかったのは残念だが、ここで表彰してあげたい。
以上を整理すると、こうなる。

最優秀女流棋士賞 里見香奈女流四冠
女流棋士賞 加藤桃子女流三段
女流名局賞 女流王将戦第2局 ▲室谷由紀女流三段-△西山朋佳女流王将
(最多対局賞 加藤桃子女流三段 43局)

しかし西山女流三冠の名前がないのはさびしい。奨励会員も受賞の対象にしたほうがいいのではなかろうか。
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羽生九段、年度勝ち越しを決める

2021-03-30 00:08:41 | 男性棋士
2月23日の記事で、年度20勝20敗になった羽生善治九段の成績を心配したが、見事に杞憂に終わった。
整理すると、その時点で羽生九段はNHK杯で負けており、20勝21敗だった。そこから現在まで5局を戦ったが、結果は以下の通り。

2月26日 第79期A級順位戦9回戦 ○羽生九段VS●三浦弘行九段
3月2日 第62期王位戦白組リーグ1回戦 ○羽生九段VS●長谷部浩平四段
3月7日 第6期叡王戦九段戦2回戦 ○羽生九段VS●三浦弘行九段
3月11日 第62期王位戦白組リーグ2回戦 ○羽生九段VS●池永天志四段
3月24日 第62期王位戦白組リーグ3回戦 ○羽生九段VS●近藤誠也七段

王位戦リーグが3局も行われ、それを含めて5戦全勝だった。25勝21敗(.544)となり、見事勝ち越しを決めた。ただし、勝数、勝率、貯金ともワーストではあった。
通算勝率は.7019。現役生活35年余りで7割越えは、素晴らしいの一語である。
だが来年度は、通算勝率7割キープはどうだろう。
たとえば新年度から6連敗すると、通算勝率7割を切ってしまう。
ほかには、○●○●……と交互に星を続けると、10勝10敗の時点で1491勝639敗、7割ジャストとなる。
さらに、年度30勝20敗で終えても、通算勝率が.6995となる。
ちなみに単年度の7割越え最高齢記録は、1980年度に大山康晴十五世名人が58歳で達成した「41勝17敗.707」である。羽生九段はこんなぶっちぎりの成績を永年続けていたのだ。
そんな羽生九段もここ5年は年度勝率5割台だが、2021年度は、さて。
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第1期女流順位決定戦の、5回戦までの結果

2021-03-29 00:38:42 | 女流棋戦
第1期女流順位決定戦は26日までに5回戦が終了した。では、勝敗を記そう。
なお、直接対決が済み、同星の場合は、勝った女流棋士のほうを上にした。

【A組】
伊藤沙恵女流三段…5勝0敗
岩根忍女流三段…4勝1敗
千葉涼子女流四段…3勝2敗
藤井奈々女流初段、礒谷真帆女流初段、山口絵美菜女流1級…2勝3敗
高浜愛子女流2級…1勝4敗
渡辺弥生女流初段…1勝4敗

伊藤女流三段が順調に星を伸ばし5連勝。追うは1敗の岩根女流三段だが、両者は初戦で対戦を終えている。伊藤女流三段のマジックは「1」で、これはもう逃さないだろう。

【B組】
加藤圭女流初段…5勝0敗
伊奈川愛菓女流初段…4勝1敗
室谷由紀女流三段…3勝2敗
堀彩乃女流1級…3勝2敗
頼本奈菜女流初段…2勝3敗
清水市代女流七段…2勝3敗
相川春香女流初段…1勝4敗
安食総子女流初段…0勝5敗

加藤女流初段が頼本女流初段に勝ち、順調に星を伸ばした。1敗の伊奈川女流初段も勝ったが、ふたりの対局は3回戦で終わっているので、加藤女流初段は「マジック1」である。こちらもキマリだろう。

【C組】
加藤桃子女流三段…5勝0敗
甲斐智美女流五段…4勝1敗
山田久美女流四段…3勝2敗
藤田綾女流二段、宮宗紫野女流二段、中村桃子女流初段、水町みゆ女流初段…2勝3敗
上川香織女流二段…0勝5敗

