ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『コッホ先生と僕らの革命』

2012-08-31 14:58:01 | 新作映画
(原題:Der ganz grosse Traum)

----この映画、試写の最終にやっと観たんだよね?
「うん。
それも18:00からの回で、
そういうときって、『もういいや』で見送っちゃうことが多いんだけど、
宣伝に使われている“ドイツ版『いまを生きる』”という言葉、
そして日本の予告編がよくできていたことが、
ぼくをこの映画に駆り立てたんだ」

----“ドイツ版『いまを生きる』”?
「そう。
19世紀末のドイツ。
名門カタリネウム校に赴任したドイツ初の英語教師コンラート・コッホ(ダニエル・ブリュール)は、
生徒たちのイギリス=英語に対する強い偏見を払しょくするために
授業にサッカーを取り入れる。
戸惑いながらもサッカーの虜になっていく子供たち。
だが、その型破りな授業は大人たちを敵に回すことに。
そんな大人たちに対し、
子どもたちは自らの意思で立ち上がるようになる…」

----好く出来た話だニャあ。
でも、実話なんだよね。
「このコンラット・コッホという人は実際に存在した人。
ドイツ・サッカーの父と言われている。
でも、そっくりそのままかというと、実は映画用に大きく脚色されている。
まず、映画ではオックスフォード大学に留学したことになっているが、
実際はドイツのゲッティンゲンで神学と哲学を学び、
後にベルリンやライプツィッヒに移っている」

----あれれ。それじゃ前提が大きく崩れるじゃニャい。
「イヤ、それでいいんだと思う。
僕はこの映画、最後まで飽きずにのめり込んで観ていた。
もし、彼の伝記をそのまま映画化していたらそうはならなかったと思う。
この作品は、彼の根底にあるサッカー哲学
“チームプレイ”の精神を養うこと、“個性と自発性”の育成を訴求すべく
新たに映画用にストーリーを書き起こしている。
だから、いわゆる“ドラマ”としての起伏が見事に形作られているんだ。
時代は、帝国主義時代のドイツ。
反英感情は強く、また、貧富の差も激しい。
そんな中、このカタネリウム校では、ある“実験”が行なわれている。
それは、この英語教育もさることながら、
そして労働者階級出身の少年ヨストを学校に迎え入れていること。
だが、強大な権限を持つ資産家たち
地元の名士はそれが気に食わない。
どうにかして、彼を追いだそうと息子のフェリックスともども、
あの手この手で本人はもちろんのこと、
学校にも圧力を加えていく」

----なぜ、そんなことするニャか。
「それはプロレタリアートの社会進出を恐れているから…。
これは人類始まって以来、
常に行なわれている
いわゆる“既得権益”をめぐる戦い。
自分の地位、そしていい暮らしが確保されている層は
新興勢力の台頭を訪れる…。
これはこの時代に始まったことじゃない。
そのため、自分たちより下層の連中に力を与えまいとするわけだ。
教育を受けさせるなんてもってのほか」

----それじゃあ、いつまでたっても陽の目を見れないよ。
「そういうことだね。
だからこそ世の中には差別が残ったままになる。
秩序と規律の名の下にね。
だが、そこに風穴をあけるのが
“チームプレイ”を重んじるスポーツというわけだ。
しかし、この“既得権益”をめぐる構造、
いまの時代も残っているんだよね。
原発事故が起こって以来、
それをさらに強く感じるな」




フォーンの一言「確かに今の日本にも似ているニャ」ぱっちり

※日本のタイトルに“革命”が入っているのもなるほどだ度


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猫ニュー



『踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望』

2012-08-30 11:00:06 | 新作映画
----『踊る大捜査線』って前作で終わりかと思ってた。
今回、副題に『THE FINAL』が入っているってことは、今度こそ打ち止め?
「おそらくね。
これまでテレビシリーズから続いていた
“俺たちで変えていこう”という青島(織田裕二)と室井(柳葉敏郎)の約束も、
ひとつの結実を見せるし…」

----ふうん。じゃあ、テレビからのファンも満足?
「少なくともぼくはね。
実はこの劇場版4作目は前作
『THE MOVIE3 ヤツらを解放せよ!』とセットで考えられていたらしい。
いわゆる続きものということだね。
でも、それだったら、ぼくはつまんなかったと思う」

----どういうこと?
「この劇場版第一作『踊る大捜査線THE MOVIE』は、
犯人に小泉今日子を起用。
そこまではよかったんだけど、
映画版ということでスケールもアップ。
『THE MOVIE3 ヤツらを解放せよ!』は、
そこに毒ガスなども加わり、
いよいよ犯罪は、刑事という個人の手を超えたものとなってくる。
だから、他の刑事ドラマ、
たとえば『交渉人 THE MOVIE 高度10,000mの頭脳戦』あたりと
似たような絵づくりになっていたんだ。
ところが、今回は、
派手な爆破もカーチェイスもなし。
でも、その分、“踊る”ファンを満足させる名台詞がボンボン飛び出し、
青島はよく走り、最後にはチャリで駆けずり回る。
そしてこのシリーズが教えてくれた
本店と支店の関係もじっくり描かれる。
組織の維持の前には個人は虫けらのようにつぶされる・・・。
それは室井でさえも太刀打ちできない大きな力。
それを象徴する、あるシーンでは、ちょっと涙が滲んだものね。
ネットシステムと肥大化する組織の前に、
青島、室井があまりにも無力に見えて…」

