ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『ヘンダーソン夫人の贈り物』

2006-11-29 23:28:20 | 新作映画
※映画の核に触れる部分もあります。
鑑賞ご予定の方は、その後で読んでいただいた方がより楽しめるかも。


(原題:MRS HENDERSON PRESENTS)

----この映画、全然知らないニャあ。
「実は、この映画の物語については
プレスにきれいにまとめてある。
あれこれボクが言うよりは、
それをそのまま紹介した方がいいかも。
『「ヘンダーソン夫人の贈り物」は、
イギリスで初めてヌードレビューを登場させた
ウィンドミル劇場のオーナーであるローラ・ヘンダーソンと、
支配人ヴィヴィアン・ヴァンダム、
そして勇気を奮って衣装を脱ぎ捨てた
ウィンドミル・ガールズを描いた、実話に基づく作品』」

----ほんとだ。分かりやすいや。
でも、いつ頃のお話ニャの?
「実際は1931年頃らしいんだけど、
あえて第二次世界大戦前夜の1937年に変えてある。
それによって
空襲の中でも決して劇場をクローズドにはしなかった
彼らの熱い思い、情熱が強調されているわけだ」

----監督はスティーヴン・フリアーズだっけ?
「うん。彼にとっては初のミュージカル映画でもあるわけだけど、
実にウエルメイドな仕上がりとなっている。
奇をてらわないオーソドックスな作り…。
安心して観れはするんだけど、
次の展開が読めてしまうため、
最初は意外性に乏しく、
これでいいの?って感じだったね。
でも、その難も前半だけ。
ヘンダーソン夫人と劇場のスター、モーリン、
そして支配人ヴァンダムが、仕事と恋をめぐって、
それぞれの意見をぶつけあうあたりから、
映画は加速度を増してオモシロくなってくる。
クライマックス、ヘンダーソン夫人が劇場を買い取り、
ヌードレビューを始めた真意が分かった時には、
目頭が熱くなったね。
ネタバレになるから詳しくは言えないけど、
なるほど、だから『贈り物』なんだとね…」

----あっ、それ分かった気がする。
これは若い男性への『贈り物』なんでしょ?
でも男=観る立場、女=観られる立場という、
この男女の役割の決めつけって、少し問題じゃない?
「あらら、言っちゃった。
でも、映画を観ている間は、
そんなことまったく感じさせないんだけどね。
途中、脱ぐのを恥ずかしがる女性たちの提案により、
男性スタッフも一緒に脱ぐシーンが挟み込まれている。
これもジェンダーフリーに対する監督の配慮かもね」

----えっ、それってボブ・ホスキンスも脱いじゃうの?
「そう。全部見えちゃう(汗)。
ボブ・ホスキンスとジュディ・デンチ、
彼らふたりが演じるのは、
まるで夫婦のようにストレートなケンカを繰り広げる
微妙な関係の男と女」

----ストレートで微妙?
よく分からないな?
「うん。
ふたりともそれぞれ強いプライドを持っているから
仕事上では思わず相手に対して辛辣になってしまう。
でも、そこには共に難局を乗り越え、戦ったと言う
同士的な連帯意識も横たわっている。
そんな彼らだけに、
いつしか友情を超えた感情が芽生えてくるというわけだ」

----戦いって、どういうこと?
「当時のイギリスはフランスと違って保守的。
舞台でヌードなんてとても考えられなかった。
そこでヘンダーソン夫人は、ある策略を練る。
かくして生まれたのが裸の女性たちによるタブロー(静止画)。
つまり、絵画は動かないから芸術と言う
当局の言い分を逆手に取ったわけだ。
そしてそれを上演したのがヴァンダム。
それだけに、ふたりが少しだけ殻を破り、
男と女として相手に近づこうとする
ラストのダンスシーンは感無量。
背景は夕闇迫るロンドン。
実景ではなく作り物なのは明らかなんだけど、
そこがまた、一昔前の映画の記憶をかき立てる。
幸福感で胸がいっぱいになってしまったね」



              (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「ぼくが観てもいいのかニャ」膝乗り

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※ちょっとCM。けっこう凝ってるかも。
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<キスミント

『魂萌え!』

2006-11-28 23:06:34 | 新作映画
----この映画って阪本順治監督の新作だよね。
彼って男たちの世界を描いているイメージが強いけど、
これは桐野夏生のベストセラー。
出演者の顔ぶれからすると
女性映画のようだけど…。
「うん。今は亡き映画評論家の淀川長治氏は
かつて阪本順治にこう言ったことがある。
『君は溝口健二監督のように女性映画を撮った方がいい』と。
言葉は正確ではないけど、確かそんな内容だったと記憶している。
それを裏付けるかのように、
阪本順治は後に名作『顔』を撮って、
周囲を驚かせた。
でも、その後は少し低迷していた気がする。
個人的には『KT』は好きだったけど、
そのまた後がね」

----『亡国のイージス』のこと?
「うん。阪本監督自身、
『自分を大きく見せようとしたニ作品の後、
久しぶりに“殻”に閉じこもってみようと思った』と語っている。
この『魂萌え!』で描かれるのは、
突然、夫に先立たれた妻・敏子の話。
葬儀の日。見知らぬ女性からの電話で、
長く隠されていた夫の秘密が明らかになる。
また、8年ぶりに現れた長男は、強引に遺産相続と同居を迫る。
いたたまれなくなった彼女はカプセルホテルにプチ家出。
一瞬にして、これまでの世界と<風景>が変わってしまう。
<女>は母や妻という役を演じていても、それはその時だけの姿。
その段階・役割が終わると、
次のステップに踏み出すべく
ひとりの<個>に戻る。
受動と能動の違いこそあれ、
アルモドバルの『オール・アバウト・マイ・マザー』に似た感覚を味わったね。
さて、ある種の自由を手にした彼女を周囲が放っておくわけもなく、
やがては言い寄る男も出てくる。
そんな中、敏子が選択した人生とは…?」

----へぇ~っ。その敏子はだれがやってるの?
「風吹ジュン。
若い世代の女性からも支持の高い彼女だけど、
ぼくらの世代だと、彼女は『蘇る金狼』。
松田優作相手の衝撃的セックスが
今も頭から離れない。
おそらく阪本順治もそれが頭にあったんじゃないかな。
<良妻賢母>の奥に潜む<女>を
風雪ジュンの中から見事に引き出していた」

----亡くなったご主人の役は寺尾聡だよね。
その不倫相手はだれなの?
「大女優・三田佳子だ。
いわゆる自分が日陰の身でありながら、
それをまったく引け目に感じることなく
正妻と真っ正面から対決する。
このときの、ちょっとイッちゃってる三田佳子の<目>は見モノ。
早くも来年度の助演女優賞に名乗りを上げたって感じだ」

