ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『共喰い』

2013-06-27 20:02:43 | 新作映画
----“共喰い”?
それって仲間同士で食い合うことだよね。
人間のお話じゃニャいの?
「(笑)まさかそれはないよ。
これは第146回芥川賞を受賞した田中慎弥の原作を青山真治監督が映画化したもの。
作者の田中氏は受賞時の記者会見で
『都知事閣下と東京都民各位のために、もらっといてやる』
センセーショナルな発言を行ない、時の人として騒がれた。
実は映画の中には、
あの『太陽の季節』の有名な障子破りを彷彿させるシーンがある。
もちろん、同じことをするんじゃないけど、
蚊帳の中のその描写は、
なぜか石原慎太郎を連想してしまったな。
このシーンはちょっと強烈だね。
いわゆるアレがああいう状態でそそり立っている…。
分かる人には分かるように言うと、
『ポンヌフの恋人』の海岸シーン。
ただ、それが何かは
ここに書くとブログアップが許されない可能性もあるのでここまで…」

----う~ん。
おおよその想像はつくけど、
それを『仮面ライダーW(ダブル)』シリーズのが菅田将暉が演じているってワケ?
「さすがにそれはないんだけど、
菅田の演じる主人公・遠馬の役もかなりヘビー。
という前提のもとにあらすじを説明すると…。
時は昭和63年、舞台は山口県下関市。
17歳の遠馬は父・円(光石研)とその愛人・琴子(篠原友希子)と暮していた。
父には“セックスの時に女を殴る”という暴力的な性癖がある。
そのため、産みの母・仁子(田中裕子)は遠馬が生まれてすぐ、
家を出て、近くで魚屋を営んでいた。
遠馬は父の暴力的な性交をしばしば目撃。
やがて、遠馬は幼なじみの千種(木下美咲)と何度も交わるうち、
やがて自分にも父と同じ忌わしい血が流れていることに気づく…」

----ひぇ~っ。
あまり観たくない、
いや聞きたくない話だニャあ。
「だよね。
もし、ぼくもこの話と小説で出会っていたら
果たしてどうだろうとは思う。
ところが、映画は田中慎弥氏をして、
「共喰い」の絵空ごとの要素、
神話性のようなものが、映画という美しい嘘と抱き合って
強烈なにおいを放っています
』と大絶賛」

----つまり、瞬間、瞬間に
映画が感じられるということニャのかな?
「そういうことだね。
田中氏はさらには物語の方でも
父と息子の物語であり、
それ以上に女たちの物語であることにも、
改めて気づきました
』と手放しで誉めている」

----へぇ~っ。同じ芥川賞受賞作でも
『苦役列車』 のときとは正反対。
「(笑)それは原作者の違いも大きいけどね。
それはさておき、
この映画に出演した俳優たちには、
ただただ感服する他はない。
父親・円役の光石研。
彼は自身が演じた
あの『ヒミズ』 をもしのぐ、
おそらく日本映画史に名を残すであろう
最低最悪の男、いや父親を演じる。
こんな役、
一回、演じたら後味が悪く
実生活に尾を引いてしまうんじゃないか、
そう思わずにはいられないほどの薄汚さ。
対する田中裕子の、
不幸のどん底にありながらも
ギラギラと燃え続ける女の生命力。
これが『はじまりのみち』で“日本の母”を演じた人と同じかと…?
ここまでの映画を見た限りでは
彼女の助演女優賞は固いのではないか?」

----脚本は誰だっけ?
荒井晴彦
今回はロマンポルノ乗りで行こうと決めて臨んだらしく、
セックス・シーンが多いこと、
舞台が昭和だったことも併せて、
ぼくには懐かしい映画になっていたね」

---ロマンポルノと言えば
『四畳半襖の裏張り』
だから、さっきの蚊帳が出てくるってワケか…。
そう言えば、
ツイッターでは『祭りの準備』とか『うなぎ』とかも出していたよね。
『サッド ヴァケイション』は舞台が北九州だからまだ分かるけど、
『東海道四谷怪談』というのはどういうこと?
まさか幽霊譚ってわけじゃニャいよね。
「もちろん。
ただ、それらの映画を聞いて真っ先に思い浮かぶイメージを引用したと思われるシーンが
この映画には随所に散りばめられているということ。
“血脈”と“性”が根底に流れた重い映画だけに
あまり何度も観たい内容ではないはずなのに、
それでも映画館の闇にまた足を向けてみたくなる、
これはそういう映画だね」


