頭の中は魑魅魍魎

いつの間にやらブックレビューばかり

少女マンガの世界『雪の断章』佐々木丸味

2015-06-30 | books
孤児だった少女、飛鳥。引き取られていった先でのいじわるに耐えられず、逃げ出す。飛鳥を救ってくれた優しい青年は祐也。彼のもとで幸せに暮らせることになった。しかし、殺人事件が起こって…

うーむ。全篇に渡って鳴り響く少女マンガの鐘。

少女の内省的な内面描写が延々と続く。

不幸→幸福→不幸→幸福 永遠に続くスパイラル。嗚呼少女マンガのど真ん中。

これが嫌かと言えば、むしろ楽しんで読んでしまった。少女マンガは少女のためだけにあるのではないということなのだろうか。

ミステリーと思いきや、ミステリーの話は全体の1割程度。それ以外は飛鳥の成長物語。

「用心深く気を配っているくせに抜けているのだ。人のちょっとした言葉にふり回されて、そのくせ動揺を隠してじくじくと考えているうちに結論づけてしまう。おまえは普段から人間は底が深くてどこに真実があるのかわからないと言っているが、実際に他人を判断する時はそうした皮相的なところがある。これはおまえ自身の矛盾だ。いくら思慮深くても、その基調となるものが一方通行的な社会通念である限りはどこまで行っても人と交わることができないし、大人になれないということだ。わかっているつもりの周囲は推測でしかないのだ。確かめたことも疑ってみたこともないだろう。あまりに自分に固着しているからだ。過信している間に新しい出来事が積み重ねられていく。しかしおまえだけが取り残されている」

という祐也の言葉がどういうわけか読んでいて、妙に気になった。そして後に残った。

雪の断章 (創元推理文庫)

今日の一曲

飛鳥の抱える怒り。怒りを歌う、Three Days Graceで"I Hate Everything About You"



では、また。
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『流(りゅう)』東山彰良

2015-06-28 | books
台湾で生まれた葉秋生。祖父は戦争のときに中国にいて共産主義者と戦っていたが戦後、台湾にやって来た。祖父、祖母、父、母、叔父と暮らす秋生。悪がきとの遊び、受験勉強。そして祖父が殺された。残忍なやり方で。やったのは誰か。一向に容疑者が浮かばない。勉強に手がつかない秋生。1970年代、戒厳令下の台湾を描く。

東山彰良という作家、初めて読む。台湾生まれで、九州の大学で中国語を教えているらしい。そんな本人の実体験が元になっているからだろうか(主人公は作者より年上だけれど)様々な出来事や描写が生々しい。

殺人事件の謎を解くというミステリー的側面もあるにはあるが、「ミステリー」というよりも「ドキュメントタッチの成長小説 feat.ミステリー」という感じ。

思わずニヤリとしてしまう表現も多い。

わたしの考えでは、女性はそのような軽率なふるまいを慎むべきである。しかし時は1980年代で、軽率なふるまいの代償は恐るべき速さで暴落していた。無料同然だった。淑女と売女の境界線は模糊になり、だれもが気軽に行ったり来たりするものだからすっかり踏みにじられ、しまいにはよくよく目を凝らしても見分けることができなくなった。

あのころ、女の子のために駆けずりまわるのは、わたしたちの誇りだった。

「大徳は閑を踰えず、小徳は出入して可なりってやつよ」
「…」
「孔子の言葉だっけ?大事なことをちゃんとしていれば、小さいことは多少踏みはずしたっていいってこと」

ルネ・ジラールという人は、人間は暴力から手を切ることはできないと説いている。わたしたちにできるのは暴力を一ヵ所に限定すること、つまり全員でひとりの人間に暴力をむけることだけなのだ、と。こうしてひとりの聖なる犠牲者が出るかわりに、世界に秩序がもたらせる。そしてジャック・ラカンという人は、わたしたちは他人を模倣し、その欲望を取り入れることでしか、わたしたち自身になりえないと説く。