----チラシによると、
ヴィットリオ・デ・シーカの『ひまわり』が
出てくるみたいだけど?
「あの映画は当時は大メロドラマだと思ったけど、
高い人気を誇っているよね。
映画『手紙』にも使われた『言葉にできない』でだったかな?
オフコースも10日間武道館コンサートでバックに流していたし…。
この『ひまわり』というのは、
戦場から帰らぬ夫(マルチェロ・マストロヤンニ)を追って
ロシアに渡ったヒロイン(ソフィア・ローレン)の物語。
彼女はそこで夫が現地の女性(リュドミラ・サヴェーリエワ)と
結婚生活を送り、子供までいることを知ってしまうわけだ。
さて、このイタリア映画の使われ方も要注目だ。
あまりにも<映画>に直結している引用だけに
原作にもあるのかどうか、気になるところだね」

----なんだか、観たくなってきたな。
「『ひまわり』は列車のシーンが印象的だけど、
この『魂萌え!』も電車の中でのヒロインの姿が記憶に残る。
予告編の最後にも出てくるこのシーンでは、
風雪ジュンの内的葛藤、その変化が表情に現れる。
そして呟く、ある<一言>がスゴいんだ。
さすがに予告ではそこまで入れてないけどね」

----ずるいや。そう言われると余計に観たくなるよ(笑)。

                    (byえいwithフォーン)


※女の対決スゴい度
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『モンスター・ハウス』

2006-11-27 22:53:53 | 新作映画
(原題:Monster House)

----あらら、またアニメだ。しかもソニー。
ほんとこの冬は続くね。
「ま、そう言わないって。
この映画は製作総指揮にスピルバーグとゼメキスと言う黄金コンビ。
となると、なにかやってくれてるんじゃないかって、
一応の期待はしていたわけだけど、
これがなかなか見せてくれるんだ」

----最近のゼメキスって、ジョエル・シルバーと一緒に
『蝋人形の館』など
ホラーの製作を多く手がけていたよね。
ということは、このアニメもホラーというわけ?
「おっ、いいところに目をつけたね。
しかも彼自身『ポーラー・エクスプレス』を監督した後だけに、
この映画も同じくモーション・キャプチャーの手法が使われている。
プレスに載っていた大口孝之さんの記事によると、
ピクサーやドリームワークス・アニメーション、
ブルースカイ・スタジオなどでは、
従来のキーフレーム法に固執し、
このモーション・キャプチャーを
アニメとは呼べないと言う考え方をとっているんだって」

----そのモーション・キャプチャーって
この前、少し話に出たロトスコープとはどう違うの?
「まず最初に
生身の俳優が演じるという点では同じ。
ただ、このモーション・キャプチャーでは
俳優は特殊なスーツとシューズを身につけ、
頭にビニールのキャップをかぶせられ、
腰にはプラスチックの反射板がつけられる。
それを高速度赤外線カメラで捉え、
CG画像に置き換えていくわけだ。
で、死角をなくすため、
たとえば椅子や自動車といったような小道具は
すべて中身が空洞となっているらしい」

----よく、分かったような分からないような(汗)。
でも『ポーラー・エクスプレス』って、
リアルすぎて、フォーンには少しキモかったニャあ。
「うん。その反省からか、
今回は少し人物がデフォルメされている。
しかもクレイ・アニメなどの特徴である
ストップモーション・アニメの味わいを出しているんだ。
動きを滑らかにする計算を省いたことが
逆にこのような効果を生み出しているらしい。
ほんと、アニメもその表現法が広がったよね」

---ちょ、ちょっと、いきなりまとめてしまわないでよ。
そのクレイ・アニメって
『ウォレスとグルミット』みたいなのだよね。
粘土で作って一コマ一コマ動かす…。
う~ん。いよいよこんがらかってきた(大汗)。
それより、お話の方はどうなっているの?
「あっ、ごめんごめん。
簡単に言えば、
家が意志を持って人を飲み込んでしまうと言うお話。
古びた一軒家。
そこには一人のおじさんが住んでいて、
かたくなまでに少年たちを自分の敷地に入れまいとする。
ところが、そのおじさんが倒れてしまい、救急車で病院へ。
すると家が勝手に動き始め、いろんなものを食べ始めるんだ。
もちろん人間もね。
折しもハロウィンが目の前に。
主人公の少年たち3人は
これ以上の惨劇を防ぐべく、
勇気を持って家の中に乗り込んでいく!」

---ニャんだか、子供ダマしっぽいニャあ。
「いやいや。決してそんなことはないよ。
家が人を飲み込むその背景には、
残酷なまでの愛の物語が横たわっている。
これは子供たちが理解するには少しキツいかも。
ある意味、オトナ向けの映画になっているんだ。
ぼくは『オープン・シーズン』よりは
こっちを買うね」


                    (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「ハロウィンの日のお話なら、ぼくも観なくっちゃ」ぱっちり

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『ディパーテッド』

2006-11-26 23:17:51 | 新作映画
(原題:The Departed)

----これって確かハリウッド史上最高額でリメイク権が落札されたという
あの『インファナル・アフェア』のことだよね。
監督がマーティン・スコセッシだっけ?
それにしてもスゴく贅沢なキャスティングだ。
「うん。トニー・レオンの役がレオナルド・ディカプリオ、
アンディ・ラウの役はマット・デイモンだ。
この二人で果たしてあの暗黒映画の雰囲気が出せるのかなと思っていたけど、
それはまったくの杞憂だったね」

----ふうん。二人ともまだあどけなさが抜けない感じがするけど…。
「いやいやどうして。
特にディカプリオは渾身の演技。
あの『アビエイター』でさえもオスカーに蹴られてしまった無念を
今度こそ晴らしてほしいと思ったね。
でも、何よりも褒めたたえたいのはスコセッシの演出力。
オリジナルでは100分ほどにすぎない映画を、
なんと150分もの超大作に仕上げ、
それでいて決して冗長になることなく、
一瞬たりとも飽きさせずに最後まで見せきる。
これだけの時間、緊迫感を持続させるというのは、
それこそ、昨日今日出てきた監督にはまず無理だろうね」

----どうすれば、そんなに膨らませることできるの?
「結局は映画として豊かにするため、
いかに肉付けするかなんだけどね。
う~ん。じゃあ、それを説明するために
簡単にストーリーをおさらいしよう。
この映画は、基本はシンプル。
犯罪組織から警察内部にスパイとして入り込んだ男コリン(マット・デイモン)と、
警察から組織にスパイとして送り込まれた男ビリー(レオナルド・ディカプリオ)。
この二人の男が、
いつ自分の正体がバレるやもしれないという不安に苛まされながら、
それぞれの任務を遂行していく姿が描かれる。
香港映画ではその状態を『無間道』と呼んでいるけれど、
このハリウッド・リメイク版では、その言葉にインスパイアされたかのように、
安息の時が一瞬たりとも許されない地獄の日々が
ディカプリオの熱演によって
さらに狂おしくスクリーンに刻印されてゆく」