甲斐女流五段と加藤女流三段の直接対決は加藤女流三段が勝ち、A級に「マジック1」。

【D組】
西山朋佳女流三冠…4勝1敗
香川愛生女流三段、武富礼衣女流初段…4勝1敗
和田あき女流初段…3勝2敗
カロリーナ・ステチェンスカ女流1級…2勝3敗
山口恵梨子女流二段…2勝3敗
長沢千和子女流四段…1勝4敗
中倉宏美女流二段…0勝5敗

西山女流三冠と武富女流初段の直接対決は西山女流三冠が制した。香川女流四段も星を伸ばし、三者が4勝で並んだ。西山女流三冠はこの2名と対局を終えており(勝ち)、西山女流三冠がマジック1になった。

【E組】
渡部愛女流三段…4勝1敗
山根ことみ女流二段…4勝1敗
野原未蘭女流1級…3勝2敗
中澤沙耶女流初段…3勝2敗
井道千尋女流二段…2勝3敗
斎田晴子女流五段…2勝3敗
本田小百合女流三段…2勝3敗
長谷川優貴女流二段…0勝5敗

渡部女流三段と山根女流二段の頂上決戦は渡部女流三段が勝ち、だいぶ有利になった。直接対決は1ゲーム近い差がある。

【F組】
上田初美女流四段、石本さくら女流二段、塚田恵梨花女流初段…4勝1敗
里見沙紀女流初段…3勝2敗
矢内理絵子女流五段、島井咲緒里女流二段…2勝3敗
石高澄恵女流二段…1勝4敗
貞升南女流二段…0勝5敗

全勝の石本女流二段と1敗の塚田女流初段が戦い、塚田女流初段が勝って追いついた。こうなると実績のある上田女流四段が有利に思うが、さて。

【G組】
里見香奈女流四冠…5勝0敗
小高佐季子女流1級…4勝1敗
竹部さゆり女流四段…3勝2敗
鈴木環那女流三段…3勝2敗
船戸陽子女流三段…2勝3敗
村田智穂女流二段…2勝3敗
脇田菜々子女流初段…1勝4敗
山口仁子梨女流2級…0勝5敗

里見女流四冠と小高女流1級の激突は里見女流四冠が勝った。これでA級に「マジック1」。

【H組】
中井広恵女流六段…5勝0敗
中村真梨花女流三段…4勝1敗
和田はな女流2級…3勝2敗
室田伊緒女流二段…3勝2敗
北村桂香女流初段、加藤結李愛女流初段…2勝3敗
飯野愛女流初段…1勝4敗
北尾まどか女流二段…0勝5敗

中井女流六段と中村女流三段が星を伸ばした。やはり最終戦の直接対決が大きな勝負になる。

高額賞金の順位戦だけに、実力者が遺憾なく実力を発揮していると思う。
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最低で最高な一日(後編)

2021-03-28 00:07:51 | LPSA麹町サロンin DIS

第6図以下の指し手。「▲6六歩△同歩▲同銀△4二角」「▲4五桂△4四銀」「▲4六歩(第7図)

ほかの3局は粛々と進行している。コロナ禍もあるのか、客はあまりしゃべらないし、渡部愛女流三段もほぼ同様だ。
第6図で目障りなのは△6五の歩だ。そこで▲6六歩と指した。渡部女流三段は素直に応じ、▲6六同銀に△4二角と穏やかに引いた。
ここでじっと▲6五歩もあったかもしれないが、私は勇躍▲4五桂。やはりこの手は指したくなるところである。△4四銀に▲4六歩と落ち着いて、バカにうまくいっていると思った。

第7図以下の指し手。△4八歩」「▲同角△8六角▲8四歩△4七歩」「▲2六角△3五歩▲3九飛△6四角」「▲5七銀△4八歩成▲同角△7三桂」(第8図)

