Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

ザルツブルク(5):ボルトン/モーツァルテウム管

2015年08月18日 | 音楽
 モーツァルト・マチネーでアイボー・ボルトン指揮モーツァルテウム管弦楽団の演奏会。1曲目は12の管楽器とコントラバスのための「グラン・パルティータ」。昔から大好きな曲だが、実演で聴いたのは、いつ、だれの演奏だったか。どこかのオーケストラの定期だったような気もするが、はっきりしない。ともかくひじょうに楽しみだった。

 耳に馴染んだこの曲が、CD(というよりもレコード)で培ったイメージどおりに展開した。凄みのある美しさとか、ピリオド楽器の新鮮さとか、そんなものとは無縁の演奏。穏やかな日常。これも悪くない。満足して聴いた。

 といっても、ホルン4本はナチュラル・ホルンだった。第3楽章アダージョの冒頭で澄んだハーモニーを奏でた。耳が洗われる想いだった。

 1番オーボエが主導的な曲だが、個々の奏者としては1番クラリネット奏者に感心した。大きなフレージングを持っている。また、アンサンブルのセンスもいい。時々絶妙な演奏を聴かせていた。

 最後の第7楽章は、テンポが速く、勢い込んだ演奏。それまでのおっとりした演奏から一転して、輝かしくこの曲を締めくくった。ボルトンの設計だ。満場の拍手。演奏者たちの笑顔がいい。

 休憩時にはテラスに出てみた。モーツァルトの魔笛小屋が移築されている。元はウィーンにあった小さな木造の小屋だ。「魔笛」が初演されたアウフ・デア・ヴィーデン劇場の近くにあった小屋。モーツァルトはこの小屋でシカネーダーや歌手たちと会っていた。その小屋がよく残ったものだ。

 後半はカウンターテナーのべジュン・メータの独唱で、モーツァルトのコンサート・アリアKV255と、グルックの歌劇「エツィオ」からエツィオのアリア2曲。メータの声は一度実演で聴いてみたかった。CDで聴いていた妖しい声よりも、少し暗く太い声になっていた。今の声ならエツィオはぴったりだ。

 最後はモーツァルトの交響曲第40番。手馴れたアンサンブルだ。クラリネットが入る版での演奏。「グラン・パルティータ」で注目したクラリネット奏者が第4楽章で妙技を聴かせた。それにしてもこの曲の第1楽章は独創的だと思った。水の流れのように流動的でありながら、なにも変化しない音楽。深い水底のような音楽。攻撃性がまったくない。シュトルム・ウント・ドランクの一言では片付かない音楽。今さらながら驚嘆して聴き入った。
(2015.8.9.モーツァルテウム大ホール)

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