----ふうん。香港版とまったく同じというわけじゃニャいんだ?
「もちろん基本は変わらないんだけどね。
ネタバレになるから詳しくは言えないけど、
映画館からの尾行、屋上からの墜落、
女性カウンセラーへの想いといった、
オリジナルを観た人ならば、
すぐに思い浮かぶ名シーンはいずれも残してある。
ただ、それらの一つひとつに時間をかけ、
じっくりと描き込んでいるため、
それこそ『真の映画を観た』という充足感を
心ゆくまで味わうことができるわけだ。
たとえば、映画館での尾行シーンでは、
二人それぞれに野球帽を目深にかぶらせることで
オリジナルでの甘さを打ち消すことができる。
おそらくオリジナルでは、
トニー・レオン、アンディ・ラウ、
二人のスターそれぞれの表情を見せたかったのだろうけど、
スコセッシ版ではそれよりもサスペンスに重きを置いたということだね。
また、屋上からの墜落シーンの後、
ビリーの正体が実は仲間にバレているというのも
スコセッシ版が付け加えたアイデア。
さらにもっとも大きな変更は
オリジナルでケリー・チャンが演じた女性カウンセラーを
コリンの彼女と同一人物としたことだね。
演じるのはビーラ・ファミーガだ」

---へ~え。他にもキャラの変更はあるの?
「うん。
覆面警官の正体を知っているビリーの上司。
香港版では一人だったけど、
その役を演じたマーティン・シーンに加えて
もう一人マーク・ウォルバーグが加わる。
これは強烈!注目してもいいと思うよ。
彼は口が悪く罵詈雑言でビリーを挑発し、
脅しにも似た文句で任務に就かせるんだ。
物語の根幹にも関わる重要な役となっているしね」

---あれっ。
ジャック・ニコルソンは?
「彼には脱帽だね。
最近は、作品によっては枯れた味わいも見せていた彼だけど、
やはりニコルソンにはクレイジーな役がよく似合う。
組織のボスを演じたこの映画では、
もう、役を楽しんでいるとしか思えないほどにハマっている」

----エリック・ツァンも悪くなかったけどな。
「あっ、それはもちろんそうだよ。
彼は『インファナル・アフェア』の功労者の一人だと思う」

----そう言えば、予告編では「ザ・ウォール」の中の曲が使われていたよね。
「『Comfortably Numb』だね。
あれはいつ聞いてもゾクゾクするね。
他にもローリング・ストーンズの
『ギミー・シェルター』など6~70年代の名曲がいっぱい。
音楽面でも充実の2時間32分だったね」


     (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「これはカッコいいニャ」おっ、これは

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『オープン・シーズン』

2006-11-25 21:57:00 | 新作映画
(原題:Open Season)

----この冬って、アニメ多いよね。
それも最近は、動物が主人公のものばかりじゃニャい?
「うん。でもこの映画は、
その中でも、あることで話題を集めている。
それは、ソニー・ピクチャーズ初の
フルCGアニメーションということ」

----えっ?
いまどき、フルCGアニメなんて珍しくも
なんともないという気もするけど…。
「確かにそのとおりだね。
だから、『すべて合わせると何十億本にもなるという
毛の質感を、その種類ごとに確立していくのは
気の遠くなる作業だったことは、想像に難くない』とか、
『水にスケールの大きさを与えて、
まるで生きているように見せたいと思った』とか
いくらプレスに書かれていても、
それほどの驚きはない」

----おや、ちょっとシニカルだニャ?
「でもね。
2D絵画のエッセンスと3D世界の融合は、
なかなか巧くいっていたと思うよ。
背景となる町や森には、
ディズニーの背景画家として知られる
アイヴェン・アール独特のスタイルを取り入れているらしい。
このアイヴェン・アールという人の描く絵というのは、
建物が全てわずかに歪んでいて、しかも非対称なのだとか。
また、スカッシュ・アンド・ストレッチという
2Dアニメーションのスタイルも取り入れているらしい。
これはキャラクターの骨格をきっちり決まったモノにせず、
大げさに潰れたり伸びたりできる表現なのだとか」

-----う~ん。でも、それって
『チキン・リトル』でもなかったっけ?
壁にべたっと伸びて広がったりする表現法でしょ。
「あらら。鋭いところ突いてきたね(汗)。
正直、ぼくもそこの違いは分からなかったりするんだ(大汗)」

-----あれれ??(笑)
かわいそうだから突っ込むのは止めにしてと…。
ところで、どんなお話ニャの?
「ペットで甘えん坊のクマのプーグが、
シカのエリオットとの出会いから
森で暮らさなくてはいけなくなってしまう。
それまで人間界で愛情豊かに育てられてきたプーグは大苦戦。
育ての親ベスに会おうと、先を急ぐあまり、
ダムを壊し、動物たちの住み家を奪ってしまう。
オープン・シーズン(狩猟解禁)まで、あとわずか。
責任を感じたプーグは森の動物たちと一緒に
ハンターたち相手に戦うことを決意する」

----へぇ~。オモシロそうじゃニャい。
「そうなんだ。
実は、これを観ている間、
2Dだの3Dだのということは、
まったく忘れていた。
人に飼われているときはクールに見えたプーグが、
自然の中ではおろおろ。
とても傷つきやすい性格に変わる。
彼に限らず、すべてのキャラに
本当の意味での擬人化がなされているところも見モノだね」

----う~ん。ニャんだか
うまくだまされたような気もするけど。
オモシロいんだったら、まあいいや。

                      (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「フォーンは森では暮らせニャイ……と思うのだ」複雑だニャ


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『どろろ』

2006-11-24 20:20:11 | 新作映画
「もう、これは『ごめんなさい』って感じ」
----うん?どういう意味ニャの?
「いやあ、せっかく早く見せてもらったのに、
ぼくにはまったくダメで……」

----確か、手塚治虫の原作だよね?
オモシロそうなお話じゃニャい?
「うん。この原作は子供の頃、確かテレビアニメにもなって、
夢中になって観ていたんだけどね。
原作の舞台は室町末期。
醍醐景光は天下取りの代償として
自分の子を48体の魔神(映画では魔物)に差し出すことを約束。
赤ん坊は体の48ヶ所を欠損して生まれ、
そのまま川に流されて捨てられてしまう。
その赤ん坊を拾ったのは医師の寿海。
彼は、肉の塊の赤ん坊を不憫に思い、
木材で作製し補う。
かくして赤ん坊は成長して百鬼丸と名乗り、
自分の体を取り戻す旅に出るんだ。
映画では、これがもっとおどろおどろしく描かれる。
まず、舞台は室町時代ではなく、
新たに作られた世界となっている。
そう、 チェン.カイコーの『PROMISE』のようにね。
エレキテルなども出てきて、
ちょっとフランケンシュタインの趣もあったね」

----あれ?どろろっていうのは?
「百鬼丸(妻夫木聡)が旅の途中で出会うのが、
こそ泥のどろろ(柴咲コウ)。
彼は(実は女性だけど)百鬼丸の腕に仕込まれた刀を奪おうと虎視眈々。
百鬼丸と協力して魔物を倒すわけだ。
二人が魔物を倒すたびに、
百鬼丸の奪われた48ヶ所の体が一つずつ復活していく」

----それはまたスゴいお話だね。
「うん。今回、これを観て、
改めて手塚治虫=天才を確認したね。
そして同時に思ったのは、
天才である彼の世界の実写による映像化は無謀というか、
まず不可能と言うこと。
手塚治虫という人は
漫画という媒体だからこそできることを
自分の才能のすべてを使って表現した。
映像化されることなどは、はなから頭になかったと思う。
今回は、ニュージーランド・ロケだの、
チン・シウトンをアクション監督として招聘したりだの、
話題性にはこと欠かない。
でも、それ以前にヤシガニ、大山椒魚、桜魔人、カラス天狗といった、
クリーチャーの造型が、申しわけないけど寒い。
一昔前の特撮テレビ映画を観ているみたいなんだ。
反面、鯖目の七つ子みたいに、
CGだけで勝負できるものは、
それなりに観られるんだけどね…」