「映画館の闇にあっているということだニャ」ちょっと怒るニャ


※暗闇の中のヒカリゴケだ度

人気blogランキングもよろしく

☆「CINEMA INDEX」☆「ラムの大通り」タイトル索引
(他のタイトルはこちらをクリック→)index orange
猫ニュー


コトリ・ロゴこちらのお花屋さんもよろしく。

こちらは噂のtwitter。
ツイッター
「ラムの大通り」のツイッター



blogram投票ボタン

ranking.gif人気blogランキングもよろしく

☆「CINEMA INDEX」☆「ラムの大通り」タイトル索引
(他のタイトルはこちらをクリック→)index orange
猫ニュー

『エンド・オブ・ウォッチ』

2013-06-22 15:06:18 | 新作映画
(原題:End of Watch)


----エンド・オブ?
これ、似たようなタイトルの映画なかったっけ…。
『エンド・オブ・ホワイトハウス』のことだね。
確かにまぎらわしいかも。
どちらもアクション映画ではあるし。
ただ、こちらのほうはあそこまで大風呂敷を広げたものではなく、
いわゆるポリス・アクション
ロサンゼルスの一角に位置する銃犯罪地区サウス・セントラル、
なかでも特に危険なニュートン地区を担当する
白人警官テイラー(ジェイク・ギレンホール)とメキシコ系警官ザヴァラ(マイケル・ペーニャ)、
ふたりのコンビに起こったできごとを描いたものなんだ。
タイトルにもなっている『エンド・オブ・ウォッチ』とは、
一日の終りに記録する業務日誌の最後に記す
『EOW』(勤務時間終了)のこと。
ところが実はこれには警察内の隠語があって、
もし二度と家に帰ることができなければ
それはやはり『EOW』、
“殉職”
となる」

----ニャるほど。
いま、調べたんだけど、
これって
アメリカでの評判がすこぶるいいみたい。
「うん。
ウィリアム・フリードキン監督をして
『警官たちの人生を鷲づかみにした傑作だ』。
実はこの映画の監督、デヴィッド・エアーは、
『トレーニング デイ』の脚本・共同製作で注目を集めた人。
10代でロスのサウス・セントラルに移住しただけあって、
その内部事情には実に詳しい」

----あれ。
そう言えば、
『トレーニング デイ』も警官の話だったよね。
「そう。
これはあの映画をさらに徹底。
事件のほとんどは
パトロール巡回中に起こる。
しかも、ここが今の時代っぽいんだけど、
映像の中には、
警官たちが手にしているデジカムや
パトカー内に設置されたダッシュボード・カメラなど、
常に4種のカメラによって目撃された
L.A.犯罪最前線が捉えられているんだ」

----へぇ~っ。
でも警官が勤務中にカメラなんて許されるの?
「テイラーが大学法学部入学を目指していて、
入試課題に映像製作を学んでいるという設定。
もちろん、しばしば注意は受けるけどね。
さて物語は、
この警察でも屈指の検挙率を誇る二人が
勤務中に見てはならないものを見てしまうことから大きく動き始める。
それは、
メキシコ麻薬カルテルの秘密に触れる人身売買の祥子。
実は、これについてはFBIが極秘に動いていて
半裸で捕われの身となっている人々存在を知りながら
あえて
彼らFBIはそれを看過していたという裏があるんだ。
そのFBIから
『お前たちは【POI】(参考人)を不意にしやがった』と告げられ、
さらには
『危険だから手を出すな』と忠告された二人だが、
彼らの中の正義感はそれを見過ごすわけにはいかず…。
というお話だね」

----ニャるほど。
「この映画、
何が嬉しいかって、
主人公たち二人の関係。
それは、アメリカン・ニュー・シネマを思わせる
バディムービーの様相を見せるんだ。
決してエリートではない、普通の男たち。
でも彼らは互いに互いを思いあう。
そしてそれがドラマを動かしていく。
だから、アクションが決して浮き上がらない。
クライマックスからの思いもよらぬ展開も含め、
最近の洋画の中では強く推したい映画だね」

