頭の中は魑魅魍魎

いつの間にやらブックレビューばかり

『海蝶』吉川英梨

2020-10-31 | books
海上保安庁初の女性潜水士(海猿)忍海愛。期待を受けてデビュー。八丈島近くで船が転覆との連絡。氏名も船名も分からない。やっと船が発見されると、意外な展開が・・・

なかなか面白かった。父も兄もエリート潜水士、母を震災で亡くしたという背景。単純な成長物語かと思っていたら、転覆事件が実はややこしいミステリーに変わるのも読み甲斐あり。

海上自衛隊の方が、海上保安庁よりもずっと予算が与えられてるとか知らない事も沢山あった。

 

今日の一曲

作詞松本隆、作曲山下達郎。山下達郎で、「ハイティーンブギ」と「硝子の少年」 



では、また。


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『るり姉』椰月美智子

2020-10-29 | books
三人姉妹さつき、みやこ、みのりから見た、母の妹=叔母=るり姉。いつも明るくてうるさくて、色んな所に連れてってくれる。でもるり姉が病気になってしまった(さつき 夏) 看護師として大変な日々を過ごすさつきたちの母(けいこ その春) 髪を赤く染めた中学生みやこの非凡な日常(みやこ 去年の冬) るり姉の夫開人の日常(開人 去年の冬)という具合に時間を遡る連作短篇集。

いやいやいや、たまんないね。ドえらく面白かったね。

非常識な言い方を自覚しつつ言うと、女子供の読むチャラ本かと思ったら全然違った。巧みなストーリー展開と登場人物造形、滑らかな文体。素晴らしい。

るり姉は、結婚記念日が1月1日なのに、ゼロは何もないのと同じだからと10月1日に変えたり、「昭和枯れすすき」を歌いながら電気を消して廊下をトボトボ歩く「悲しみごっこ」を開発したりする天才なのである。このるり姉の言動を知るためだけでも読む価値あり。

 

今日の一曲

Haimdeで、"Man From The Magazine"



では、また。


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『闇と言う名の娘』ラグナル・ヨナソン

2020-10-27 | books
アイスランド、フルダ警部、定年間近で退職を迫られていた。彼女が退職直前に選んだ未解決事件は、ロシアからの移民の死亡事件。自殺とされていたが、怪しい点が。単独捜査を進めると・・・

重厚長大な作品の多い北欧ミステリーにしては、あっと言う間、一日で読み終わった。

事件を捜査する側がそうなるのか!と驚くのと、早く読めて、まさかの「お手軽な」ミステリーだった。 (下にネタバレ)

 
今日の一曲

久保田利伸で、「TIMEシャワーに射たれて」



※ネタバレ

知らずに殺人犯に接触してしまったフルダは、どうやら殺されてしまったようだ。

では。また。
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『タクジョ!』小野寺文宜

2020-10-25 | books
大学を出てタクシー運転手になった23歳女性。母と二人暮らし。仕事で出会う愉快な人、不愉快な人。持ち込まれた見合い。「タクジョ」の生活悲喜こもごも。

面白かった。やや淡々と描かれるからか、彼女の内面がキリリと浮き出す。朝8時から翌朝4時までの勤務だなんて知らなかった。

 
今日の一曲

少女時代 で、"MR.TAXI"


では、また。
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店名にツッコんでください248

2020-10-23 | laugh or let me die

店名にツッコんでください248

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『口福のレシピ』原田ひ香

2020-10-21 | books
祖母が理事長、母が校長を勤める料理学校の跡取りになるのが嫌で家を飛び出し、SEの仕事と時短料理の写真をネットに載せて話題になってる女性。実家との軋轢はどうなるのか。並行して、昔料理学校を経営する家に女中としてやって来た女性が、主人の意向で難しい料理に挑戦することになる・・・

美味しそうな料理が沢山登場する。特に冷や汁が美味しそうだった。インスタグラム、ツイッターなどの現代的な話題と旧仮名遣いを使うような時代。どんな関係があるのか読み進めていくと段々明らかになる。その辺とても巧い。

