ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『白い馬の季節』

2007-07-31 10:31:00 | 新作映画
※カンの鋭い人は注意。※映画の核に触れる部分もあります。
鑑賞ご予定の方は、その後で読んでいただいた方がより楽しめるかも。


(原題:季風中的馬 Season of the Horse)

----これってモンゴルの遊牧民の映画だよね。
最近、はやっているね。
「そうだね。日本で公開されることが多くなった。
でも『天空の草原のナンサ 』や『モンゴリアン・ピンポン』とは
そのテイストがまったく違う。
これまでの映画に見られたような素朴さ、おおらかさとは異なり、
追いつめられたような切迫感がある。
ドキュメンタリー・タッチだったそれらの映画に比べて
出演者たちも<演技>が見えちゃうしね」

----<演技>が見えちゃう?
「そう。それもそのはず、
主人公のウルゲンを演じているのは
舞台俳優としてのキャリアを持つニンツァイ。
彼はこの映画の監督・脚本も務めている。
そこでこのようなアプローチの映画になったんだろうね。
そうそう、妻インジドマを演じるナーレンホアはニンツァイの妻。
彼女もまた人気俳優だ」

----でもそれだけに、
ドラマ性もありそうだよね。
「うん。物語の軸はしっかりしている。
まず背景から話そう。
主人公たちは何世紀にも渡り
放牧生活を送ってきたモンゴル民族の子孫。
季節ごとに新しい牧草地を求め、
生活の場所を移して暮らしてきたわけだけど、
干ばつ続きで草原が砂漠化。
牧草は枯れ果て羊たちは餓死している。
そのため周りでは伝統的な暮らしを断念し、
町へ移住をしている」

---えっ、それってほんとうニャの?
「うん。
干ばつに加え、降水量の低下、強風などの自然現象、
そして草原を潰して作られる農地の拡大、
羊の過放牧、漢族の移住といった人為的なものもあるらしい。
これって日本でも問題となっている黄砂とも関係あるようだ」

---それは大変だ。中国政府は見過ごしているの?
「いやいや。
自然環境保護のために
自然保護区の拡大、草原の回復、放牧の禁止、
他地域への移住などさまざまな対策を講じているんだけど、
結果、それが内モンゴル牧畜民の伝統的な暮らしを奪う結果となっている-----
と、これはプレスからの引用。
でもそれらの事実を知らなくても映画を観れば分かるけどね」

---ニャるほど。土地から土地へ移動しながら放牧する人々と、
そこを国の政策で
土地を囲い込み保護しようとする政府。
これじゃあ、にっちもさっちもいかないね。
「うん。大きな視点でいえば、
ひとつの文化が滅びようとしているわけだ」

---ところで、なぜ“馬”ニャの?
「彼らは元々騎馬民族。
『馬上で生まれ馬上で死ぬ』とも言われている。
そんな彼らが赤貧に喘ぎ、
その馬さえも手放さなくてはならなくなる。
映画は、誇り高く生きたいと願うウルゲンと、
生きるためには生活を変えなければと現実的選択を迫る妻。
そして学校にさえも池に息子を軸に話が進む。
映画は後半、馬の持つ象徴性を中心に押し出し
神秘的な側面を帯びてくる。
観る人のために、あまり詳しくは言えないけど、
実は劇中にニルゲンが鎧を着て馬に乗るシーンがある。
ここはモンゴル民族の気高き誇りを語ると言うよりも、
もはや時代遅れというドン・キホーテ的な側面が出ている」

---映像はどう?
「監督がモンゴル自治区生まれだけあって、
自然の捉え方は抜群。
雲が浮かぶ大空のパノラマや
山の端を赤く染める夕陽に息を飲みつつも、
白い馬が舗装された道を歩くラストはやるせなかったね」


 (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「辛い話だニャあ」悲しい


※知らないことが多い度
人気blogランキングもよろしく

☆「CINEMA INDEX」☆「ラムの大通り」タイトル索引
(他のタイトルはこちらをクリック→)index orange
猫ニュー



『ブラック・スネーク・モーン』

2007-07-29 17:29:01 | 新作映画
(原題:Black Snake Moan)

----この映画って予告編が話題になっているんでしょ?
「うん。クリスティーナ・リッチが
サミュエル・L・ジャクソンに半裸で鎖に繋がれた映像と、
リッチとジャスティン・ティンバーレイクとの激しいラブ シーンの一部が入っている。
このシーンはジャスティン・ティンバーレイクの元恋人を激怒させ、
破局を迎える原因の1つとなったという噂が流れたんだ」

----そのジャスティン・ティンバーレイクはともかくとして、
なぜクリスティーナ・リッチが鎖で繋がれているの?
「じゃあ、簡単に話そうかな。
舞台はアメリカ南部の田舎町。
サミュエル・L・ジャクソンが演じるのは、
かつてはブルースを愛し、ブルースに愛された初老の黒人ラザラス。
彼は最近、妻に逃げられている。
しかもその相手が自分の弟と言うのだからたまらない。
そんなラザラスが運転中に道ばたで見つけたのがセックス依存症の女レイ。
その裏には彼女のある哀しい過去があるんだけど、
男と見れば誰彼の見境なく抱かれてしまう彼女の心の闇を払おうと、
ラザラスはリッチを鎖で部屋に繋ぎとめている、
と、こういうわけだ」

----ニャるほどね。
てっきり『完全なる飼育』のアメリカ版かと勘違いしていた。
「いやいや。
ラザラスは敬虔なクリスチャン。
映画は、ここにジャスティン・ティンバーレイク演じるレイの恋人ロニー役の
エピソードを加えることで、
物語に広がりと奥行きを持たせていく。
と言うのも彼は彼で不安神経症を抱えているんだね。
後半、ロニーが大きなトラックに挟まれるシーンがあるんだけど、
ここでのティンバーレイクの恐怖演技は実にリアルだったね」