第7図で渡部女流三段の手番だが、私は2歩得で、遊び駒もほとんどない。要するに、悪くはないのだ。プロ相手にこの展開は信じられないが、この局面、どちらを持つかと問われれば、やはり下手側を持つだろう。つまり私の見立て違いではないということだ。
ここで渡部女流三段は△4八歩。渡部女流三段は歩使いの名手で、いつも意表の手を指してくる。この手もそうで、まったく考えなかった。
私は、なんだこんな歩、とばかり取ったが、どうだったか。渡部女流三段は「不安しかない……」とつぶやき、△8六角と飛び出した。私はつられて笑ったが、現実は根元の歩を取られ、面白くなかった。そもそも△4八歩は、△4九歩成とされても脅威でない。それならほかに有効な手を考えるべきだった。
▲8四歩に△4七歩。まったく、いろいろ揺さぶってくるものだ。
私は▲2六角と覗くしかないが、手順に△3五歩と打たれてしまった。実は飛車が敵陣に利いているのが自慢だったが、そこを修復されて、つまらない局面にしてしまった。
渡部女流三段は△6四角と引いたが、ここで△7三桂はどうか。実はこれこそ私が待ち受けていた順で、それには▲7四歩のカウンターパンチがある。以下△8五桂▲7三歩成△8四飛▲6三と(参考B図)となるが、こちらも攻めを呼び込むので恐いものの、渡部女流三段も気持ち悪かろうと思った。

▲5七銀に△4八歩成の意味がよく分からなかったが、▲同角を利かせて、渡部女流三段はついに△7三桂。私は考え込んでしまった。

第8図以下の指し手。「▲3三歩△同桂」「▲同桂不成△同金上」「▲6五歩△同桂▲1五角△8八歩」(第9図)

第8図でふつうは▲7六銀であろう。以下△8四飛に▲6五歩くらいで、まだ先は長い。だが▲7六銀の後退と、△8四飛の進出の交換が屈辱である。私は前に出る手しか考えなかった。
そこでさっきから指したいのが▲7四歩である。ただ今度は△8五桂に▲7三歩成とできない。▲6五歩と打ち△8六角なら▲7三歩成があるが、何かワンクッション置いている感じである。それに△8五桂、△8六角と呼び込む形も脅威で、攻め合い負けになると思った。
私は頭から湯気が出るほど考える。渡部女流三段がこちらを見たが、何も指していないのでほかへ移った。指導者がこちらを見たら一手指す、というのが私のポリシーだが、それを破ってしまった。
では単に▲6五歩はどうか。これに△同桂なら間接的に銀取りを防げる。だが△6五同桂▲6六銀に△4六角の王手から△4五銀と桂を抜かれてしまう。
そこで、まず▲3三歩から桂交換をした。▲3三同桂不成に「王手」と言う。
「フフッ」
「1回王手かけたから、この将棋はもう満足です」
「そんなあ」
場の空気がちょっと和んだ。
初王手に△同銀なら▲4五桂のつもりだったが、渡部女流三段は△同金上。私もその取られ方がいちばんイヤだった。
そしてこれが、私の読みを狂わせた。当初▲6六銀と逃げるつもりが、▲1五角と覗いてしまったのだ。
だがこれは△5七桂成で銀桂交換の駒損になるし、第一、▲1五角が何の先手にもなっていない。
渡部女流三段は「攻め合いに出る」とつぶやき、△8八歩。

第9図以下の指し手。「▲8八同玉△8七歩」「▲同金△7五桂」「▲7六桂△6七桂成▲6四桂△5七桂成」(投了図)
まで、94手で渡部女流三段の勝ち。

この手が厳しかった。読めばよむほど悪くなるので、私は愕然とした。こんなにヒドイ局面になっていたのか!
王手で桂を取られてはいけないので、私は▲8八同玉。しかし△8七歩の王手が厳しかった。前述の通り、本当に渡部女流三段は歩の使い方がうまい。現代の女流棋士・小太刀の名手だと思う。
私は▲同金と取ったが、△7五桂が激痛である。そしてこの桂は、私が桂交換をしたから生じたものだ。つまり先の▲4五桂ハネもすべてお手伝いになってしまったわけで、ここで戦意が喪失した。
私は▲7六桂と角取りに打ったが、渡部女流三段は逃げることなく、粛々と金を取る。
▲6四桂に△5七桂成と、2枚目の桂に飛び込まれては勝負あった。
渡部女流三段が次に回ってきたときに、「負けました」と投了した。
「エエーーーッ!?」

