一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

第81期名人戦第5局・第1日目

2023-05-31 23:37:30 | 男性棋戦
第81期名人戦第5局である。ここまで渡辺明名人の1勝、藤井聡太竜王の3勝。藤井竜王は名人奪取まで、ついにあと1勝。本局、結果によっては歴史的一局になる。
対局場所は長野県上高井郡高山村「緑霞山宿 藤井荘」。この宿の名前がすでに、藤井竜王寄りである。人口6,600人の狭い村が、藤井フィーバーで大変なことになったという。
第5局は渡辺名人の先手で開始。序盤の進行を見るに、渡辺名人は角交換辞さずの構え。ところが藤井竜王は角道を止めてしまった。
これがやや不思議で、藤井竜王は角換わりの将棋は、不敗に近いイメージがある。なぜその戦型を目指さないのだろう。
しかも指し手が進んでみると、藤井竜王は雁木に組み、自身が負けた第3局に似てきた。負けた将棋でリベンジ、という意味もあるかもしれないが、相手の得意に飛び込んで勝つ、の気概があるのだろう。
先日終了した叡王戦・菅井竜也八段との相穴熊の死闘がそうだったし、羽生善治九段も、相手の得意形に飛び込むことを好んでいた。藤井竜王も、目先の1勝より、長期的財産の蓄積を視野に入れているのだろう。
もっともこの進行なら、渡辺名人も望むところ。力が入る展開である。
藤井竜王が56手目を封じて指し掛け。形勢は互角らしいが、まあそうであろう。
明日は目が離せない。
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甲斐女流五段は、民謡歌手の金沢明子に似ている

2023-05-30 22:13:47 | 似ている
きょう5月30日は、甲斐智美女流五段のお誕生日。おめでとうございます。
その甲斐女流五段は、民謡歌手の金沢明子に似ていると思う。
金沢明子は1954年10月25日、千葉県生まれの68歳。子供のころから民謡をたしなみ、数々のコンテストで優勝する。
1975年、歌手デビュー。1982年、「イエロー・サブマリン音頭」を発表。もちろんビートルズのカヴァー曲だが、民謡との組み合わせがコミカルで、自身の代表曲となる大ヒットとなった。
もうひとつ金沢明子といえば、火のついたロウソクの前で歌ってもロウソクの火が揺るがない、という特技を持つ。たぶん民謡は、発声のときに息を吐かないのだろう。これが受けて、CMでも採用された。
かように金沢明子はかなりの実力者だと思うのだが、NHK紅白歌合戦の出場は2回に留まる。実力に比して結果が反映されないのは、将棋界でもままある。
ともあれ、末永く活動を続けてほしい歌手のひとりだ。
甲斐女流五段と金沢明子は、顔の雰囲気が似ていると思う。

西山朋佳女王に甲斐女流五段が挑戦する第16期マイナビ女子オープン五番勝負は、西山女王の3連勝で幕を閉じた。
甲斐女流五段は残念だったが、引退が決まっているだけに、虚しい。
お疲れ様でした、とねぎらうのも、虚しい。
すべてが、虚しい。
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第8期叡王戦第4局再指し直し局・美しすぎる