---と言うことは、本作の見どころは、
俳優たちの演技のコラボ?
「うん。クリスティーナ・リッチは
プラスチックの鎖でなく本物の鎖を身につけることを望み、
両手は水ぶくれになったという。
裸足で逃げるシーンもあるし、足は出血したようだ。
一方のジャクソンも映画のために
ブルース・ギターを身につけている。
しかもこれがなかなか聞かせてくれるんだ。
声もいいしね。
その中で歌う曲のひとつが
タイトルにもなっている『ブラック・スネーク・モーン』。
元はブラインド・レモン・ジェファーソンの曲で
“黒い蛇”というのは“襲いかかる闇”の喩えとなっているらしい。
実際、この映画は基調となる音楽をロックやラップでなく、
ブルースにしたのが効いている。
物語の底に流れているのは
自分一人では、
そこから逃げ出したくても逃げることができない
それぞれの“moan=うめき”だからね。
映画は西部劇の古典を参考にしたということらしいけど、
ワイドスクリーンをめいっぱいに使ったその映像も効果的。
逃げ出そうとするレイを引き戻す長い鎖、
その関係をスリリングに写し出していたよ」

----ニャんだかほめすぎてニャい?

 (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「でもフォーンには刺激が強いニャあ」もう寝る

※ブルース・ギターがむせび泣く度
人気blogランキングもよろしく

☆「CINEMA INDEX」☆「ラムの大通り」タイトル索引
(他のタイトルはこちらをクリック→)index orange
猫ニュー

画像はアメリカ・オフィシャルより。

『さらば、ベルリン』

2007-07-28 15:21:00 | 新作映画
(原題:The Good German)

----これってスパイ映画の『さらばベルリンの灯』とは違うの?
「うん。ぼくも最初はそうかと思って
頭の中をマット・モンローの『Wedenesday′s Child』が流れていたんだけど、
実は最近 『オーシャンズ13』が公開されたばかりの
スティーブン・ソダーバーグ監督作品。
しかも主演がジョージ・クルーニー。
ソダーバーグはクルーニー監督作『グッドナイト&グッドラック』
製作総指揮を務めたりもしているし、
ふたりの相性はほんとにいいようだ」

----『グッドナイト&グッドラック』と言えば、
この映画も全編モノクロってことニャのかな…。
写真を見ても、どことなくクラシックな感じ。
「そうだね。
まるで40年代名画を観ているかのような錯覚に陥ってしまう。
それもそのはず。
ソダーバーグはその物語だけでなく、
映画そのものを完全に当時のように撮ることを決断しているんだ」

----それはじっくり聞きたいニャあ。
でもその前にストーリーを教えて。
「舞台は、1945年のドイツ、ベルリン。
米ソ英仏4カ国に分割統治されたこの地を
取材のために再び訪れたアメリカ人記者ジェイク(ジョージ・クルーニー)は、
そこでかつての恋人レーナ(ケイト・ブランシェット)と偶然の再会を果たす。
しかし彼女はジェイクの運転手を務める
駐留米兵タリー(トビー・マグワイア)の情婦に身をやつしていた。
レーナは国外に脱出する夢をタリーに託していたが、
そのタリーはソ連領内で死体となって発見される。
しかもなぜか米国側は殺害事件をもみ消そうとする。
時を同じくして消息不明のレーナの夫エミールを探す動きが
各国で慌ただしくなってくる。
犯罪と人間の欲と陰謀が渦巻く中、愛する女を追いかけるジェイク。
果たして真実の先にあるのは?」

----ニャるほど。話だけ聞いてもオモシロそうだ。
でも見どころは他にもあるんだったよね。
「まず注目してほしいのが
ジョージ・クルーニーの口調。
これがまるでハンフリー・ボガートそっくり。
さらに言えば、現代の映画のようにカメラが役者の演技を捉えるのでなく
役者がカメラに向って演技をしているんだ。
クルーニーいわく『演技の内面化なんてほとんどなくて、
すべてを包み隠さずさらけ出す』」

----それはかえって新鮮だね。
最近の映画って抑えた演技が要求されること多いものね。
「撮影、編集面では、
まずだれもが気づくのがワイプカットの多用。
これも最近では廃れた手法だね。
あと過去の映像記録を多用しているのも特徴かな。
それとこれは気づかなかったんだけど、
ほとんどがオープンセット。
しかもカメラレンズも年代もので、
背景にはリアプロジェクションを模倣した手法を使っていたらしい」

----40年代だったら、どういう風に撮影したか?
それを考えながらそれぞれの手法を選択していった…。
こういうことなのかニャあ?
「そうだね。
音楽も故アルフレッド・ニューマンの息子トーマス・ニューマン。
これが盛り上げる盛り上げる。
それぞれのシーンでの各自の気持ちを代弁しているかのよう。
ほんとうに当時の映画を研究しつくした映画だね」

----それってボクにも分かるのかニャあ?
「ラストなんてその舞台は空港。
ここでのカット割りも『カサブランカ』そっくり。
当時の映画をこの一本しか観ていなくても、
なるほどと思うんじゃないかな。
そうそう、ファムファタールを配した物語の結末、
そして真実を知った主人公の行動の取り方も40年代、50年代っぽい。
空気はフィルムノワールで、主人公の生きざまはハードボイルド。
この映画って、一種の変化球かもしれないけど、
それでもパロディにしてしまわなかったことが嬉しいね」

----でも結局は、これってやはり企画ものじゃニャいの?
「そう言ってしまえば元も子もないけど…」


 (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「雰囲気に酔いそうだニャ」うららかフォーン

※クラシックな雰囲気だ度
人気blogランキングもよろしく

☆「CINEMA INDEX」☆「ラムの大通り」タイトル索引
(他のタイトルはこちらをクリック→)index orange
猫ニュー 

画像はアメリカ・オフィシャルより。

『純愛』

2007-07-27 10:32:58 | 新作映画

----ニャんだか、そのものズバリのタイトルだね。
日中合作と聞いたけど…。
「うん。これは俳優の小林桂子の日中文化・福祉交流プロジェクトで
映画と学校を創るというもの」

