ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『リトル・チルドレン』

2007-06-07 23:47:43 | 新作映画
(原題:Little Children)

※カンの鋭い人は注意。※映画の核に触れる部分もあります。
鑑賞ご予定の方は、その後で読んでいただいた方がより楽しめるかも。


----この映画、ジャッキー・アール・ヘイリーがカムバックを遂げた作品だよね。
確か、各映画賞で助演男優賞にノミネートされていなかったっけ?
「うん。厳密には
その前の『オール・ザ・キングスメン』が復帰第一作だけどね。
それにしても、『がんばれ!ベアーズ』の少年が
こんな冴えない風貌のオジさんになっちゃうとは
いやあ、ちょっと信じられないよね」

----それと、ケイト・ウィンスレットの
5度目のアカデミー賞ノミネートだっけ。
俳優のことばかり話題が先行しているけど、
いったい、どんな映画ニャの?
「じゃあ、ストーリーを簡単に。
郊外の街に住む主婦のサラ(ケイト・ウィンスレット)は、
近所の公園で司法試験の合格を目指す子連れの主夫ブラッド(パトリック・ウィルソン)と出会う。
最初こそ、握手して別れるだけの自制を持っていた二人だけど、
いつしか彼らは道ならぬ関係になってしまう。
そんな中、街では元受刑者のロニー(ジャッキー・アール・ヘイリー)が出所。
ブラッドの友だちで元警官のラリーは、
子供たちを守るためロニーを糾弾するビラを街中に貼り回る。
周囲から拒絶されるロニーを暖かく見守る母親のメイ…。
彼らの物語は、ある夜、沸点を迎える……」

----あれれ、これもまた『クラッシュ』『バベル』のように
いくつかの物語が並行し、最後に交錯するお話?
「いや。そこまで複雑な構成ではない。
ロニーのことは街の誰もが知っているわけだからね。
映画にナレーションが多用されていることもあって、
話の筋は実に分かりやすい。
主人公たちの感情、その推移まで説明してくれるからね」

----ふうん。でもそれって映画の手法として安直すぎない?
「そうかな。
ぼくはトリュフォーも多用したこの手法は、けっこう好きだけどね。
映画に、ある種のアクセントをもたらせるし、
なによりも劇中に入り込みやすい。
この映画の場合、脚本に原作者トム・ペロッタ自身も参加。
文字で作られた世界を映画に置き換えるには
どの方法がベストかを考えた上での選択だと思うな」

----ところでタイトルの意味は?
「映画を観ているうちにだれもが気づくことだけど、
ここに出てくる大人たちは、みんな子供。
サラとブラッドはそれぞれ
夫がいて、あるいは妻がいて、子供がいて……。
でも考えるのは自分のことばかり。
そこに“自分の居場所はここではないはず”
“これはほんとうの自分ではない”という現実忌避の観念が結びついてくる。
彼らを取り巻く他の大人たちにしても
自分の価値観を金科玉条に生きているという意味では大差ない」

----ロニーの場合は?
「うん。彼の描き方も興味深い。
果たして彼は更生したのかどうか?
ロニーを執拗に付け回すラリーの過去と現在も含めて
彼の物語が単なる不倫ものに陥ることを防いでいる」

----どういうこと?
「この映画に含まれるメッセージ、
それは
『過去は変えられないけど、未来は変えられる。
さあ、一歩踏み出そう』ということ。
実は、ラスト近くで象徴的な映像が出てくる。
ブラッドとの駆け落ちを決意したサラ。
彼女は深夜の公園で3歳の娘を見失ってしまう。
ところがその娘は取り憑かれたように何かを見ている。
それは街灯に群れる無数の蛾……」

----ニャるほど。それがこの映画の大人たちを象徴しているってワケだ。
「そう。この映画の登場人物たちは、
みんな光を求めて
あがいている……ぼくにはそんな気がしたね」



