ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『西瓜』

2006-06-30 01:50:00 | 新作映画
「いやあ、噂には聞いていたけど、
ここまでとは思わなかったね。
監督が台湾の大御所・蔡明亮だけに
いろいろと言いたいことはあるんだろうけど
(プレスには『映画での強烈なセックスシーンは、
今まで語られなかった<性の描写>についての
様々な論議を巻き起こし、
それは台湾だけでなく世界中の政府の開放度を、
皮肉にもこの映画が審査することになった』と書いてあります)、
ぼくみたいな凡人が感じるのは、ただエロ!」

----韓国映画には『LIES/嘘』ってのがあったじゃない。
あれと比べてどうなの?
「そうだね。
確かに『LIES/嘘』も過激だったけど、
セックス描写がナマっぽかった。
そこには、あまり官能はなく、
直接的な性行為って感じだった。
でも、この『西瓜』は、もうとにかくエロ。
しつこいようだけど、その言葉しかないね。
某映画評論家なんて『これ、無修正で公開するの?』と聞いていた。
何と言っても絡みを見せるアングルがスゴい。
しかも肌は汗でじっとり。
そうだ。『LIES/嘘』には、この水分が欠けていた」

----う~ん。よく分かんないな。
「いいの。フォーンは分からなくて。
物語は極限の水不足が続く台湾の街で展開。
人々は水の代わりに西瓜ジュースを飲んでいる。
映画は、この西瓜を使ったセックスから始まる。
まあ、これがまた批判を承知で言えば卑猥。
映画全体を通して、
セリフはほとんどなく、
セックスの喘ぎ声と、その時の卑猥な音ばかりが
繰り返しスクリーンを支配する。
もちろん、映像の方も音に負けず、
『フレッシュゴードン』(『フラッシュゴードン』ではありません、念のため)の
ロケットと同じ発想の冠りものによるミュージカルや
『殺し屋1』のタイトル並みの直接的な液体が飛び出してくる
まるでAVだね」

----何なの?いったい何言ってるかよく分からないよ。
「ま、これは映倫ならぬ
えい倫(笑)自主規制と言うことで。
でも、この映画のラストには唖然だね。
観ていたときは、なんてことするの?と思ったけど、
アレって、もしかしたら作りモノをくわえてるのかなあ?」

-----あっ、言っちゃった

                      (byえいwithフォーン)

LIES/嘘 ノーカット完全版 OPSD-S057LIES/嘘 ノーカット完全版 OPSD-S057
※こちらは韓国の問題児。これもかなりエロいです。

※うわあ、ヤッてる度
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猫ニュー

※画像はイタリアのポスター。スペイン版は過激すぎて、えい倫規制です。

『怪談新耳袋 ノブヒロさん』

2006-06-28 23:54:30 | 新作映画
----和製ホラー担当のフォーンです。
この『新耳袋』って前からなんだろうと思っていたんだけど、
怪奇蒐集家の二人が全国から蒐集してセレクトした怖い話『新耳袋』を
原作としてBSiで放送されたショートフィルムらしい。
で、これはその劇場版なんだって。
<不倫相手の女性と手をつないで崖から心中しながら、
ひとり途中の枝にひっかかってしまった曾祖父。
その無念を晴らすべく
相手の女性の転生を待ち、
彼女と一緒に死のうとするノブヒロさん……。>
確かに話は怖いんだけど、
この<ノブヒロ>という、
いわば幽霊が男だから、
そこはどうなんだろう?
古来より、日本の幽霊は
女の人の方が、より怖いと思うんだけど……。
ほら、『東海道四谷怪談』だの『番町皿屋敷』だの、
女の人の恨みの方が深いよね。
えいも、だから怖いのは『オーメン』より『エクソシスト』と
決めつけていたらしい。
って、これはアメリカの話か。
それに、平田満なんて有名俳優が幽霊ヤルと、
冷静に観てしまうよね。
って、これもぼくだけかニャあ。
「そう言えば、佐賀の化け猫も女性だよね」
----ちょっとイヤなこと言わないでよ。

        (byフォーンwithえい)

※でもやはり怖い度 
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猫ニュー

『ザ・フォッグ』

2006-06-27 23:54:06 | 新作映画
----『ザ・フォッグ』ってネットで調べてみても
そのほとんどは
ジョン・カーペンターのクラシックばかりだね。
「だろうね。
リメイクの話は聞いていたけど、
まさか、こんなに急に出すとは思わなかった。
カーペンター版は当時もファンの間で話題になり、
公開と同時に観に行ったことをよく覚えている。
80年版はカーペンターと故デブラ・ヒルが共同で脚本を書いていて、
今回の作品は彼女に捧げられている」

----確かオリジナルはカーペンターが
あの『ハロウィン』の後に作ったんだよね。
「うん。『ハロウィン』は異常殺人鬼の話。
その語り口も直球勝負のホラーだっただけに、
ブラッドベリを思わせるウェットな『ザ・フォッグ』の世界は、
決して高い評価を集めたとは言えなかった」

----と言うことは、リメイクもやりやすい?
「さあ、それはどうだろう。
反応がいまいちと言ってもそれは日本での評価だからね。
いまでもくっきりと覚えているのは
映画の構成が
老人が子供たちに昔話を語ると言う形を取っていたこと。
それによって物語の持つ伝奇性を際立たせていた。
今回、監督を担当したのは
『スティグマータ 聖痕』のルパート・ウェインライト。
かつての恨みを晴らすために
霧とともに島の港町に現れた亡霊と言う基本設定は
さすがに変えてはいなかったね」

----前作では、霧が生き物のように見えたんだよね。
「あれから26年も経っているから、
特撮面は比べようもなく進歩している。
映画の主人公である《霧》の迫力たるや、
まるで『ポセイドン』のビッグウェイブのよう。
でも、正直言ってこういう昔の伝説に基づく復讐譚は
手作りの方が
その雰囲気が出せる気もする。
ただこの作品、
最近相次いでリメイクされた
『オーメン』や『ポセイドン』ほどには
オリジナルが知られていないため、
あまり比較されることもない。
そういう意味では得しているかもね」


               (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「フォーンも隠れるニャ、その1」フォーン、くるり.jpg

ザ・フォッグ TBDL-1026ザ・フォッグ TBDL-1026
※おおっ、オリジナルまでDVDで出ていたとは!?