----ある意味、君塚良一らしい脚本だよね。
「おっ。そこなんだよ。
君塚良一の監督作『誰も守ってくれない』では、
ネットによって、ひとりの少女が追いつめられていく姿が描かれた。
『THE MOVIE』でネット犯罪を取り入れた彼としては、
実は、このネット社会を、あまりよくは思っていないということだろうね。
それは本作のオープニングにも表れている。
『なくもんか』に出てくるような商店街で繰り広げられる人情喜劇。
まるで、それはあの『男はつらいよ』の寅さんのよう。
話それるけど、
このシーンを観たとき、
ぼくは寅さんを思い出したんだ。
『男はつらいよ』はオープニングで寅さんの夢が描かれることが多い。
ここはそのパロディかと…。
そう、夢を見ていた寅さんが、ついに夢に見られる立場になったと・・・。
感慨深かったね。
この映画『THE FINAL 新たなる希望』は、
もちろん監督本広克行の手だれの演出もあるけど、
そういう、昭和怪奇的な君塚良一の思いが感じられてならなかったね。
テーマとして打ち出される“正義”にしてもそう。
“正義”が巧く機能しないことに対して
この映画の犯人たちは実力行使に出る。
でも、本来、“正義”、正しいと思うことは人それぞれに違う。
だからこそ、青島の次の言葉が生きてくる。
『正義なんてものは、胸にしまっているくらいがちょうどいいんだ』






フォーンの一言「『これは俺たちの事件だ』なのニャ」ぱっちり

※これでシリーズが終わっても文句はない度


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猫ニュー

『莫逆家族 バクギャクファミーリア』

2012-08-28 01:47:13 | 新作映画
----これって、「バクギャクファミーリア」って読むんだって?
なんだかイメージつきにくいニャあ。
「だよね。
こノ映画、その内容の方も
タイトルに負けてはいない。
もう大胆というか、
よくぞここまで好き勝手にやったもんだと、
ただあきれるしかないという映画」

----一言で言うとどんな映画ニャの?
「これは簡単なんだ。
主人公は、17歳で関東一の暴走族「神叉」のトップに立ち、
恐いもの知らずとして名を馳せていた火野鉄(徳井義実
彼は今、家族を養うために
現場作業員としての仕事に明け暮れるうっ屈した日々を送っている。
反抗期の息子・周平(林遣都)からも舐められ
昔の面影は見る影もない。
そんな中、仲間の一人あつし(阿部サダヲ)の娘・真琴(山下リオ)が
不良たちに暴行されるという事件が発生。
落とし前をつけるために、数年ぶりに終結した「神叉」の面々。
彼らの中に甦る昔の熱い思い。
そんな中、暴行事件の裏に、
暴走族時代のうらみを募らせてきた五十嵐(村上淳)の存在があることを知り……」

----簡単という割には複雑(笑)。
「う~ん。
確かに、過去の事件と現在が交互に語られていくから、
しっかり見ていないと分からなくなるかも。
でも、『裏切りのサーカス』と同じで、
その“集中して観る”という行為が
映画的快楽の中に見る者を引きずりこんでいく。
一方で、音楽の使い方がまたお見事。
この五十嵐と彼を兄のように慕う緒方(新井浩文)のシーンになると、
なんと、日本フォーク史上に残るせつないラブソング『サルビアの花』が流れるんだ。
これ、最初は彼らの小学時代のシーンで流れるため、
ノスタルジーを強く感じさせるんだけど、
徐々に、五十嵐の内部にある
“取り残され感”を出しているんだなと分かるところがミソ。
ここまで激しい集団抗争劇にあってこの音楽の使用は
繰り返し言うけど大胆という他はない。
それともう一曲、
元スターリン、遠藤ミチロウの絶叫トーキング
『お母さん、いい加減あなたの顔は忘れてしまいました』が使用されているのも度肝を抜く。
そうそうスターリンと言えば、
この映画、元スターリンのドラマー、中村達也も参戦。
『蘇りの血』などでも強い印象を残してきた彼だけど、
ここで彼が演じたナベサンこと渡辺満役はその総決算といえるんじゃないかな」

----濃い顔ぶれだね…。
「だね。
他にも井浦新、北村一輝、玉山鉄二、大森南朋
だけど、ただひとりあげるとしたら
これはムラジュン、村上淳に尽きる。
もとより、薄汚いイメージの役が多い彼だけど、
ここで彼が扮する村上淳は、もう最悪最低。
ここまでのアンチヒーロー、
それもだれもが軽蔑したくなるほどの醜悪な男は
日本映画史上に残ると言ってもいいくらい。
本人もおそらくそれを意識してか、
ジョーカー、ヒース・レジャーを思わせる白塗りでの演技。
完全に振り切っている。
映画の底に流れる三代に渡る親子の絆、
その再生といったテーマも胸に沁みるけど、
最大の見どころは彼のキレ方だろうね。
その激しいバイオレンスはさすが東映ならでは。
これに比べると東宝で三池崇史が手掛けた『クローズZERO』なんか、
おとなしすぎるくらいだよ」



※追補

林遣都は『闇金ウシジマくん』に続いてのハマり役。
新井浩文、中村達也は『赤い季節』より、こっちの方を推します。


フォーンの一言「間違ってもデートには向かないのニャ」もう寝る



※暴走族ももう昔の話だ度



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猫ニュー

『ザ・レイド』

2012-08-23 22:54:33 | 新作映画
(英題:The Raid)




----「ハリウッドも認めた10年に1本のアクション映画」とは大きく出たね。
「うん。
でも、そそられる言い方だよね。
トレーラーを観ると、
これまでのハリウッドを代表するアクション映画のタイトルが
次々と流れていて、
そこにこの映画『ザ・レイド』も名を連ねたということを強調している」

