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1回観ただけでいつまでも強烈に心に残っている映画というのはある。その映画を観て以来、毎日心の何処かでこの映画のことが引っかかってしまう。
僕にとってそのような映画が今回紹介する生きる
黒澤明監督といえば痛快な娯楽時代劇のイメージが強いが、一方ではヒューマニズムと社会派の一面を見せる監督である。そんな彼のヒューマニズム映画と社会派映画を融合させて、人々の心に強く訴えかけてくる作品が生きるである。
最近の映画においてよく見受けられるのが自分の命の期限を知ってしまった時、残りの人生を如何にして過ごすのかというテーマの映画が何本か観られる。
例えばフランス映画でフランソワ・オゾン監督の僕を葬(おく)る
そしてスペイン映画においてイザベル・コイシェ監督の死ぬまでにしたい10のこと
またアメリカ映画において、ロブ・ライナー監督の最高の人生の見つけ方などがある。
やっぱり世界中において自分の死を見つめながらも生きていこうとするテーマは世界共通なのだろう。
しかし、これらの映画が製作される50年前にこのようなテーマは既に我が国において黒澤明監督が既に描いているのである
そしてこの映画の凄いところにお役所を舞台に、形式的にしか仕事をしない人間たちの姿。そしてお役所とはいったいどれだけの課や係りがあるのかを見事に描いている冒頭のシーンの見せ方は素晴らしい。
今の日本の政府もたくさんの省庁があり過ぎだと思う。大臣と呼ばれる人が多過ぎないか?またナンとか長官やナンとか委員長とかも居るし。
行政改革とか言っているけれど、天下り団体廃止も大事だけれど省庁のスリム化ももっと考えるべきだろう。
アメリカみたいな大きな国を見ても長官と呼ばれる人は日本の大臣と呼ばれる人に比べて少ないのに。
そんな現在社会にも問いかける問題を描き、はたして本当に生きるとはどういうことかを描いた生きるを紹介します
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市役所において市民課長の渡辺(志村喬)は、30年間ただ判子を押すだけの毎日。仕事の終わる時間は未だかと時計ばかり見ている
そんな市民課に数人のおばさんたちの団体が公園を作って欲しいと嘆願にやってくる。しかし、その嘆願は各課からび市長、そして助役(現在の副市長)へとたらい回しにされるだけ。
ある日、渡辺(志村)は病院に行くと胃潰瘍だと思っていたのが実は胃がんである事を知ってしまい、余命も半年ぐらいだということを知る。
渡辺(志村)は今までの人生を息子のためにと思って30年間無欠勤で過ごし、お金を貯金していたのだが息子夫婦の相談する内容を聞いて、今までの30年間の会社生活は、果たして何のためだったのかを痛感する。
その日から渡辺(志村)は会社を無断欠勤をし、今まで働いて貯めた貯金の半分を持ち出す。会社の人間たちは彼の無断欠勤に驚き、また息子夫婦も渡辺(志村)が急に会社欠勤をしだしたことに驚く
ある夜、渡辺(志村)が酒を飲んでいると、近くに自称小説家の男(伊藤雄之助)と知り合いになり、彼は自称小説家(伊藤)に自分の命があと少ししかないことを話す。
そして、渡辺(志村)は自称小説家(伊藤)に連れられてパチンコ、ダンスホールなど今までの真面目に働いてきて出来なかったことを取り返さんばかりにその夜は遊びまくる
その朝、自宅に帰ろうとする渡辺(志村)を同じ市役所の市民課で働くとよ(小田切みき)とばったり出会う。実は市役所での毎日単調な仕事に嫌気がしていたとよ(小田切)は市役所を辞めるために渡辺(志村)を待っていたのだ。会社を辞めるためには課長の渡辺(志村)の判子がいる。
そして渡辺(志村)はとよ(小田切)の常に活発な姿に好感を持ち、またとよ(小田切)もただ机に座って判子を押している渡辺(志村)の姿しか知らなかったが、意外な渡辺(志村)の一面を知って、二人は毎日遊ぶことになる。
そんな渡辺(志村)だったが、やがてとよ(小田切)も未だ若いこともあり老人と言っても良い渡辺(志村)と遊ぶことに嫌気がしてきた。
そしてとよ(小田切)が新しく働き出したおもちゃ工場にまで渡辺(志村)がやって来たことに驚くとよ(小田切)だったが、2人は会うのが最後と約束してレストランに行く。
渡辺(志村)はとよ(小田切)のいつも元気な姿を見て、そして彼女の何気ないアドバイスによって渡辺(志村)は、これからの残り少ない人生を市民のために捧げることにする。
そして渡辺(志村)の葬式の場に、助役、他の課長、そして彼の部下たち、そして渡辺(志村)の親族がいる。彼らはどうして渡辺(志村)が急に市民からの要望であった公園を作ることに一生懸命になったのか、あらゆる憶測を立て、また課を飛び越えて公園を作ることに対する渡辺(志村)の行動を批判する者も出てくるが・・・命、短し・・・、残った命の灯火を公園を作ることに見出した、生きるとは?是非映画を観てください
この映画を観るとかなり反省させられる。僕もどうやら無駄に生きているような気がする。この映画を初めて観た20年前からそのようなことを毎日考えていたのかと気付くと・・・
しかし、これからをもっと意義のある人生を送らなければ
しかし、この映画は本当に構成が素晴らしいね。冒頭近くでたらい回しを見せるシーンは黒澤明監督の怒りを感じるし、そして葬式のシーンにおいて推理劇にも影響を与えたような回想するシーンを取り入れたアイデアは本当に映画監督としての凄さをこの作品から感じる事ができる。
そして最後の最後に・・・いつも人間は愚かな生き物であることを見事に描かれ、思わず納得とさせられてしまう。
まさに名作は時代を経ても色あせない見本のような映画ですので観てください
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ディープインパクトさんの、この映画に対する思いと、私の思いは全く一致します。
凄い人ですね。黒澤正監督は。彼の全作品、どれ一つとして、凡作無し。と思います。
まだ黒澤明監督の作品を全部観ていないですが、凡作が一作も無いとは本当に凄い監督です。
特に主人公目線で描くのではなく、周囲の人間が彼をどう見ていたかで「生きる」ことの意味を問うなんて、素晴らしすぎますよ。
確かに自分で”生きるとは、こういうことだ”と叫んでも説得力が無いですからね。
それにしてもこの映画は黒澤明の映画の中でもヒューマニズムの頂点を極めた映画だと思います