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『ドラゴン・スクワッド』

2006-06-26 23:21:53 | 新作映画
----これまた、アジア映画好きにはたまらない
スゴい顔ぶれの作品だね。
「うん。
F4のヴァネス・ウー(台湾)、『インファナル・アフェア』のショーン・ウー(香港)、
このふたりの顔合わせだけでもファンの話題を集めそうなところに加えて、
『the EYE【アイ】』のローレンス・チョウ(香港)、
『カンフーハッスル』のヒロイン、ホァン・シェンイー(中国)、
そしてぼくのお気に入り、『太陽の少年』のシア・ユイ(中国)が出ている。
彼らが演じるのは世界各国から集められた国際警察の若手エリートたち。
元AWATだったり、スナイパーだったり
潜入捜査のスペシャリストだったりする。
その目的は黒社会の首領タイガーの弟パンサーの裁判に向けての護衛。
ところが護送車は謎の武装集団による襲撃に遭い、
激しい銃撃戦の末に警察は一網打尽にされ、
パンサーは連れ去られてしまうんだ」

----えっ、連れ去ったって……?
パンサーは奪回されたって言うことじゃないの?。
「いや、彼らを連れ去ったのは
元コロンビア軍大尉のペトロス。
タイガー、パンサーの兄弟は、
かつてペトロスの弟を殺害して
銀行強盗で得た金を独占したという過去がある。
そこでペトロスは元韓国軍特殊部隊大佐のコーや、
元ベトナム軍スナイパー、ユエたち
国際テロリスト集団の手によって
厳しい拷問を受けることになる」

----コロンビアに韓国にベトナムか……。
国際的だね。こちらも有名スターがキャスティングされているの?
「うん。ペトロスに『ターミネーター』のマイケル・ビーン、
コーに『シルミド』のホ・ジュノ。
他にもリー・ビンビン、サイモン・ヤム、
さらには『M:i:III』(!)のマギー・Qまでもが出演。
また、かつてその銀行強盗事件の指揮を執った際に
部下を殉職させたことの責任を取って
一線を退いているゴン・ロンにサモ・ハン」

----いやあ、ホントにスゴいね。
「だろう?
これだけでもう説明しなくてもいいほど。
若いスターたちだけでなく、
脇がこれだけしっかりしていると、
映画が引き締まってくるよね。
中身も見どころがいっぱい。
映画のハイライトである銃撃戦も無駄がなく、
おなかに響くほどのリアルな重低音で
その迫力を存分に体感させてくれた。
しかも登場人物全員にそれぞれのドラマ(過去)があり、
それらを粒子の粗い色味を抑えた映像のフラッシュバックで見せてくれる。
この手法って、下手するとわざとらしくなったり、
映画のリズムを乱したりしがちだけど、
そうならなかったのはよかったと思う」

-----褒めますニャあ(笑)。
「でも、正直言ってこの映画、少し長すぎる。
あと、サモ・ハン太りすぎ。
彼が体斬られているシーンなんて
言い方悪いけどお肉の脂身が切られているみたい(笑)。
そうそう、タイトルは日本のTVドラマ『Gメン′75』の
香港タイトル『猛龍特警隊』から取ったらしいよ」


                 (byえいwithフォーン)

レスリー・チャン in もういちど逢いたくて/星月童話 ZMBY-1619
※ダニエル・リー監督は日本がお好き?常磐貴子出演作です。主演はレスリー・チャン。

※多国籍俳優映画だ度
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『M:i:III』

2006-06-25 23:40:26 | 映画
----さっそく先行ロードショーに行ってきたんだ。
どうだった? 監督交代などいろいろあったみたいだけど……。
「正確に言えば先々行ロードショー。
試写で観られなかったブロックバスター作品は、
やはり少しでも早く観たいからね。
でも、フォーンが言うように監督J.J.エイブラムスも映画では新人みたいな人だし、
これまでのブライアン・デ・パルマやジョン・ウーに比べて
こちらの<観る>モチベーションとしては低くなるのは仕方がない。
いくらテレビで賞をたくさんもらったと言っても
映画では、そうそううまくはいかないだろうと……」

----だよね。どうひいき目に見ても格落ちの気がするよね。
「うん。ところがこれが予想以上のでき。
さすがトム・クルーズの眼鏡にかなっただけのことはある。
エンターテイメントはかくあるべしの見本のような作品だったね。
オープニング・エピソードからして観る者を引きつける。
悪の商人オーウェン・ディヴィアン(フィリップ・シーモア・ホフマン)の
手に落ちたイーサン・ハント(トム・クルーズ)。
ディヴィアンの銃は彼の新妻ジュリア(ミシェル・モナハン)の頭に突きつけられ、。
イーサンは彼から"ラビットフット"の在処を吐くように迫られる。
カウントダウンが始まり、そしてそのタイムリミットとともに
おなじみラロ・シフリンのテーマが流れる」

----ニャるほど。そして物語の発端へと時間が遡るわけだニャ。
「そういうこと。
そこからはもう一気呵成に
イーサンがこのミッションに関わるようになったわけ、
そして<インポッシブル>な<ミッション>の数々が
バチカンや上海など、世界を股に繰り広げられる」

----あれれ、もうそういったアクション大作は飽き飽きと言ってなかったっけ?
「いや、ここまで新しいアイデアを織り込み、
さらにはこれまでのシリーズへのオマージュが込められていたら、
さすがに脱帽するしかないね。
最初のミッションは敵地に乗り込み、
捕らえられた仲間のヘリによる奪還。
しかし、簡単にすむはずはなく敵もヘリを出動。
かつて『ブルーサンダー』という名作があったけど、
ここは、そのときのヘリ・チェイスを思い出したね。
その後、ディヴィアンを捕まえるべくチームはバチカンへ。
ここからはシリーズの名シーンをヴァージョン・アップさせた
緊迫のシーンが続々登場。
上海の超高層ビルの高低差を利用した侵入なんて
ありえるはずないけど、
そんなのまったく気にはならなくなる。
監督のJ.J.エイブラムスいわく
『実際に起こったことを見つけるよりも、
人を惹き付けるストーリーを想像する方がうまくいく』」

