Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

結婚手形&なりゆき泥棒

2015年02月22日 | 音楽
 新国立劇場オペラ研修所の公演は、時々(本公演では観られないような)意欲的な演目が取り上げられるので、楽しみにしている。今回はロッシーニの「結婚手形」と「なりゆき泥棒」という一幕物の2本立てだった。ロッシーニなので一抹の危惧はあったが、これらの演目、見逃す手はない。

 「結婚手形」は、なんとも重かった。正直いって閉口した。音を拾ってアンサンブルの基礎固めをしているような演奏だった。ロッシーニらしさが出てこない。あの浮き浮きした気分が出てこない。オペラ研修所の公演では、将来有望な歌手を見つけることも楽しみの一つだが、これでは見極めがつかなかった。

 ぐったり疲れた。休憩のときには、もう帰ろうかと思った。でも、まあ仕方がない、頑張るかと――。

 ところが「なりゆき泥棒」になったら、俄然、生気を帯びてきた。ロッシーニ・クレッシェンドにも勢いがあった。ロッシーニのあの壮麗な音楽が、文句なく表現された。前半での疲れを忘れて、音楽の流れに乗ることができた。

 一幕物とはいえ2本準備するのは、やはり無理があったのだろうか。これならたとえ公演としては短くなっても、1本に絞ったほうがよかったのではないかと思った。でも、それは観客の勝手な思いだろう。できるだけ多くの歌手に経験を積ませるためには、2本必要だったのだろう。

 ともかく、結果として、「なりゆき泥棒」は大いに楽しませてもらった。これは記憶に残ると思う。今までオペラ研修所の公演では、プーランクの「カルメル会修道女の対話」(2009年3月)とブリテンの「アルバート・ヘリング」(2007年3月)にもっとも感銘を受けたのだが、今回の「なりゆき泥棒」はわたしの中でそれらに次ぐ位置を占めるだろう。

 指揮は河原忠之。前述のように「なりゆき泥棒」で生彩のある音楽の流れを生み出した。オーケストラは東京シティ・フィル。よくまとまったアンサンブルだった。

 東京シティ・フィル!!翌日は定期演奏会だ(マチネー公演)。しかも夜にはまたオペラ研修所公演がある。ハードスケジュールだ。プロとはタフなものだ。その定期演奏会にも行ったが、ジョゼフ・ウォルフの指揮で、モーツァルトの交響曲「リンツ」、エルガーの「弦楽セレナード」そして「エニグマ変奏曲」を演奏した。会場は湧いた。わたしはとくにメランコリーを湛えた「弦楽セレナード」の演奏が気に入った。
(2015.2.20.新国立劇場中劇場)

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