----よく分からないニャあ。
「簡単に言えば、映画の収益金の一部が
NPO法人小林桂子基金へ寄付され、
それを基に学校を創っていこうというんだね。
そのことについては、
ここでは深く話さないから興味があったら調べてね。
『ラムの大通り』のメインはあくまで映画の中身だから…」

----じゃあ。まずはストーリーを教えて。
「舞台は、終戦直後の中国大陸。
日本人開拓民の一団が帰国しようと山の中を歩いている。
その中に主人公の若者夫婦がいた。
妻は怪我で瀕死の渕をさまよっている。
しかも夫も
土地の猟師・山龍が仕掛けた獣獲りの罠にかかってしまう。
最初は日本人への恨みをストレートに出す山龍だったが、
目の見えない年老いた母とともに
次第に彼らを受け入れていく」

----典型的なヒューマンドラマという気がするニャあ。
タイトルのイメージからはほど遠い。
「うん、そうだね。
で、日本人の夫は即座に妻を姉と呼ぶ。
その方が受け入れられやすいと思ったわけだね」

----分かった。山龍は彼女に恋心を抱き始める。
そこで複雑な三角関係が生まれるというわけだ。
「そうなんだ。
さて、ここまで話を聞いて
タイトルにある『純愛』とは、
最後まで愛を貫き通す日本人夫婦を指すのか、
それとも、山龍の彼女への気持ちなのか?
フォーンはどっちだと思う」

----う~ん。分からないニャあ。
「でしょう?
実はここから波瀾万丈のドラマが待ち構えているんだ。
でもこれ以上喋ると、観る人の楽しみを奪うことになるから少しだけ。
彼女は産婆さんとして土地で信頼を勝ち得ていく。
そしてそのときに渡した鯉のぼり。
この二つがキーワードだね」

----ふうん。でもけっこう喋っていない?
「うん。
それと言うのもホームページなんかを見ても
映画の内容に付いてあまり触れられていないから。
これじゃ分からないんじゃないかと思って…」

----映画全体としてはどうなの?
「少し紗がかかって褪色したような映像。
昔の日本映画を観ているような懐かしさはあったね。
それとやはり現地ロケがうまく言っている気がした。
それは風景だけでなく、土地の人の暮らしぶりも含めてね。
なかでも満州鉄道時代の汽車も
時代色を出すのに効果的だった思う。
なんでも色を塗り替え、線路の枕木も当時のものに取り替えたらしい」

----へぇ~っ。本格的だね。
「そう。美術がなかなか。
砂利道、川の流れを作り、
木を植え、とうもろこしを育てたんだって…」

----うわあっ。市民プロジェクトとは思えない。
本格的だね。

 (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「エンディングの歌はATSUSHI(EXILE)だニャ」ぱっちり

※実話が元になってる度
人気blogランキングもよろしく

☆「CINEMA INDEX」☆「ラムの大通り」タイトル索引
(他のタイトルはこちらをクリック→)index orange
猫ニュー 

『オーシャンズ13』

2007-07-26 00:14:52 | 新作映画
(原題:OCEAN′S THIRTEEN)

----確かこのシリーズ、苦手じゃなかったっけ?
「うん。なんと言うか
ごちゃごちゃしている感じがして…。
登場人物があまりにも多すぎると言うのもその原因のひとつかもしれないけど、
少しドラマにもたつきがある」

----今度もそうだったのかニャ?
「いや。これが意外とすっきり。
脚本に『ラウンダーズ』のコンビを迎えたこともあって、
カジノの描写も分かりやすかったし、
なんといっても今回は
仲間の<リベンジ>という、
誰もがノリやすい話になっていたからね」

----仲間のリベンジ?
「そう。物語はオーシャンズのメンバーのひとり、
ルーベンがバンクの裏切りによって
死の淵にまで追いつめられたことから始まる。
このバンクと言うのは
所有するすべてのホテルで
最高格付けの“5つのダイヤ賞”を獲得してきている
いわゆるホテル王なんだ」

----あっ分かった。オーシャンズはそのダイヤを盗むんでしょう?
「いや、最初彼らの計画に、それはないんだ。
まあ、最終的には、ある男との取引で
ダイヤの強奪もやらざるを得なくなるけど、
オーシャンズの目的は、あくまでも仲間の借りを返すことにある。
まもなくグランド・オープンを迎える最高級ホテル“バンク”で、
その格を徹底的に貶め、
しかも併設するカジノの客たちに大もうけをさせて
バンクをすっからかんにさせてしまう。
それが彼らの考えるリベンジなんだ」

----ニャるほど。
それは小気味いいね。
「そうなんだよ。
私腹を肥やす悪者をこてんぱてんにやっつける……
これぞまさに娯楽映画の王道。
そこにユーモアやお色気まで入れると言うサービスが
この映画をシリーズ化たらしめている人気のゆえんだろうね」

----たとえば?
「ダイスを作っているメキシコの工場に乗り込んだバージルが
そこで低賃金に怒りストライキを始める…。
あるいはこれまでどちらかと言うと子供扱いされていたライナスが
バンクの右腕アビゲイルを引っ掛けようとする」

----ライナスってマット・デイモンだっけ?
「そう。なぜか大きな付け鼻。
しかも媚薬まで使っちゃう(笑)」

----そう言えばバンクは誰がやってるの?
「名優アル・パチーノ。
で、アビゲイルにはエレン・バーキン」

----エレン・バーキンって
『シー・オブ・ラブ』でアル・パチーノと共演してなかった?
「鋭いね。
なんでも彼女は前作『オーシャンズ12』に出ていながら
そのシーンがカットされたと言う哀しい過去(笑)を持っている」

----へぇ~っ。
ところで『13』ということは
仲間がふたり増えているってことだよね。
「うん。今回うまいなと思ったのは、
その13人目の伏線の張り方と、登場のさせ方。
そうそう、彼や他の登場人物も含めて
プレスには載っていないサプライズがいくつもある。
今回は、ほんと楽しめる作品になっていたね」