----ニャるほどね。それはそうかも。
「さらに彼はこういうことも言っている。
『みんなが期待するスケールの大きなアクションはそのまま生かすけど
キャラクターを中心にした映画にしたかった』」

----でもそれってソリッドなアクションじゃなくなるよね。
「うん。それはそう。
でもね、ぼくはかねてより
今のエンターテイメント・アクションの流れを作ったのは
『スピード』と『トゥルーライズ』だと思っているんだ。
『スピード』はある一定速度以下に落ちたらバスが爆発すると言う
その状況設定だけで映画を押し切ってしまう。
片や『トゥルーライズ』は主人公ハリーが政府の最高機密機関のスペシャル・エージェントで、
その家庭生活までが描かれる。
ハリーの妻は夫の職業を知らず、
またハリーは妻が浮気しているのではないかと疑い、
職権乱用して調べたりまでする。
この『M:i:III』は、自分の本当の職業を秘密にしているイーサンに対して、
恋人ジュリアの中に不安が芽生える。
またイーサンも彼女に真実を明かせないことを悩んでいる。
まさに『トゥルーライズ』パターンだ。
監督もおそらくこの作品を意識していたと思う。
事実その証拠に、長い橋の上での敵の襲撃と言う
『トゥルーライズ』そっくりのシチュエーションがあった。
もちろん、こちらの方が遥かにダイナミックでスリリングだけどね」

----なるほどね。ところで"ウサギの足"じゃなかった
"ラビットフット"って何なの?
「これはマクガフィン」
----なにそれ?
「あんまり言うとネタバレになるからなあ。
まあヒッチコックの『北北西に進路を取れ』を観てよ」


               (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「フォーンは興奮したニャ」おっ、これは


トゥルーライズ(DTS EDITION) PCBH-50191トゥルーライズ(DTS EDITION) PCBH-50191
※設定がこれにそっくりと思いました。

ブルーサンダー アルティメット・コレクション TSUC-10160ブルーサンダー アルティメット・コレクション TSUC-10160
※こちらは元祖へリアクション!

北北西に進路を取れ(期間限定) HTP-65016北北西に進路を取れ(期間限定) HTP-65016
※ラビットフットはマクガフィン!?

※いつまでも終わらないでほしかった度
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『キンキーブーツ』

2006-06-24 23:27:33 | 新作映画
----分かりにくいタイトルの映画だね。
これってどういう意味なの?
「"キンキーブーツ"とは直訳すれば"変態ブーツ"。
日本では"女王様ブーツ"として知られる
エナメルにスーパーヒールのセクシーブーツのこと。
ところがここでこのブーツを履くのはドラッグクイーン」

----ふうん。またまたトランスセクシャルな物語なんだ。
「うん。ただ個人的にはこの映画のドラッグクイーン、ローラは
『プロデューサーズ』に出てきたゲイの人々よりも
自然に自分の中に入っていった。
それってなぜだろうと考えて出た答は、
この映画で描かれているのは
男が好きだとか、女がいいとか言う
セクシャリティの嗜好の問題ではないと言うこと。
ローラが好きなのは<女装>。
子供の頃から、ブーツが好きで
それを履いて踊っていたくらいなんだね。
しかし、それを見とがめたローラの父親は
彼をボクサーにしようとする。
この父親へのコンプレックスから
ローラは男に戻ることも女に戻ることもできなくなっているんだ。
それでも、彼がドラッグクイーンとして踊るときは
本当に自分の好きなことをやっているわけだから自信満々。
その反面、男装になると急に自信喪失してしまう」

----えっ、これってそんなお話なの?
確かぼくが小耳に挟んだのは、靴職人のお話だったような……。
「ごめんごめん。
主人公は伝統ある靴工場の跡取り息子
チャーリー・プライス(ジョエル・エドガートン)。
彼は婚約者ニックのロンドン転勤を機に
田舎町ノーサンプトンと重い責任から逃げ出そうとする。
ところがロンドンに到着するや父親の訃報が届く。
かくしてチャーリーが父の跡を継がざるを得なくなる。
しかし実はこの工場、倒産寸前。
彼の父親は職人たちを解雇するのが忍びなく、
引き取り手もないのに靴を作り続けていたんだ」

----ゴクっ。
「チャーリーは工場存続のため問屋回りで引取先を探すも、
ことごとく断られてしまう。
そんな中、彼は夜道でからまれている女性を助けようとし、
一発で叩きのめされ、逆に彼女に助けられてしまう。
しかもその彼女と言うのが
ドラッグクイーンのローラ(キウェテル・イジョフォー)。
さてノーサンプトンに戻ってきたチャーリーは職人たちの首切りを開始。
『いったい、ぼくに何ができる……』と、
言い逃ればかりの彼に
首を言い渡したばかりのローレン(サラ=ジェーン・ポッツ)は
『他社の社長は乗馬靴や登山靴でニッチ市場を開拓している』と、
捨てセリフを吐く」

----ニャるほど分かった。
そこでチャーリーはドラッグクイーン御用達の靴を作るわけだ。
「そう言うこと。
ドラッグクイーンたちの体は大きく、
女性用の靴ではそれを支えきれない。
かくして彼はローレンを臨時顧問に、
ローラを専属デザイナーにプロジェクトを開始。
ミラノの見本市を目指す……と、こういうお話だ」

----久しぶりに長~~いストーリー説明だったね。
でも、これってまだ序章のような……。
「そうだね。
映画はこの後、保守的な靴職人とローラの対立と和解。
工場を売り払ってロンドン定住を進めようとするニックと
仕事に自分を賭け始めるチャーリーとのすれ違い。
そしてそれに絡んでくるローレンなど、多層的に描かれてゆく」

