真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「濡れまくる若い未亡人」(2005『痴漢義母 汚された喪服妻』の2008年旧作改題版/製作・配給:新東宝映画/監督:廣田幹夫/脚本:高木裕治/企画:福俵満/プロデューサー:黒須功/撮影:下元哲/照明:高田宝重/編集:大永昌弘/録音:シネキャビン/助監督:飛田一樹/撮影助手:中村拓/衣裳:杉本京加/ヘア・メイク:嶋津奈央/スチール:奥川彰/車輌:山下雅之/ネガ編集:三陽編集室/タイトル:道川昭/現像:東映ラボ・テック/制作協力:黒須映像工業/出演:阿当真子・小島三奈・綱島渉・江沢大樹・藤田浩)。主演の阿当真子が、ポスターには合沢萌、ex.ではあれ凄い世界だ。
 没落した良家の箱入り娘であるまどか(阿当)は、半ば借金の形といふ形で、貿易会社社長の白石徹(藤田)と結婚する。髭も蓄へ老けさせようとした努力は偲ばれるものの、藤田浩が阿当真子の二十歳年上といふのは、画として如何せん通り辛い、どころでは済まず通り得ない。藤田浩の顔は幼く対する阿当真子がアレなので、一歩間違へればまどかの方が上にすら見える。他に幾らでも、配役の可能性はあつたらうに。白石家にはほかに、別れた理由は不明な前妻と徹との間の息子、即ちまどかからは義理の息子に当たる啄也(網島)と、啄也の妻・幸絵(小島)がをり、更に秘書の東海林正夫(江沢)が、ミサトニックな白石邸に出入りしてゐた。白石邸が内部から庭にプールの見える洋館であるのと同時に、生垣のある日本屋敷であつたりもするのは、即ちミサトスタジオの構造である。未だ処女で男に対し抵抗感も持つまどかが初夜を拒んだまゝ半年、徹は急死する。半年といふのは、流石に拒み過ぎではないか。さぞや徹も心を残したにさうゐない、といふ方便でもあるまいに、な仰天に関しては後述する。財産目当てかと、自分達と然程歳も変らぬ義母に対し元々抱いてゐた敵視を啄也と幸絵が露にする一方、徹の遺品を整理しようとしてゐたまどかは、表向きはマーケティング資料に模した大量のVHSテープを発見する。ビデオを再生してみたまどかは仰天する、収められてゐたのは、徹が電車の車中で乗客の女に痴漢行為を働く模様を、盗み撮り風に撮影したものであつたからだ。ここでの、徹が映り込んでゐない部分の電車痴漢映像は、女が阿当真子でも小島三奈でもない―しかもクレジットも見当たらない―点から、在りものの流用か。
 一言で片付けると、狙ひ処がサッパリ見えず、捉へ処のまるでない一作。二番煎じではあるが矢張り最も特筆すべき最大の頓珍漢は、義息夫婦との関係と、謎の亡夫の痴漢ビデオとに心を乱すまどかの前に、清々しくも死装束を完装した徹の幽霊が登場する、といふか登場してしまふ場面。シェイクスピアかよ!?といふよりは、直截にいへば殆どコントである。羽目を外したギャグだといふならばパンチが効いてゐなくもないのだが、全般的には古臭くもシリアスなソープ・オペラを志向したを思しき演出のトーンは微動だにブレるでなく、正しく絵に描いたやうな幽霊は、妻と初めての夫婦生活を展開し一言二言励ますと、何といふこともなく姿を消す。傍目には自慰に溺れるまどかの姿を、幸絵が目撃してゐた。そんなシークエンスを大真面目に見せつけられても、俄かには呑み込み難い。あるいは、廣田幹夫が妙なキノコでもムシャムシャやりながら撮つてゐて呉れた方が、まだしも頷けよう。ヒロインの逆転勝利は娯楽映画の落とし処として順当にせよ、他方啄也・幸絵の無体な虐げられぶりには、オーソドックスを通り越したルーチンささへ感じられる。かといつて繰り返すが、ラストを除いてはヒロインがほぼ終始沈痛な面持を強ひられる姿からも容易に窺へるやうに、基調としてはあくまで糞真面目で暗目の物語なのである。憎みきれなくもあるが拭ひきれないちぐはぐさが、濃厚に漂ふ。そもそも凡庸な上に正体不明の展開に揺れつつも、最終的には終始漫然とした今作に対しては、正直睡魔に抗ふのに相当な困難を覚えた。まどかが幸絵に仏前でのオナニーを盗み見られて以降の、義母が義息夫婦の肉奴隷に堕する通俗ポルノ的な件が、阿当真子は攻守そつなくこなせるのもありそれなりにエクストリームで映画が偶発的に力も持つだけに、結果論でしかないが、潔くその方面に特化した形で観たかつた、といふ感は強く残る。


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