室井絵里のアート散歩

徒然現代美術&感じたこと、みたもの日記

猫の誕生日

2015年03月16日 | アート他
四年前の3月11日朝、ノラが野良猫だった頃で家の中にはほとんど入ってこなかった。3/11朝ふと見たら、入ってきて押入れの天袋にいた。そのあと、どこへ行ったか不明で仕方なくベランダの窓を少しあけて出た。地震の時私は、関西に向かう新幹線の中にいた。
五日後に帰宅したけど、ノラは不明。
心配しつつも、自宅で夕食を食べていたら、いきなりノラが家に入ってきて今いる巨大子猫を含む三匹の子猫を産んだ。

家の中はてんやわんやになったが、震災後の不安はそれで消し飛んだ。

写真は今いるノラが産んでちょっと家につれてきた、ラルの多分二代前のミューと名付けた子猫。
家に入ってきたが、人間見ても吠えていた。残念ながら行方不明。
その次に生まれたトラさんは、今も生きいて野良猫だが、母親ノラが家猫に勧誘している模様。でも、別に私は家で飼う気はない。

よく野良猫とか地域猫に餌をやるとか、これは別に義務にする必要はないと思う。猫好きの人が自分の家で飼っている猫以外の去勢とか避妊とかをするのも私は反対だ。
基本的に人間が他の生物の生殺与奪に関わるのはものすごく傲慢なことではないかと思うからだ。
子供の頃から飼ったり、見たり、合ったりした猫とかが行方不明になったり、
事故にあったり、死んだりしたらそりゃ悲しくずっと記憶に残る。
しかし、だからといって猫が事故にあったり死んだりしてかわいそうとは思うが、それだから不幸な子猫を減らそうというのは少しおかしい気もする。
生命あるものはその長短関わらずいずれなくなるものだ。
だから、出会いがあり別れがある。

そんな中で、たまたま、ご縁があった猫達には今は家で飼う場合避妊とか去勢とかしているが、ごめんねと思う。
かわいそうだが、いくら猫好きでも全ての猫を私が飼うことは事実上不可能なので、ノラの避妊をした時に知らなかったが5匹の子猫妊娠中だったのが生まれていたら、いくらなんでも猫アレルギーの私には(マンションの規約では二匹だし)飼えない。
申し訳ないが、猫は猫で勝手に生きているし生きていると思っている。
なんか長いな。今日はラルとトトとミミの誕生日だ。
4歳おめでとう。
あの震災がなければ、ノラは家猫になる決心しなかったかもなんで、今いなかったかもしれない。
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作間敏宏展・治癒 +YGALLERY大阪

2015年03月13日 | アート他

三月七日に無事スタートした大阪の+ YGALLERY の作間敏宏展「治癒」の会場の掲示テキストです。
展覧会28日土曜まで。

大阪市中央区南新町1-3-11 高分子工学第一ビル3階
+ Y GALLERY

(京都で開催中のパラソフィアにおでかけになれば、
京阪電車で天満橋下車・天満橋から徒歩10分くらい。谷町四丁目から5分。)


家・水・栖・死・生     インディペンデントキュレータ 室井絵里

作品を見たときに、他の何かと強烈につながるとか異なる時空に引かれるような気がすることがあるのだが、作間敏宏の「治癒」(2014巷房2)を見たときもそうだった。その時、「ゆく川の流れは絶えずしてしかももとの水にはあらず。よどみに浮かぶうたかたはかつ消え、かつ結びて、世の中にある人と栖(すみか)と、またかくのごとし」と『方丈記』のこの出だしの一節が頭の中に響いた。
この作品はインターネット上などで集めた家の画像を100枚合成処理して作られた「家」がイメージの中心となっている。それは、どこにでもある一般的な家にも見えるのだがじっと見ていると、現実にはこんな家はあり得ないような気もする、揺らぎや浮遊感に包まれた空間である。つまり、それが明らかに写真であるのだが誰かの思い出や、作間自身が撮影したものでもないので作家の自我やセンスとも切り離されたところに浮かび上がってくる、いわば純粋イメージとしての「家」そのものになっているということであろう。