---えっ、公開は8月17日。でもまだまだ先の話だよ。
『アフター・アース』は?
『さよなら渓谷』はどうニャったの?
「mmmm……」

「あまり大きな声じゃ言えないけど、ラストがいいらしいのニャ」ちょっと怒るニャ


※「しびれがくる」という言葉のがピッタリ合う映画だ度

人気blogランキングもよろしく

☆「CINEMA INDEX」☆「ラムの大通り」タイトル索引
(他のタイトルはこちらをクリック→)index orange
猫ニュー


コトリ・ロゴこちらのお花屋さんもよろしく。

こちらは噂のtwitter。
ツイッター
「ラムの大通り」のツイッター



blogram投票ボタン

ranking.gif人気blogランキングもよろしく

☆「CINEMA INDEX」☆「ラムの大通り」タイトル索引
(他のタイトルはこちらをクリック→)index orange
猫ニュー

『ワイルド・スピード EURO MISSION』

2013-06-18 23:20:53 | 新作映画
(原題:Fast & Furious 6)



-----今日は、えいが原稿書きで忙しいとかで代りにフォーンが喋っちゃいます。
この『ワイルド・スピード EURO MISSION』は、
大ヒットした『ワイルド・スピード MEGA MAX』の後日談。
物理の法則完全無視の
あの前作を越えるのはさすがに難しいんじゃないかと、
実はえいは、あまり期待しないで観に行ったとのこと。
ところが、ところが、
これが大当たりだったんだって。
う~ん。
いったいどんな話ニャんだろう?
エンターテイメント映画である以上、
アクションとは言えストーリーはあるはず。
で、教えてもらったのが次のお話。

モスクワで重要機密が盗まれた。
犯人はロンドンを根城にする元エリート軍人ショウ(ルーク・エヴァンス)とその一派。
アメリカにその魔の手が迫ることを警戒していたFBIの特別捜査官ホブス(ドウェイン・ジョンソン)は
一味のひとりを拘束したものの、ショウの追跡にてこずっていた。
スゴ腕のワルを捕まえるには、
スゴ腕のワルを投入する他に手はない…。
そこでかつてブラジルで共闘したドミニク(ヴィン・ディーゼル)とそのチームに
ミッションを要請する。


えっ、彼らはいま平和に暮らしているから
ミッション受けるはずはないだろうって?
さすが、よく観ているニャあ。
ところがここで前作の最後に飛び出した切り札が登場。
それはドミニクのかつての恋人で
死んだはずのレティ(ミシェル・ロドリゲス)がショウの一味に加担している写真。
ふだんは冷静なドミニクも、これには動揺を隠せない。
真偽を確かめるために、
彼とブライアン(ポール・ウォーカー)は仲間たちをロンドンに再結集し、
ホブスにチームの面々の恩赦を約束させ、
ショウの追跡という一大ミッションに取り掛かる…。

ニャに?
ストーリー説明が長すぎるって?
いや、これは、なぜ彼らがこのミッションを引き受けたかを納得してもらうため。
やはり裏付けがないと
その後の物語もスカスカになるからね。

とは言いつつも、
この映画の見どころはやはりカーアクション。
そのシーンについて話を聞いたときは
フォーンの目はくるくる。口あんぐり。
そう、これまでのカーチェイスとは全く規模が違う。
だれも観たこともない、
いや想像だにしなかった
るとんでもない、無敵の車(?)が登場
行く手に立ちふさがる車を次々とスクラップにしてしまう。
しかもそのさなかに、
これまた信じられない“空飛ぶ!抱きとめ抱擁アクション”が…。
ニャんでも、ここでは場内で笑いが起こったらしい。
そして終盤、もうひとつのクライマックスが…。
こちらは言ってもいいかな。
それは離陸する飛行機を使ってのカ―アクション。
前作が“列車”と車との並走だったのに対しで度肝を抜いたわけだけど、
さらに一ランク上にいったってワケだね。
えっ、それってすでに『ダイ・ハード2』でやっているよって…。
さすが!!(笑)。
フォーンもそう言ったんだけど、
「いやいや比較にならない」とのこと。
この前話してくれた
『殺人の告白』 でのカ―アクションと、どっちがスゴイのか、
ちょっと観てみたくニャるよね。



(byフォーン)

フォーンの一言「ココだけの話。『殺人の告白』 のカ―アクションは手作りのオモシロさ。
こちらはやはりCG、VFXが生きているんだって…」

身を乗り出す

手を叩いて笑える度!