 (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「ゴージャスと言うのはこのことを言うニャ」ぱっちり

※映画の贅沢さに酔いながら、日頃の憂さも晴らせる度
人気blogランキングもよろしく

☆「CINEMA INDEX」☆「ラムの大通り」タイトル索引
(他のタイトルはこちらをクリック→)index orange
猫ニュー 

『伝染歌』

2007-07-24 22:45:48 | 新作映画
「いやあ。この映画は気分が悪くなるくらい怖かったね」
----えっ?清水崇や中田秀夫より怖いの?
「いや、そういう意味の怖さじゃなくて、
おそらく監督が原田眞人だからだろうけど、
あまりにも中身が厭世的なんだ」

----原田眞人って
『金融腐蝕列島〔呪縛〕』とか『突入せよ! 「あさま山荘」事件』といった
社会派の監督のイメージがあるけど。
「うん。その一方で『バウンス ko GALS』なんてのもある。
この『バウンス ko GALS』と庵野秀明監督の『ラブ&ポップ』は
いわゆる90年代後期のコギャルたちのリアルな姿を描いた作品として、
ぼくには強烈に記憶に残っている。
それまでの女子高生作品と大きく違っていたからね。
今回は、その延長線上とも言うべき、
現代の女子高生たちが主人公。
教師をまったく無視したその空気感がまず怖い。
実を言うと、彼女らの会話の言葉尻をやたら強調したようなカット割りに
最初はセリフが聞き取れず
映画の中に入っていきづらかったんだけどね」

----原作は『着信アリ』シリーズの秋元康だっけ。
ちょっと「意外な組み合わせって気がするけど?
「いやいや。原田監督は
『おニャン子ザ・ムービー 危機イッパツ!』も撮っているし、
この組み合わせはそう驚くことでもない。
しかも主演が秋元康プロデュースによるアイドルユニットAKB48だしね」

----そういう話、聞いてると全然怖そうじゃないけど?
「う~ん。どう言ったらいいんだろう。
お話自体は、そうでもないんだけど、
怖いのはその背後にある社会の切り取り方かな。
社会派と言われるだけあって、妙なリアリティがあるんだね。
物語は、“その歌”を聴いたら人が死ぬと言われる自殺ソングを巡って、
次々と死んでいく女子高生たちと
それを記事にしようと追いかける雑誌社の面々を描いたもの。
描写そのものは、ときにオカルト的になるとは言え、
ホラーを見慣れた目からするとそれほどのものでもない。
問題は、“その歌”の背景、
そして“その歌”が自殺ソングとなるに至ったある事件だね。
実はそれが主人公のトラウマとなってるわけだけど、
監督はそこにいまの日本が抱えるさまざまな問題を投げ入れる。
たとえば借金による生活苦、たとえば親による子供の殺人…。
シナリオ自体は『フラガール』の羽原大介だけあって、
実にうまく二つの物語を融合させてはいるんだけど
観ていて実につらかったね」

----でも原田監督と言えば、
そのハイセンスなカメラワークでも知られるよね。
「確かに。
今回も超広角やソフトフォーカスなどはあたりまえ。
たとえば真俯瞰で部屋から部屋へと移動する女子高生たちを捉えた
『マイノリティ・リポート』を思わせるトリッキーな映像や
オーソン・ウェルズの『上海から来た女』そっくりの鏡の間のスリラーもある。
そうそう、それにこれは映像の部分だけでなく
物語としてもなんだけど、
スティーブン・キング『シャイニング』もたっぷり出てくるね。
でも、そういうさまざまな名作へのオマージュを感じさせる以上に、
この監督の持つ<社会性>が前面に出ているのがこの映画。
純粋にホラーを楽しみにいったら、
しっぺ返しを食らうかもね。
とにかく『着信アリ』とはまったく違う」

----やはり映画は監督次第と言うことなもかニャ。

 (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「そんな怖いのダメだニャあ」もう寝る

※いやあ、ヘビーだった度
人気blogランキングもよろしく

☆「CINEMA INDEX」☆「ラムの大通り」タイトル索引
(他のタイトルはこちらをクリック→)index orange
猫ニュー

『エディット・ピアフ 愛の賛歌』

2007-07-22 11:48:42 | 新作映画
(原題:La Mome)

※映画の核に触れる部分もあります。
鑑賞ご予定の方は、その後で読んでいただいた方がより楽しめるかも。



----これって伝記映画だよね?
「うん。でも相当に凝った作りとなっている」
----えっ?大河ドラマじゃニャいの?
「一応はそうなんだけどね。
あまりにも時制が行ったり来たりしていて、
基準がどこにあるのか分からなくなってくるんだ。
冒頭、ピアフがステージで倒れるところから、
物語は一気に彼女の不幸な少女時代へ。
その後のピアフの人生を喋るのは観る人の楽しみを奪うことになるから
ここでやるつもりはないけど、
かなり壮絶なものだね」

----時制が行ったり来たりと言うのは?
「うん。最初のうちは作者側の視点と思っていたんだけど、
徐々にこれが死の間際の床にあるピアフの回想と言うことが分かってくる」

----そうか、だから
あっちこっちに飛ぶんだ。
なんでそんなことしたんだろう?
「うん。伝記と言うと、
普通はそこに作者の解釈や思いも混じるから、
ほんとうに、その人の実像を描いたのかは怪しくなるよね。
そう言う意味では“回想”も似たようなもの。
それがほんとうにあったことなのかどうかは分からない。
長い年月の間に美化されたり、
逆に悪い方向にゆがめられたり…。
しかも彼女は病魔に苦しめられているんだから。
実は、ぼくはこの映画を観ていて
それが実際にあったことなのかどうか、
不思議に思った箇所がいくつかあるんだ。
たとえば浜辺でのインタビューのシーンとかもそのひとつ」

----ニャるほど。
それは他の人の意見も聞きたいよね。
「で、ここからがクライマックスで
※ネタバレ注なんだけど、
なんと『田園に死す』になっいく」

----それって、寺山修司の?
「うん。あの映画では後半、
前半の回想が美化されたものであったことが
明らかになる。
そこまではいかないけど、
後半、悪夢のようなイメージが次々と出てくる。
ピアフ自身も『見たくないものが…』と
うわごとのように言う」