渡部女流三段は大仰に驚いたが、すぐに納得の表情になった。
「(第8図から4手後の)▲6五歩と▲1五角がマズかった。これが敗着です」
と私。
「▲6五歩で▲7四歩がありませんでしたか?」
「ああそうですね、でも△6四角がいるから」
「そこで▲6五歩(参考C図)で」

「ああそうか、やはりそれでいいんですか。いや私も△7三桂に▲7四歩のカウンターは狙ってたんですよ、ホントに。だから早く△7三桂と跳べと念じていました。
でもこの局面は△8五桂と△8六角が迫ってるからなあ。▲7三歩成のとき△7七歩で攻め合い負けじゃないですか?」
「でも私の玉も位置が悪いし……」
やはり▲6五歩では、▲7四歩がよかったようだ。
「うーん、中盤まではよく指してたと思うんだけどなあ……」
「ええ。(第6図で)▲6六歩と位を奪回に来られて、困りました」
このあたりは、駒を動かさず口頭の感想戦である。お互いもう少し続けたいふうだったが、他者もいるので、ここで終わりとなった。

「まだ時間があるので、もう1局行きましょう」
時刻は午後4時11分である。きょうは2時間だが、さすがにもう1局は完結しない。それで、これで引き揚げることにした。
実はきょう3月18日は、私の誕生日だった。私くらいの歳になると、誕生日は最低の日である。だが渡部女流三段と将棋を指せて、最高の1日になるはずだった。
だがこんな負け方をしては、やはり最低の1日ともいえる。
いややっぱり、最高の1日と考えるべきなのだろう。帰り道では、そんなことばかりを考えていた。
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最低で最高な一日(前編)

2021-03-27 00:51:17 | LPSA麹町サロンin DIS
18日(木)はいろいろあり、LPSA麹町サロンin DISで、渡部愛女流三段に教えていただけることになった。時間は午後3時から5時まで、2時間である。いつもは「愛時間」で1時間半だが、このコロナ禍で指導対局が1コマなので、その措置になった。
JR四ッ谷駅で降り、例によって小諸そばへ行く。ここの利用も久し振りだが、二枚もりはいつもの味で、美味かった。
サロンに入ったのは2時52分。先客は3人いて、私がいちばん遅かった。しかしその中に、自由人・Tod氏の姿がない。今回の来席にあたってはTod氏がキーパーソンで、当然彼氏も出席していると思った。ちょっと寂しい。
渡部女流三段に挨拶をするが、私は慢性的な運動不足で肥満がひどく、しかも頭髪もヤバイことになっている。渡部女流三段をまともに見られなかった。
ほかの3面はすでに駒が並べられ、スタンバイOKである。なんだか私が立ち遅れた形になり、そそくさと駒を並べる。
「かなりお久しぶりですね」
と、渡部女流三段。
「そうですね。大野教室以来でしょうか」
「ああ…大野教室には行ってるんですか?」
「そうですね…ときどき行っています」
渡部女流三段に指導を仰ぐのは、大野教室ではなくこのサロンが直近だったかもしれない。
ともかく駒を並べ終え、対局開始である。四者の手合いは、私が平手、私の向かい氏が平手、左手氏が角落ち、右手氏が飛車落ちだった。
ほぼ3時に、対局開始となった。

初手からの指し手。(指し手のあとの」「は、渡部女流三段がほかの将棋に移ったことを示す)「▲7六歩△8四歩▲6八銀△3四歩▲7七銀△6二銀」「▲2六歩△4二銀▲4八銀△3二金▲7八金△4一玉」「▲5六歩△5四歩▲6九玉△7四歩」(第1図)