----車だけど、これってインドネシア映画だよね?
「そう。
ところが早々とハリウッドでのリメイクが決定。
そこで“ハリウッドも認めた”…と付けたんだろうけど、
正直言って、この映画をハリウッドでリメイクしても
さて、どうかなって気がするね。
今朝も『インファナル・アフェア』が
日本のテレビでリメイクなんてニュースが流れていたけど、
それって、結局、設定やストーリーを同じにするだけの話であって、
オリジナルの映画が持っていた空気感は出せるはずもない。
この映画も同じ。
舞台はインドネシアのスラム街の30階建てのビル。
そこには麻薬王が君臨していて
当局も手が出せないでいる。
そこに“レイド”(強制捜査)に入った20人のSWATと
それを迎え撃つ無数のギャングと言う、
ほんとシンプルなお話なんだ。
ちょっと、裏の陰謀や
思わぬ事実が明らかになったりもするけど、
その軸となるのは、
この生と死ギリギリの戦い。
待ち構えていたかのように次々と襲いかかるギャングたちの中から
いかにして生還するかという、ただ、それだけのお話。
オリジナル性は乏しい」

----でも、スゴイ話題になっているよね。
「うん。
それはこのシンプルな設定に、
徹底したアクションを持ちこんでいるゆえ。
たとえば追いつめられた部屋から脱出するのに、
これまでの映画だったら、
窓を伝ってYAMAKASHIのように逃げるのが普通。
ところがここでは斧を使って床に穴を開け、下の部屋へ。
一方のギャングたちは、
まるで走るゾンビ。
みんな痩せていて目がギラギラ。
麻薬王からは<害虫駆除>、
つまりSWATを仕留めることに貢献した者には、
家賃ゼロの永住権を保証されているから
もう、必死必死。
基本的には敵をやっつけながら
麻薬王がいる上へ上へと向かうワケだから、
これは『ブルース・リー/死亡遊戯』のパターン。
そこに、どう考えても逃げおおせない状況を加えたことで
死の恐怖が加わっている。
これもこの映画の特徴だろうね」

----でも、それだとハリウッド・リメイクされてもおかしくニャいのでは?
しかも、もっとド派手にできそうな気がする。
「いやいや。
この映画に出てくる“シラット”なるアクション、
これはどう見てもハリウッドでは無理。
ここでは、達人級の格闘家が多数出演。
どうやってその振付を考え、また演出したのか、
もう“芸術”の域に達しているね。
タイ映画で『チョコレート・ファイター』というのがあったけど、
あれを100倍ハードにした感じなんだ。
なかでも、マッド・ドッグなる麻薬王の片腕の男。
彼を演じるヤヤン・ルヒアンは圧巻。
観ていて、こいつを倒すのは絶対無理と思ったものね。
なにせ主役級のふたりが一緒にかかっても
びくともしない」




----でも、最後にはやっつけるんだよね。
そうしないと、映画にならニャい。
「(笑)。
そうだね。
そのやっつけ方、
少し反則技っぽいけど、
もう、こうするしかなかったという方法。
さて、その最終手段とは?
まあ、観てみてよ」


フォーンの一言「『死亡遊戯』って、いわゆるPCゲームの元になってるんだニャ」身を乗り出す

※最後にNG集がなかったのも驚きだ度


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猫ニュー

画像はアメリカ・オフィシャル・(ギャラリー)より。

『最強のふたり』

2012-08-18 00:37:37 | 新作映画
(原題:Intouchables)




----この映画、
確か昨年の東京国際映画祭でグランプリを受賞したんだよね。
すでに観た人が絶賛していたのを覚えている。
「うん。
タイトルも不思議でね。
電動車椅子に乗っている白人と
それを介助している黒人。
このふたりに“最強”という修飾語がついている」

----車椅子ということは、
主人公のひとりは体が不自由ということ?
「そうだね。
では、まずはお話から…。
パリに住む大富豪のフィリップ。
ある事故により
首から下が麻痺してしまった彼は、
自分の介護者を選ぶ面接で
スラム街出身の無職の黒人青年ドリスと出会う。
生真面目な応募者たちの中にあって、
不採用の証明書でもらえる失業者手当が目当てだという
ふざけた態度のドリスに興味を抱いたフィリップは、
<試用>という形で彼を採用。
音楽からファッション、会話の内容と、
何から何まで正反対のふたりだが、
以後、フィリップの毎日は、
わくわくするような冒険の日々に変わってゆく…。
ドリスはフィリップにマリファナを回したり、
興味津々で彼の性欲について尋ねたり…。
一見、タブーと思えるようなことを
次々と言ったりやったりもする。
しかしそこには、
これまでフィリップが味わってきたような
他人からの<同情>の視線は皆無。
それがすごく嬉しかったワケだね。
ただ、この映画は、
以後、どのように物語が運ぶかがおおよそ想像できちゃう」

----どういう風に?
「違う世界に住むふたりが
ひょんなことから出会い、
友情が芽生える…。
このプロットを
映画として盛り上げるには、
以下のような流れが考えられる。
思いもよらぬ事件による<別離>。
だが運命は彼らに<再会>の時を用意。
それにより、さらに深まる友情の絆…」

----ニャんだか、身も蓋もないニャあ。
「まあまあ。
実際、この映画もこれを基軸として進んでいく。
特別な驚きもない予定調和の物語。
ところがそれでも、最後の最後で
ぼくはやられてしまった。
いつしか、瞼に熱い涙が浮かんでいたんだ」

----なぜ?
「この涙の理由を説明するのが実に難しい。
言葉で説明できない感動。
これがこの作品が<映画>であるゆえんかなと…
観た直後はそう思ったワケだけど…」