2023-05-29 23:26:10 | 男性棋戦
第8期叡王戦第4局の再指し直し局である。2局連続千日手はもちろん珍しいが、タイトル戦では、昨年の第93期棋聖戦第1局・藤井聡太棋聖VS永瀬拓矢王座で起こった。
その将棋は結局永瀬王座が勝ったのだが、まさに「粘り倒した」という雰囲気だった。
これら2例とも、藤井叡王が絡んでいるのが興味深い。
ちなみに千日手後の対局といえば、2012年に行われた第60期王座戦第4局を思い出す。渡辺明王座に羽生善治二冠が挑んだシリーズで、深夜に千日手成立。そこから指し直しとなったのだが、私はネット観戦を続けたため寝るに寝られず、翌朝はたいへんな寝不足になったのを憶えている。
さて本局。ちょっと不利だった将棋を千日手に持ち込めて、藤井叡王に不満なし。反対に菅井竜也八段は、疲労が残ったのではなかろうか。
再び先手番になった菅井八段は、やっぱり三間飛車に振った。そしてお決まりの相穴熊になった。もう、とことんまでやってくれ、という感じである。
お互い四枚穴熊になり、どこから戦いになるのか分からなかったが、菅井八段は中飛車に振り直し、中央の歩を突いた。これには様々な応手があるが、藤井叡王はAIの予想手にない手を指した。飛車で取ったのである。
これは飛車交換ののち飛車を先着できるから先手よし、が菅井八段の読みだった。
だから実際そう指したのだが、そこで藤井叡王が中央の歩を突きだしたのが名手だった。
これに▲5八歩は気合が悪すぎるうえ、狙いの▲5二歩がなくなるので、負けても打てない。
そこで菅井八段は予定通り歩を垂らしたのだが、藤井叡王は歩を成って好調だ。
菅井八段も近い将来銀得になるのだが、双方の角を見ると、菅井八段の角は孤立して捌くのが難しいのに対し、藤井叡王の角は守りに付いている。ここで銀損してもそれほど痛くないのだ。となれば、5七にと金が残っている分、藤井叡王が有利という理屈だ。
実際、以降は藤井叡王ペースとなった。
劣勢とみた菅井八段は、1筋に手をつける。これにAIの予想手は、角で取る手だった。
いくら端を穏便に収めたいからって、角で取る手はないだろう。…と怪訝に思っていたら、藤井叡王が角で取ったので、ひっくり返った。
これは、AIだ。藤井叡王はAIだ。AIを相手にして、人間が勝てるわけない。ここで菅井八段の負けが決まったのである。
将棋は藤井叡王の勝勢となり、最後はAIの提示より早く、菅井玉を詰め上げてしまった。
菅井八段は投了したが、そのまま手順を尽くせば、歩以外余らない綺麗な詰みとなる。これもいつものことで、藤井将棋は投了図がいつも美しいのだ。
菅井八段の敗着は、どんどん遡って、中央の歩を突いたことだろうか。これを飛車で取られることを軽視した。
菅井八段に大きな期待が集まった叡王戦五番勝負だが、終わってみれば藤井叡王の3勝1敗。星の上では、藤井叡王が余裕を持って防衛した。
しかし実際は大変だった。菅井八段は毎回いいところまで行ったが、勝ち切れなかった。欲求不満が残るシリーズだったと思う。この悔しさは、またのタイトル戦で晴らしていただくしかない。
藤井叡王は相穴熊の指し方を実践して、また一回り強くなったように思えた。
もはや藤井竜王にタイトル戦で負けるイメージがまったくわかないのだが、これは棋士全員の見解ではなかろうか。まったく、大変な棋士が現れたものだ。
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第8期叡王戦第4局は、千日手2回!!

