真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「高校教師 ‐引き裂かれた下着‐」(2003/製作:シネマアーク/提供:Xces Film/監督:下元哲/脚本:金田敬/企画:稲山悌二・奥田幸一/撮影:アライタケシ/照明:代田橋男/編集:酒井正次/スチール:佐藤初太郎/助監督:高田宝重/撮影助手:海津真也/現像:東映ラボ・テック/録音:シネキャビン/出演:橘瑠璃・酒井あずさ・佐倉萌・柘植亮二・竹本泰志・佐々木基子)。撮影のアライタケシは、新井毅の片仮名表記。
 何処園高校(大仮名)、古文教師・坂本美咲(橘)のとりあへず溌剌とした授業風景。生徒要員は僅か三名、一番窓に近い高田宝重は絶妙に老けた高校生に見えなくもないにせよ、真ん中―珍しく登校時は、後述する柘植亮二にスイッチ―の、どう転んでもオッサンにしか見えないのを諦めたかのやうにくすんだ表情が、何者なのかは不明。カメラに捉へられるのは背中からだけの、黒板向かつて一番右に至つてはオーバーオールにTシャツ姿。ヤル気の限りなく殆ど全く感じられない内トラ相手に、美咲が「判りましたか?」と豆腐に鎹を打つかの如く念を押したタイミングでタイトル・イン。
 タイトル明け、薄暗い階段を上る、実際問題短すぎに思へなくもない、タイト・スカートが有難く悩ましい美咲の後姿。掃除婦が清掃中の男子トイレ前を通り過ぎ、放課後の教室に忘れ物の筆箱を取りに戻つた美咲は、女の悲鳴に身を固くする。美咲が恐々駆けつけてみると、あらうことか、男子トイレでは目出し帽の怪人物に、掃除婦(佐倉)が襲はれてゐた。当然衝撃を受けた美咲は、思はず犯される佐倉萌の姿に見入る。それはそれとしても、あらうことかあらうことか、その場を放置し自宅に逃げ帰つた美咲も、何者かの襲撃を受ける。合鍵を持つてゐるのか、同僚教師兼恋人の、斉藤(竹本)であつた。当然それどころでない―社会的にも尚一層それどころではない―美咲ではありつつ、少し執拗に迫られると案外素直に事に及ぶ。翌朝登場する酒井あずさは、なほも動揺覚めやらぬ美咲に接触する、こちらも同僚兼、こちらは学生時代からの付き合ひともなる― た、タメ設定?―友人・伊藤緑子。酒井あずさと橘瑠璃を二枚並べた画面の、華やかさが尋常ではない。その夜緑子と飲みに行つた美咲は、奥歯に物の挟まつたやうなレイプ談義に茶を濁す。結果論的な贅沢をいふと、ここで酒井あずさにもう一発魚雷を撃つてゐて欲しかつた、希望は残らなくもない。カット変り、清々しく同じロケーションでしかないのだが、表の看板を挿む点から窺ふに別の店のつもりなのか、バー「BON'S」、緑子はママの山崎小夜子(佐々木)と相対する。酔ひではなく、俄に欲情に潤む緑子を小夜子があしらふ状況の中、深い時間にも関らず、小夜子の息子・拓也(柘植)が外出する。拓也は美咲のクラスの、不登校生徒であつた。
 辟易のガンタンク・ピンク次作となる下元哲2003年第二作を、プロジェク太上映の地元駅前ロマンにて、コンマビジョンから2011年にリリースされたDVD版、「高校性教師 全裸の課外授業」の形で―ど頭に、新東宝のカンパニー・ロゴが入るのは何故なのか―不意に観戦したものである。純然たる私事ではあるが、完全に油断してゐて下拵へも何もしてをらず、すつかり忘れたのでなければ未見のピンクが始まつた瞬間には、すは緊急出撃と激しく面喰つた。何はともあれ、正方向のサプライズ。明後日のサプライズ―ハッテンともいふ―に関しては、駅前では寧ろ茶飯事だ。閑話休題、佐々木基子を扇の要に橘瑠璃×酒井あずさといふ史上最強級に強力な2トップ。そこに、恐ろしいほどに無体な濡れ場要員扱ひが爆裂する佐倉萌まで飛び込んで来る女優陣は、正しく百花繚乱。ひとまづは、下元哲にとつてもエクセスにしても共々十八番の、重量級エロ映画である。さうはいへ、全く頑丈な裸映画であると同時に、裸の劇映画としては、直截に木端微塵。小夜子が、緑子と美咲相手にそれぞれ狂ひ咲かせる百合の花の途轍もない長さに、冒頭の佐倉萌レイプ事件が一旦完全に霞んでしまふ勢ひには、正直途方に暮れざるを得ない。謎の強姦魔の正体を軸に、漸く女の裸のみに支配された始終が、展開としての求心力を取り戻しかけた最終盤。酒井あずさが二度目の濡れ場の締めにさりげなく投げた、その時点に於いては正体不明の台詞を、見事に回収してみせる大胆かつ精緻なな妙技に大感心したのも束の間、最終的には卓袱台を床板ごと引つ繰り返してみせる。緑子が淫靡に、助けもせず呆然と立ち尽くす斉藤の股間に手を這はす瞬間が、今作のチェック・メイト。救ひのないヒロインの境遇と、放り投げられた映画自体の処遇。二重の意味でのバッド・エンドに愕然とさせられる、別の意味での豪快さが苦笑気味に微笑ましい。

 エク動で復習しての付記< ぞんざいな生徒要員、真ん中に座つてゐるのは金田敬だ
 冷酷極まりないラスト< レイプ魔ンは斉藤、ではなく筆卸して貰つた緑子にセックスを滅茶苦茶にされた拓也。ボコられた美咲が無惨に犯される傍ら、斉藤は緑子にNTR


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