----その言い方だと、
今は分かるということかニャ?
「そう、少しはね。
この映画は、実に緻密な脚本で構成されている。
ポイントとなるのは、
フィリップの奥深い心理。
大富豪の彼は、
一方で紳士でもある。
人に弱音を吐くこともなく毅然としている。
しかし、やはりそれは表面的なもので、
実際には彼ならではの引け目がある。
それをよく表しているのが
文通のエピソード。
フィリップは
相手の女性を魅力的とは思いながらも、
会うことはおろか、電話一本かけたことがない。
そんな彼にドリスは
自信と勇気を取り戻させていた…
そのことが最後に分かる仕組みになっているんだ」

----奥歯にモノが挟まったような言い方だニャ。
「やはりストーリーを語ってしまうわけにはいかないからね。
でも、ここでぼくが話していることの意味、
それは
映画を観た人みんなに伝わると思う。
あのラストシーンで
なぜ涙が自分たちの頬を伝うか?
それがこの映画のポイントだよ」



※(追補)
ドリスのフィリップに対する接し方は仕事ではなく
むしろ恋人に対するそれのよう。
最初は、排泄関係はやらないと拒否したりなど、
その距離を自分なりに取っていた。
そこで素朴な疑問。
彼は、後年、排泄関係も介助したのだろうか?
プレスによるとモデルとなったアブデルが映画を観て、
「もっと深く掘り下げても良かったんだよ」と言ったという。
もしかしてそこにはこういうことも理由としてあるのかも?



フォーンの一言「主演のフランソワ・クリュゼ、オマール・シー
東京国際映画祭で主演男優賞をW受賞なのニャ」ぱっちり

※リメイクされるという噂もあるけど、
たとえ感動したとしてもそれは別モノだ度



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猫ニュー


画像はフランスのオリジナルポスター。

『ヴァンパイア』

2012-08-12 18:24:11 | 新作映画

----これって
岩井俊二監督の新作ニャんだよね。
ずいぶん、久しぶりって気がするけど…。
「そうだね。
長編映画に限って言えば『花とアリス』以来。
なんと8年も経っているんだ。
つくづく、時のすぎるのは早いと、
そう思わざるを得ないね」

----でも、映画の活動はしていたんでしょ。
「うん。
ドキュメンタリー『市川崑物語』を監督したり、
『ニューヨーク,アイラブユー』の一挿話を
オーランド・ブルーム、クリスティーナ・リッチ主演で撮ったり、
はたまた、『friends after 3.11』にも参加したり…。
ただ、劇映画で長編となったら、
やはりその注目度は俄然高まる」

----そうだよね。
一時は、時代の寵児のように言われたもの。
『Love Letter』は確か、
韓国で大きな話題を呼び、
日本映画ブームの火付け役となったんじゃなかったかな。
いま、思うと、あの中に会ったロマンティシズム、
そして、ファンタジーと言ってもいいようなお話は
もしかしたら、韓流映画の原点になったのかも…。
続く『スワロウテイル』は、
一転して、カオス的な日本を予見したかのような
ちょっと猥雑なエネルギーに溢れていた。
そしてインターネット上で始めたインタラクティヴ小説を映画化した
『リリィ・シュシュのすべて』で決定的な名声を手にする。
ここでは、いま日本で大きな問題となっている
10代の“イジメ”が扱われていたことも要注目だ。
と、こうやって観てくると、
この岩井俊二監督というのは
その時代時代を見事に掬い取っていた気がする。
その彼が、こんどは“ドラキュラ”。
実は、ここにぼくは少し不安を感じていたんだ。
キャッチコピーが
“惹かれあう孤独な魂たち
この世の果ての恋物語”――。
ビジュアルも木漏れ日の中の男女。
デビッド・ハミルトンとまではいかないけど、
リリカルな感じで、
物語の起伏に乏しいのではないかと…?」

----確かに、なんか静謐な感じ。
「ところが、
実は、ここにも岩井俊二らしい
時代への予見性は覗いていた。
今回の物語は、
病身の母親と暮らす高校教師サイモンが、
あるウェブサイトに集まる“死にたい少女たち”に
血を求めて寄り添う…というもの。
元より、岩井俊二は“自殺願望者を探し、狩る殺人者”という
ストーリーのアイディアを考えていたらしい。
ところが、同じ頃、似たような事件が日本で起きた。
被害者をインターネットで見つけ、
彼らの自殺を幇助する殺人鬼…。
そこでこの企画は一端ストップする。
社会的に問題が大きすぎるものね。
そしてさらに時が経ち、
形を変えて生まれたのが
この“ヴァンパイア”だったというわけだ」

----ニャるほど。
最近、若い監督たちは
どちらかというとゾンビのほうが好きなようだけど…。
「洋の東西を問わずね。
でも、かつては“ヴァンパイア”こそ、暗闇の王だった。
大林宣彦は個人映画『EMOTION 伝説の午後 いつか見たドラキュラ』
自主映画界の人気者となり、
その後の世代の大森一樹は吸血鬼の映画を撮る学生たちを主人公にした
『暗くなるまで待てない』脚光を浴びた。
闇の中でいしか生きられない=映画。
ドラキュラは映画の象徴でもあったんだね。
そう言う意味では、実はこの『ヴァンパイア』は画期的。
昼日中でも活動する。
これは従来のドラキュラ映画の枠の中には収まりきれない。
ここで彼がドラキュラを引き合いに出して描いているのは
血への妄執を持つ男と死に取りつかれた少女。
このドラキュラは、頼まれて死への手伝いはするものの、
決して殺人は犯さない。
ヴァンパイアを信奉するひとりの男が通りすがりの女性を襲うのを見て
気分が悪くなって吐いてしまうほど」