----それって怖いね。
美しいはずの想い出が消されていく。
「そうなんだ。
本来は自由であるはずの自分の脳の中が、
いやなイメージに占領されていく。
ちょっとたまらなかったね」

----でも、音楽もいいし。
主演のマリオン・コティヤールも
なんかスゴそう。
フォーンは観てみたいな。
「確かに。
これは一見の価値ありだと思うよ」


 (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「ピアフの歌好きニャ」ぱっちり

※思ってたのといい意味で違っていた度
人気blogランキングもよろしく

☆「CINEMA INDEX」☆「ラムの大通り」タイトル索引
(他のタイトルはこちらをクリック→)index orange
猫ニュー 

画像はアメリカ・オフィシャルより。

『ピアノの森』

2007-07-19 12:36:37 | 新作映画
----この映画、評判がいいようだね?
「うん。原作が『花田少年史 幽霊と秘密のトンネル』でも知られる一色まこと。
現在もマンガが『モーニング』で連載中。
コミックスもバカ売れしているらしい」

----でも、それは原作のお話でしょ?
ぼくが言っているのは映画のこと。
「制作をマッドハウスが手がけているんだね。
ここは『パプリカ』や『時をかける少女』などで高い評価を得ている。
丁寧な作りで人気が高いんだ。
今回もいちばんのキーとなるピアノの演奏、
その手元を手書きで再現」

----えっ。モーションキャプチャーでやれば簡単なのに?
噂によるとアシュケナージが主要なピアノシーンの演奏をしているんでしょ?
もったいないなあ。
「鍵盤は3Dで描写しているらしいけどね。
プレスによると
指の動きに出るキャラクターの性格、
ひいては映画のスクリーンに耐えられるダイナミズムは、
CGでは生まれないとのことらしい」

----ふうん。でも観ていてそこまで分かるの?
「いやあ。
ぼくなんかだと分かったような気になるってくらいかな。
音楽の素養がある方じゃないし(笑)」

----ところでどんなお話ニャの?
「原作の序盤部分を映画化したらしいけど、
ざっと話せば次のようになる。
ピアニストを目指す雨宮修平は小学5年生。
夏の終わり、とある田舎町へ転校してきた彼は
同級生の一ノ瀬海に誘われ、
森の中の不思議なピアノと出会う。
そのピアノは修平には弾くことができず、
なぜか海にだけ弾くことができたんだね。
そのことを聞いた音楽教師・阿字野も森へ。
実はそのピアノとは、かつて阿字野がピアニストだった頃に弾いていたピアノ。
やがて森の中にピアノがある理由が
阿字野の過去とともに明らかに。
そして海のピアノに心揺り動かされた阿字野は
彼にピアノを教え、コンクールへ出そうとする…」

----あらら、主人公が修平かと思ったら
いつの間にか消えちゃった。
「いやいや大丈夫。
ちゃんと最後まで出てくるから。
この物語がステキなのは
修平が海の天才的才能を認めても、
怨んだり友情が壊れたりはしないこと。
月光が射す神秘的な森の中のように
澄んだ神聖な美しさがある。
修平の声を神木隆之介がやっているのもその一因かも。
彼にどろどろした感情はあまり似つかわしくない」

----海はだれがやってるの?
「上戸彩だ。意外でしょ?」
----えっ?『インストール』の顔合わせだ。
あれってかなりHじゃなかったっけ?
「あっ…」



  (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「クラシック聴くと、なぜか眠くなるニャ」もう寝る

※この話、いまはどうなってるんだ?度
人気blogランキングもよろしく

☆「CINEMA INDEX」☆「ラムの大通り」タイトル索引
(他のタイトルはこちらをクリック→)index orange
猫ニュー 


『僕のピアノコンチェルト』

2007-07-15 22:19:40 | 新作映画
※カンの鋭い人は注意。※映画の核に触れる部分もあります。
鑑賞ご予定の方は、その後で読んでいただいた方がより楽しめるかも。


(原題:Vitus)

----今年って天才ピアニストの映画が多くニャい?
すでに公開されたところでは『神童』。
この夏が『ピアノの森』に『私のちいさなピアニスト』、
そして『僕のピアノコンチェルト』。
「うん。『私のちいさなピアニスト』は韓国映画。
ある女性ピアニストが自分が果たせなかった夢を
偶然見いだした天才少年に託すと言うお話。
で、この少年というのが事故で両親と死別していて、
粗雑なふるまいをするおばあさんと暮らしている。
ところが、このおばあさんが病死したことから…というお話だ」

----あらら。ストーリー喋っちゃったね。
『僕のピアノコンチェルト』も同じようなお話に見えるけど…。
「いやいや、これがなかなか凝ったお話。
天才児ヴィトスの両親レオとヘレンは息子の才能を知り、
将来に輝かしい夢を見るようになる。
その過大な期待の中、
ヴィトスは先生を小馬鹿にし、
周囲のクラスメイト(と言っても年上)とも波長が合わず孤立していく。
そんな彼の気持ちを分かってくれるのは、
田舎で家具工房を営むおじいちゃん(ブルーノ・ガンツ)。
『普通の人になりたい』というヴィトスに、
おじいちゃんは『決心がつかなければ、大事なものを手放してみろ』とアドバイス。
それからしばらくして、ヴィトスはマンションから飛び降りてしまう」

----うわっ。確かにスゴい話。
「でしょ。
しかもそのヴィトス、怪我こそなかったものの、
事故の後遺症で高いIQとピアノの才能を失ってしまうんだ」

----あらら。
「まあ、映画はこの後も波瀾万丈のお話が続いてゆく。
なかでもヴィトスが少年の頃にときめいた
ベビーシッター、イザベルとの再会は胸にしみたね。
最初は彼に気づかないイザベルが
あることによってその事実を知る。
ここなんて少し涙腺が緩みそうになったね
この映画、実はオープニングが飛行場。
そこでヴィトスは飛行機に乗り込み操縦をしようとする。
で、このシーンがクライマックスで再び登場」