コトリ・ロゴこちらのお花屋さんもよろしく。

こちらは噂のtwitter。
ツイッター
「ラムの大通り」のツイッター



blogram投票ボタン

ranking.gif人気blogランキングもよろしく

☆「CINEMA INDEX」☆「ラムの大通り」タイトル索引
(他のタイトルはこちらをクリック→)index orange
猫ニュー

画像はオフィシャル・ダウンロードサイトより。

『スマイル、アゲイン』

2013-06-12 23:20:31 | 新作映画
(原題:Playing for Keeps)


----ガブリエ・ムッチーノ監督って
『幸せのちから』を作った人だよね?
「うん。いま話題の
『アフター・アース』ウィル・スミス、ジェイダ・ピンケット=スミス親子を主演にした
ハートフル・ドラマの監督。
実はこの映画も、やはり父と子の絆のものなんだ」

----その邦題からすると、
“再起”ものって感じだよね?
「そう。
これまたアメリカ映画にはよくあるパターンで、
夫婦関係が破綻をきたし、
妻のほうが子供を引き取っているという設定。
で、週末の決められた日だけ、
父親は子供に会うことができるんだ」

----つまり、
主人公は減点パパってことだね。
初めからそうニャの?
「いやいや、そういうわけじゃない。
ジェラルド・バトラー演じる主人公ジョージは
ヨーロッパ・サッカー界でスター選手として活躍。
ところが怪我で引退してしまう。
忙しすぎて放ったらかしにしてしまっていた
妻と息子とは5年も音信不通だっただけに、
何をいまさらという感じで
同じく戦力外通告を受けてしまう。
だからって
サッカー一本槍だっただけに、
そうそう簡単には他の仕事はできない。
考えたあげく彼は、
TVのサッカー解説の職を求めてポストに励むが…という話」

----ニャるほど。
「でも、サッカー解説だなんて
そんな上手い話が調子よく目の前に転がっているものじゃない。
それでもいつかチャンスは巡ってくると信じるジョージ。
そんなある日、
息子のルイスのサッカー練習を見に行った彼は、
そこで子供たちにキックを教えたことから、
それがママたちの間で評判になり、
コーチの依頼が舞い込むようになる…と、
まあそういう話だ」

----へぇ~っ。
元一流プレイヤーだけに、
お母さんたちの視線も熱いだろうね?
「そういうこと。
ここで出てくるママさんたちの顔ぶれがスゴイ。
キャサリン・ゼタ=ジョーンズ、ユマ・サーマン、ジュディ・グリア
彼女らの積極的なお色気攻勢
ロバート・アルトマンの『ナッシュビル』を思い出したね。
さらに元妻にはジェシカ・ビールと言うのだから、
これは女優を愛でる映画とも言える。
そしてユマ・サーマンの夫に扮するデニス・クエイドの知性なき男…。
話自体はよくあるもので、目新しくもなんともない。
でも、こういう、
ゴージャスな女優の共演と彼女らの魅せる欲求不満のエロス。
ぼくはそういうところから生まれるエスプリを愉しむことをおススメするな」



「そんな観方ってありなのかニャ」なにこれ?



※映画は何でもアリだ度

人気blogランキングもよろしく

☆「CINEMA INDEX」☆「ラムの大通り」タイトル索引
(他のタイトルはこちらをクリック→)index orange
猫ニュー


コトリ・ロゴこちらのお花屋さんもよろしく。

こちらは噂のtwitter。
ツイッター
「ラムの大通り」のツイッター



blogram投票ボタン

ranking.gif人気blogランキングもよろしく

☆「CINEMA INDEX」☆「ラムの大通り」タイトル索引
(他のタイトルはこちらをクリック→)index orange
猫ニュー

『熱波』

2013-06-10 23:36:49 | 新作映画

----この映画、
モノクロみたいだけど、
昔の映画ニャの?
「いやいや。
これは2012年に作られた
ポルトガル=ドイツ=ブラジル=フランス、
4カ国の合作映画」

----それにしては
メインビジュアルが古めかしく感じるニャあ。
いつの時代のお話?
『楽園の喪失』と称された第一部が現代。
そして『楽園』の第二部が60年前という設定」

