サンパウロの庶民的生活

わたしの半径1メートル以内で考えたことや感じたことをつづってみようと思います。

生きられていることが奇跡

2013-06-30 06:34:38 | Weblog

 

 ブラジルの日々に衝撃というかショッキングなことがあるのも驚きだけど、それ以上に最大級にショッキングなことは、自分が育っていろんなことを知って感じてきていたはずと思い込んでいた日本のことを全く知らなかった事を知った時である。

 その中でも生死にかかわる話、ましてやその体験者を目の当たりにしてしまったものなら、ただただ生きていられること事態が奇跡的なことなんだと。

 今の日本の若い世代、正確に言えば、1970年代後半以降に生まれた世代は、親も戦後生まれということが少なくなくなってきている。祖父母はもちろん戦前生まれだけれど、その影響を大きく受けていないケースは多い。それは、戦後は、戦前の日本をよからぬことという風なことを前提に社会が進んできたことや、戦地で仲間を亡くした祖父たちの世代は、あまり語りたがらなかったということがあるように思う。

 第二次世界大戦前と戦後では日本は変わったんだと思う。文明が変遷を遂げてきたこともあるけれど、何が一番変えられたかというと、精神文化面のように思う。日本人の美徳的なものが失われてきたというか、生き方についての人類普遍な教えのようなものを大切に教えられずに来たというか・・・。

 そんなことに今最も気づかされ易い最後の砦ともいうべきは、ブラジルに移民してきた人やその子孫で70代80代以上の日本に縁ある人々の人生や人生観に触れる場である。自分は日本人だと思っていても、戦後の現代日本人という、戦後の現代という修飾語をつけなければ正確じゃないことに気づかされる。

 今の日本を論じるあれやこれやを読んだり聞いたりしていても、結局ぶれない何か、つまり生きるとは何かという確固たる信念に基づいて出てきた話でないと、どれを読んでも社会論なりビジネス論さえも納得のいく答えには聞こえない。グローバル社会だからこそ、生きるとは何かをしっかり押さえる必要があって、そんなことを伝統的な人生観宗教観からよく分かっている外国人の意見に追づいしなければいけなくなってしまったのが現代日本の気もする。

 日本に縁ある人で、今頻繁に海外旅行をする若い世代よりもよほど国の際で生きるとはどういうことか、国の際が最初に世界の動きの真の影響を受けているということを体験から証明してくれる人がいる。『戦場の小さな証人』という本の75歳の著書の5、6歳の体験は、あまりにも頭をたたき起こされる小説以上の壮絶な人生の初期物語である。

 世界地図でとりあえず比較的簡単に出てくるテニアン島に生まれ、簡単な世界地図の本では探すのも難しい太平洋のポナペ島で幼少期を過ごし、既に日本の近い将来の敗戦を予想させるようなアメリカからの爆撃に遭い、台湾、日本本土、沖縄を経る間の命がけの航海(実際多くの人が亡くなっている)の後、再び沖縄本土で予想通りの地上戦に遭い、その中を弟の死と隣り合わせに生き延びた著書は、戦後13年後にブラジルに移民して、2000年以降、日本とブラジルを往来している。戦争中に両耳が聞こえなくなったお母さんは、その後も耳が聞こえることはなかったけれど、今もブラジルで100歳でご健在という!!

 戦前で外地で幼少期を過ごした70,80代以上の日本人の人生観、もしくは日本に居残ったというか移住した近隣諸国の人々の人生観も、ブラジルの高齢の日本人移民(2世も含む)と共通するんじゃないかと思う。その人生観の一つは、自分より大きな何かに頼るのではなく、自分の身は自分で守り、できる限りで身内や隣人を助けるという精神だと思う。そんな人生を送ってきているからこそ、生き抜いた人は長寿を全うされたりする人も珍しくないように見える。

 店頭で並ぶ一冊ではないけれど、どんな癒し系の本よりも、今生きていられていること事態がすごくありがたいんだと思い知らされ、あまりにも知られざらされ過ぎる日本史世界史の一端の『戦場の小さな証人―太平洋上と沖縄での戦争体験―』。異文化の人々と生きる知恵もこのご著書のあらゆる話には秘められており、叶うならば、友人たちに贈りたいくらいの希少な一冊。 

「カメラ監視された公園」


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2 コメント

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すごいですね (ひとみ)
2013-07-02 10:03:55
日本に暮らす同じ年の高齢者とブラジルに暮らす人とでは,何か違うと感じていました。戦時中の話を聞く機会もやたらと多く,そういう意味でもブラジルにいた2年は貴重な体験でした。その本,読んでみたいです。赤ちゃんと二人日本ですごす日々にはちょっと刺激が強すぎるかな?
Unknown (Unknown)
2013-07-03 16:48:37
〉ひとみさん
 そう、ブラジルのことは違って知らなくて当たり前と思えるけれど、日本のことを知らない知らされていないということを知ると衝撃かつある種の感動があるよね。日本じゃなくてブラジルにいる日本人だから語ってもらえる日本もあると思います。この本は日本語を読める人なら誰もが読むべき一冊くらいと思える実話です。しかも著者が生きているし!!メールで著者の連絡先などを後でお知らせします。育児中だからこそ読むべき!!

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