----繊細ニャんだね。
「そういうことかな。
サイモンの母親は部屋でたくさんの風船のついた拘束衣を着せられている。
これにしても、少しでも腰の負担が軽くなるように、
そして部屋から徘徊しないようにという
彼独自の優しさからきているんだ。
ところが、サイモンのそのようなささやかな日常は、
ある闖入者の利己的行為で壊されてしまう。
と、まあ、お話はここまででいいかな。
この映画の重要なポイントのもう一つは、
岩井俊二が初めて
全編英語で脚本を書き、英語で演出したということ。
この成功如何で、
さらにグローバルな活躍が期待されるだけに
ヒットしてほしいところだね」



フォーンの一言「主演は『トランスアメリカ』のケヴィン・セガーズなのニャ」ぱっちり

※脚本・監督・撮影監督・音楽・編集・プロデュース、すべて岩井俊二だ度


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猫ニュー

『アイアン・スカイ』

2012-08-09 21:36:26 | 新作映画
(原題:Iron Sky)




----この映画、ネット上でスゴク話題になっているよね。
「そうだね。
第二次世界大戦後、地球を後にしたナチスが月へ逃亡し、
地球へ復讐に向う日を虎視眈々と待っていたというレトロ感覚のSF。
南半球に、あるいは地底に
ナチスの残党が潜伏し、UFOの実験を行っているという
昔からあった都市伝説を
この映画では思い切って月にまで広げたワケだ」

----ある意味、あほらしすぎて映画になりにくかった…?
「時代が時代だったら、
相手にもされなかっただろうね。
ところが、いまは何でもありの時代。
こういうサブカルなネタは嫌われるどころか大歓迎。
しかも、この半世紀、映画のVFXは急発展を遂げたワケで、
かつてなら、ロジャー・コーマンあたりがチープな特撮で撮っていた映画を
SF大作と比べても遜色のない映像で製作できるようになったんだ」

----へぇ~っ。
発想そのものはオモシロいワケだし、
ビジュアル面でよくできていれば、
それは鬼に金棒だね。
「まあ、そうは言っても、
これがどこまで科学的でリアルなのかは疑問。
地球へ向うナチスの先遣隊が乗る円盤ハウニブだって、
どんな原理で飛んでいるのか、
その形状の必然性とあわせてはなはだ疑問だし、
やはりこれは
その奇想天外ぶりを楽しむ映画だと思う。
ぼくは観ていて『フレッシュゴードン』を思い出したもの」

----えっ?『フラッシュゴードン』iじゃなくて?
「そう。
『フレッシュゴードン』というのは、
『フラッシュゴードン』のパロディ、ポルノ版。
あの映画にあったゆるゆるさがここにも流れていて、
観ていて気負わなくていいんだね」

----ふうん。
それって“おバカ映画”ってこと?
「まあ、題材が題材だからね。
でも、作る側の反骨精神というか、
現代社会に対する痛烈な風刺が映画に一本の筋を通している。
この話の発端にしても、、
再選を目指すアメリカ合衆国大統領が
右肩下がりの支持率を回復しようと、
アポロ17号以来となる有人月面着陸プロジェクトを推進したことから。
しかも、その宇宙飛行士というのが
ファッションモデルの黒人男性ジェームズ・ワシントン。
彼が持っていたスマートフォンにショックを受けるナチス。
その演算能力があれば、
地球攻略の最終兵器“神々の黄昏”号を完成させることができると、
円盤ハウニブに乗って地球に向かう…
こういうお話の流れだね」

----へぇ~っ。
地球が主な舞台になるんだ。
「そういうこと。
さて、話が地球に写ってからも
アメリカは監督ティモ・ヴォレンソラによって痛烈な皮肉を浴びせられる。
大統領選挙はショービジネス化し、
国連ではアメリカは横暴三昧な高圧外交を繰り広げる。
このアメリカの大統領が女性、
そして直属の広報官も女性というのもふるっている。
しかし、このアメリカの、
いや世界各国の“掟破り”がなければ
彼らナチスに太刀打ちはできなかったわけで、
このあたりの論旨はなかなか説得があったね」

----どういうこと?
「本来、宇宙の軍事利用は協定違反となる。
だが、アメリカは秘かに建造していた宇宙戦艦を出動させるんだ」

----それはみんな怒っちゃうよね。
「ところが他の国々もみな同じ。
彼らもやはり宇宙艦隊を作っていた。
唯一、フィンランド(監督の母国)以外はね…」

----あらら…。
「さて、
最後になったけど、
この映画、実はスタンリー・キューブリックの
『博士の異常な愛情』にそっくりのシーンが出てくる。
そして、それが伏線となり…
あっ、これはいわないほうがいいだろうな」




                    (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「女性が活躍する映画でもあるのかニャ」小首ニャ


※エロ・キュートなナチ・ヒロインを演じるレナーテ・リヒターが見モノだ度

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猫ニュー

画像はサントラ・ジャケット。

『希望の国』

2012-08-07 21:54:31 | 新作映画

----あれれ。観てきたばかりで喋るって
最近では珍しいよね。
「うん。
この映画は、喋りやすい部分と
喋りたくないな~という部分が
微妙に交錯する、
ちょっとややこしい映画なんだ」

----喋りにくい…
それってネタバレになるから?。
「それもないワケでもないけど、
とにかくこの映画は重い。
考えてみたら、
2011年の3.11以降、
日本が直面し、
まだ出口の見えない問題を扱っているだけに、
簡単に“希望”が描けるはずもないんだけどね…」

----でも、タイトルが“希望の国”。
「そうだね。
どうやらこれは、まだ映画の結末も見えていない
クランクイン前から決まっていたらしい。
さて、この映画なんだけど、
描かれているのは地震、津波の方ではなく、
あくまで原発。
その事故が、何をもたらしたかを
3組の夫婦にスポットを当てつつ描いている。
さて、ここで重要なのが、
本作が福島に取材し、
それに基づいて
会話や空気感といった情緒部分を構築しているものの、
舞台となっているのは架空の土地、“長島”県。
そして、福島より後の出来事を描いているということ」