 

今日の一曲

The Weekndで、"Blinding Lights"



では、また。


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『移植医たち』谷村志穂

2020-10-19 | books
米国ピッツバーグ大で、臓器移植を学び、初期の日本の臓器移植之先駆けとなった医師たちの苦闘を描く。フィクションだそうだが、かなりの部分が本当にあった事ではないかと、思ってしまう。物凄く面白かった。

いつ脳死が発生するか分からず、常に待機していなければならないとか、10時間にも及ぶ手術に耐えられる気力体力が必要だったりする激務。医者なんて高い給料もらいやがってと思っていたけれど、登場する医者たちはそれだけの仕事をしていた。

他にも免疫抑制剤の開発や移植コーディネーターの活躍など読みどころ多し。

 

今日の一曲

亡くなった筒美京平作曲。岩崎宏美で「ロマンス」



では、また。


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『灯台からの響き』宮本輝

2020-10-17 | books
牧野康平、62歳、東京板橋でラーメン屋を経営するがずっと一緒にいた妻蘭子に先立たれやる気を失っていた・・・本の中からこぼれ落ちたのは30年以上前の葉書。妻あてのもので、大学生小坂が灯台巡りをしたとある。しかし妻は小坂など知らないと言っていた・・・近所に住む友達カンちゃんの突然死。灯台を見ようと旅する康平に、何が待っているのか・・・

読後放心状態に。もし輪廻転生というものが本当にあり、たまたま今は自分がニンゲンであるのだとすれば、ニンゲンで良かった、本当にそう思った。(最近物凄く嫌な事が立て続けであったけど全て霧散するほど)

全編に炸裂するは宮本輝節。基本的にニンゲンは良いものだというスタンス。嫌な奴は出て来るけれど、結局許せてしまう。我々が生きる小さな生活範囲でも、ギスギス怒れば、怒るのが当たり前の空間になるし、怒らなければ怒らなくてもいい空間になる。

言わば、読む「マインドフルネス」だったり、読む「瞑想」なのかも知れない。読後、全てが許せる気持ちになったから。

下に軽くネタバレあり。

 

今日の一曲

近藤房之助と織田哲郎で、"BOMBER GIRL"






※ネタバレ


蘭子は、出雲に住んでいたことを隠していた。当時小学生で近所に住んでいた小坂が大家から一万円札を盗んだのを言わず、蘭子が罪をかぶっていた。ラーメン屋のおばさんかと思っていたけれど、何と素晴らしい女性なのか。

では、また。


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アメリカドラマ「HOMELAND/ホームランド シーズン8」ついに完結

2020-10-15 | film, drama and TV
超弩級ドラマがついに完結した。基本的にテロとの戦いを描いている。

オフィシャルサイトからコピペすると、

エミー賞
最優秀ドラマ賞 受賞1回、ノミネート3回
最優秀脚本賞 受賞2回
最優秀主演女優賞 “クレア・デインズ (キャリー・マティソン役)” 受賞2回、ノミネート3回
最優秀主演男優賞 “ダミアン・ルイス (ニコラス・ブロディ役)” 受賞1回、ノミネート1回
助演男優賞 “マンディ・パティンキン (ソール・ベレンソン役)” ノミネート4回
助演女優賞 “モリーナ・バッカリン (ジェシカ・ブロディ役)” ノミネート1回
ゲスト男優賞 “ルパート・フレンド (ピーター・クイン役)” ノミネート1回
ゲスト男優賞 “F・マーリー・エイブラハム (ダール・アダール役)” ノミネート2回
ほか、2012年の6冠をはじめ、最優秀キャスティング賞、撮影賞、音響賞など受賞・ノミネート多数

ゴールデン・グローブ賞
最優秀ドラマ賞 受賞2回
最優秀主演女優賞 “クレア・デインズ (キャリー・マティソン役)” 受賞2回、ノミネート1回
最優秀主演男優賞 “ダミアン・ルイス (ニコラス・ブロディ役)” 受賞1回、ノミネート1回
最優秀助演男優賞 “マンディ・パティンキン (ソール・ベレンソン役)” ノミネート1回