----えっ?少年でしょ。
いくら天才でも飛行機の操縦までは…。
「いやいや。その<嘘>を描くのが映画。
ありえなくても許せちゃう……どころか、
ぼくなんて嬉しくなってしまう。
ここにノレるかノレないかで、
この映画への評価も変わってくるだろうね。
飛行機ばかりでなく物語も<着地>させる。
実に憎い演出だ。
このシーンだけでも観る価値ありだね」

----そうか、だれも『E.T.』で
自転車が空を飛ぶことに文句は言わないものね。

  (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「そりゃまあビックリだニャあ」身を乗り出す

※天才ならではの悩みだ度
人気blogランキングもよろしく

☆「CINEMA INDEX」☆「ラムの大通り」タイトル索引
(他のタイトルはこちらをクリック→)index orange
猫ニュー

画像はダウンロード・ポスターです。

『ファンタスティック・フォー 銀河の危機』 

2007-07-13 21:44:29 | 新作映画

(原題:Fantastic Four:Rise of the Silver Surfer)

----この映画って92分しかないんだって?
前作もそうだったけど、
SFX大作にしてはどうも軽いと言うイメージがするニャ。
「あっ、それ分からない気もしないでもないな。
キャストもそれほどのビッグネームじゃないしね。
でも、アメコミ的なオモシロさはある方だと思う。
冒険いっぱい、ユーモアもいっぱい。
『デアデビル』や『キャットウーマン』などに比べても、
ポップで楽しい上がりになっている。
そうそう、空を飛んで3つに分かれるファンタスティックカーも出てくるよ」

----今回は、宇宙からの敵と戦うんだよね?
「うん。原作でも人気が高いシルバーサーファーが登場。
地球侵略の先兵的な役割を果たす。
あっ、このキャラはオールCG。
ただ声はローレンス・フィッシュバーンが吹き替えている」

----あれっ、死んだはずのドゥームがまた出ているね。
「うん。このシルバーサーファーに触れると、
いろんな超常現象が起こるんだ。
たとえばファンタスティック・フォーの面々の
超能力が入れ替わるのもそう。
そしてそのひとつに死からの復活があるわけ。
これは今回、伏線にもなっていて
クライマックスを盛り上げる」

----そう言えば、日本から始まるとか?。
「うん。静岡の駿河湾が凍結。
これはおそらく富士山が見えるというその景観で選ばれたんじゃないかな。
ラストにもまた日本が出てきて、ここである人たちの挙式が行われる」

----ニャに、その儀式って?
「言わなくても分かるでしょ。
だけど、このときの日本人、特に子供の衣装はなんとかならなかったのかね~。
あっ、衣装と言えば、
今回もジェシカ・アルバのスッポンポンがあるからお楽しみに。
でもスターになったからと言うことか、ほんのチラリ。
これはシリーズのお約束として今後も続いていくんだろうな」

----よくあるエンディング後のおまけは?
「エンディングクレジットが始まって、
すぐに1エピソードが現れるから、
最後まで観なければ……ということはない。
でも、やはり最後まで観るのがファンとしての礼儀だろうね」



  (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「で、誰と誰が結婚するのニャ?」身を乗り出す

※この軽さが魅力だ度
人気blogランキングもよろしく

☆「CINEMA INDEX」☆「ラムの大通り」タイトル索引
(他のタイトルはこちらをクリック→)index orange
猫ニュー


『トランスフォーマー』

2007-07-11 23:33:49 | 新作映画
(原題:TRANSFORMERS)

「いやあ、知らないってことは恐ろしいね。
これ、東映が夏休みに『仮面ライダー』と併映する
戦隊ロボットものそっくり----と思ったら、
もともとは日本発進だったんだね」

----どういうこと?
「映画があまりにも予想していたものと違ったため、
ちょっとネットで調べてみたんだ。
するとウィキペディアに次のような箇所があった。
“もともと国内で販売されていた『ダイアクロン』『ミクロマン』シリーズを
アメリカのハスブロ社が他の変形ロボット玩具と一緒に
『TRANSFORMERS』として販売したものが米国内で大ヒット、
それを日本に逆輸入したものが『トランスフォーマー』シリーズである”
と、こういうことらしい」

----そう言えば、似たようなタイトル聞いたことあるニャあ。
「そんなことまったく知らないから
最初はエアフォース・ワンの中で変形したロボットに
これってジョン・バダムの『ショート・サーキット』みたいだとか、
意志を持った車を観が出てくればジョン・カーペンターの『ザ・カー』『クリスティーン』だ、
都会に降り立つ宇宙人を観て
ここは『プレデター2』だ、なんて、
SF映画の記憶で楽しんでいたんだけど、
ガンダムを思わせる色くっきり鮮やかな巨大ロボットの出現であれれ?って感じ」

----で、どんなお話ニャのよ?
「いやあ、この映画に関しては
細かいことは知らなくていいんじゃないかな。
すでに滅びた星から地球にやってきた善と悪の機械生命体が、
地球の命運を握るキューブをめぐって
壮大な戦いを繰り広げる----これさえ知っていればOK。
というか、知らないでも分かる仕組みになっているけどね。
最近のスペクタクル、とりわけディザスター・ムービーは
予兆を少しずつ見せて、バ~ンと本題へのパターンが多いけど、
これはいきなり奴らの襲撃が始まる。
そう言えば『宇宙戦争』もそうだったし、
もったいつけないところが21世紀のスピルバーグ(笑)」

----ふうん。でもこの映画、アメリカで記録的ヒットしてるんだよね。
「うん。さっそく続編製作が決まったみたいだね。
スピルバーグいわく
『この映画が、人々に長く愛される作品の第1作目となることを期待しているよ』」

----ハリウッドはまた金脈を見つけたってことだね。  

(byえいwithフォーン)

フォーンの一言「日本でも大ヒットするかニャ」ぱっちり

※マイケル・ベイは、ほんとカーアクションが好きだ度
人気blogランキングもよろしく

☆「CINEMA INDEX」☆「ラムの大通り」タイトル索引
(他のタイトルはこちらをクリック→)index orange
猫ニュー 

画像はアメリカ ・オフィシャル壁紙より。

『リトル・レッド レシピ泥棒は誰だ!?』

2007-07-10 22:48:09 | 新作映画
(原題:Hoodwinked)