本省人と外省人の対立など台湾のこともまるで自分の国のことかのように読んでしまった。ものすごく面白い。直木賞候補になったのもなるほど、うなづける。

流

今日の一曲

70年代の名曲。渡辺真知子で「ブルー」



では、また。

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店名にツッコんでください107

2015-06-26 | laugh or let me die
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『米国人一家、おいしい東京を食べ尽くす』マシュー・アムスター・バートン

2015-06-24 | books
フードライターのアメリカ人が奥さんと娘とともに中野で一か月過ごす。その間に食べたものとそれにまつわることについて書いたエッセイ。

ラーメンや豆腐、焼き鳥、うなぎなど日本で食べられるあらゆるものをためし、そしてその多くを旨いと思う。

「日本的」なものは日本人にしか受け入れられるものではないということではないらしい。

「東京の街は特にきれいでもないのに、東京にあるのはきれいなものばかりだわ」とローリーが言った。彼女は知らないだろうが、アメリカにおける日本文化研究の第一人者、サイデンステッカーもまったく同じことを言っている。「当時の東京はとうてい美しいといえる街ではなかった。しかし、そこには美しいものがたくさんある」

この居酒屋がなぜ特別だと思えるのかというと、それは少しも特別なところがないからだ。この店で飲み食いするだけのために、中野にやってくる人はいないと思う。このくらいの店だったら、近所にくらでもあるからだ。でも、お世辞にもきれいとは言えない名もない居酒屋でも、アメリカのシーフードレストランと肩を並べるくらいの料理を出すということが、東京ではふつうに起こりうる。


米国人一家、おいしい東京を食べ尽くす

何か食べ物の歌… Madonnaで"Candy Shop"



では、また。
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『森は知っている』吉田修一

2015-06-22 | books
産業スパイ会社AN通信は孤児を預かり、スパイとして育成する。18歳の鷹野もその一人。フランスの水メジャー企業の日本進出に絡んだ情報を得るべく世界中をめぐる…

「太陽は動かない」の鷹野の昔の話だと言うのだが、そっちを読んだ記憶がない。と思って自分のブログを検索したら、読んでいた。レビュー

そっちを読んでなくても楽しめる。

孤児をスパイに仕立てるという設定や、裏切り、外国のスパイとの闘いなどを青春ものっぽい筆致で軽く描く。

吉田修一史上最高傑作というわけでないけれど、青春+スパイという珍味は悪くない。

森は知っている

今日の一曲

森。Do As Infinityで「深い森」



では、また。
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『トットひとり』黒柳徹子

2015-06-19 | books
「窓ぎわのトットちゃん」も読んでない、「徹子の部屋」の熱心な視聴者でもない私。黒柳徹子にもそれほどの興味も持ってなかった。ゆえに、読もうかなどうしようかなと思ったのだけれど、向田邦子のエピソードがパラパラめくっていたら面白そうなので読むことにした。

「ザ・ベストテン」という怪物番組のプロデューサー山田修爾さんが亡くなったことをきっかけにして、番組に関わり始めた頃からの懐かしい思い出が溢れ出る。久米宏のこと、生放送の大変さなど… という第一章<私の遅れてきた青春>についてを読んだだけで、この本を読んでよかったー。裏話も面白いし、笑える話も多いのだけれど、こんな記述もある。ちょっと長い引用。

久米さんは、別の時にも「黒柳さんが泣いているから…」と言ったことがある。
ラッツ&スターがまだシャネルズといっていた頃、デビュー曲の「ランナウェイ」でランクインした。中継先から質問を受けるコーナーがあって、集まった人たちの一人が(少年だった)、
『どうして黒人のくせに、フランスの香水をつけてるんですか?』
と訊いた。私は、ほとんど絶句するくらい、ショックを受けた。シャネルズのリーダーの鈴木雅之さんが、きちんと質問に答えていたが、私の耳にはあまり届いていなかった。あの子には、それが差別の言葉になるとはわからないのだろう。周りに、平気で、そう言う発言をする大人がいるのだろう。シャネルズが歌い、次のスポットライトのコーナーが終わり、コマーシャルがあけてから、私は、誰に相談したわけでもなく、喋りだした。
「さっき、『黒人のくせに』とおっしゃいましたが、それは、あなたが、そのつもりがなくても、人を傷つけてしまう言葉なんです。皮膚の色や、国籍で、『何々のくせに』と言うのは、やめてほしいと思います。そういう高みから人を見下すような言い方は、絶対にしないで下さい。涙が出るほど、つらい思いがしました」
私がそう言うと、久米さんは「黒柳さんが泣いていますから、もうやめて下さいね」と言ってくれた。歌い終えた出演者の方々も、拍手を送って下さった。