だそうだ。現実の戦争やテロ、政治、社会情勢をこれでもかとストーリーに織り込んでおり、ロシアとかアフガニスタンとか怒らないのかと心配になるぐらい。

前回まで大統領だったキーンに代わって、副大統領ワーナーが大統領になる。CIAのソールとキャリーの働きで、タリバンのリーダーのハッカニと和平交渉が進むことになる。それをよく思わないアフガニスタンの将軍とパキスタンのスパイ・・・

下にネタバレするけれど、まさかまさかあの人がああなってしまう・・・(日本のドラマではあそこまでやらないだろうな・・・その辺アメリカのドラマはすげえな)と驚いてしまうだけではなく、〇〇イ〇・レ〇〇ダ〇を得るために、あれやこれやの大騒動。面白すぎる。最終回のラストまでどうなるか分からないスゴイドラマだった。そしてラストのラストでまた大きな展開が。こういう小説も好きだし、ドラマも映画も大好きだ。録画しておくものの、すぐには観ない。観始めると難しいのと重たいので、つい先延ばしにしてしまうのだ。しかし今シーズンは(初回は難しかったけれど)意外と分かりやすかった。観たことのない人はぜひシーズン1だけでも騙されたと思って観た方が良い。

 
 
↓解説動画


※軽くネタバレ

アフガニスタンに電撃訪問したアメリカ大統領。ヘリでアフガニスタンの大統領とアメリカの前線に向かい、戦争はもう終わったと宣言する。しかし二人の乗ったヘリが墜落し、死亡する。アフガニスタンもアメリカもタリバンが撃墜したと騒ぎ、アメリカが攻撃準備に入る。しかしキャリーは前線にいたマックス(以前からキャリーのためにIT系の仕事をしていた人)に、フライトレコーダー回収を頼む。そのフライトレコーダーには、撃墜でなく故障で墜落している証拠があった。そのレコーダーは最終的にロシアのものになり、ロシアが公表してノーベル平和賞クラスに賞賛される。ソールの長年のスパイがロシアにいた。それが誰だかロシアは知りたい。レコーダーと交換にロシアの凄腕スパイグロモフはキャリーと交渉する。結局レコーダーもスパイの名前(GRUの通訳)の名前もロシアは入手する。スパイは自殺。ラストシーンではキャリーはモスクワに。どうやらグロモフの妻になったらしい。亡命したのか。するとソールのもとに書籍が。キャリーがアメリカのスパイ活動を暴露した本を出したようだ。その奥には、ロシアの秘密情報が隠されていた。なんとキャリーはロシアに亡命したと見せかけて、アメリカのスパイをしているらしい。で終わり。この後も続けてシーズン9を観たいものだ。

では、また。
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『雨の中の涙のように』遠田潤子

2020-10-13 | books
堀尾葉介という俳優と関わりのある人を巡る連作短篇集。ネタバレになるので詳しいことは語りたくない。騙されたと思って「小説好き」なら是非読んで欲しい。

と言ってもまだ欲しがる人には少し説明。

大部屋役者が堀尾の努力に感心、嫉妬する。堀尾がテレビ番組で美味しいと言った卵焼き屋さんの悲喜こもごも。幼い時の堀尾。などなど、深い人間ドラマが繰り広げられる。

最終章は、何だよこういう終わらせかたかよとがっかりしていたら、どんでん返しがあり、やっぱり遠田潤子はええなと呟いてしまった。

 

今日の一曲

たまたま見つけた。Takuya Kurodaで、"Moody"



では、また。


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『特捜部Q アサドの祈り』ユッシ・エーズラ・オールスン

2020-10-11 | books
シリーズ8作目。特捜部Qのメンバーのアサドの過去が明らかになる。実は昔、アフガニスタンやイラクで痛い目にあっていた。以下省略。