初手▲7六歩に渡部女流三段は△8四歩。△3四歩だったら▲2六歩△5四歩から私の居飛車、渡部女流三段のゴキゲン中飛車になった気がする。
私は矢倉を指したくなったので▲6八銀。以下、矢倉模様となった。
15手目▲6九玉に渡部女流三段はやや早めの△7四歩。昨今は「相矢倉」が死語になりつつあり、後手の急戦が定番となっている。△7四歩はその片鱗だが、私はどう応ずるか。

第1図以下の指し手。「▲2五歩△3三銀▲3六歩△8五歩」「▲5八金(第2図)

渡部女流三段は時計周りにくるくる回って指す。渡部女流三段は横顔でも美しいと分かる。
局面。昨今は矢倉でもすぐチャンバラが始まるので、私は▲2五歩と伸ばす。△3三銀には▲3六歩とし、私も急戦の味を残した。渡部女流三段も△8五歩と伸ばし、ここは考えところだ。
以前渡部女流三段との将棋でお互い二枚銀が出たことがあったが、本局もその余地が残っている。その際は、我が右金は4九にいたほうがいい。これは植山悦行七段との指導対局で教えてもらったものである。
しかしほかの指し手はどうするのだったか。いろいろ考えているうちに分からなくなり、▲5八金とした。これで急戦調は指しにくいが、もし渡部女流三段がそう来るなら、受けて立つつもりだった。

第2図以下の指し手。△5二金」「▲6六歩△4四歩▲7九角△3一角」「▲6七金右△4三金右▲6八角△9四歩」「▲7九玉△7五歩」(第3図)

渡部女流三段も△5二金と追随し、▲6六歩△4四歩となっては、何となく持久戦の雰囲気になった。
私は▲6八角。△9四歩には構わず、▲7九玉と寄った。△7五歩に、次の手は機敏だったと思う。

第3図以下の指し手。「▲4六角△9二飛▲7五歩△同角」「▲7六銀△5三角▲8五銀(第4図)

△7五歩には▲同歩△同角▲6五歩くらいが相場だろうが、私は▲4六角と覗いてみた。
これに△7三銀なら▲7五歩△同角▲7四歩△6四銀▲6五歩で下手勝ち。このとき▲2六歩型だと△3五歩▲6四歩△3六歩でつまらない。ここで早めの▲2五歩が生きた。
本譜△7五同角に▲6五歩でなく、▲7六銀と立ったのが継続手。対して△6四角なら▲同角△同歩▲7四角(参考A図)で下手優勢。よって渡部女流三段は△5三角と引いたが、私は▲8五銀とし1歩得になった。むろん銀がソッポにいったきらいはあるが、上手から見たらこの歩を掠め取られるのは不愉快だろうと思った。


第4図以下の指し手。△4五歩」「▲3七角△3五歩」「▲同歩△同角」「▲5七銀△3六歩▲5九角△8二飛」「▲8六歩△5三角」(第5図)

渡部女流三段の△4五歩~△3五歩は当然。△3五同角に▲8八玉は△3六歩▲1五角△1四歩で角が死ぬと錯覚していたが、▲2六角とぶつける手があった。ただ、▲5七銀も堂々とした手である。
△8二飛に銀の処置が難しい。ふつうに▲7六銀でも銀は死なないと思ったが、▲5九角と引かされた手を生かして、▲8六歩と支えてみた。
△5三角に私は飛車を持って▲3八飛と指そうとしたが、それは△6四角がある。以下▲3七歩△同歩成▲同角△同角成に▲同飛でも▲同桂でも、下手がめんどうである。だがそれに代わる手が分からなかった。

第5図以下の指し手。「▲6五歩△6四歩」「▲3八飛△6五歩▲3六飛△6四角」「▲3七桂△6三銀」(第6図)

私は▲6五歩と突いたが△6四歩と突き返された。これを▲同歩は△同角でお手伝いなので、私は▲3八飛。以下△6五歩▲3六飛と歩を取りあったが、△6五の位のほうが大きい。ただ私も▲3七桂と跳ねられて、ここまでは私がよく戦っていると思った。
△6三銀はじっと力を溜めた手。ここで私が指した次の手が、どうも好手だったようだ。

(つづく)
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