----長島…。それって長崎と広島、福島からきているんだよね。
「十中八九そうだね。
さて、映画の中では
この“福島以降”が強調。
『福島のときもそうだった』という言葉が
随所に飛び出してくる。
その“福島のときもそうだった”という中で主に語られるのは、
“もう二度と家には帰れない”ということ。
その福島のを覚えている
小野泰彦(夏八木勲)は、妻・智恵子(大谷直子)と、
酪農を営むこの地を離れようとはしない。
その一方で、息子・洋一(村上淳)、
その妻・いずみ(神楽坂恵)に対しては、
今すぐ逃げるようにと、強く言う。
この父と子の会話に限らず、
以後の物語は、
3.11以降の日本をなぞるかのように進んでいく。
最初こそ、放射能の恐怖に脅えていた住民たちも、
被害が目に見えぬことから
いつまでも恐怖を抱いているよりは
慣れること、その放射能とうまくつきあうことを選び、
防護服で身を守るいずみを
あからさまにバカにし始める」

----原発推進派と脱原発派とで
意見がまったく違うよね。
「うん。
この映画では
そのことも含めて
監督の園子温は
自分の旗色を鮮明にしている。
たとえば放射能の残留数値については、
テレビが嘘を言っているのではなく
医者が嘘を言っているとまで言い切っている。
この脱原発、というより反原発の姿勢は、
お茶の間に流れるお笑いやワイドショーへの彼の不快感としても出てくる。
その中には映画『ハラがコレなんで』を意識したと思われる言葉も…。
『ハラがコレなんで』で使われた名台詞、
『雲の流れるまま~』や
『ど~んとかまえて行こう』も、
そのワイドショーの中で
“放射能なんてあまり気にしないで”という形で使われているんだ。
ここまで立ち位置がはっきりしている映画は、
ドキュメンタリー以外ではちょっと珍しい。
これはけっこう、
いろんなところで物議を醸しだし、
反発が巻き起こりそうな気もするね」

----ふうむ。社会派のような感じがするけど、
園子温映画としてはどうだったの?
「映画で思い出したのは
黒澤明監督『生きものの記録』
あれは核への恐怖が軸に話が進むからね。
それと、父と子の絆という意味では
園監督の『ちゃんと伝える 』だね。
あの映画と同じく
本作『希望の国』も、
あまりギミックは使わず
正攻法で描いている。
とはいえ、
地震後の瓦礫の中で
若いミツル(清水優)とヨーコ(梶原ひかり)のカップルが出会う
不思議な少年少女(おそらくは亡き人々の無念の思い、魂)の見せ方、
あるいは“杭が打たれた”の直接的描写など、
以前、指摘した寺山修司との関連を思い起こさせたな」

----ニャるほど。詩人が作る映像ということだニャ。
「さて監督の出した答。
この原発に囲まれた島国、日本。
そこでこれからぼくたちが生きていくには
どうあらねばならないか?
この映画を観たら、だれもが彼と同じ結論にたどり着くと思うな」



                    (byえいwithフォーン)

※メモ
(1)大谷直子演じる妻の名前は、おそらく高村幸太郎『智恵子抄』から。
(2)その大谷直子が町にさまよい出て、飼い主のいない牛やヤギと出会ったときの目に注目。
あれは演技を超えて泣いていたのではないか?
(3)夏八木勲の犬の撫ぜ方が実に巧かった。
(4)村上淳の自然演技もGood!


フォーンの一言「これは監督の覚悟の映画なのニャ」ちょっと怒るニャ



※資金がなかなか日本では集まらなかったらしい。
これからもずっとこの絵テーマは追いかけていくらしい度



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猫ニュー

『エージェント・マロリー』

2012-08-05 18:35:21 | 新作映画
(原題:Haywire)




----『エージェント・マロリー』
またまた『007』パロディもの??
「いや、ぼくも
そのタイトルの響きから
劇画チックなものを想像していたんだけど、
これはいたって正統派のスパイ・アクション。
物語の方も、
罠にハメられたフリーランスの女スパイ、マロリー・ケインが
逃避行を続けながら孤独な闘いを挑む…という、
いわば王道中の王道の映画だね」

----じゃあ、そこにガンアクションとかカーチェイスとか…。
「確かに
そういうのもないこともないけど…。
でもこの映画、最大の魅力は
ずばりフィジカル・アクション。
ヒロインのマロリーを演じているのは、
女子格闘家のジーナ・カラーノ
彼女の運動能力に賭けた
監督のスティーヴン・ソダーバーグ
この映画では特撮を封印。
全てリアルなままで撮ったらしい。
その闘いぶりたるや、
ハリウッド映画というよりも、
ジャッキー・チェン
タイのトニー・ジャーあたりの映画を観ている感じ」

----へぇ~っ。
そのこだわりはどこから?
「なんでも
監督は初期の『007』がそうとうのお気に入りなのだとか。
そこで
ストーリーに対するアクションの割合も当時と同じに。
また、この世にまだ存在しないようなテクノロジーも使わないなど、
ある意味、その製作に<制限>を設けた作りになっているんだ。
その<制限>の中でもなるほどなと思ったおが、
ワイヤー・アクションの多用を拒否したこと。
アクションシーンがあんまりアクロバティックで危険すぎたりすると、
観客は『こんなものは、生身の人間にできるわけがない』、
そう思ってしまうからなんだって…」