----ニャるほど。監督は塩田明彦だっけ?
「うん。彼はもともと自主製作畑の人。
「カナリア」など、問題性を内包した映画のときは切れ味鋭いんだけど、
『黄泉がえり』のようなメジャー大作では
それが鈍くなっていく(とぼくは思う)。
安川午朗の音楽はエンニオ・モリコーネ『ウエスタン』を思わせて
ニヤリさせるし、
黒澤明を父に持つ黒澤和子の衣装デザインには
『影武者』『乱』のDNAが確実に受け継がれている。
このようにパートパートを見れば、なかなかのものだけど、
それらのピースが全体図の中ににぴたっとハマっていない。
やはりこれは
それらをまとめあげる演出力の問題のような気もするなあ」

----うわあ、久々に厳しいニャあ。
「だから最初に言ったでしょ。『ごめんなさい』って…」


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『ア・グッド・イヤー プロヴァンスからの贈りもの』

2006-11-23 21:45:38 | 新作映画
(原題:a good year)

----それにしても長いタイトルだね?
(※この映画、配給会社が変わっていまは『プロヴァンスの贈りもの』です)
ワインをモチーフにした映画って、去年もなかったっけ?
『サイドウェイ』だね。
あれはアメリカが舞台だったけど、
今回の映画はワインの本場フランス。
主人公は、ロンドンの金融界で大成功を収めたイギリス人のマックス(ラッセル・クロウ)。
『勝利が全てではない。唯一だ』とまで言い切る彼の元に、
プロヴァンスで暮らしていた叔父の死の知らせが届く。
叔父のブドウ園とワイナリーを相続するために、
30年ぶりにプロヴァンスの地を踏むマックス。
彼はすぐに遺産の売却を決意するが…」

----ニャんだか、話が読めてきたな。
彼はそこでまずいワインを飲み、
いつしかブドウ園の再建へと心が傾いていく…。
あれ、違った?
「残念ながら、ちょっと違う。
彼がまずいワインを飲んだのは確かだけども、
そこにはある秘密が隠されている。
さてそんな中、一人のアメリカ娘がふらり現れる。
彼女は、叔父の子供だと名乗るが…。
この映画は、全世界で大ベストセラーとなった
『南仏プロヴァンスの12か月』で、
空前の南仏ブームを巻き起こしたピーター・メイルの最新作。
監督のリドリー・スコットとは30年以来の友人同士らしい」

----ちょっと待った。
いまリドリー・スコットって言った?
「そう、言ったよ。
彼自身、実はプロヴァンスに
11ヘクタールものブドウ園と別荘を所有しているらしい。
それだけに、プロヴァンス、そしてワインに対する想いは生半可ではない。
映像からは、その土地を知る者だけが描きうる芳醇な香りが漂ってきて、
こっちもちょっと酔ったような気分になりそうだったね」

-----えっ、それって試写がボジョレーの解禁日と重なり
ワインが振る舞われたからじゃないの?(笑)
「えへへ。
でもしっかり最後まで見届けたよ。
映画は、チェスの相手をして過ごしたテーブル、
負けることの意味を学んだテニスコート、
お気に入りだった飛び板のあるプールなど、
少年時代の回想がノスタルジーに傾きすぎることなく
ほどよく挟み込まれていく。
この少年時代のマックスを演じているのが
名子役フレディ・ハイモア。
『チャーリーとチョコレート工場』など、
これまでひ弱な感じの役が多かったけど、
今回はごく普通に自然体で同年代の男の子を演じている。
彼は叔父の筆跡をまねるのが巧く、
このことが伏線となり、物語は見事な結実を見せる。
ネタバレになってしまうからあまり詳しくは話せないけどね。
一方、ヘンリー叔父さんにはアルバート・フィニー。
原作には直接登場しないらしいけど、
彼の存在が映画では大きく生きている。
『テロワールには、太陽や雨よりも必要なものがある。
それはハーモニーとバランスだ』など、
とにかく蘊蓄のある名セリフを次々と喋ってくれる」

-----ふうん。もしかして、
主人公とそのアメリカ娘が結ばれちゃうんじゃニャいの?
それで、その地に残ることになったりして…?
「いやいや。
今日はフォーンのカンは冴えないね(笑)。
そこにもうひとり、ある女性がからんでくる。
そのロマンスの芽生えも、
雨の中の野外フィルム上映付きコンサートと、実におしゃれ。
映画自体も南仏らしく、明るいユーモアに満ちているし、
リドリー・スコットに重厚さを期待する向きには不満かもしれないけど、
ボクは彼のアナザーサイドが観られて十分に楽しめたね」


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『フリージア』

2006-11-22 10:00:13 | 新作映画
----また、玉山鉄二だ。
彼、最近よく映画に出ているよね?
「うん。ただ、隙のないほどの美形だからなあ。
作品が限られてくるんじゃないかと思ったけど、
なるほどこんな使い方もあるのか…って、
この映画を観ながら、そう感心したね」

----確か、原作は松本次郎という人に人気コミックだよね?
「そうらしいね。ぼくは知らなかったけど…。
江戸時代の日本には敵討ちが認められていたというのは、
『花よりもなほ』に詳しく描かれていたけど、
この映画は、そんな法律が復活していると言う架空の現代日本を舞台にした、
討つ者と討たれる者の戦い。
最初聞いたときは、こんな話、
巧く映画化できるはずはないと思っていたけど、
なかなかどうして見応え十分だったね」

----どこがよかったの?
「監督があの『鬼畜大宴会』を撮った熊切和喜。
この人の映画は、鮮血と言っても赤くない。
チョコレートと赤錆を混ぜたような、どす黒い色。
そのリアリズムが、今回のこの架空の物語と奇妙な化学反応を起しているんだね。
主人公は敵討ち執行人ヒロシ(玉山鉄二)。
彼は少年時代に巻き込まれた事件をきっかけに
人間的な感情、そして痛覚を失っている。
そのロボット的無機質な表情が
彼の美形と見事マッチしているわけだ。
そんな彼をスカウトしたのが
<カツミ敵討ち執行代理人事務所>のヒグチ(つぐみ)。
彼女もまた、同じ15年前の事件の被害者でトラウマを抱えている。
この事件というのが瞬間凍結爆弾の爆破実験。
ただ、これは映画オリジナルの物語らしい。
で、ヒグチはそのターゲット、トシオ(西島秀俊)を
狙っているというわけだ。
と、こんな風に簡単に話してしまったけど、
実際の物語はもっと複雑で入り組んでいる」