なぜなら、長い。長すぎるので、後半読み飛ばしてしまった。

のでレビューする資格なし。(だとすると、これはレビューではないのだろうか)(ちゃんと読んで堪能して人ごめんなさい)(まあたまにはそういうこともあるさ)(いやたまにじゃなくて焼酎じゃない)(いやしょっちゅうじゃない)


 

今日の一曲

最近見つけて、うまいなーと思った。たぶん「夜もヒッパレ」でサンタナの「ブラック・マジック・ウーマン」その他を演奏する場面。モト冬樹のギターがいい。


高中正義とモト冬樹のギターの音色の違いは、ヤマハのSG2000とギブソンのレスポールの音の違いなのか、それともエフェクターの違いなのか。ワカラン。

では、また。


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店名にツッコんでください247

2020-10-09 | laugh or let me die

店名にツッコんでください247

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映画「TENET テネット」

2020-10-07 | film, drama and TV
いつだったか劇場でだいぶ前に観た映画の始まる前の予告編で、なんじゃこのアクション映画は!と思って、気になっていた。すると時間を逆行する難解な話らしい。どうしようかと思ったけれど、なかなか劇場で観る気になる映画がないので思い切って行ってみた。

クリストファー・ノーラン監督はIMAX、実写にこだわっているので、公開が延期されてもオンラインの上映は拒否したらしい。となれば、IMAXレーザーで観ようと109シネマズ川崎まで。

冒頭はオペラハウスでの襲撃事件。主人公たちは何かを探してたらしい。かと思ったら、線路横で拷問されていたり、第三次世界大戦を防ぐことがミッションだと言われたり。

ストーリーは正直3割ぐらいしか理解できなかった。時間逆行の物理的システム(エントロピーの減少とか量子力学とか)は理解できなくても問題ないけれど、誰が何をしてるのかわけわからなくなる場面がいくつかあった。いやいやたくさんあった。

しかし、映像と音声の迫力は凄い。それだけを観る価値はある。

そして、ネットで解説してくれるサイトを読んで仕組みがある程度分かった。するともう一度観たくなる。すぐに再鑑賞したくなる映画なんてなかなかないだろう。それだけでも歴史に、記憶に残る凄い映画だと思う。


↓予告編



では、また。


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『葬られた勲章』リー・チャイルド

2020-10-05 | books
一度も読んだことのないシリーズ、本作は傑作であるとのことで読んでみた。


凄腕の元軍人ジャック・リーチャーは列車内で女性が自殺するのを目撃する。すると怪しげな政府機関の者たちから、何か受け取らかなったかと訊かれる。彼女は政府機関に勤務していて、メモリースティックを持っていたらしい。しかし彼は受け取っていない。そして下院議員の名前も聞かなかったか訊かれる。過去にデルタフォースにいたことが自叙伝に書かれているが、なぜ勲章を受け取れたか詳しいことは書いていない。どうもこの件に関した情報がメモリースティックに入っているのか。さらに怪しい外国人が乱入し、凄まじいアクションが繰り広げられる。

かなり面白かった。皆が探す情報とは何か?分かった時に上手いなあとつぶやいてしまった。

また銃器に関するディテールが、好きモノには堪らない。(下に軽くネタバレあり)

 
 

今日の一曲

Vaundyで、「不可抗力」






※以下ネタバレ


情報とは、議員がデルタフォース時代にウサマ・ビン・ラディンとニコニコしながら撮った写真だった。

では、また。


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『宿無し弘文 スティーブ・ジョブズの禅僧』柳田由紀子

2020-10-03 | books
スティーブ・ジョブズが信奉したという、乙川弘文という僧侶に迫るドキュメント。

京大の大学院から、永平寺を経て、アメリカで禅堂を開く。酒を飲み、女性と関係を持つ。超リベラルで何でも受け入れ、誰に対しても同じように接する。

何というか、①こういう人になりたい ②仏教や禅について、もちっと勉強したい という気持ちになった。

全編インタビュー形式で書かれているので、ちょっと奇異な感じがしたが、これもアリなんだと思う。


 
今日の一曲

岸部さんが亡くなりました。ザ・タイガースで、「色つきの女でいてくれよ」



では、また。



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