----そうか、チャーリーにも偉大な父親がいて、
「それを乗り越えなくては」と言う部分では
チャーリーもローラと同じ立場なわけだ。
「うん。そういうこと。
ぼくがこの映画を好ましく感じるのは、
『フル・モンティ』なんかと同じで、
その<成功>がアイデアに基づいたキュートなもので、
アメリカのようなビッグ・サクセスものではないところ。
自分に自信が持てず優柔不断な男が、
ギリギリまで追い込まれた中から新たに生まれ変わる……。
チャーリーを演じたジョエル・エドガートンは
若い頃のライアン・オニールを彷彿とさせ、
これからが期待できる」

----じゃあダメじゃん。ライアン・オニールって
いつの間にかパッとしたくなったよ。
「あらら。
そこはあんまり突っ込まないで。
映画を観ていて思わず書き留めたくなるセリフも随所に登場。
と同時に、『ほんとうに自分が必要とする人は誰かを見直しなさい』と言う、
恋と人生に対するメッセージもある。
タイトルから想像されるイメージはまったく違っていて、
笑い、そしてあたたかな涙の後に元気と勇気がわいてくる映画。
サウンドトラックも素敵だし、
この夏、大のおススメ作品だね」


                  (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「こんな映画とは思わなかったニャ」ぱっちり
フル・モンティ(期間限定) ※再発売 FXBH-4806フル・モンティ(期間限定) ※再発売 FXBH-4806
※元気をもらえること間違いなしのUK映画。

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『愛と死の間で』

2006-06-23 23:41:22 | 新作映画
----「最愛の妻を失ってしまった。
だが、彼女の“心”だけは生きていた、記憶と共に…」。
ん?これは香港版“韓流”ということかニャ?
「そうだね。ある意味ファンタジーの要素もあるし。
実はこの映画、アンディ・ラウが出演していると言うこと以外、
ぼくはまったく内容を知らずに観に行ったんだ。
そのため最初は、もしかしてミステリーかな?とも……」

----そう言えば同じタイトルの映画、
ケネス・ブラナーにもあったよね。
でも、そのリメイクではなかったわけだね。
「うん。妻を交通事故で亡くした医者コウが、
6年後に救急医師として働いている中で交通事故に遭遇。
初めは事故とは関わらずに本部からの指示を待とうとするものの、
ある<水>の啓示を感じて現場へ。
チラシやプレスにはこの後も書いてあるけど、
まあ、ここまででいいんじゃないかな?」

----えっ、どういうこと?
「う~~ん。この映画、とても分かりにくい作りになっているんだ。
たとえば、いま、元医者で現救急医師と言ったけど、
これだって特別な説明もなしに
アンディ・ラウが急に違う制服で現れるから
頭がこんがらがってしまう。
しかもその制服にしても、何度も元の医師時代に戻ってしまう。
映像も凝っていて、
コウの前に、亡き妻があたかも生きているかのように出現。
しかもそれが単なる回想とは思えないような描き方をしたりするものだから
これは<時制>をモチーフにした映画、
あるいはパラレルワールドものかなと錯誤してしまう」

----ほんと、分かりにくそう。
「でもね。
これらの散らばったピースを
頭の中で組み立てているうちに、
一つの<愛の物語>が浮かび上がってくる。
この<愛の物語>が
自分の心の中で次第に像を結んでゆく過程が意外にオモシロくて……。
そのため、
みんなもストーリーを知らないでこの映画を観た方が
より楽しめるのではないかと……。
まあ、そう思ったわけだ。
さっきの<水>だって最後の方になって、
やっとその意味が分かってくる」

----そう言えば日本が出てくるんだって?
「うん。留守番電話の声が日本語。
『auお留守番サービスセンターです』には
みんな笑っていたね」


          (byえいwithフォーン)


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『夜のピクニック』

2006-06-21 23:03:12 | 新作映画
「みんなで夜歩く。
ただそれだけなのに、
どうしてこんなに特別なんだろう。」

----おおっ。いきなりだね。ニャにそれ?
「うん。恩田陸のベストセラー『夜のピクニック』の映画化。
1000人一緒に24時間を徹して、
80キロを歩く伝統行事『歩行祭』を背景にした高校生たちの物語なんだ」

----あらら、またまたノスタルジーモードですニャ?
「いや、そうじゃないよ。
この映画の素晴らしいところは
いままさしく『そこにある』青春を描いているところ。
映画そのものが青春しているんだ。物語は次のような流れで語られる。
今年で最後の歩行祭を迎える甲田貴子(多部未華子)。
この特別な夜、彼女は密かに賭けをしていた。
それは、一度も話したことのない
クラスメイトの西脇融(石田卓也)に話しかけるということ」

----ニャんだ、告白の物語か……?
「ぼくもそう思っていた。
しかし、そんな簡単な話じゃないんだな。
でも、彼女の周りの友人や卓也の友人も
<告白>によってふたりを近づけようと<勘違い>している。
と言うのも、ふたりはふだんから意識しすぎていて
かえってよそよそしいのが、
だれの目にも明らか。
そこに、ニューヨークに越してしまった
親友・杏奈(加藤ローサ)の絵はがきに書かれた“おまじない”の言葉、
その杏奈の弟(池松壮亮)の出現、
さらには彼氏が絶えないことで有名な内堀亮子(高部あい)の融へのアプローチなど、
さまざまなことがらが交錯。
ゴールと言うタイムリミットへ向かって時が過ぎてゆく」

----でも80キロも歩くんだったら、
みんなおしゃべりしていても最後は疲れて
口も利けなくなるんじゃニャいの?
「そう。空が暮れなずみ、暗闇が訪れ、
そして白々とあけてゆく……。
その時間の推移による変化がこの映画にはよく出ていた。
最初のざわざわとした高揚感が次第に消え失せ、
疲労の色が濃くなってゆく。
そしてヒロイン貴子の場合は、
さらにそこにタイムリミットへ向けての焦燥感が加わる。
プレスによるとクランクイン前にスタッフ&主要キャスト約30名で
60キロを20時間かけて歩き、実体験を兼ねた役作りを行なったらしい。
しかも1000人のエキストラに
1000通りのキャラクター設定をしたとか」

----さっきノスタルジーじゃないと言っていたけど?
「うん。よく『あ~いま思えば、あれが青春だったな』という感じの映画があるけど、
本来<青春>と言うのは、
そのさなかで感じてこそ真の幸福感が味わえるものだと思う。
この映画は、登場人物たちがその<青春ど真ん中>を実感し、何度も口にする。
だからこそゴールの寸前に口を出るのは
『最後の青春するぞ』」