-----話だけ、聞いているとSFアクションみたいだけど?
「うん。ただ、この映画を僕が好きになったのは、
基本的に西部劇の構造を持っていること」

-----えっ、時代劇じゃなくて?
「うん。ガンアクションが中心だからね。
この敵討ちというのは、決められたエリアの中で行なわれる。
劇中、3つの撃ち合いが出てくるんだけど、
最初はアパートと言う狭い場所で追いつめられる恐怖を描き、
次は林の中や川縁を中心に夢幻的なエッセンスが加味される。
そしてトシオをターゲットとした3つめの銃撃戦は町角。
この背景となる<町>が昭和的と言うか、
今もけっこう見かける住宅街でリアル。
しかもそれらの風景の中を、ただ弾丸が飛び交うわけじゃない。
銃の構え方、つまり銃撃戦が始まる前の
ためからして映画的に作ってある」

-----どういうこと?
「うん。ここは監督のインタビューを基に喋るけど、
ヒロシは基本、片手で4発、両手で3発。
トシオは片手で、感情的な撃ち方。
アクションの中にこそドラマが必要と言う、
ぼくの基本的な考え方にピッタリ。
雨の中を、ヒロシが始末班と戦うシーンなんて
左の敵を討ったかと思うと、返す銃で右の敵を討つ。
まるでマカロニウエスタンそのもの。
スタイリッシュで実にカッコいい」

-----雨のシーンもあるんだ?
「そう。
雨は情緒を盛り上げるために効果的。
ここではヒロシとヒグチの間に、
<愛>が生まれる背景として用いられている。
色の使い方もオモシロく、
ヒロシの青い革ジャン、ヒグチの赤いブランケットなど、
その原色の使い方が、
くすんだ画の中によく映える。
そうそう、マズルフラッシュって知ってるかな?
銃が火を噴くときの一瞬の閃光。これまでCGで作ったとか。
つまりこの映画は細部まで神経を行き届かせながら、
壮大なホラ話(?)をそれらしく
オモシロく見せているんだね」

-----なんだか聞いていると大絶賛じゃニャい?
「いや。そうとばかりは言えない。
少し苦言を呈しておこう。
ヒロシとトシオのラストの雪の中での決闘シーンが、
意外に盛り上がらない。
ここはためをたっぷり使って、
それこそレオーネ・ウエスタンを再現してるかのように、
アップとロングの切り返しで見せるわけだけど、
ヒロシにまだそこまでの感情がないだけに、
意外とあっさり終わってしまう。
つまり形だけの決闘にしか見えないんだ。
それまでの銃撃戦がすばらしかっただけに本当にもったいない。
あと、劇中、何度も頬を伝う涙だね。
これもCGで作ったんじゃないかな。
実際は違うのかもしれないけど……」

-----でもそう思わせてしまったら、それはやはりダメだよね。

                      (byえいwithフォーン)


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猫ニュー

『それでもボクはやってない』

2006-11-20 23:30:34 | 新作映画
※カンの鋭い人は注意。※映画の核に触れる部分もあります。
鑑賞ご予定の方は、その後で読んでいただいた方がより楽しめるかも。



----“全世界衝撃のとことん社会派ムービー”?
これって周防正行監督の作品だよね。
彼ってコメディの人ってイメージがあるけど…。
「そうなんだよね。
今回も最初はコメディのつもりだったというのを
どこかで読んだような記憶がある。
ところが、題材を調べているうちに
日本の裁判に疑問を抱き、
本格社会派ドラマへと変わっていったようだ」

----確か、テーマは痴漢の冤罪事件だよね?
「うん。
ここで断っておきたいのは、
この映画は、主人公が有罪か無罪か、真実はどこに?という
『真実の行方』タイプの映画ではないということ。
試写では、『あなたは無罪と思うか有罪と思うか?』みたいな
アンケートを取っていたけど、
それって話題作りには効果的かもしれないけど、
あまり意味がない」

----どうして?
「だってタイトルがズバリ、中身を表している。
『それでもボクはやってない』。
この映画が描いているのは、
刑事事件で起訴された場合の有罪率99.9%という
驚くべき数字の裏側。
欧米では推定無罪が普通。
『十人の真犯人を逃すとも一人の無辜を罰するなかれ』という
格言もあるように、日本でも本来ならば
“疑わしきは罰せず”であらねばならない」

-----そうはなってないの?
「そういうことだね。
なぜならば、もし無罪にしてしまうと、
警察の誤認逮捕、検察の起訴の誤りを認めることとなり、
権力機構に傷がつくわけだ。
この映画では、“疑わしきは罰せず”で無罪判決を重ねた裁判官が
なんと左遷されると言う実態まで描いている。
周防監督は、この裁判のあり方に怒りを覚えているわけだ。
『それはもしかすると、
今現実に日本に生きている多くの人たちの
気持ちの反映かも知れません。
多くの人に取って、「疑わしきは罰せず」よりも
「疑わしきは捕まえといて」の方が本音に近いのかも知れません』。
これは周防監督の言葉だけど、
鋭く今の日本の現状を見据えていると思う。
つまり、この映画は痴漢の冤罪事件裁判という
一見、特殊な事件を描いているように見えながら、
実はすこぶる現代的な日本評となっているわけだ」

-----けっこう、骨太というわけだ。
「うん。
くどいようだけど、
この映画はハリウッドによくあるような
リーガル・サスペンスにはなってはいない。
真っ正面から日本の裁判に向き合っている。
コメディだけではなくシリアスもいける……
周防監督は、まさにビリー・ワイルダーの道を歩もうとしているかのようだ。
ただ、そこで描かれる世界が
あまりにも日本的なところから、
アメリカあたりから見ると、
ちょっと理解しがたいかもしれないね。
なにせ『十二人の怒れる男』という名作を生んでいる国だから…」

-----映画は2時間半近くあるよね。
退屈はしなかったの?
「うん。前半の留置、勾留シーンでは、
普通の人が名前を呼び捨てで呼ばれ、
その行動を強制されると言う不条理を
体制側のルーティンの中で描き、
観る者を主人公(加瀬亮)と同じ不安の中に叩き込む。
一方、後半の裁判シーンでは、
判決の行方が裁判官の心証で変わると言う、
これまた戦慄の恐怖を見せてくれる。
しかもそれらはテンポよく進み、
まったく飽きることない。
たとえば、主人公の母(もたいまさこ)と友人(山本耕史)が
弁護士事務所を訪ねるシーン。
そこでは椅子に座って不安げなふたりと、
仕事にいっぱいいっぱいで
彼らに見向きもしない弁護士たちの姿が描かれる。
さて、フォーンならこの後、どう写す?」

-----やはり『お待たせしました』と弁護士が現れ、
話を聞くんじゃない?
「いやいや。これが違うんだ。
次のシーンでは瀬戸朝香扮する女性弁護士が被告(加瀬亮)と接見。
主任弁護士(役所広司)が行くのかと思っていただけに
これは完全に虚をつかれたね。
なにせ二人の弁護士の前打ち合わせさえ描かれないのだから…。
こういう省略の妙が映画をオモシロくする。
脚本は誰だろうと思ったら、これも周防正行。
もうまいりましたって感じだったね」


                      (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「えいも気をつけるのニャ」身を乗り出す


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猫ニュー

『手紙』

2006-11-19 16:52:38 | 映画
※カンの鋭い人は注意。※映画の核に触れる部分もあります。
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「気まずいねぇ~!」
----ニャんなの。それ?
「映画『手紙』で主人公が組んでいる漫才コンビのネタ。
原作では音楽なんだけど、お笑いに変えたということらしい」