第二章は<霞町マンションBの二>では、向田邦子の話。毎日のように彼女の家に行っていたんだそう。向田邦子のエッセイや小説、ろくに読んでなかったけれど、すごく読みたくなった <ねえ、一回どう?>は森繁久弥。会うとすぐに言う台詞。こんな素敵な爺さんになりたいものだ。<私の母さん、私の兄ちゃん>は沢村貞子と渥美清の話。<初詣>は坂本九、<泰明ちゃんが教えてくれた>は小学校のとき親友だった子の話。<そのままが、いいんです!」は、NHK東京放送劇団の専属俳優になった頃の話。<三十八歳だった>は、仕事を休んで一年間ニューヨークに勉強に行った話と森光子の話。<徹子のヘア>はあの髪型、<ある喜劇女優の死>は賀原夏子という女優、<二人の喜劇作家の親>は井上ひさしとつかこうへい、<幕が上がる時>は杉浦直樹の話。

どんどん亡くなっていってしまった親しい人たちについて回顧したもの。

それぞれのエピソードに笑ったり、目頭が熱くなったり、感心したりすることが多いのだけれど、それ以上に彼女の人柄が伝わってくる言葉がいい。人柄が温かい人の紡ぎだす言葉は温かく、そしてそんな言葉に触れていると、こちらも温かくなる。そんなことを思った。読んでよかった。

トットひとり

今日の一曲

トット。トット。トットね… やはりこれしかないでしょう。TOTOで"Africa"



では、また。
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『ムーンリバーズを忘れない』はらだみずき

2015-06-17 | books
小学生のサッカーチーム、月見野SCのコーチ、森山健吾。結婚して10年。コーチになって10年。子供はいない。メンバーは減り、チームは弱い。勤める会社でリストラがはじまる。そろそろコーチをやめようと考えている。そんな中、たまたまチームの練習を眺めている若い男がいた。サッカー経験者らしい。話を聞いたら、20年前に妻が流産した子につけようとしていた「翔太」と同じ名前だった。翔太が子供たちを教えるようになってからチームが変わってきた…

「感動」を呼ぶ「スポーツ」でがんばる「子供」たちに感動する大人というありがちな小説だと思っていた。そのありがちな図式から逸脱するものは特にない。ないのに、すごく読ませる。一気に読み耽ってしまった。

水戸黄門的な予定調和がむしろいいなと思わせてくれる。そういうのがいいと思えるほど歳をとったのかも知れないし、普遍的にこういうのはいいのかも知れない。

そう言えば、最近、花を見たり月を見たりして、ぐっとくるようになったなー。そういう年頃なのかなー。

ムーンリバーズを忘れない

今日の一曲

タイトルにもなっているし、作品内でも出てくる。映画「ティファニーで朝食を」より"Moon River"



では、また。
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『リバース』湊かなえ

2015-06-16 | books
主人公深瀬の彼女のところに手紙が届く。「深瀬和久は人殺しだ」 深瀬は考える。大学時代、友人が事故(?)で死んだのを、自分のせいだと考える者による復讐が始まったのだろうか…

評価を高くするのか、低くするのかとても悩む。

比較的、人物を描くよりストーリー先行で書いてきた(とほぼ全ての作品を読んでいるので、言ってもかまわないですよね?)作者が、今回は人物を中心に持ってきたという印象を持って読んでいた。(上から目線で言わせてもらえば、人物をよく書けるようになってきたではないか、はっはっは)