----ニャるほど。
それでストーリーもシンプルに…ってワケか。
「そういうことだね。
とはいえ、多くの俳優から慕われているソダーバーグ監督だけあって、
出てくる俳優たちは豪華この上ない。
その昔、マロリーと関係があったと思われる上司にユアン・マクレガー
マロリーとミッションを共にする同僚のスパイにチャイニング・テイタム
また、ミッションの一環として
彼女と“パーフェクト・カップル”を演じる、
やはりフリーランスのスパイにマイケル・ファスベンダー
他にもアメリカ政府の実力者にマイケル・ダグラス
スペイン政府関係者にアントニオ・バンデラス
さらには、標的となるフランス人男性にマチュー・カソヴィッツと、
ソダ―バーグならではの人脈が紡ぎ出す化学反応が
独自の映像空間を作り出す。
正直言うと、最初のミッションあたりまでは
映像がシャープでスタイリッシュすぎる上に
省略も重なり、
あまり腰を落ち着けては観ていられなかったけど、
マロリーが罠にハメられたあたりから、
ひと時たりとも目を離せなかったね。
なかでもダブリンの市街地を
屋根から屋根へと飛び移るさまは
『おいおい、YAMAKASHIか!』と(笑)。
昨今のブロックバスターのような満腹感はないけど、
これは、その分、胃もたれのしない
爽快さの残るアクション映画と言えるだろうね」



                    (byえいwithフォーン)


フォーンの一言「ランニングタイムのほうも93分と短いらしいのニャ」気持ちいいニャ


※ラストカットもカッコいい度

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画像はオフィシャル・ダウンロード・サイトより。

『トータル・リコール』(コリン・ファレル版)

2012-08-04 12:16:41 | 新作映画
(原題:Total Recall)


----これって、あのシュワちゃん主演のSFのリメイクだよね。
観る前まで、あまり期待していなかったようだけど…。
「うん。
予告編を見ても、前作と似たようなシーンがたくさんあるし、
おまけにナレーションの雰囲気までそっくり(な気がする)。
シュワルツェネッガーのイメージも強烈だし、
なぜ、わざわざ、
しかもアクの強い
コリン・ファレルで作りなおすのかがよく見えなかったんだ」

----でも、意外に満足しているようだけど…。
「うん。
やはり映画は観てみなくては分からない
(この言葉、このブログ始めてから何回使ったことか…)。
まず、前作の後半で舞台の中心となった火星、
これはまったく出てこない。
厳密に言うと、リコール社の人工記憶装置の話の中に、
ちらっとは、出てくるけどね」

----ええっ。じゃあ、話がまったく違ってくるよ。
「いや、それでも大筋は同じなんだ。
最近、同じような悪夢に悩まされているダグが
人工記憶センター、リコール社で諜報員の記憶を希望する。
ところが、装置が作動した瞬間、警官たちが突入して彼を襲う。
ダグの身体はなぜか勝手に反応。
警官たちを全滅させてしまう。
呆然としつつも追手を振りはらって家に帰ると、
やさしいはずの妻ローリー(ケイト・ベッキンセール)が…」

----確か、前作ではその妻を
シャロン・ストーンが演じたんだよね。
これをステップに次の『氷の微笑』で一躍スターに…。
「そうそう。
彼女の意外な正体が判明したあたりから
あの映画はオモシロくなっていくんだけど、
今回は、それ以前の警官突入シーンからノンストップで動いていく。
この映画の監督は、ケイト・ベッキンセールの夫でもあるレイ・ワイズマン
前作『ダイ・ハード4.0』
に続いて、
今回も、普通の男が大きな権力の渦に巻きこまれていくさまを
実にスピーディに見せていく。
ただ、このパターンは『イーグル・アイ』でも使われたし、
そろそろ目新しさも失せてきた気がする。
ただ、それでも、以後の展開が
逃走しながら真相を明らかにしていくという
『ターミネーター』
パターンなのが嬉しい。
これだと、アクションが映画の中で浮き上がることがないからね」

----ニャるほど。
「あと、
やはり未来都市の造形だね。
これは物語の主軸にも大きく関わるから、少し詳しく説明しよう。
この映画の舞台は21世紀末。
地球は最終戦争により大部分が居住不能に。
いまでは、富裕層が暮らすブリテン連邦“UFB”と、
その支配下にある“コロニー”のみ。
UFBは、かつてのヨーロッパのエリア。
コロニーは、同じくかつてのオーストラリア大陸にある。
そして、ここが画期的なんだけど、
その二つを地球のコアを貫くエレベーター“フォール”が行き来しているんだ」

----ぷっ。アを通り抜けるってありえないよ。
「だから、そこがSF。
いわゆる空想科学の世界だからね。
で、このコロニーは
あの『ブレードランナー』にも出てきたような
猥雑に満ちた香港のイメージ。
おまけに、ひっきりなしに雨が降っている。
この監督、
『ブレードランナー』がほんとうに好きなんだろうね。
映画最大の山場とも言えるカーチェイス、
それはスピナーを思わせるホバーカーで行なわれるし…。
SFへのオマージュはこの『ブレードランナー』だけでなく、
他にもいっぱい。
UFBの移動手段のひとつ、
エレベーターは前後左右ばかりか上下にも移動。
これは、あのホラー『CUBE キューブ』の高速バージョン。
もちろんポール・ヴァーホーヴェン監督の前作への目くばせもあって、
乳房が3つの女性が問う女子足り、
シュワちゃんが中に入っていた巨大女性そっくりの女性が
前回とは違う形で出てきて
観る者をミスリードしたり…」

----ふうん。それはオモシロそう。
「もちろんオマージュばかりじゃない。
この映画独自のものも…。
たとえば
主人公の手の中にはセル状の携帯電話が埋め込まれていて、
ガラス面に押し付けることで映像が現われる。
かと思えば、銀行の貸金庫は
レトロフューチャーと言えば聞こえはいいけど、
いつの年代のモノ?と言いたくなるほど古い。
もっともこれはコロニーにあるからとも言えるけど…」