----多部未華子の演技はどうだった?
この一年、最も高く買っている女優だよね。
「いやあ、さすが多部未華子だね。
ゴールイン直後の表情は長く目に焼き付いて離れない。
この24時間を通して
周りのあたたかい友情を知り、自分の賭けにも勝った貴子。
幸福感に包まれたその顔は涙でくしゃくしゃになる。
多部未華子はこの<涙>の意味をよく分かっている」

----ふうん。でも告白じゃないとしたら何なんだろう?
原作を読んでいる人はすでに知っているわけだよね?
「うん。そういうことになるね。
ぼくは原作を読まずに映画に接したわけだけど、
この<原作と映画>の問題はあいかわらず悩ましいね。
以下は、原作が秘密をどこで明らかにするのかを知らずに喋るわけだけど、
すでに本を読んでいる人は
秘密を抱えて歩いている貴子の心に寄り添いながら
彼女の表情を追ってみると言うのはどうだろう?
改めて多部未華子の演技力が分かるかも」

----ニャるほど。監督は長澤雅彦だっけ?
「うん。『青空のゆくえ』に続いての
すてきな青春映画のプレゼント。
ただ、惜しむらくは
浜辺に寄せる波の音、畦道の蛙の声など
もう少し周囲の音を取り入れてほしかった気が…。
せっかく自然の風景を捉えているんだから」


          (byえいwithフォーン)

青空のゆくえ ZMBJ-2577青空のゆくえ ZMBJ-2577
※長澤雅彦監督&多部未華子、さらにはこの映画にも出ている西原亜希も出演しています。

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猫ニュー

『ローズ・イン・タイドランド』

2006-06-20 22:38:13 | 新作映画
----テリー・ギリアム、精力的だね。
この前、『ブラザーズ・グリム』が公開されたばかりじゃなかった?
「うん。あの呪われた『The Man Who Killed Don Quixote』の不幸以来、
すっかり表舞台から姿を消していたと思ったら、最近またまた大活躍。
やはりただ者じゃなかったね。
この『ローズ・イン・タイドランド』は2004年秋、
『ブラザーズ・グリム』の編集が中断されている時に撮影されたらしい」

----映画ってそんな短期間で撮れちゃうものニャの?
「物語がほとんど一ヶ所で展開。
<ローズの幻想的な脳内冒険>という
その内容が内容だけにポストプロダクションには
けっこう時間がかかったと思うけど、
限定された場所での物語は
こういうときにはいいかもね」

----脳内冒険?それってどんなお話ニャの?
キャロル・ルイスの『アリス』にタイトルが似ているけど?
「主人公はジェライザ=ローズという名の女の子。
彼女には元ロックスターでジャンキーのパパと、
自分勝手なママがいる。
ところがそんなある日、ママが急死。
ローズはパパと一緒に今は亡きおばあちゃんの家へ。
しかし、そこでもパパはドラッグで“バケーション”へ。
見知らぬ土地でひとりぼっちになったローズは、
4体のバービー人形の “頭”と一緒に 冒険を始める」

----えっ、いま“頭”って言った?
「言ったよ(笑)。
ローズは、このバービー人形の頭を
指の先にはめて頭の中で会話している。
このブラックな感覚がテリー・ギリアムらしい部分。
この他にもローズがパパにドラッグ注射を討ったり、
人形の頭の中に脳みそが入ってきたり、
ミイラになった死体の顔がひしゃげたりと、
インモラルな映像が洪水のように溢れ出す」

----いわゆるダークファンタジーってわけ?
「いや、その言葉
ダークファンタジーが持つ湿った感触は
この映画にはまったくと言っていいほどないね。
実際にそう言う言葉があるかどうかは知らないけど、
ぼくはこれを<ブラックファンタジー>と呼びたい。
昔からそうだけど、
テリー・ギリアムの映画って、とにかくけたたましい。
たとえそれがファンタジーであっても狂騒に満ちている。
それでも『未来世紀ブラジル』や『12モンキーズ』のように、
ペシミスティックな要素が絡んで物語にタメが作れたときには、
とんでもない傑作となるんだけど……」

----これはどうだったの?
「どことなく『ラスベガスにやっつけろ』を思い出してしまった。
最初から最後までハイテンションで突っ走るんだ。
後で調べたら
脚本もギリアム&トニー・クリゾーニ。
この『ラスベガスをやっつけろ』コンビだったね。
あっ、それでも巧いなと思ったのはシルエットの使い方。
ローズばかりではなく観客の視覚をも錯誤させるその映像は
彼の才気の片鱗を見せてくれたよ」


          (byえいwithフォーン)

未来世紀ブラジル スペシャル・エディション PIBF-61544未来世紀ブラジル スペシャル・エディション PIBF-61544
※テリー・ギリアムはやっぱこれでしょ。


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※画像はアメリカ・オフィシャルサイトの壁紙です。

『ハイテンション』

2006-06-18 19:00:07 | 新作映画
※カンの鋭い人は注意。※映画の核に触れる部分もあります。
鑑賞ご予定の方は、その後で読んでいただいた方がより楽しめるかも。



----フランスのスプラッター映画って、あまり聞いたことニャいなあ?
「うん。アメリカ辺りでも
最初はこの映画を軽んじていたようだけど、
後で驚きに変わったみたいだね」

----と言うことは、描写もかなり激しいんだ?
「そうだね。
この手の映画って設定がシンプルなほどいい。
殺人鬼が、ただひたすら追いかけ襲ってくる。
贅肉がないほど<恐怖>は研ぎすまされるからね」

----でも、ちょっとしたオチがあると言ってなかった。
「うん。そこなんだよね。
この映画はせっかくシンプルで通していながら
ラストで『ただのホラーじゃないぞ』となる。
でもあまりそこに言及すると<核>に触れることになってヤバい……」

