真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「レンタル家庭教師 わいせつな行為」(2000『美人家庭教師 むさぼる内股』の2008年旧作改題版/製作:フィルムハウス/提供:Xces Film/脚本・監督:佐々木乃武良/企画:稲山悌二《エクセスフィルム》/プロデューサー:伍代俊介/撮影:佐藤文男/照明:池田義郎/編集:金子尚樹 ㈲フィルムクラフト/撮影助手:竹俣一・儀間真悟/照明助手:柳勝寿/助監督:奥渉・笠木望/製作担当:真弓学/ヘアメイク:パルティール/スチール:本田あきら・伊藤久裕/タイトル:道川昭/録音:シネキャビン/現像:東映化学/出演:冴木椋・風間今日子・里見瑤子・岡田謙一郎・木村祐介)。
 明るい陽光の差す電車に揺られ、田舎駅に降り立つ女子大生・間名瀬葵(冴木)の姿に、濡れ場が被さる。関係を持つゼミ教授・緒方圭介(岡田)に事後頼み込まれた葵は、高校中退後大検を目指してゐるのか、ロケーション的には水上荘でもある緒方の実家で受験勉強に励む、息子・優の家庭教師を受け持つことになつたのだ。それはそれとして、太陽の方向に左右されたカメラ位置によるものやも知れないが、ホームの葵は駅舎とは逆方向に歩いて行つてゐないか?
 人気のない水上荘に、葵はとりあへず上がり込んでみる。緒方のものと思しき部屋で感慨に浸り、二階へと向かふ。何者かの視線を感じた葵が窓の外に身をやると、虚ろな風情の優(木村)が屋根の上に膝を抱へ座つてゐた。優の隣に行かうとした葵は、足を滑らせ落下する。そこに現れたのはお手伝ひの寺田光恵(風間)、思春期の息子がゐる家に、人選があり得ない。打ちつけた腰に湿布を貼つてやりながら、光恵は性的関心を憚らぬ視線を葵の肢体に注ぐ。
 主演女優の冴木椋は一応当代の人気AV女優ではあつたらしく、中々パンチの効いたオッパイとそこそこのスタイルは誇りつつも、明白な首から上に加へ、立ち姿や身のこなしがどうにも微妙に覚束ないところを見るに、恐らくは骨格レベルから曲がつてゐる。対する俳優部主役の―ここでの中島はもつと活き活きしてゐたやうにも覚えるものだが―今作に於ける木村祐介はといふと、サッカーをやつてゐなかつたてんで冴えない中村俊輔。弱いだの心許ないだのといふ以前の、清々しい空白のみを醸し出す。そんな二人を相手に、何をトチ狂ふたか佐々木乃武良は、初期設定の濡れ場を差し引けば堂々とした大純愛物語を展開しようだなどと、途方もない釦の掛け違へを仕出かしてしまふ。何が何だか判らぬまゝに葵は葱を背負つた鴨の如く、自らは決して微動だにしようとはしない優に距離を縮める。かといつて今度は優が激しく直線的に愛を乞ひ始めると、途端に葵は拒み、水上荘から姿を消す。とか何とかしながらも結局結ばれた濡れ場では、“本当の愛”だの、「私のことだけ考へて」、「夢なら醒めないで」云々と互ひに紋切り型未満のゴミのやうな遣り取りに終始。挙句にその、ただでさへ不毛な応酬を描くのを優先し、絡みの間を飛ばしてみせたりと、然程富んでゐる訳でもない即物性すら犠牲にする始末。全く以て、不完全無欠に始末に終へぬ。履き違へた意欲なんぞ、犬にでも喰はせてしまへ。こんなザマならばおとなしく、破廉恥な家政婦と肉感的な家庭教師とに内向的な少年が桃色に嬉しい酷い目に遭ひ、最終的には大人の階段を上がつてみたりなんかする。なんて潔く純然たる単なるエロ映画の方が百倍マシで、なほかつ誠実でもあらう。持ち駒と自らの資質とへの弁へを欠いた、寒い冗談にもなりはしない綺麗な凡作である。

 里見瑤子は葵の居ぬ間に、緒方と懇ろになる葵の親友・星川瑠梨子。風間今日子と里見瑤子にエクセスライクな主演女優の脇を固めさせること自体は兎も角、完膚なきまでに形を成し得ない作劇にあつては、流石に無駄遣ひも甚だしい。大欲の人をそれはそれとして演じ抜く岡田謙一郎が、一人気を吐く程度か。この期に最早どうでもいいが、新題中の“レンタル”には、特にはも何も、欠片の意味もありはしない。全く無関係な山内大輔の「レンタルお姉さん 欲望家政婦」(2006/主演:姫川りな)との関連を、偽装しようといふ魂胆が透けて見えるのやも知れないが。


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )


« 新妻下半身 ... ナース裏治療... »
 
コメント
 
コメントはありません。
コメントを投稿する
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。