----そのふたつに関連性はあるの?
「この映画は、
老いて死を目前にした老婆アウロラの今と
美貌に溢れたその若き日を描いている。
現代のアウロラは気性が荒くギャンブル好き。
周りに迷惑をかけてばかりいる。
そんなある日、病に倒れたアウロラは薄れゆく意識の中で、
ベントゥーラという男に会いたいと言う。
最期の願いを託された隣人のピラールは、
その男を探そうとする。
かくして見つかったベントゥーラ。
その口から語られる記憶とは…」

----ニャるほど。
それがポイントということだ。
ドラマチックな展開になりそうだニャ。
「う~ん。
実を言うと、
それほどのことでもない。
いわゆる≪不倫>のドラマ。
舞台がアフリカに移ることもあって、
『イングリッシュ・ペイシェント』
思い出さないでもなかったけど、
あのような雄大な自然が出てくるわけでもないしね…」

----それにしては
ベルリン国際映画祭でのW受賞など、 ,
世界的評価も高いようだけど…?
「それは、
語り口によるものじゃないかな。
いまも話した通り、この映画は、
ある女性の惰性で生きているような老後の日々、
そして情熱に満ちた若かりし日々の不倫の恋と、
扱われている素材としては
もう、手垢が付いていると言ってもいいくらいに古い。
ところがこの監督のミゲル・ゴメスは、そこに
掟破りとも言えるほどの
大胆な手法を取り入れているんだ」

----映画に<掟破り>ってあるの?
どんな手法も自由じゃニャいの?
「確かに。
でもこれを聞いたらどう思う?
第二部『楽園』は
会話の一つありやしない。
それもそのはず、
すべては
ベントゥーラの回想モノローグで語られるんだ。
それぞれの手紙を読み上げるシーン、その例外を除いてはだけどね」

----えっ、それって<画>じゃなくて<言葉>で
心のうちも説明するってことだよね?
それはずるいや。
「普通はそう言いたくなるよね。
安易すぎて映画の面白みに欠けると…。
ところが、
そのモノローグ・オンリーを徹底することで
これまで見たことのない相乗効果が立ち現れるんだ。
ある種の情感とでも言ったらいいかな。
スクリーンが
恋に落ちたふたりの<想い>に満たされ包まれていくんだね。
さっきも言ったように、
これはもとより
映画だけでなく文学などでも繰り返し語られてきた古めかしいお話。
しかし逆に
その古典的な物語を使い、
映画表現のタブーを破ることで
その向こうにあるであろう何かを模索し、掴もうとしたってわけだ。
そういう意味ではとてもチャレンジングな映画だったと思うよ」



「でも一般受けするのかニャ?」小首ニャ



※第一部には主人公を回転移動撮影で捉えた不思議な映像も飛び出す度


人気blogランキングもよろしく

☆「CINEMA INDEX」☆「ラムの大通り」タイトル索引
(他のタイトルはこちらをクリック→)index orange
猫ニュー


コトリ・ロゴこちらのお花屋さんもよろしく。

こちらは噂のtwitter。
ツイッター
「ラムの大通り」のツイッター



blogram投票ボタン

ranking.gif人気blogランキングもよろしく

☆「CINEMA INDEX」☆「ラムの大通り」タイトル索引
(他のタイトルはこちらをクリック→)index orange
猫ニュー

『箱入り息子の恋』

2013-06-05 23:39:17 | 新作映画

----“箱入り娘”というと
家族に大切にされているイメージがあるけど、
“箱入り息子”というのは?
「家族がそうしているというのではなく、
自分から引きこもっている。
まあ、この映画の場合に絞って言えばだけど…
ということでストーリーから紹介。
主人公は天雫健太郎(星野源)、35歳。
市役所の記録課で黙々と働く彼は、日々、
自宅と職場をただ行き来するだけ。
内気で愛想がなく唯一の趣味はゲーム、そしてペットのカエル。
見かねた両親は親同士が婚活する“代理見合い”に参加。
今井家の美しい一人娘・奈穂子(夏帆)と
お見合いするチャンスを掴んでくる。
最初はまったく乗り気でなかったものの、
ひょんなことがきっかけで
健太郎は彼女と初めての恋に落ちる。
だが、奈穂子は目が見えない病気にかかっていた…」

