Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

国立西洋美術館「キュビスム展」

2023年12月28日 | 美術
 国立西洋美術館で「キュビスム展」が開催中だ。20世紀初頭にパリでピカソとブラックが始めたキュビスムが、あっという間に多くの画家たちに広がり、熱狂の瞬間を迎えたその時に第一次世界大戦が勃発し、キュビスムは重大な転機に立たされる。その経過が生々しく感じ取れる展覧会だ。

 メインビジュアル(↑)の作品はロベール・ドロネーの「パリ市」だ。中央の3人の裸体の女性は西洋絵画の伝統的な図像の三美神だ。右側にはエッフェル塔の断片が見える。左側に見える川はセーヌ川だ。現代のパリの街並みに三美神の幻影を見る。細かいモザイクのような画面は、プリズムを通したように見える。それが三美神の幻想性を高める。絵具は薄塗りで透明感がある。実物を見ると驚くが、サイズは縦267㎝×横406㎝と大きい。1912年のサロン・デ・ザンデパンダンに展示された作品だ。

 本展では「パリ市」の右側にフェルナン・レジェの「婚礼」が展示され、左側にはアルベール・グレーズの「収穫物の脱穀」が展示されている。「婚礼」は縦257㎝×横206㎝。「収穫物の脱穀」は縦269㎝×横353㎝。3作品はほぼ同じ大きさだ。3作品は三連画のようにも見え、また三美神のようにも見える。

 「婚礼」の画像は本展のHP(↓)に載っている。画像では分かりにくいと思うが、画面の中央に小さな2つの顔がある。新郎と新婦だ。その周囲に多数の顔と家並みが見える。婚礼を祝う人々だ。それらが上昇気流に乗って渦巻いているように見える。レジェ特有の円筒形の組み合わせによる画面構成の前の作品だ。色彩は灰色を基調とし、そこに青、緑、ピンクが浮かぶ。本作品も1912年のサロン・デ・ザンデパンダンに展示された。

 上記の「パリ市」と「婚礼」はパリのポンピドゥーセンターの所蔵作品だが、「収穫物の脱穀」は国立西洋美術館の所蔵作品だ。画像は同館のHP(↓)に載っている。農村で収穫物の脱穀をする人々を描く。自然主義的な描き方ではなく、キュビスム的に構成されている。村人たちの素朴な生活が伝わる。色彩は焦げ茶色を基調にして、濃緑色と赤が点在する渋いトーンだ。本作品はキュビスムの画家たちが結集した1912年のセクション・ドール展に展示された。

 国立西洋美術館が「収穫物の脱穀」を購入したのは2005年だ。わたしが同館の常設展で本作品を初めて見たときの驚きは忘れもしない。すごい作品が入ったと思った。だが、すごさを受け止めきれなかったのも事実だ。それ以来、本作品のことをもっと知りたいと思っていた。本展でキュビスムの歴史の中に位置付けられた。見方を変えれば、本展は本作品があったからこそ実現できたのかもしれない。
(2023.11.29.国立西洋美術館)

(※)本展のHP

(※)「収穫物の脱穀」の画像

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