----これって、確か東野圭吾の原作だよね。
今回はミステリーじゃないの?
「うん。弟の学資が足りずに強盗に入り、
あやまって人を殺してしまい、獄中の人となった兄と、
その弟の<手紙>のやり取りをめぐる話……
と思って観ていたら、
クライマックスに近づくにつれ、
<いくつもの手紙>が前面に出てきて、
その意味を観る者に投げかけてくる」

----ふうん。予告編だと、
弟(山田孝之)がどこに行っても<差別>を受けることから
一方的に兄(玉山鉄二)に手紙を出すのを止める話かと思っていた。
「ぼくも。
でも、これって<泣き>の映画と思っていたから、
その話だけじゃ<泣ける>はずないと……。
果たしてどこで泣かせるんだろうと思っていたら、
そんな考え自体が不謹慎だということが分かった。
これはもっと深い<罪と罰>の映画なんだ」

-----おやおや。話が違ってきたね。
「そう。これが泣かせる映画ではないことは、
『キネマ旬報』11月下旬号の野村正昭氏の文章に詳しい。
クライマックスの刑務所公演シーンでも、
囚人たちの中にいる兄の顔がなかなか映らない。
あえてドラマチックであることを避けているんだね」

-----さっき<いくつもの手紙>と言ってたけど?
「もう公開中の映画だから、
軽くネタバレでいくと、
<ある人から会長への手紙>
<兄に届いていたパソコンで書かれた弟の手紙>
そして<被害者の家族への兄の手紙>。
まず3通目の話からすると、
ここで問題となるのは、
本人がいくら<お詫びと反省>の言葉を重ねても、
その<手紙>は被害者に事件を思い出させるにすぎないという問題の提起。
それを受け取った被害者の家族(吹越満)は、
兄にまったく返事を書いていない。
そして、それは兄にとっての<般若心経>じゃないかと弟に言うんだね。
このシーンは
加害者の人権が大切にされる反面、
被害者の人権が尊重されていないと言う声が大きくなってきた
今の時代の空気を反映しているように見えた」

-----mmmmm。
「それと、物議をかもしているのが
会長(杉浦直樹)の言葉だね。
彼は弟に向かって
『差別のない場所を探すんじゃない
君はここで生きていくんだ』と語り、続けて
『殺人犯の家族が差別されるのは、当然なんだ
その差別も含めて、君のお兄さんの罪なんだよ』と諭す。
ぼくなんかは、経営者で個人のことを思いやるなんて、
それだけでも人格者だと思うけど、
その言っている内容は
もっと吟味されなくてはならないのかもしれない。
これは『あかん隊』さんのレビューを呼んで感じたことだけどね」

-----でも、今日のお話って、
映画というよりも、物語に即しすぎていない?
「気まずいねぇ~。
う~ん。映画としては…ちょっとね。
尾上寛之が「パッチギ!」に続いて名脇役ぶりを発揮。
彼は来春公開の『キトキト』でも、
主人公のいい相方を見せる。
ぼくは彼の今後に注目したいね」


                      (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「なんだかニャあ」もう寝る

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猫ニュー

『パプリカ』

2006-11-18 11:02:39 | 新作映画
----この映画ってヴァネチア国際映画祭の
コンペティション部門に出品されたんでしょ?
アニメなんだね。
「うん。『東京ゴッドファーザーズ』の今敏監督の最新作」
----確か、長編デビューの『パーフェクトブルー』はあまり気にいっていなかったよね?
「うん。あれはアイドルが主人公のサイコアニメって感じで、
その頃はまさか、
彼がこんな高みにまで登るとは思いもしなかった。
確か次の『千年女優』だったかな。
トム・ハンクスが気にいっていたような……。
違ったかな。
あの作品もかつて一世を風靡した女優の語る一代記……のはずが、
その思い出はいつの間にか彼女が出演した
映画のエピソードと渾然一体となるという、凝った構成の映画だった。
今回はその流れと少し近いんだ。
原作はSF界の大御所・筒井康隆。
その壮大なイメージから映画化不可能と言われてきていたものを
彼自ら今敏を監督に指名したということらしい」

----で、完成した作品に対しては筒井康隆はなんと言っているの?
「これが大絶賛。『「もしかするとこの作品、
おれのいちばんの傑作だったのかもしれない」と、
つい思わせれてしまいました』と語っている」

----それはスゴいニャあ。
で、どんなお話?
「ちょっとややこしいんだけど…。
精神医療研究所で開発された
他人の夢を共有できる“DCミニ”が何者かに盗まれてしまう。
その日から、研究所の関係者たちは、
奇怪な夢を見るようになり、精神を侵されてゆく。
謎の解明に立ち上がったのは
若く美しいセラピスト、千葉敦子。
彼女には、極秘のセラピーを行なう時に使う、
もう一つの顔がある。
それは、クライアントの眠りの中に姿を表す
“夢探偵パプリカ”。
かくしてパプリカは”夢のテロリスト”の企みを暴くため、
狂ったイメージが叛乱する夢の中へと飛び込んでいく!」

----ニャるほど。夢の世界のお話か?
だったらそう珍しくなさそうだけど?
「いやいや。
このDCミニがその人を支配し、
人格を破壊するだけなら、
そう驚くことでもないのだけど、
それを付けていない人の夢に混入。
さらには現実世界にまで入り込んでくるんだね」

----あ~あ。ニャるほど。
それが玩具や電化製品、郵便ポスト、
鳥居、自由の女神などが練り歩いている
パレードのシーンだね。
「うん。百鬼夜行という感じだね。
でも、ぼくとしては
不安神経症で密かに治療を受けている
粉川刑事の夢の方がオモシロかった。
さまざまな次元・時空が脈絡なく続いていって、
あ~あ、これぞ<夢>そのものと思ったね。
これらケレン味たっぷり、ハッタリを利かせた映像を
今監督自身は“チンピラ”と呼んでいるらしいけどね」

----ところでパプリカってどんな女の子ニャの?
「千葉敦子はクールな感じなんだけど、
パプリカはキュートで解放的。
しかも中国娘、孫悟空、ティンカーベルと言ったように、
次々とその姿を変えてゆくんだ」

----いま気づいたけど、今監督の作品って、
いつも女性が主人公だね。
「これについては
ヴァネチアでも聞かれたみたい。
そこで彼は『自分が男だから、男を主人公にすると、
カッコよくない部分も描いてしまいそうという
思いがあるのかもしれない』と語っている」

----で、この映画への、えいの評価は?
「悪くはないし、
最近のアニメではオモシロかった方。
でもぼくは時代を切り取った上で、
ある意味ヒューマンな感動までもたらしてくれた
『東京ゴッドファーザーズ』の方が好きだな」


                                (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「フォーンはいいユメしか見ないのニャ」もう寝る

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猫ニュー

『007/カジノ・ロワイヤル』

2006-11-17 09:19:31 | 新作映画
(原題:CASINO ROYALE)