----あれっ。
コロニーって貧困層の居住区域。
貸金庫があるのって少し変?
「まあ、そこはツッコミなし(汗)。
最後に俳優だね。
この映画の最大の立役者はケイト・ベッキンセール。
『アンダーワールド』で、
彼女を有名にしたレイ・ワイズマンだけあって
その引き出しをよく知っている。
まさに鬼妻という形相で
どこまでもどこまでも執拗に主人公を追い懸ける。
そのキレのよさ。
そして彼女を取られるキャメラポジションの見事さ。
画面の奥の隅にちらっとその姿が移っただけでも、
インパクトは大きく、観る者に最大限の恐怖を与える」

----そういえば、
他にもジェシカ・ビールが出ているんだよね。
「彼女が演じるのは
主人公の夢の中に現われる謎の女性メリーナ。
彼女とケイト・ベッキンセールの対決も含め、
これは一種のヒロイン・アクション
それも究極のね。
物語の方は原作ありきで
大筋を変えるわけにはいかないから、
このようなアプローチを選んだということだろね。
ということで、ここでも物語は割愛。
あとはスクリーンで観てみてね」



                    (byえいwithフォーン)


フォーンの一言「キービジュアルが『バイオハザード』っぽいのニャ」ちょっと怒るニャ


『スター・ウォーズ』トルーパー風のロボット警官も出てくる度

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『映画 ひみつのアッコちゃん』

2012-08-02 23:10:09 | 新作映画

----アニメの『マダガスカル3』
『ダークナイト ライジング』
同日興行収入を超える洋画No.1のビッグ・スタート!
でも、まだその映画のお話聞いてニャいよね。
「アセアセ。
気がついたら、もう公開に。
そんなこともあるから
ちょっと今回は早めに…」

----だからって、
まさかこの映画『ひみつのアッコちゃん』からくるとは思わニャかったな。
これって、昔のテレビ・アニメの
実写版でしょ。
『愛と誠』にしてもそうだけど、
なぜ、いまごろ映画化するのか、
ほんと不思議。
その時代のファンの心に訴えるなら、
アニメでやればいいのに…。
「それは確かにそうだね。
しかも、主人公は<少女>のはずなのに、
今回の映画化では、綾瀬はるか。
どう考えても不自然。
果たして、どんな脚色が施されているのか、
実は、ぼくも観る前までは心配だった…」

----その言い方だと、
思ったよりもオモシロかったって感じ?
「うん。
少なくとも観ていて飽きることはない。
これは映画の作り方が巧いんだろうね。
もともと、この物語、
鏡に向かってテクマクマヤコン、テクマクマヤコン
呪文を唱えれば
その願いがかなうというお話。
前提からしてありえないものだし、
ツッコミを入れるだけヤボというもの」

----えっ?
でも、その言い方だと、
ファンタジーものは
全部、許せちゃうということにならニャい?
「いや、そうじゃないんだ。
ファンタジーだからって
なんでも好き勝手なことやっていいというワケじゃない。
その物語の中において
前提とされている<世界観>や<ルール>にのっとっているか、
あるいは、あらかじめ設定されたキャラクター像から外れていないか…」

----で映画が現実(リアル)から離れているのはかまわない。
でも、
映画の中でのリアルは一貫していなくては…と、
そういうこと?
「まさに。
10歳の女の子、加賀美あつこ(吉田里琴)、ことアッコは、
早くオトナになりたがっている。
そんな彼女の前に、黒スーツの鏡の精(香川照之)が現われ、
『このことは絶対秘密』と言いつつ、
テクマクマヤコンの呪文と
何にでも変身できるという、その魔法の効果を教える。
希望かなって22歳の姿に変身したアッコ(綾瀬はるか)は、
ひょんなことから、
化粧品会社のエリート社員の尚人(岡田将生)にスカウトされ、
同じ会社でアルバイトをすることになる。
ところが、その化粧品会社では
前社長を追い出した熱海専務(谷原章介)が
次期社長の座を虎視眈々と狙っていた…というもの。
さて、このような“ありえない”お話の中で、
それでも守らねばならないモノ。
それは、アッコちゃんが
見てくれはオトナでも中身は10歳の女の子ということ。
この軸さえブレなければ、
逆に、その“ありえない”ことから生まれることが
喜劇にもなれば悲劇にもなりうる、
きわめて自由な物語作りが可能となる」

----喜劇は分かるような気がするけど、
悲劇ってのは?
「たとえば、
尚人とアッコちゃんの間に恋が芽生えたらどうだろう?
彼は彼女が10歳とは知らないワケだし、
アッコちゃんから秘密を喋るわけにもいかない。
で、この映画では、
物語をスリリングにするべく、
彼女が秘密を喋らなくてはならないような設定を
脚本の中に巧みに入れ込む」

----ニャるほどね。
そういえば、
子どもの心のまま大きくなるという映画、
確かハリウッドにもあったような…?
「傑作ファンタジーの誉れが高いトム・ハンクス主演の『ビッグ』だね。
もっともあの映画は、
体が大きくなることのきっかけにカーニバルがあって、
ちょっとブラッドベリの世界に似たところもあったからね。
この映画は、それに対して
世界観としては、60年代東宝のサラリーマン映画の趣。
ちょっぴり切なく、でも楽しく明るく…。
オチなんかも、よく考えてあると思ったね」



                    (byえいwithフォーン)


フォーンの一言「猫のロシアンブルーが活躍するらしいのニャ」身を乗り出す

※アッコの最終学歴は、早稲田大学算数学部。
みなさんお待ちかね。
綾瀬はるかは自分で<胸>について言う度

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