----“赤ずきん”ちゃんって、だれもが知っている童話だけど、
いろんな解釈がなされているよね。
「うん。
ぼくもこれはそういうタイプの映画化と思ったら、これが全然違う。
冒頭のエピソードはこう。
赤ずきんちゃんがおばあさんの家を訪ねてきたら、
そのベッドにはおばあさんに変装したオオカミが寝ている。
そこへぐるぐる巻きに縛られたおばあさんがクローゼットから飛び出し、
さらには窓から木こりが飛び込んでくる!」

----あらら。いきなりクライマックスじゃニャい?
「うん。
この映画は、
『赤ずきんちゃん』の登場人物だけ借りながら、
まったく違うお話に仕上げている。
オオカミは森に潜入中の新聞記者」

----ええええっ??
「この森では、最近レシピ泥棒がはびこり、
お店が次々と廃業に追い込まれていたんだ。
オオカミはそのことを調べていたんだね。
さて、今回の4人バッタリの事件はそれと関係があるのではと、
クマの署長や、カエルの探偵が彼らから事情聴取をする」

----分かった。彼らの話がそれぞれ食い違っているんでしょ?
『羅生門』みたいに…?
「う~ん。
プレスにも『嘘をついているのは一体…』と書いてあるけど、
実は、彼ら4人の証言に大きな食い違いは起こらない。
それよりも各自が体験したこと、
その遠因が事情聴取を重ねる中で次第に明らかになるという
この語り口にこそ、
本作のオモシロさは求められる」

----ん?よく分からないニャあ。
「たとえば、こういうこと。
赤ずきんちゃんがインディ・ジョーンズばりに
猛スピードのトロッコに乗るシークエンスがあるんだけど、
なぜか突然雪崩が起こり、さらにはレールが途中で消えてしまっている。
それらの理由が、
オオカミやおばあさんらの話を聞くうちに分かってくるんだ」

----へぇ~っ。それはオモシロそうだね?
あれっ。基本的なこと聞いちゃうけど、
これって人形アニメ?
風景とか見ると、ミニチュアみたいだけど…。
「いやいや。人形アニメ風に描いたCGアニメ。
おそらく誰もが知っている<童話>の登場人物たちが活躍することから、
そういう手法をセレクトしたんだろうね。
そうそう、このおばあさんはエクストリームスポーツを趣味としていて
その首筋に『GGG』の刺青がある。
言うまでもなくこれは『トリプルX』のパロディ。
これ以外にも映画のパロディがたくさん出てくるから
そっちの方でも楽しめると思うよ」


  (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「こんな赤頭巾ちゃん、ありなのかニャあ」もう寝る

※次回はヘンゼルとグレーテルも出るらしい度
人気blogランキングもよろしく

☆「CINEMA INDEX」☆「ラムの大通り」タイトル索引
(他のタイトルはこちらをクリック→)index orange
猫ニュー

画像はイタリア・オフィシャルの壁紙です。

『レミーのおいしいレストラン』

2007-07-09 21:13:38 | 新作映画
(原題:Ratatouille)


----これって予告だけで想像ついちゃう映画だよね。
フランス料理のシェフになることを夢見るネズミのレミーが
シェフ見習いのリングイニをお手伝い。
ふたりで次々とおいしいレシピを生み出す-----んでしょ?
「まあ、手短かに言えばそうなるかな。
ただ、これまでにも数多くの感動的傑作を生み出してきた
ディズニー/ピクサー作品だけに、
いわゆる<物語>の枠には収まりきれないオモシロさが
いっぱいに詰まっているけどね」

----たとえば?
「まず、誰もが目を奪われるのがその美術。
舞台はパリ。
エッフェル塔を中心にしたその夜景は
思わず息を飲むほど美しい。
映画はコメディを軸としながらも
次々とアニメならではのアクションを展開。
それもセーヌ川の立地をうまく使った立体的なチェイスで
観る者をハラハラドキドキさせてくれる」

----コメディ?アクション?
てっきりハートフルドラマと思っていた。
「考えてもご覧よ。
厨房にネズミがいたらそれだけでその店は営業停止。
そこでリングイニはレミーが見つからないように四苦八苦。
このスリリングな笑いが映画を牽引していく」

----同じディズニーのネズミでもミッキーマウスとは
えらく扱いが違うね。
「うん。彼らは最初は田舎の屋根裏に群れをなして住んでいたんだ。
しかしお婆さんに見つかり、猟銃で狙われてしまう」

----ネズミに猟銃?(笑)
「そう。
このありえなさがなかなかいいんだ。
かくしてお婆さんに住処を追われた彼らネズミたちは流れ流れてパリへ。
もとより今は亡き天才シェフ、グストーを尊敬。
彼の活躍するパリに憧れていたレミーは、その夢の街で、
自分の想像の中のゴースト、グストーに助けられ、
料理道を邁進していくと言うわけだ。
これに、レミーの謎をかぎ回る料理長スキナーの陰謀、
リングイニとその教育係コレットの恋、
そしてシェフが恐れる料理評論家イーゴとの対決などが
矢継ぎ早に語られていく。
しかし、この映画は、
ある意味、いまの映画が失ったものを持っているみたいだったね」

----どういうこと?
「一瞬たりとも休む間もない見せ場の連続。
とにかく観客に満足してもらおうと
ただただ、見せることのみを追求している。
クライマックスで『ラタトゥーユ』(これが原題ね)を食した
料理評論家イーゴが翌日の新聞で
“評論家”という職業に対して厳しく自省するシーンがある。
おそらくこれは、
この映画を観ている多くの映画評論家たちにとっても耳の痛い言葉。
この映画でもっとも感動的なシーンは、
イーゴがラタトゥーユを食べた瞬間、その感動を映像として見せるあるショット。
おそらく監督ブラッド・バードはそこに“食”と“映画”を重ねたのだと思う。
感動には理屈はないんだ-----とね」