----ははあ。だから※ネタバレ注なんだね。
「そういうこと。
ぼくは、冒頭に置かれた、ヒロインの恐怖の告白シーンを観て、
ある一本の映画の記憶が脳裏に甦った。
それは日本の変身怪奇映画の傑作『マタンゴ』。
さすがにあれと同じオチはないものの
ちょっとひねった結末を用意している。
実を言うと、ツッコミどころ満載のこの構成をどう捉えるかで、
この映画への評価は変わってくるだろうね」

----えっ、ちょっと待ってよ。
どんなお話なのよ?
「いや、だから説明の必要もないって。
殺人鬼の雰囲気は『ハロウィン』。
その殺し方は『悪魔のいけにえ』」

----でも、それじゃあまりにも不親切だよ。
「分かった分かった。
じゃあ少し説明するかな。
友人アレックスの実家で過ごす女子大生エリーの前に、
恐るべき殺人鬼が現れ、次々と殺戮を繰り返していく。
家族全員を殺し終えた殺人鬼はアレックスだけを生かして
車でどこかへ連れ去ろうとする。
惨劇を目の当たりにしながらも
息を殺して身を潜めていたエリーは車に忍び込み
友人を救出しようとするが……」

-----!!……よくもそんな危険なことを……。
えいだったら絶対にダメだね。
まず、<血>が苦手だし(笑)。
「自分の感性がマヒしたのかなあ。
確かに<痛覚>を刺激するシーンはたくさん出てくるけど
思ったほどでもなかったな。
ただアキレス腱に刺さったガラスを抜くシーンは貧血ものだったね。
でも、それよりも
この監督アレクサンドル・アジャは<生か死か>の極限状況の描写が巧い。
身を隠して殺人鬼が通り過ぎるのを待つ間の緊張感。
観る者の心臓の鼓動とあわせたかのようなサウンド設計も
実に効果的だったね」

----あれっ、途中からほめ始めたニャあ。
「いや、思うにこの監督は
ダイレクトなサスペンスを作れる要素を持っている。
脚本で変にひねくらない方がいいと思う。
次作がウェス・クレイヴンの『サランドラ』のリメイク。
これの結果を見守りたいね」

                 (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「目を開けていられないニャ」もう寝る

マタンゴ TDV-2754Dマタンゴ TDV-2754D
※これが噂の映画。傑作です。

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※画像はフランス・オフィシャルサイトより。

『恋する日曜日』

2006-06-17 11:57:34 | 新作映画
----『恋する日曜日』って名曲をタイトルやテーマにした
テレビドラマシリーズじゃなかった?
「うん。一話完結のね。
若松孝二・行定勲・中原俊・篠原哲雄・安藤尋・古厩智之といった
現代の日本映画を牽引する監督たちが手がけている。
今回はその劇場版で、
第2シリーズのチーフ監督だった廣木隆一が
監督を務めているんだ」

----廣木隆一で青春映画って珍しくない?
「いや、ぼくの大好きな
『800 TWO LAP RUNNERS』がある。
この映画もあれと若干似ているところがあって、
男女4人の<想い>を丁寧に追ってゆく」

----でも、それだけじゃ、あんまり珍しくもないね。
「ただね、この映画では男の子2人と女の子2人。
みんなの<想い>の方向線がまったく交わらない。
ヒロインは親の仕事の都合で終業式を機に転校する晶(水橋貴己)。
晶は幼なじみの直(若葉竜也)と最後の一日を一緒に過ごしたい。
ところが、直は環(芳賀優里亜)に夢中。
しかも彼女の弓道部の先輩であり、環の元彼の楽(佐々木和徳)が晶に告白。
それを知った環は直に気がある振りをして、晶に揺さぶりをかける。
これを図にすると

晶 → 直
↑    ↓ 
楽 ← 環


と、まあ簡単に言うと四角関係だね」

----みんな名前が一文字だ。
それぞれキャラクタ-を表しているのかな?
「う~~ん。どうだろう。
この映画、舞台が長野なんだけど、
地方都市の空気はよく捉えられていたと思う。
人気のない商店街の感じとかね。
でも一番のオモシロさは、
みんなそれぞれに自分のことのみを考え、
そのためなら相手や周囲を窮地に陥れても
それはそれで仕方がないと考えているところ。
『恋する日曜日』というよりも『仁義なき恋』って感じかな。
まあ、そんな中で晶だけは直のため
危険な綱渡りをするんだけどね」

-----危険な綱渡りって?
「それは観てのお楽しみ」
----ニャんか手抜きだなあ。
知っているよ。「Memorial of Chip(前編)」を書くので
もう疲れてしまったんでしょ?
「当たり(笑)」
                 (byえいwithフォーン)

800 TWO LAP RUNNERS PIBD-1118800 TWO LAP RUNNERS PIBD-1118
※廣木隆一監督の大傑作です。松岡俊介が若いです。

※だれもが恋する度
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『ラブ★コン』

2006-06-16 00:25:52 | 新作映画
「いやあ、オモシロかったね。
笑って笑って最後に少しホロっ。
映画はやはり青春を描くのがいちばんだね」

----『ラブ★コン』って、そもそも何なの?
「ラブリーコンプレックス。
原作は『別冊マーガレット』に連載され、
そのコミックスは800万部突破の大ベストセラーらしい。
必要以上に身長が高い(180cm)小泉リサ(藤澤志麻)と
必要以上に身長が低い(159cm)の大谷敦士(小池徹平)。
ふたりは、それぞれそのことが理由で
フラれた経験あり。
同じクラスになった彼らは
『オール阪神・巨人」と言われるほどノリのいいコンビに成長。
ところがリサが敦士を意識し始めたことから……」

----まさに典型的な学園ラブコメだね。
『月とスッポン』なんかも同じような設定だったよね。
「うん。でも今回ユニークなのは
舞台が大阪になっているところ。
関西弁がベースになっているため、テンポが実にいい」

----ホンモノのオール阪神・巨人も出ているんだ?
「それだけじゃないよ。
金八先生をパロッたようなカツラ教師に温水洋一。
彼は、映画が甘くなりすぎそうなところにタイミングよく現れては
カツラの説明を始める。
他にもムツゴロウ、南海キャンディーズ、森下能幸など多士済々。
なかでも洗えたのが人力車を引く田中要次。
ボンデージファッションに頬紅(笑)。
また、寺島進が『海坊主』とかいう
ヒップホップのボーカルを務めているのも見逃せない。
とにかく、この映画、脇役の個性がスゴい」

