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【京都発幕間旅情】長浜城-梅花(滋賀・長浜)天正地震被災の城郭遺構から元日能登半島地震に思い馳せる

2024-03-27 20:00:52 | 旅行記
■梅花包む長浜城
 いま長浜城の梅林は紅梅がちょうど見ごろで四月初旬まで湖北の冷たい風が梅花の季節を繋いています。

 元日の能登半島地震には驚かされたものですが、もう一つ、石川県は地震リスクが比較的少ないという政府地震調査研究推進本部の評価を基に、実際には能登半島で群発地震が発生していながら、対策が後手に回っていた、という実情にも驚きました。

 滋賀県長浜城、この城郭を探訪する度に考えるのが、滋賀県の津波被害、という一件考えられないような、しかし調べてみると史実であった、という出来事です。ここは天正13年11月29日こと西暦1586年1月18日、巨大地震に見舞われているのですね。

 天正地震、という歴史地震、いまでは長浜城といえば北陸本線長浜駅の琵琶湖側に小さな、しかし存在感のある、天守閣を昭和後期に再建した事で城下町の気風を漂わせる歴史情緒の一角を形成しているのですが、かつてあった長浜城は天正地震で琵琶湖に沈んだ。

 津波が滋賀県でも、と驚いたのは確か饗庭野演習場、長浜から見れば琵琶湖の対岸の高島、ここにMV-22オスプレイかM-1128ストライカー機動砲が来た際に近江今津駅前の喫茶店でほっと一息ついていた際に、地元の方と雑談を交わした際に知ったおはなし。

 東日本大震災と伊豆大島土砂災害など災害の記憶が鮮明というよりも生々しい頃、滋賀県は災害はあっても津波だけはないから羨ましい、と話しましたところ、いやいや、津波ならあったんだよ、と豊臣秀吉の時代にあった地震の話をお教えいただきまして。

 長浜城の崩壊で、同時に琵琶湖へ大量の土砂が流れ込み対岸の今津のあたりに押し寄せたのだという。日本海から三方五湖を超えてきたわけではないのですが、山体崩壊による大波、海底の沈降隆起による津波とは構造が違うものの、事象はまさに津波という。

 島原大変肥後迷惑、という九州の津波に当てはまるものです。平成にも噴火被害を起こしました長崎県の雲仙普賢岳が、寛政4年4月1日こと西暦1792年5月21日、火山性地震により山体崩壊を起こし不知火海に流れ込んだことで佐賀県側に津波被害が及ぶ。

 能登半島地震の津波も地震発生後短時間で到達したことを精査した結果、東日本大震災の海底沈降隆起による津波発生ではなく、海底地すべりによる波浪、という構造であったことが気象庁の調査により判明していますが、あれが滋賀県でも起きていた訳だ。

 長浜城は、築港の際に港湾要塞化、何しろ当時は琵琶湖の水上交通は最速の移動手段であるとともに兵站輸送の要であり、天下の概念が京都周辺という時代であったために琵琶湖の水運の重要性が大きかった時代、港湾を軍事拠点化した城郭となっていました。

 側方流動という、能登半島地震では耐震基準を満たした建物でも地盤ごと十数m横に圧し動いてしまい破損する事例が石川県内で発生していますが、天正地震の琵琶湖津波発生構造についてもこの側方流動の構造が内陸部の被害拡大に繋がったかは研究すべきか。

 液状化現象、側方流動という単語は阪神大震災では液状化現象という、これも昭和の新潟地震で既に事象としては確認されていたものが阪神大震災で当時世界最大の貿易港であった神戸港が被災した際に再認識されたもので、地学用語さえこう短期間で変わります。

 琵琶湖は長浜城が水中に倒れこむと同時に、対岸で津波被害が及んでいる。さてさて、この事象を再確認しますと、政府地震調査研究推進本部が能登半島の地震リスクをどう評価しようとも、現実にはどこでも起こり得ることを歴史は冷徹に示しているのですね。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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