  (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「しっかし、おいしいもの食べてるニャ」身を乗り出す

※でもちょっと長い度
人気blogランキングもよろしく

☆「CINEMA INDEX」☆「ラムの大通り」タイトル索引
(他のタイトルはこちらをクリック→)index orange
猫ニュー 

画像はアメリカ ・オフィシャル壁紙より。

『パーフェクト・ストレンジャー』

2007-07-08 12:11:28 | 新作映画
(原題:Perfect Stranger)


----「ラスト7分11秒まで、真犯人は絶対わからない-----」。
これまた大きく出たニャあ。
「いや。確かにぼくもわからなかった。
でも、後で考えたらこういうパターンの映画って
ほかにもありそうな気もするし、
よくよく突っ込んでいくと『そのオチ疑問あり』にもなってくる」

----どういうお話ニャの?
タイトルの意味は“完全な別人”と訳されているようだけど…。
「そうだね。
話はなかなかオモシロい。
元新聞記者のロウィーナ(ハル・ベリー)は、
幼なじみの被害者グレースが
死の数日前に話していた、ある秘密に疑惑を覚える。
彼女はインターネットの出会い系サイトで知り合ったという、
広告代理店のCEOにして大富豪のハリソン・ヒル(ブルース・ウィリス)との浮気をネタに
彼を脅迫しようとしていたんだ。
ハリソンが口封じのために彼女を殺したのではないだろうか?
ロウィーナは別人になりすまし、
元同僚で天才ハッカーのマイルズ(ジョヴァンニ・リビシ)の協力により、
彼とのチャットに成功。
と同時に新たな偽名を使い、
派遣社員としてハリソンのオフィスで働き始め、
次第に彼に接近していく」

----ニャるほど。ほんとサスペンスだ。
「この捜査の過程で、
たとえばグレースの元恋人でいまはロウィーナの恋人キャメロンが
グレースの死の直前にも彼女と会っていたことや、
ハリソン・ヒルの嫉妬深い妻ミアが秘書を使って夫を監視していること。
はたまた、マイルズの人に知られたくない恥ずかしい秘密などが
次々と明らかになってくる」

----ふむふむ。それによって
観る者をミスリードしていくわけだ。。
「そういうこと。
これがこの映画のキモだね。
だれもが見た目とはまったく違う、別の顔を持っている。
しかもそういうプライベートな秘密に加えて
企業スパイまで絡んでくるものだから、
観ていて飽きることはない。
ジョヴァンニ・リビシの演技、ハル・ベリーのファッションもいいけど、
今回、この映画で一番の見ものはブルース・ウィリス。
厳しいビジネスマンの顔を見せる一方、
私生活ではにやけきっている。
ある種のエグゼクティブの姿を興味深く演じている。
本人いわく『ここまで恥じらいなく女性を口説く男は初めてかもしれない』」

----まだ、髪も残っているしね(笑)。

  (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「ニャンとも複雑な世界だニャ」ぱっちり

※ブルース・ウィリス、いい脇役ぶりだ度
人気blogランキングもよろしく

☆「CINEMA INDEX」☆「ラムの大通り」タイトル索引
(他のタイトルはこちらをクリック→)index orange
猫ニュー 

画像はアメリカ ・オフィシャル壁紙より。


『めがね』

2007-07-06 23:40:40 | 新作映画
----これ。『かもめ食堂』の荻上直子監督の新作と言うことで注目されてるよね?
「うん。北国フィンランドから一転して、
こんどは与論島でロケしている」

----えっ?沖縄じゃニャいの?
「うん。そこも一つのミソだろうね。
沖縄が日本に戻るまで
与論島は日本の最南端の島として
高い人気を誇っていた。
でも、いまでは(おそらく)訪れる人が
グッと減ったんじゃないかな。
そのせいか、ここ数年増えてきた沖縄ムービーとは一線を画する
雰囲気を醸し出していた。
灼熱のエネルギーがありそうで、でもどこかゆるい」

----どういうお話ニャの?
「主人公は旅人・タエコ(小林聡美)。
彼女が訪れた南の島で出迎えたのは
ハマダという宿の主人ユージ(光石研)と愛犬コージ(ケン)。
次の日、宿の一室で朝を迎えたタエコの足元に、
不適な笑みをあたてためがねの女・サクラ(もたいまさこ)の姿が。
と、この後を書き始めるとキリがなくなる」

----ニャるほど。エピソード盛りだくさんニャんだ?
「う~ん。それが微妙でね。
特に何かがあるわけではなく、
ただ淡々と、しかもゆるやかに時が流れていく。
つまり、ここではいつも変わらぬ日常が営まれているんだけど、
その一つひとつが
こちらの日常を生きている者からすると、
ありえない不思議なことばかり」

----たとえば?
「宿の面々が、毎朝、村の人々と海辺で行なっている“メルシー体操”。
あるいはサクラが海辺で作っているかき氷。
そしてこれは決して強制じゃないけど、みんな一緒にご飯を食べる。
これもタエコにとっては苦手の一つ」

----ふうん。タエコは観光とかには出かけないの?
「うん。この島には観光するところなどない。
ユージいわく『たそがれるところ』」

----ははあ。“たそがれ”ね。雰囲気は伝わるニャ。
「この映画、何も起きないまま時間がゆるやかに流れていき、
普通なら退屈しちゃうところだけど、
でも気がついたらもうエンディング。
こういうところがこの監督の巧さなんだろうな。
劇中のサクラの言葉を借りれば『あせらずゆっくりと』。
ちょっと前に流行った言葉で言えば
ロハス体験ムービーという感じかな。
で、その先にあるのはデトックス。解毒だね」

---それって『マナに抱かれて』とは違うの?
「いや。あれはちょっと……」

  (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「フォーンも南の島で寝たいニャあ」もう寝る

※与論もよさそうだ度
人気blogランキングもよろしく

☆「CINEMA INDEX」☆「ラムの大通り」タイトル索引
(他のタイトルはこちらをクリック→)index orange
猫ニュー