----へぇ~っ。
『街の灯』みたいだニャあ。
「うん。
ぼくも話はそのように流れていくのかと…。
ところが、
この映画は、彼女の目を治そうというような
ヒューマンな方向には向かわずに、
初めて恋を知った健太郎の変化を
ここしかないという絶妙のキャメラ・ポジション、アングルで追っていく。
あるときは手持ちでその心の揺れを
あるときは俯瞰で彼を豆粒のように写すことで
無力ながらも必死で頑張るその姿を…。
それが、ほんとうにこれしかないという
考えに考えて練り上げられたフレーミングで写されるものだから、
観ていてほんとうに気持ちがいいんだ

----もともと、
人が人を好きなること自体が素敵だものね。
「そうなんだ。
ここに描かれているのは、
胸にあふれんばかりの気持ちを抑えておくことができずに、
障碍を乗り越えて前へ前へと進んでいく男の話。
それまで恋の免疫がないものだから形は不器用。
でもその熱いひたむきな姿が観る者を幸せな気持ちにしてくれる」

----そういえば、
この映画、前売り券が好調ニャんだって?
牛丼屋とタイアップしているとか…。
「うん。吉野家とね。
牛丼屋という日本ならではの風景は、
これまでにも『ホームレス中学生』『モテキ』などでも
効果的に使われてきたけど、
この『箱入り息子の恋』のように
3回も登場してくるのはちょっと珍しい。
なかでも健太郎が奈穂子を初めて吉野家に連れて行く2回目、
そしてそのときのことを思い出して奈穂子が吉野家に入る3回目。
このふたつのシーンは、もうお見事と言うほかない。
あと、キャスティングだね。
主人公を演じた星野源には新人男優賞をあげたいほど。
それと健太郎の母・フミを演じる森山良子
お見合いの席で、
奈穂子の父・晃(大杉蓮)から
健太郎のような男に娘を任せられるはずがないと散々に言われ、
母としての怒りをぶつけるシーンのド迫力。
聞けば森山良子の映画出演は
『がんばっていきまっしょい。』以来、15年ぶりとか。
そのブランクはまったく感じなかったね」


※ツイッターから再録

自分にとって「幸せな映画」というのは「気持ちのいい映画」とも言い換えられる。
考え抜かれた上で選びとられた撮影と編集によって紡ぎあげられた映画は、
音楽のようにメロディを奏でリズムを刻み、心をウキウキさせてくれる。
『箱入り息子の恋』はまさにそういう「心地よい映画」だった。
もちろん、観客の心を覚醒させるべく、
あえて不快な構図で画を切り取る映画だってあるし、それはそれで嫌いではない。
自分が苦手とするのは、そのどちらにも属さない中途半端なキャメラの映画。
あっ、シナリオがキチンとしているのは前提。そうでなく撮入していたら、それは話にならない。



奈穂子の母を演じた黒木瞳もよかったらしのニャ」2009.4.7フォーン


※「黒木瞳が大杉蓮を殴るシーン。そのビンタ音は現場音らしい度
http://www.youtube.com/watch?v=mQiDs9tKZv4
人気blogランキングもよろしく

☆「CINEMA INDEX」☆「ラムの大通り」タイトル索引
(他のタイトルはこちらをクリック→)index orange
猫ニュー


コトリ・ロゴこちらのお花屋さんもよろしく。

こちらは噂のtwitter。
ツイッター
「ラムの大通り」のツイッター



blogram投票ボタン

ranking.gif人気blogランキングもよろしく

☆「CINEMA INDEX」☆「ラムの大通り」タイトル索引
(他のタイトルはこちらをクリック→)index orange
猫ニュー

『殺人の告白』『二流小説家 シリアリスト』

2013-06-01 14:17:20 | 新作映画


----あれれ、『殺人の告白』始まっちゃったよ。
これ、けっこう気に入っていたんじゃなかったっけ?
「うん。
あの映画は見どころがいっぱいありすぎて、、
逆に喋りにくかったんだ。
物語としてはこう。
1990年、女性ばかりを狙う殺人事件が発生。
刑事チェ・ヒョング(チョン・ジェヒョン)は
犯人を逮捕寸前まで追い詰めるが取り逃がしてしまう。
2005年冬、犯人は捕まらないまま公訴時効後を迎える。
そしてさらに2年後、
イ・ドゥソク(パク・シフ)と名乗る男が、
殺人の仔細を書いた自叙伝
『私が殺人犯だ』を出版する。
“謝罪会見”に現れた彼は、
涼やかなルックス、微笑、そして清潔なスーツ姿で一躍、時の人に。
怒りが収まらないのが刑事チェ・ヒョング。
さらに、ドゥソクの登場に驚いた遺族たちは
彼の殺害を企てる…」