----おっ、ついに出たニャ。
本家本元の『007』。
これって、新ボンド役のダニエル・クレイグが
007のイメージではないとかで、
ファンが騒いだんだよね。
監督もなかなか決まらなかったみたいだし。
「しかも、『これは、若きジェームズ・ボンドが“007“になるまでの物語』
と銘打っているように、
この映画は、これまでの作品とはかなり違う。
このシリーズって、ショーン・コネリーに始まって、
ロジャー・ムーアで、完全お子さま向けになり、
『ムーンレイカー』では、ついに宇宙にまで飛び出す。
その後、アクション志向に回帰するものの、
今度はテクノロジーが全面に出すぎてしまう。
つまりいつの間にかボンドと言うキャラが不在になっていて、
後半はどれがどの物語か、
はっきり思い出せないくらい
いまいち個性がなくなっていた」

----で、今度はもう一度現実の世界に戻そうとしたってワケだよね。
「そういうことになるかな。
オープニングはいつもド派手な映像を見せて、
そこからその回のテーマソングが
少しエロチックなタイトルバックに乗せて
流れるわけだけど、
今回は、イラストがボンド自身の上、冒頭のエピソードがモノクロ。
そこではボンドが
殺しのライセンスを取得するための<昇格試験>の様子が描かれる。
その雰囲気からして、
これはハードボイルドな本格スパイ映画になるのかと…」

----でも違ったってわけ?
「この後、
ボンドとバクダン男の
まるでお互いのタフネスぶりを競いあうかのような
ノンストップ・アクションが続くわけだけど、
これがまるで<ヤマカシ>のシリーズを観ているかのよう。
一歩踏み外せば即あの世行き。
目も眩むような高所でのバトルが展開する。
ストーリーを簡単に話すと、
今回の敵はテロリストに資金提供しているル・シッフル(マッツ・ミケルセン)。
彼は、爆破などのテロによる株操作で
預託された金を大きくふくらませる死の商人。
ところが、ボンドの活躍で飛行機爆破に失敗。
株で資金に大きな損失を蒙った彼は、
カジノでのポーカーに全てを賭ける。
そしてそれを阻止するためにボンドが送り込まれるというわけだ」

----ニャるほどね。
それが巷で言われているボンドの最初の任務というわけ?
「そういうこと。
そこにボンド・ガール、ヴェスパー(エヴァ・グリーン)も絡む。
そしてこの女性との恋が、ボンドのキャラを確立させる上で
大きな役割を果たしていた……というのが大枠だね。
いわゆるボンド誕生編。
ボンドには切り離せないアストンマーティンも64年型が登場。
これは『ゴールドフィンガー』で使われたもので、
それをボンドが賭けでゲットすると言うおまけもついている。
他にも、オメガの腕時計、
ハンドメイドのタキシード、
さらにはゴードン・ジン3、ウォッカ1、キメイ・リレ1/2でシェイクし、
レモンの薄切り皮をのせた、かの特製マティーニなど、
ボンドのルーツを改めて丁寧に紹介してくれる。
ただ、ここまでやるなら時代を現代じゃなく、
60年代に設定すればいいような気もしたね」

-----若きボンドだけど
その舞台は現代ニャんだ?
「そう。M(ジュディ・デンチ)のセリフにも
『冷戦の頃は~』なんてのがある。
今回はこのMが大活躍。
彼女は若きボンドに手を焼くし、
その住んでいる部屋まで出てくる」

-----そんなにボンドは大変な子だったの?
「治外法権の大使館に乗り込んで乱射したあげく爆破。
かと思えば敵から凄まじい拷問を受けて療養したり、
恋に溺れて辞表を提出したり。
その異色ぶりによって
映画としては、シリーズの中でもかなり記憶に残る方だと思うよ。
ただ、ポーカー勝負で一件落着してからが長すぎ。
さすがにラストは、例の言葉でキメテくれるけどね」

-----例の言葉って?
「マイ・ネーム・イズ・ボンド、
ジェームズ・ボンド」

-----あっ、そうか?

                      (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「いつのまにか、みんな“ゼロゼロ”から“ダブルオー”になったニャ」身を乗り出す


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猫ニュー


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『バブルへGO! タイムマシンはドラム式』

2006-11-15 13:33:57 | 新作映画
----これホイチョイ・プロダクションズの映画でしょ?
いいところに目をつけたよね。
彼らって、あのバブルの時代を象徴してた気がするもの。
いろんなブームを仕掛けてさ。
「またまたフォーンの年齢が分からなくなってきた(笑)。
でも確かにそうだよね。
彼らの代表作『気まぐれコンセプト』 には
その空気が濃厚に漂っていたよね。
ただね、その集大成とも言うべき
『見栄講座 ―ミーハーのための戦略と展開―』では
“映画制作プロダクションである”と
彼ら自身がコメントしているんだ」

----でも、映画と言ったって、
『私をスキーに連れてって』に始まるホイチョイ三部作と
マウンテンバイクのバイク便を扱った
『メッセンジャー』だけでしょ?
「えへへ。
ところがぼくは彼らが大学時代に作った8mmを2本ほど観ているんだ。
まだ、ホイチョイが有名になる前だけどね」

----えっ、えっ??
それってどんな映画ニャの?
「一言で言えば『007』のパロディ。
今回の『バブルへGO!』にはその頃の彼らの匂いが
これまでの作品以上に詰め込まれている。
テーマソングなんて『ジェームズ・ボンドのテーマ』そっくりだしね。
クライマックスのドタバタ・アクションもそんな感じ」

----あら、これアクションだったの?
「物語は2007年の現代から始まる。
800兆円の借金をかかえ破綻の危機に瀕した日本を救うため、
財務省特別緊急対策室の下川路(阿部寛)は、
1990年にタイムスリップし、
"バブル崩壊"を止め、歴史を作り変えるという仰天プランを計画。
彼の依頼を受けたフリーター真弓(広末涼子)は、
一足先にタイムスリップしたまま行方不明となった
母親の真理子(薬師丸ひろ子)を救うべく、
ドラム式洗濯機に乗り込み、タイムスリップを決行する!
まあ、こういうものだね」

-----ニャんだ。SFということか
これはうまくやらないと厳しいね。
「宣伝ではタイムスリップ・ラブコメディと
位置づけているみたいだけど、
あまりラブの要素はなかったね。
なんと言っても見どころは、いまの時代から見たあの時代。
<街中が浮かれ、踊っていたバブルの絶頂、
狂乱の1990年3月の東京を舞台に、
当時のファッション、文化、風俗を満載!>」

-----あれっ?それって宣伝文句じゃニャい?
「でも、ほんとうにそうなんだもの。
たとえば、タクシーを拾うためお札をひらひらさせたり、
学生が船上パーティを開いたり(ビンゴの一等賞金200万円!)、
ディスコでレイヤーカット&ボディコンの女性が踊っていたり。
それらを、バブル未体験の真弓が見てどう思うか?」

-----そうだよね。まったく時代が変わっちゃったもの。
「この時代、まだ携帯電話は普及していないし、
電車の改札口は自動になっていない。
曙町にはフジテレビのビルがデ~ン!
あっ、あと、飯島愛や飯島直子、ラモス瑠偉ら
有名人が本人の役で出ているのも注目。
これから観る人の楽しみを奪ってしまうことになるから
詳しくは言えないけど、
特に飯島直子と広末の会話は笑える。
まあ、建設途中のはずのレインボーブリッジの照明が
橋の全形を型どっているなど、
ツッコミどころも、けっこうあるけどね」