2023-05-28 20:08:27 | 男性棋戦
28日は、第8期叡王戦第4局である。ここまで藤井聡太叡王の2勝、菅井竜也八段の1勝。カド番の菅井八段は勝つしかないが、藤井叡王にも切実な問題がある。藤井叡王は31日と6月1日に名人戦第5局、6月5日から棋聖戦五番勝負を控えており、トリプルタイトル戦を回避するためにも、叡王戦は片づけておきたいのだ。
第4局は菅井八段の先手で、三間飛車。藤井叡王は早々に穴熊を放棄したが、菅井八段ははっきりしない。しかし結局美濃囲いにした。
さらに右桂を跳ねると、藤井叡王は両取りを避けて右銀を自陣に引いた。ここ、△4四歩と
受けるのが一般的だが、それは角道が止まって不満と見たのだろう。とはいえ、銀の位置がやや不自然である。
ところがそこから、菅井八段が△7五歩の歩交換を拒否して角を引き、さればと藤井叡王が飛車を寄り、そこで菅井八段が角を上がり、藤井叡王が飛車を寄り、菅井八段が角を引き、何と千日手になってしまった。
この序盤でそれはねぇだろうと思ったが、どちらも負けられない戦いではやむを得ない。
指し直し局は、後手番菅井八段がやっぱり三間飛車に振った。実に5局連続である。私はどこかでゴキゲン中飛車の将棋があるかと思っていたのだが、藤井叡王相手には通用しないと見ているのかもしれない。
藤井叡王は早めに角を上がり、今度こそ穴熊の雰囲気。果たして香を上がり、穴熊表示となった。すぐに菅井八段も呼応し、今シリーズ3度目の相穴熊となった。
お互い意地っ張りだと思うが、タイトル戦で同じ戦型を指すことはよくある。しかし藤井叡王も菅井八段も、穴熊の将棋ではないと思う……とは以前も書いたと思うが、意地がぶつかるから人間同士の戦いは面白い……の文言も以前書いたか。
将棋は藤井叡王がわずかに指し易い形勢が続く。そこで菅井八段が飛銀交換の駒損を甘受し、攻めに出た。
藤井叡王も受けずに攻める。以下華麗な攻め合いになったが、そこで藤井叡王が敵陣に銀を打つと、形勢バーが藤井叡王57%から32%に減ってしまった。しかしこの手は、立会人の森内俊之九段も予想していたから、悪い手ではないのだろう。とはいえ一手の緩手で形勢が入れ替わる。ここが将棋の厳しいところだ。
ここで菅井八段が銀を打つと、千日手コース。そうなったら事件だが、菅井八段は、当たりになった銀をスッと引いた。大山康晴十五世名人が指しそうな「かわしの受け」で、妙手。恐らく藤井叡王は、この手を軽視していたと思う。
藤井叡王はシャニムニ攻めるしかない。菅井八段が有利ではあるのだが、一手間違えれば敗勢である。
藤井叡王、角銀交換の駒損を甘受し、銀を引っ掛ける。ここで菅井八段が底歩で耐えればまだ優位を確保できたが、菅井八段は銀を埋めた。歩を打ったってこの先はまだまだ長い。持ち時間もなくなってきており、安全策を採るのはやむを得ない。
藤井叡王、銀を取って、また銀を引っ掛ける。藤井叡王にはこの順しか残されていない。その結果、本日2度目の千日手となった。
なるほど……。どちらも負けたくないと、こういう結果になるのだ。
3回目の第4局は、日を改めると思いきや、本日中に決着をつけることになった。
好きな将棋とはいえ、お疲れ様である。
(つづく)
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折田五段、フリークラス脱出!!

2023-05-27 22:47:45 | 男性棋士
いまさら、という感じだが、折田翔吾五段が10日の対局に勝ち、直近20勝10敗の成績で、フリークラス脱出が決まった。
ただ、これはちょっと意外でもあった。というのは、折田五段はそれまで、勝ったり負けたりのイメージがあったからだ。
そこで成績を見ると、直近の12局が11勝1敗だった。
ということは、その前までは9勝9敗だったわけだ。星にするとこうなる。

○●○○●●○●●○●○●○○○●●○○○○●○○○○○○○

私の知らない間に突然勝ちだしたというわけだ。
直近11勝の中には、谷川浩司十七世名人、都成竜馬七段の名前はあるものの、A級棋士はいない。
しかし折田五段自身がフリークラスだから、誰と当たっても上位棋士なわけで、そこで20勝10敗の成績を挙げたのは立派である。
後半、ある程度白星が重なったところで、「もし負けても、ここから新たに20勝10敗の目を作ればよい」という考えのもと、冷静に対局を進めることができたのではないか。ここが、タイムリミット(引退)が間近に迫ったフリークラス棋士との差だった。
ただ残念なのは、順位戦の参加が、来年の第83期からになってしまったこと。まだ第82期順位戦のリーグ表ができていないから滑り込みセーフと思いきや、これはそういう規則だそうである。
もっとも、順位戦参加を待つ楽しみを味わえる時間ができた、とも考えられる。実際、折田五段もそんなようなコメントを残した。
棋士編入試験で合格した棋士は、そこがゴールと考えがちだが、もちろんそこからスタートである。
棋士編入組でC級1組に昇級した棋士はまだいない。折田五段が第1号となるか。注目していきたい。
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