----それは楽しそうだね。映像はどうなの?
『嫌われ松子の一生』に似たところがあるね。
あそこまで潤沢な予算がない部分、
アイデアで勝負している。
ナレーションを英語にして字幕を入れたり、
リサの部屋をパステル調にカラフルにしたり。
高校生たちは私服なんだけど、
こんなの許されるの?と言うほど
そのファッションはぶっ飛んでいる」

----ナレーションはだれがやっているの?
「谷原章介。これまた『嫌われ松子の一生』と同じく、
フェロモンムンムンの先生。
本人もそのキザな役回りを意識して
役を楽しんでいる。
とりわけ『よろしクイ~~ン』には爆笑。
これを観るだけでも金を払って損はしない。
終わった後も、みんな口々に
『オモシロかった』と大評判。
楽しい時間が過ごせることは間違いないよ。
『NANAーナナー』
以降に生まれた少女コミック映画化の中でも
見事に成功した例だね」


          (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「フォーンもこの映画にキュン死にしそうニャ」もう寝る

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『弓』

2006-06-15 01:47:40 | 新作映画
※映画の核に触れる部分もあります。
鑑賞ご予定の方は、その後で読んでいただいた方がより楽しめるかも。



----これってキム・ギドクの映画だよね。あいかわらず精力的だね。
「彼の映画は最後に
『キム・ギドク●●番目の映画』とクレジット。
それによるとこれは12本目に当たるらしい」

----今回はやはり寓話的なの?
「うん。しかも神話性さえ感じさせる。
物語は全編海の上で展開。
しかも、そのほとんどが一艘のボロ船。
そこでは、ひとりの老人が
10年前にどこからか連れてきて、
宝物のように大切に育てている少女と一緒に暮らしている。
老人は、その少女が17歳になったら結婚式を挙げる予定でいたんだ」

----へぇ~っ、どうやって暮らしているの?
「老人は、その船を海釣り客に開放することで、
生計を立てているんだ。
その客たちの中には、当然のようにふたりの関係を怪しみ、
少女にちょっかいを出す者もいる。
そんな時に、老人は<弓>を使って少女を守る。
ところがある日、
少女がひとりの青年に恋をしたことから
この<楽園>に嵐が訪れる」

----あれっ?
その<弓>って弓矢なんだ。
ビジュアルから楽器を想像していた。
「うん。ぼくもそう。
でもこれは、その音を奏でる<弓>にもなるし、
占いにも使われるんだ」

----えっ、占いに?
「海の上に吊るされたブランコを漕ぐ少女。
その横をかすめて老人が放った3本の矢が
船体に描かれた観音像に突き刺さる。
少女はその矢の位置を見て占いをするんだ」

----ひぇ~っ。危ないね。
「つまり、ここではふたりの間の絶対的な信頼関係を描いているんだけど、
ここがこの監督の巧いところで
物語はシンプルなのに、
映画の中にサスペンスを持ち込むことで、
観る者をスクリーンに引きつける」

----でも、その話を聞いていると、
青年は騎士で、
少女を魔物から救い出す<おとぎ話>にも見えるよね。
「うん。ぼくもここで描かれているのは<老醜と妄執>とばかり思って観ていた。
と言うのも、その昔、子供の頃からバナナばかりを食べさせて
きれいな肌に育てた少女を
成長してからその体を奪うという男の漫画を読んだことがあり、
この映画でそれを思い出してしまったんだ。
ところが監督の意図はどうもそうではないらしい。
プレスには『私たちは皆、現代では表現することの許されない
欲求や願望を心のどこかに抱いています。
それを白日のもとにさらしたら、
どんなに下劣で、崇高で、美しく、悲しく、
そして幸せなものになりえるかを、
表現したかったのです』と語っている」

----えっ、監督がテーマも喋っているんだ?
「うん。彼ははっきりともの言うタイプだね。
映画のラストにも
<弓>と<人生>についてのメッセージが流れる」

----ニャるほど。この老人の生き方を肯定しているのか。
それって今までの映画のパターンの裏を行くよね。
「うん。
『うつせみ』ではヒロインのソナが監禁同様の生活を送り、
青年ソクが救い出すという設定だっただけに、
これもそのパターンかなと思ったら違ったってワケだ。
さて、この映画は
ラスト15分ほどから思いもよらない展開を見せる。
あの『うつせみ』のように超現実的出来事が起こり、
愛を成就させていく。
しかも少女が脱いでいるわけでも、
男女が絡み合っているわけでもないのに
身をよじるようなエロチシズムが画面を覆いつくすんだ」

----うわあ。それってどんなんだろう?
フォーンが観てもいいのかニャあ?
「さあ」


         (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「結局、観たのニャ。ブランコが怖かったニャ」ぱっちり

うつせみ BIBF-6624うつせみ BIBF-6624
※これを観ていたらこのラストは読めないです(汗)。


※これぞギドク・ブラン度
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『フラガール』

2006-06-13 21:48:05 | 新作映画
※映画の核に触れる部分もあります。
鑑賞ご予定の方は、その後で読んでいただいた方がより楽しめるかも。



「まいったな。
まさか、李相日監督の映画で涙が出るとは思わなかった」

----『69 sixty-nine』のこと、
いつもよく言わなかったものね?
でも、これもあの映画と同じ60年代の映画じゃない?
「うん。日本の基幹産業が石炭から石油に移行し、
大幅な人員削減を余儀なくされた常磐炭鉱がその舞台。
町を救うため、会社側はこの町に“楽園ハワイ”を作ると言う
壮大なプロジェクトを打ち上げる。
もともと、この炭鉱には温泉が湧いていて
それを利用しようと言うわけだ。
そのため東京から元花形ダンサーのダンス教師・平山まどか(松雪泰子)が招かれる。
最初は素人の炭鉱娘たちをバカにしていた彼女も、
少女たちの熱意の中、忘れていた情熱を再燃させる----というお話だ」