いい大学に入り、銀行に入りたかったのに入れず、徹底的に自分に自信が持てない主人公の内面がなかなかリアル。しかし「あのこと」はそんなにみんなが気にすることなのかという疑問は残る。忘れてしまえないのだろうか。

そしてラスト。

うーん。確かにビックリした。スゴイラストだった。まさかそう来るとは。でも、結局ネタ中心で終わってしまった。

このラストから何か余韻が発生して、じゃあこの後どうなるのなかーと考えるような気分はなれず、ただ「あービックリした」で終わってしまう。

人間ドラマっぽかったのに、結局ネタモノに落ち着いてしまったのは残念。ネタモノっぽかったのに、実は人間ドラマだったら、読後色々噛みしめて、一粒で何度もおいしくなるような気がしなくもない。面白かったことは否定しないので、ゆえに評価に困る。

リバース

今日の一曲

モヤモヤしたときは、Yellow Magic Orchestraで"Tong Poo"



では、また。

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『ダイオウイカは知らないでしょう』西加奈子・せきしろ

2015-06-15 | books
せきしろという人のことは知らなかった。そしてこの人は天才だと思った。

大好きな作家西加奈子とこのせきしろという人がかなり破天荒な短歌を作る。自分たちの作った短歌をゲストとともにああでもないこうでもないと語り合う本。

いやっ。これは面白かった。

例えば、「占い」というお題の対して、せきしろは

そういうわけであなたのラッキー短歌は 啄木が母ちゃん背負うやつです>と詠む。吹き出してしまった。

しかし我等が西加奈子は「卒業」というお題で、

「わたくしあなたを卒業しました」はは、入学させた覚えはないぜ>と詠む。

二人とも天才すぎる。

二人の短歌もいいのだけれど、ゲストを交えたトークの中で、せきしろという「いつも午後三時に起きて、することがない」人の口から出る言葉や西加奈子という女性からわき出るキュートさがなんともタマラナイ。

では、頼まれてもないけれど、「スパゲティ」というお題で詠んでみる。

あいつのつくるスパゲチイ やわらかすぎて ナイデンテ

ダイオウイカは知らないでしょう (文春文庫)

今日の一曲

楽曲もいいけど、PVもすごくいい。Vanessa Cartonで"A Thousand Miles"



では、また。
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実在の画家を描く『若冲』澤田瞳子

2015-06-13 | books
画家若冲の生涯を描く小説。本来は錦高倉市場の青物問屋枡源の主のはずなのに、画業にかまけて家業は弟たちに任せる若冲。妻のお三輪は自死してしまった。若冲を恨むお三輪の弟は弁蔵(のちの画家市川君圭) 若冲と親しい池大雅。他にも円山応挙や与謝蕪村、谷文晁ら様々な画家たちが登場する。
若冲のことはほんの数年前まで知らなかった。雑誌の特集だったか新聞だったかで紹介されているのを見て驚いた。色使いや題材、細密な筆致。

それから、どこだったか。仙台の美術館や京都の細見美術館で見た(ような気がする)けれど、すごくよかった(のは覚えている)

同一作者の「満つる月の如し仏師・定朝」をパラパラめくっていたときには面白そうでなかったので読まなかった。のでこっちはどうなんだろうと思ったら、すごくよかった。

土で作った仏が水の上を渡れないように、形ある物はいずれ滅び去る。目に見える存在ではなく、己自身の裡に仏を見出せという禅語を引き、大典は何やら哀しげな目をした。

目の前を登場人物が3Dで動いているかのよう。まるで映画のように。読みやすいし、絵画についても面白い。意外な収穫だった。

若冲

今日の一曲

Charles Mingusで"Original Faubus Fables"



では、また。
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店名にツッコんでください106

2015-06-11 | laugh or let me die
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『神様が降りてくる』白川道