   (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「うたた寝はなさそうだニャ」ぱっちり

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19 コメント

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タイトルの妙 (あかん隊)
2007-06-14 00:03:39
この映画、観たいと思っていましたが、タイトルを失念していて。ちょっと思わせぶりなタイトルなだけに予告編での内容とは、少し印象が違っていたように思います。なぜかしら…。予告編で小出しにされる印象的なシーンより、タイトルから想像される内容の方が、しっくりくるのかもしれません。
予告編でしかわかりませんが、敷石の、悪意に満ちた落書きを消している母親の姿が、目に焼き付いてしまいました。
■あかん隊さん (えい)
2007-06-15 21:07:02
こんばんは。

タイトルの意味は「大人になれない大人たち」というところでしょうか。
日本版予告編はネットではまだ観ることができず、
よく分からないのですが、
その落書きを消すシーンと言うのは、
う~ん。この映画のピースの一つ。
とても説明が難しいです。
ご覧になったら、またお話しさせていただきたいと思いますが、
この映画は7月公開のぼくのベスト3の1本です。
ケイト (april_foop)
2007-07-14 11:24:30
ケイト・ウィンスレットが、普通の主婦を生々しく演じてましたね。
普通にかかえるストレスと大人の気怠さとが、痛々しいような愚かしいような。

テーマもメッセージもしっかりしてて、ぼくもかなり楽しめた1本です。
■april_foopさん (えい)
2007-07-14 22:21:05
こんばんは。

先ほどapril_foopさんのところにも
書き込みさせていただきましたが、
あの公園の子供のシーンで
「やられた」という感じ。
今年、もっとも気に入った作品のひとつです。

そう言えばロニー(ジャッキー・アール・ヘイリー)の母親を演じている女性は
『ラッキー・ユー』の冒頭の質屋のおばさんと同じフィリス・サマーヴィルでしたね。
Unknown (mig)
2007-07-31 23:33:50
こんばんは、えいさん。

この作品、かなり評価わかれているようですね、
えいさんは気に入ったんですね☆
わたしは全く行動に共感出来なかったんですが、映画としては楽しめました
こんばんわ! (moviepad)
2007-08-01 01:06:37
えいさん、こんばんわ!

さすがですね。
僕は最後の蛾の意味まで考えませんでした。
ちょっとご都合主義だな~、としか思わなかった(^^;

この映画、僕も十分楽しめましたが、『イン・ザ・ベッドルーム』があまりにも良すぎたので、今回はちょっとゆるいな~って感じですね(笑)
■migさん (えい)
2007-08-01 23:15:42
こんばんは。

評価分かれているんですか?
「MovieWalker試写室ランキング」では
かなり上位にいたと思います。

ぼくも行動に共感はできませんが、
映画として見入ってしまいました。
ナレーションが効果的でした。
■moviepadさん (えい)
2007-08-01 23:19:27
こんばんは。

ぼくは
あの「蛾」のシーンで、
思わず座り直すほど
ぞくぞくっと来ました。

恥ずかしながら
『イン・ザ・ベッドルーム』は観ていません。
これは絶対観なくては…。
人形☆ (パフィン)
2007-08-04 19:19:39
えいさん、こんばんは。

この映画、私は冒頭に出てきた人形=幼児性を
ロニーが壊すシーンから公園でラリーに救出される
展開が劇的で、おお~と感動してしまいました。

実は二人が主役だったのではと思いました。
TBまとめて参上しました。 (となひょう)
2007-08-04 22:01:43
こんにちわ。
私はこの作品は7月に公開される中では最も楽しみにしていました。ドカンと派手さはないんだけど、暫く経ってから色々と考えておりました。こんな風に、後になってからジンワリと心に何か残る作品って素敵だと思います。
街灯のシーンには、そんな意味が込められていたんですねー なるほどー、気づきませんでしたわ。さすがです。
私も登場人物の行動には決して共感はできませんけど、自分に迷い苛立つという姿は理解できる気がしました。ラストは、キレイにまとまったような気がします。
ジャッキー・アール・ヘイリーは冴えないおじさんかもしれないけれど。プールの場面では、結構マッチョだった気がします。何よりも、目線が印象的でした。
実は、元警官のラリーのラストが一番印象的でした。何となく『クラッシュ』のマット・デイモンを思い出しませんか。

追伸:『イン・ザ・ベッドルーム』は是非ご覧になって頂きたいと思います

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