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『人質』佐々木譲

2013-02-17 | books
「人質」佐々木譲 角川春樹事務所 2012年

札幌のワインバーで起こった不思議な事件。冤罪で4年も刑務所にいた男が、当時の富山県警の本部長に謝罪して欲しいと、そのバー客を監禁(軟禁)する。刃物も銃も使わずに言葉だけで。同時に起こるのは、国会議員に対する脅迫事件。違法に集めた金のことをバラされたくないなら金を払えというもの。件の本部長の娘と議員の娘が客の中にいる…

うーむ。ネタ一発勝負作品だった。

冤罪について謝って欲しいという変な要求(とりあえず変だとは思わせないのは作者の腕)と、凶器を使用しない変な監禁(使用した方が効果的なのに使わない)。変でないのは議員に対する要求だけ。この違和感をずっと持ちながら読むので、余程すごいラストじゃないと許さないぞとハードルが上がってしまったことは否めない。

確かにラストで全てが明らかになる様は巧い。しかし、ほぼ予想した通りだった。それ以上は何もないのが残念。

佐々木譲の作品は結構読んだ。「警官の血」「警官の紋章」「暴雪圏」「廃墟に乞う」「巡査の休日」「北帰行」「カウントダウン」「警官の条件」「地層捜査」


本作ほど人間ドラマとかけ離れた作品は珍しい。軽く読めるのは確かなので、人間ドラマなど求めず新幹線の中でサクッと読みたい人にオススメしたい。

(冒頭の車の盗難事件は、誰が何のために起こしたのか分からなかったけれど、読み返さなくても、ま、いいか)


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