----それって、
もうすぐ公開される日本映画にも
似たような設定があった気が…。
『二流小説家 シリアリスト』のことだね。
その話は後でまたすることにして、
『殺人の告白』は10人の女性が殺害された未解決事件を基に、
チョン・ビョンギル監督が編み出したストーリー。
原作がない分、物語上の縛りも少なく、
<画>としてのオモシロさが堪能できる。
オープニングのワンシーン、ワンテイクもさることながら、
完全に突き抜けていたのがカ―アクション」

----あれっ。
カ―アクションは
あまり好きではないのでは?
「いやあ、そのはずなんだけどね。
ここでのカーチェイスが
ボンネット上でバトルを繰り広げながら進行するというもの。
もう、あきれるほかなかったね。
フィクションに求められるリアルさなんてまったく気にしていない。
まるで違う次元の映画でも観ているようだったね。

そのようなアクション、あるいはサスペンスを
テンポよく挟みながら、
映画は、思わぬ展開を見せていく。
ところが途中から映画は別の方向へ舵を切る。
それはテレビ局で企画された討論番組。
その生放送中に、なんと
『真犯人は自分だ』と名乗る別の男から電話がかかってくるんだ。
果たして真相は?
ここから映画はミステリーに傾いていく」

----ニャるほど。
一方の『二流小説家』は?
「これはね。
原作がアメリカの
デイヴィッド・ゴードンのミステリー小説。
日本では初となる
ミステリー賞三冠”に輝いているんだ。
こちらの話はこう。
主人公は売れない小説家・赤羽一兵(上川隆也)。
その彼の元に、
連続殺人犯の死刑囚・呉井大悟(武田真治)から
『告白本を書いてほしい』という依頼が舞い込む。
この仕事は、
売れない小説家にとっては一流として名を売る絶好のチャンス。
そんな淡い期待を抱く赤羽に
呉井はある条件を出す。
それは自分を主人公にした官能小説を書くこと。
そして謀られたかのように、
赤羽が取材した女性たちが
12年前の呉井の事件と
まったく同じ手口で次々と殺されていく」

----あれっ。
それは不可能でしょ。
だって刑務所にいるんだから…。
ということは、呉井は犯人ではない?
「さあ、そこなんだ。
この二本の映画、
“犯人の告白”をキーワードとしながら、
前者はアクション&サスペンス、そしてミステリーへ。
一方、後者は最初からミステリーとして語られていく。
だから愉しみ方が似て非なるものとなる。
『二流小説家』に関して言えば、
見どころは俳優。
意外なことに、上川隆也にとって
これは初の主演映画。
最初の登場シーンなんて
ちょっと見には誰か分からない。
小栗旬かと見間違ったほど。
一方、犯人役の武田真治も、
『羊たちの沈黙』レクター博士とまではいかないけど、
澱の中の殺人者を、狂気を滲ませて演じていた。
ただ、『殺人の告白』のパク・シフを見ちゃうと、
そちらの方がより強烈な印象を残すことは否めない。
これもまた、物語上の必然ではあるけどね」

----はいストップ。
そこまで…。
この手の映画は喋りすぎニャい方がいいのニャ。


「日本観比べるといいのニャ」2009.4.7フォーン


※「『殺人の告白』で出てくる連続殺人事件は、
ポン・ジュノ監督の『殺人の追憶』のモチーフとなったことでも知られている度


人気blogランキングもよろしく

☆「CINEMA INDEX」☆「ラムの大通り」タイトル索引
(他のタイトルはこちらをクリック→)index orange
猫ニュー


コトリ・ロゴこちらのお花屋さんもよろしく。

こちらは噂のtwitter。
ツイッター
「ラムの大通り」のツイッター



blogram投票ボタン

ranking.gif人気blogランキングもよろしく

☆「CINEMA INDEX」☆「ラムの大通り」タイトル索引
(他のタイトルはこちらをクリック→)index orange
猫ニュー
画像はオフィシャル・ダウンロード・サイトより。