ほとんどの落葉樹が晩秋に枯れ葉を落とすなか、ミズナラの一部には冬でも葉をつけたままのものがある。これは葉の付け根の部分が生きているからで、葉の細胞の離層というメカニズムが春まで行われないことによるようだ。ブナ科の樹木によくあることだが、このエリアではミズナラのほか稀にホオノキ(モクレン科)でもみられることがある。枯れ葉に雪がのっている姿から、改めて厳しい冬を耐え抜く樹木の力強さを感じることができる。(平太郎の沢・寿)
地勢として小沢が多いマチであることは前にもふれたが、その小さなものにもちゃんと名前が付いている。矢走りの沢や平太郎の沢、掬水の沢などとともに美しい名を持つのが「乙女の沢」。大正時代に造られた赤いレンガ積みの橋脚を持つ鉄橋には廃線後二十数年分の雑木が宿っている。「乙女の沢」の由来だが、古老の手記によると鉄橋建設当時の作業員が飯場の娘を色恋沙汰の末、殺害したことから付いたようである。春から初夏にかけてクロツグミやコサメビタキがよく鳴く薄暗い沢となる。(上駒)