「相田家のグッドバイ」森博嗣 幻冬舎 2012年
少し変わっていて、それでいて平凡な、そんな相田家の歴史を淡々と、ひたすら淡々と描く。父秋雄は駆け落ちして結婚し建築会社を興した。子どもを可愛がるでもなくかと言って邪険に扱うでもない。母紗江子は燃えるごみ以外のごみを出さない。ありとあらゆるものを取っておく。几帳面すぎるほどに。そんな二人に育てられた長男紀彦ははたしてどんな人間になるのだろうか。最終的には父と母を看取るまでの話…
うーむ。なんなのだろうこの小説は。何一つドラマティックなエピソードがない。全くないのにも関わらず面白いのだ。こんな小説読んだことがない。
最初は全く面白くなくて、放り投げておいた。しかし友人に面白いと薦められた。その人に「なんの話なの?」ときいたら、「うーん。わかんない」という意味不明の返事だった。でも悪くないと言うので読んでみたら、確かに何の話なのか口に出して言いにくい。
本当にあったことかどうかは別として、ドキュメントっぽい体裁、もしくは私小説っぽい。
こんな表現を読むと、作者の持つ哲学のようなものが感じられる。
保守的というわけではないけれど、自分の位置ができれば人類のばらつきの中心近くにあるように認識したい。という本能が人間にあるように思える。きっと、集団行動をする動物に備わっている感覚なのだろう。(15頁より引用)
相田家で飼っているプッチという犬が隣で工事している人たちに対して吠えた。職人が「煩いぞ、馬鹿」と叱った。それに紗江子が抗議した。その後で建築会社の社長が家に来て謝罪した。秋雄は和やかに対応した。紗江子はそれ以上は抗議しなかった。その後が、
ようするに、紗江子はあくまでも、この一件で自分は我慢をした。と認識しているのだった。客観的に見れば、彼女は我慢が出来ずに爆発してしまったわけだが、彼女にしてみれば、その爆発はプッチのための最低限の擁護でしかない。これは、ほかの事例でもまったく同じで、幾度も繰り返された。彼女は最低限の防御をまずして、そののち自分だけが我慢をすれば済むと制御する。外部からみれば、堪え性のない人に見えるのだが、彼女は自分を我慢強い人間だと評価しているのである。(83頁より引用)
うーむ。森博嗣の作品、もっと読んでみよう。
では、また。