2015-06-09 | books
50歳をすぎた作家榊は昔刑務所にいたことがある。そこで知り合ったアメリカ人受刑者フィルから頼まれたことがあったがすっかり忘れていた。榊のところに女性が訪ねてきた。大城里奈30歳。自分はフィルの娘だと言う。刑務所のフィルから亡き母に送られた手紙に含まれる暗号のようなものを解読すると榊に連絡しろと書いてある。調べていくうちに、里奈の出身である沖縄の戦後の黒い歴史に引き込まれ…

いかにも作者らしい作品。ある程度ラストは予感できてしまうけれどそれもらしい。

50代の男と30代の美女との恋愛はなかなか読ませるし、沖縄についても考えさせられることが多かった。

「おっさんの夢物語」という位置づけで間違ってないかも知れない。

傑作とまでいかなくても、悪くない作品だった。

神様が降りてくる

今日の一曲

フィルと言えば、Phil CollinsとPhilip Baileyで"Easy Lover"



では、また。
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『天使と罪の街』マイクル・コナリー

2015-06-07 | books
マイクル・コナリーのノンシリーズの主役だった某が死んだ。殺されたのではないかと調査を始めたハリー・ボッシュ。「ザ・ポエット」のFBI捜査官のレイチェル・ウォリングは「ザ・ポエット」事件の真犯人を追う。ボッシュとウォリングの捜査は交差して…

うーむ。ネタバレしないように書くと、なんのことか分からない。

要注意なのは、「ザ・ポエット」を先に読まないと、こっちではポエットの真犯人が誰だか明記されてしまっているので、順序を逆にすると面白くないということ。

これまでコナリーを読んできた人にとっては、あの人もこの人もあの事件を登場するという、丼の上に鰻とたまごとじのかつと刺身が載っている、うなかつ鉄火丼状態。もちろん美味しくいただいた。

しかし、こんな中身のないレビューに、読む人にとって何の意味があるのだろう… いやすまんです。

天使と罪の街(上) (講談社文庫)天使と罪の街(下) (講談社文庫)


今日の一曲

罪の街。AC/DCで"Sin City"



では、また。
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ノンフィクション『井田真木子著作撰集』

2015-06-05 | books
2001年に44歳で亡くなったノンフィクション作家の著作集。一度も読んだことがなかった。

80年代に一世を風靡した長与千種や神取忍らの女子プロレスラーを追った「プロレス女子伝説」がいい。女子プロレスにはあまり興味が持てないでいたけれど、正直、女子プロレスってすげえと思った。

気取っているわけでもなく、だからといって必要以上に読みやすく書いているわけでもない。読者との絶妙な距離感がいい。大宅壮一ノンフィクション賞をとったのもむべなるかな。

「心が折れる」という言葉は神取忍が言ったことをこの本で取り上げたことから広まった言葉だそうだ。

井田真木子 著作撰集

今日の一曲

闘いの曲。Triumphで"Fight The Good Fight"



では、また。

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衝撃+衝撃=『死のドレスを花婿に』ピエール・ルメートル

2015-06-03 | books
ソフィーはベビーシッター。子供が死んでしまった。自分では記憶がないけれど、自分以外に殺せる人はいないのだから、自分が殺したに違いない。逃げなければ。逃げた先でファストフード店で働くことにした。逃亡を完璧にするには名前を変えなければならない。他人の出生証明書を得るには金が必要。店長に給料の前借を頼むと、性行為を強要された。すると自分では記憶にないのに、店長の遺体が。私が殺したに違いない… 次の章で、別の男の視点での描写に変わると、全てが一変して…

うーむ。「その女アレックス」が売れたので、別の出版社で出た同一作者の昔の作品を文庫化したけれど、どうせ大したことないだろうと思っていた。しかししかし。久しぶりに大好物中の大好物をいただいた。

人はここまで悪意に満ちた存在になれるのか。

ストーリーにここまでひねりを加えられるのか。

ラストも見事。ラストについては賛否両論ではないかと思うけれど、私は大好き。タイトルの意味もラストで分かる。

映像化強く希望。

死のドレスを花婿に (文春文庫)

今日の一曲

本とは無関係。Rufus Wainwrightで"Dinner at Eight"



では、また。
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