-----そう言えば、本家『007』はどうなっているの?
「それは近いうちにね」
                      (byえいwithフォーン)


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猫ニュー

『硫黄島からの手紙』

2006-11-14 12:06:38 | 新作映画
(原題:Letters from Iwo Jima)

※映画の核に触れる部分もあります。
鑑賞ご予定の方は、その後で読んでいただいた方がより楽しめるかも。



----「硫黄島」2部作「第2弾」。
クリント・イーストウッドが日本人俳優を使って描く戦争映画。
敵国の軍隊を描くなんて、
まるでサム・ペキンパーの『戦争のはらわた』みたい。
これは観たくなるよね
「いやあ、スゴい行列だったね。
昨日の完成披露試写会は丸の内ピカデリーの1&2、
両館をあけたわけだけど、もう超満員。
この映画への関心の深さが読み取れたね」

---じゃあ、終わってから大拍手。
「いや、それがシーンとしていて…」
---それはまたなぜ?
「ぼくは完成披露試写の後は、
いつも周囲の声に耳を傾けるんだけど、
そこでは『暗い気持ちになっちゃった』
『もう、ごめんなさい。戦争はしませんって感じ』
という会話が四方から聞こえてきた」

----そんなに激烈なんだ?
「そうだね。
ある意味、これは戦争版『2001年宇宙の旅』」

----どういうこと?
「つまり、
この映画が作られたことで
これからしばらくは、誰も戦争映画を作れなくなるだろうって意味。
それほどまでにこれは戦争映画として徹底している。
そこにはこれまでの戦争映画の
ありとあらゆる記憶が詰め込まれ、
そしてそれを全くの妥協なしに描いていく。
あまりにも数多くのエピソードが描かれているため、
ここで詳しく紹介するのは止めるけど、
真っ先に脳裏に甦ったのはロバート・アルドリッチ監督の『攻撃』だね」

----えっ、あれって無能な上官に対して
部下が銃の引き金を引くという話じゃなかったっけ?
この映画って、戦略的手腕に優れた栗林中将(渡辺謙)を
主人公にした映画じゃなかったの?
「うん。
ただ、そこにもうひとりの主人公とも言うべき男がいる。
それがいま、アメリカで注目を浴びている二宮和也が演じた西郷。
彼は大宮で営んでいたパン屋が
戦争の犠牲となって潰されたあげく
自分に召集令状がきたことから、
軍への怨みは、より深い。
硫黄島でも始終ぼやいているため、
周囲から睨まれ、上官からは厳しい体罰を日々受けている。
映画では中盤、この西郷たちが
硫黄島に張りめぐらされたトンネルを抜けて
後方へと退却する姿が、
<地獄めぐり>として描かれる」

----まるで『地獄の黙示録』ウィラードみたいだね?
「うん。でも戦闘シーンは、より激烈。
全編『プライベート・ライアン』だね。
さらにそこには『フルメタル・ジャケット』のような<思わぬ狙撃>もあれば、
『ディア・ハンター』を思わせる<自死の恐怖>もある。
そこで西郷は<最前線での抗命>の現場に何度も立ち会う。
これだけ指揮官を失い、統率のなくなった日本軍を描いた映画を
ぼくは初めて観た。
しかもそこに日本の戦争映画的な
<回想による出征前>がいくつも挿入される。
いったい、イーストウッドはどれだけ多くの戦争映画を観たんだろう?」

----ふうん。でも『父親たちの星条旗』
この映画の二つを並べて観ると、どうだったの?
あえて、両国側から作った意味はあったのかニャ?
「『父親たちの星条旗』は
個人が戦場外でも国威発揚のために使われる姿が描かれていた。
この映画では、個人が進んで国のために身を捧げる。
どちらの映画も、いわゆる<国家>と<個人>の関係を描いているわけだね。
ただ、この『硫黄島からの手紙』が前作と違うのは、
両国の<個>の接点が描かれ、
そのためかイーストウッド映画にしては珍しくアップが多いこと。
3回、出てくる兵と捕虜の物語。
あるときは、それは皮膚の色こそ違えど、
人間はみな等しく、
母から生まれた二本足で歩く生きものであると言う共通項を再認識させ、
あるときは、
前線における人の運命は、国家の意志とは関係なく、
人それぞれの<個>の性質・性格によって決まると言う
戦慄の事実を教えてくれる。
そうそう、ここでは『帰らざる勇者』という
埋もれた名作を思い出したね。
それと最後にもう一つ色の使い方。
あえて褪色させ<赤>だけを強調。
これは<戦火><血>、そして両国の<国旗>の色。
それが最後に西郷の目を通して
もう一つの<赤>を見せてくれる。
この感動のショットは見逃さないようにね」


(byえいwithフォーン)

フォーンの一言「フォーンも襟を正すのニャ」いいねぇ

※戦争映画の頂点だ度
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『ワールド・トレード・センター』

2006-11-12 20:44:04 | 映画
----今日は日曜日。
なぜか近頃、急に頑張り出した、えいに代わって
ぼくフォーンが、この映画は喋ります。
と言うのも、
えいによれば、
この映画は、喋りづらい作品なのだそうです。
まあ、その気持ちも分からないでもないです。
あの事件を映画にするには
少し早すぎて、
<映画>として語るのはとても難しいと言うこと。
そうだよね?
「はい」
---でも、まったくスルーするわけにもいかないから、
ぼくに喋らせているってわけ。
この映画は、だれもが知っているように、
今はなきワールド・トレード・センターをモチーフにしているものの、
そこで描かれているのは、
生き埋めになった湾岸警察官2人の救出劇。
ニコラス・ケイジ演じる主人公たちは、
暗闇の中、
いかにして生き延びるか、
檄を飛ばしながら励ましあう、その姿が描かれ、
そして一方では彼らの生存を願う家族が描かれる。
アメリカ映画らしい「家に帰ろう」がテーマになっているんだけど、
もしも最初の30分を観なかったら、
これが、あの9.11とは分からないような描き方。
それがオリバー・ストーンが意図したものなのかどうか?
あまり感情のうねりがないそうです。
「もともと、オリバー・ストーンの映画って、
映画的ダイナミズムには欠けるからね。
ただ、扱うテーマがセンセーショナルって言うだけで」

---まあ、その言い方もどうかとも思うけど、
えいはいまいちノレなかったようで……。
でも、途中でキリストのイメージとか出てくるらしいです。
そうなると、イスラムとの対立が浮き上がりそうなものだけど?
「でも、この時点で
生き埋めの彼らは、これが宗教的対立によるテロとは知らないわけだからね」

----あっ、そうか?
でも、そのスペクタクルな映像は
あの惨劇を再現したものとしては、
見応え十分。
でも、そんな言い方も不遜になるような気がして
えいは、この映画をぼくフォーンに喋らせている……。
ん?それってすっごくズルくない。
しかもぼくを使ってこんなことまでして。
ぷんぷん。

(byフォーン)複雑だニャ


※頭抱える度
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