----素人女性たちが力を合わせて……
これって『スウィングガールズ』を思い起こさせるけど?
「う~ん。あの映画は正直、
ぼくは×だったね。
ヒロインたちのブラスバンドへのモチベーションが弱く、
そのためラストも
一つのことを達成したと言う爽快感に欠けてた気がする。
でも、この映画にはフラダンスに挑む少女たちの切実な想いがある。
それをやりとげることよって、
自分だけでなく、家族を支え、
さらにはこの町をも再生させようとしているわけだから」

----これって女性たちの物語だよね。
町の再生……それってスゴくない?
「ダンサー志望の少女の一人、
紀美子(蒼井優)の兄・洋二朗(豊川悦司)のセリフに
『女たちは強いなあ』と言うのがある。
確かに、ここに出てくる女性たちはみんな強い。
紀美子の母・千代を演じる富司純子なんて、
『緋牡丹博徒』の<お竜>以降は
上品な日本の女性のイメージが強かったのに、
ここでは大地に足をしっかりとつけて立つ、
男顔負けの豪快な肝っ玉お母ちゃんを演じる。
また、主演の松雪泰子も
生徒のひとり・早苗(徳永えり)に暴力を加えた彼女の父親に抗議するべく、
なんと男湯の中にまで飛び込んでゆく。
この役は彼女にとってもメモリアルなものとなるんじゃないかな」

----蒼井優はどうだったの?
「彼女は今年の賞レースに名乗りを上げたと思う。
ボロボロに泣く役が多い彼女だけど、今回は絶品。
その泣き顔をいつまでも見ていたくなる。
『花とアリス』の記憶を背負ったダンスシーンも圧巻だ」

----俳優の演技以外ではどう?
「この映画の構成って、
節目節目に<別れ>を配置しているんだよね。
最初が紀美子と早苗。
次が同じく生徒の小百合(山崎静代~南海キャンディーズ・しずちゃん)と彼女の父親。
そして教師・まどかと生徒たち。
この3つの<別れ>が実にきっちりと描かれている。
観客の涙を搾り取った上で、
映画は次のドラマへと弾みを付けながら突き進んでゆくんだ。
山本英夫(撮影監督)、種田陽平(美術監督)。
『THE 有頂天ホテル』
コンビによって切り取られたその世界も素晴らしい。
よく<銀残し>の現像法を売りにした映画は多いけど、
ここまで時代再現に生かされた例も希有だ」

----しかしベタ褒めに近くない?
「うん。
後でなぜぼくがそこまで心動かされたのかを考えてみたんだけど、
この映画には<現代>があるんだね。
炭鉱の男たちはリストラされ、
『時代が悪い』と口々に言う。
しかし、女性たちはいつまでも時代のせいにしてもを何も始まらないと、
新たなことに挑戦してゆく。
それは閉塞感漂う今の時代にあって、
一つの力強いメッセージとなっていると思う。
『いつまでも<時代が悪い>と言わず、
そこから抜け出す勇気を持とう』とね」


          (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「フォーンも元気出たニャ」身を乗り出す

花とアリス 通常版 NND-9花とアリス 通常版 NND-9
※蒼井優のダンスはいつも泣けます。

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『インサイド・マン』

2006-06-10 23:16:54 | 映画
----この映画、初日に観に行ったわけだよね。
それだけ期待も大きかったってことかニャ?
「『その時、犯人は人質全員を共犯者にした。』
この一文読んだら、誰だってオモシロそうに思うじゃない」

----その言い方からすると、そうでもなかったわけだ?
「う~~ん。
試写で観たわけじゃないし、ズバリ言っちゃおう。
事前に読んでいた資料の方が
まだ想像をかき立てられてよかったね」

----どんなところがオモシロそうに見えたわけ?
「物語はマンハッタンの信託銀行を襲った
ダルトン・ラッセル(クライブ・オーエン)をリーダーとする強盗一味と
それに立ち向かうフレイジャー捜査官(デンゼル・ワシントン)を軸として進んでゆく。
この銀行強盗犯は、行員や客に自分たちと同じ格好をさせる。
つまり、だれが犯人なのか、まったく分からなくしてしまうわけだ。
一方のフレイジャーは、
犯人たちの要求がジャンボジェット機などと、とてつもないことに加え、
具体的要求が少なく、
時間稼ぎしているようにしか見えないことに不審を抱き始める。
そこで彼は犯人たちと交渉。
行内へ入り込み、思い切った行動に出るが……」

----それは確かにハラハラしそうだ。
「ところが、これが実に緊迫感に乏しい。
フレイシャーの想像どおり、
この強盗一味は<別の理由>で行動しているから
まあ、これも仕方がないんだけどね。
でも、あまりにも<ユルくて>サスペンスを期待すると
がっかりしてしまう。
もっとも、それもスパイク・リーの計算なのかも知れないけど…」

----タイトルからすると、
人質の中に犯人と通じあっているものがいるのかとも思ったけど?
「いや、それもなきにしもあらずだけど
文字どおり犯人たちは<インサイド・マン>(笑)」

----??????どういうこと?
「まあ、観てみてよ。
そうそう。
映画ネタもいくつか入っていて
ダルトンはフレイジャーを『セルピコ』呼ばわりする。
あと、傑作だったのは
最後まで下着姿になることに抵抗していた
人質の女性(初老?)が『ダーティ・ハリー4』の決めゼリフを口にすること」

----それって「Go ahead ,make my day」のこと?
「うん。これはほんと笑えたな。
このセリフは昨年American Film Instituteが発表した
アメリカ映画名セリフベスト100の第6位。
ちなみに一昨日話した
『カクタス・ジャック』では『タクシードライバー』の
『You talking to me?』が使われていた。
こちらは第10位だったかな」

-----ニャんだか、映画の話を避けているみたい。

                 (byえいwithフォーン)
セルピコ<デジタルニューマスター版> TBDL-1065セルピコ<デジタルニューマスター版> TBDL-1065
※『セルピコ』の意味はこちらで……。

ダーティーハリー 4 DL-21512ダーティハリー 4 DL-21512
※女性のセリフ「Go ahead ,make my day」はここが元ネタ。笑えました。


※どうも肌にあわない度
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