この空間にいながら、思い出された『方丈記』の一文がどう結末するのか、鴨長明がなぜそれを書いたのか、いったいなぜ世の中にある人と栖とはじめに語り始めているのか。10代の頃もった淡い疑問が、何十年もたって作間の作品を見て思い出され、改めて全文を読んでみた。
鴨長明は祖母の残した屋敷を京都に起きた震災などで失い、生きる中で方丈にたどりついたようである。大震災などがあると人は亡くなるし、家も無くなるのだけれど、人間というのは三年くらいたったら忘れて、またもとのような生活に戻っていこうとするというのを見て無常を感じているふうなのだ。しかし、彼は元に戻るのではなく「方丈」という空間に向かい『方丈記』という表現や「無常感」を得ていくわけだ。震災や災害を受け生き延びるというきっかけはあったかもしれないが、きっかけがあってもそれをどう受け取るかは人様々である。直接的に表現する人もいるだろうし、自らへの表現へと昇華させる場合もあるだろう。しかし、きっかけはなくてもあっても、だから私たち表現にかかわるものは何かを忘れずに、そして未来へ向かう術を探り、見えないその術をあらわそうとしなければいけないのかもしれない。
表現として見えてきた作品が、現象と本来的に繋がっているということはそこに見えた「表現」が優れて先鋭的であると私は思うのだが、普遍的なものを目指すあるいは、リアリティを感じるなどは簡単に現れたり、見えたりすることではない。作間の作品に現れた「死への召喚」というイメージも、それを私たちがそこに見ることはできても、簡単に触れることができない類のものだ。

今年は阪神淡路大震災から20年である。関西出身者にとっては、その場にいなくても20年前の大きな喪失感を伴う事件であり、それが映像で伝えられる時の妙な高揚感や歪みは忘れられない。同じく四年前の3.11の後に作間がこの作品を作ったのも、宮城出身の彼だからこそ故郷を離れて体感した経験をこの作品にこめたのではないかと、これまでの作間の作品にモティーフとして作られていたビニールハウスやそこにいる魂たちが、流されたかのような錯覚を私も3.11の映像を見ながら思ったと、その時会場で短く話した記憶がある。無数の「家」の画像を重ねる行為そのものが「鎮魂」という言葉がふさわしいかもしれない、それをとおしてまさしく「治癒」されていく行為でもあったのかと改めて感じ、それが普遍的イメージの家や作品へとつながったと思う。

飯沢耕太郎(写真評論家)は作間の写真の特異性を「つまり、作間が強い関心を抱き続けているのは、一般的な「写真家」のように、自分の美意識や世界観を表明するための媒体として写真を使用することではなく、写真として流通しているイメージを合成によって「平均化する」と、そこにどんな画像が出現してくるのかということなのだ。」と述べ、「そのふわふわした宙を漂うような画像からは、やはり東日本大震災の死者の記憶と共振する゛死゛のイメージが滲み出ているように感じる。同時にそれは日本人の「家」の原型としての視覚像をあらわしている。」とも、この作品のカタログの中で述べているが、作間さんと大阪のラ・フェニーチェで展覧会をした時は阪神淡路から四年後、今回3.11前後に同じく四年後に+ Y GALLERYで個展をお願いしたことの、符号をたどるように意味を考えていくうちに、結果として私の中でこの作品に行き着いた。それは、おそらく作間のこの作品を見たときに強烈に何かに引かれた体験を私じしんが常に忘れないでいたいからだと思う。本来的には「死」を見ないで「生」を語ることができないはずだと思うからだ。

2015/03/03


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作間敏宏「治癒」今週末からです

2015年03月04日 | アート他
作間 敏宏 展 「治癒」
3月7日(土)~28日(土)(日休)

初日のみ午後五時から
オープニングトークあり

+ Y GALLERY
大阪市中央区南新町1-3-11 高分子工学ビル301
www.plus-y-gallery.com
06-4792-0011

関西では17年ぶりとなる作間敏宏展です。
どうぞおでかけください。


今回の「治癒」は家の画像100枚を積み重ねて合成処理された画像と、三次元に飛び出したかのような立体や光で構成されたインスタレーション(2014)をメインに、白いレース状の皮膜に覆われた立体(2013)と東京で別の場所で発表された作品で構成していただいた。
 作間の一連の治癒と題された作品は生と死を強く想起させる。私たちが日々の積み重ねで今という点を生きているように、制作方法も無数の今が積み重ねられ場を創出するというもので、この作品の家も、温かく懐かしい家であり、喪失した家、見知らぬ廃墟にもみえる。大阪で時空を超えて作品を重ねてみてみえるものは、静かな高揚感に満ちたもののはずだ。(キュレーター・室井絵里)



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シネフィル東京

2015年03月02日 | アート他
詩人園田恵子さん主催のシネフィル東京というWEPマガジンにに新しくコラムをはじめました。

コラム第一回目は、恵比寿映像祭について。
こちらから。
http://cinefil.tokyo/_ct/16796560


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