真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「ねらはれた学園 制服に欲情」(昭和61『ねらはれた学園 制服を襲ふ』の2008年旧作改題版/製作:日本シネマ/配給:新東宝映画/監督:渡辺元嗣/脚本:平柳益実/原題:『戦ひの鐘は黄昏に鳴る』/製作:伊能竜/撮影:倉本和人/照明:石部肇/編集:酒井正次/助監督:笠井雅裕/監督助手:末田健/撮影助手:佐久間栄一/照明助手:佐藤哲/スチール:津田一郎/協力:ホテル駒込アルパ/録音:銀座サウンド/現像:ハイラボセンター/出演:橋本杏子・田口あゆみ・清川鮎・ジミー土田・渡辺正樹・藤冴子《友情出演》・池島ゆたか・風見怜香・螢雪次朗)。制作の伊能竜は、向井寛の変名。撮影の倉本和人と撮影助手の佐久間栄一は、現在の倉本和比人と前井一作。渡辺元嗣と渡邊元嗣に関しては、いふまでもなからう。
 「あれは二月の寒い夜。やつと十四に、なつた頃だつた」。麻宮未来(みらい/橋本杏子)は教師の富島松太郎(渡辺)と遂にもしくは終に結ばれるも、未来の名器を遥か斜め上に通り越した人間凶器にイチモツを締め上げられた松太郎は、憐れ口から泡を吹き悶死?する。父の完徹(池島)は三段締養成ギブスを外したのかと未来を叱責し、女陰でのリンゴ砕き、玉子割りにバナナ潰しと、何の目的だかこの時点では一切説明されない特訓を引き続ける。三年後、都立高校に通つてゐた未来は、荒れた私立高「愛染学園」に完徹の意で転入する。愛染学園に足を踏み入れた未来に、投げボールペンを武器にするスケバン・嵐山珊瑚(田口)が目をつける。演出の情熱も借りる橋本杏子は兎も角、二十年前から実は殆ど顔が変らない田口あゆみが強烈に女子高生には見えない件に関しては、この期には看過する。河原のプチ荒野にて珊瑚と対決した未来は、ボールペンを腕に受けながらも、何が何だか―玉の方に―バイブを仕込んだヨーヨーならぬけん玉で、珊瑚を圧倒する。珊瑚を倒した未来を、田代まさしのやうなグラサンで、実は完徹に潰された片目を隠した愛染学園学園長・袋小路裕之(螢)は迎へ入れる。未来に学園内のゴミを一掃させようと目論む袋小路ではあつたが、袋小路こそが、完徹から妻、そして未来からは母・かのこ(風見)を奪つた、父娘の復讐の仇であつたのだ。
 未来の素行は別に特段悪くはなく、加へて官憲の手先ですらないものの、明白な「スケバン刑事」のパロディである。といふか、何をどう誤魔化したものかオリジナルの劇伴―これもTVシリーズの方の、松田優作『探偵物語』のものも一部使用される―や主題歌まで持ち出しTVシリーズの各場面を若干ピンキーに寄らせただけで忠実にトレースしてみせた、今作は最早「少女鉄貞操帯伝説」とでもいふべきアナザーストーリーとすらいへようか。東映も兎も角、TVシリーズ第三部「少女忍法帖伝奇」に激怒した逸話で知られる、大元の原作者である和田慎二がこの映画を見たら何といふかは知らん。在りし日のピンクの、大らかさが胸に染みる。かとも思つたが、改めて思ひ返せば、リアルタイムで絶賛縦横無尽な御仁もゐるな。“昔は良かつた”、そんなことはクズにでもいへるんだぜ。
 清川鮎は、挙動と髪型がおかしい未来の長身同級生・由香、袋小路の娘でもある。となると、未来とは異父姉妹に当たる筈だが特にその点はフィーチャーされない・・・・待てよ、よくよく考へてみると何でこの二人が同級生なんだ?由香が、袋小路の連れ子であるならば問題ないが。ジミー土田は、補導と称してズベ公に手をつける、悪徳補導員・大井一八。袋小路は、不良女子生徒をコールガールとして調教した上、中枢に提供し富と権力とを手に入れんとする桃色に邪悪な陰謀を企んでゐた。未来に接近したのも、スケバン狩りの持ち駒としてであつた。友情出演の藤冴子は、袋小路の陰謀のイントロダクションに於いて、ジミー土田に鞭打たれるスケバン。
 そこかしこでの思ひ切つた橋本杏子への寄りぶりには、一貫してアイドル映画を志向する渡邊元嗣の姿がよく表れ、正しく矢継ぎ早に繰り出されるシークエンスは、何れも充実してゐる。尤も流石に所詮短いピンクの尺には物語を少々詰め込み過ぎ気味ではあり、一息に良質の娯楽映画を見させるにせよ、ピンクで「スケバン刑事」を堂々とやりました、といふ感興以外には、深く残るものは少ないともいへる。その中でも、強い衝撃を受けたのは。珊瑚を伴ひ、未来は袋小路との最終対決に挑むべく愛染学園に突入する。この前段、満を持して完徹が娘に装着させた三段締養成ギブスを鍵を使つて取り外したところを踏まへると、開巻に於いては未来が鍵を盗んだのか、あるいは松太郎の悲劇を契機に、完徹が鍵を実装したのか。兎も角、セーラ服から黒いキャッツ♥アイ風の衣装にチェンジした由香が、未来を迎撃する。由香のチェーン攻撃に一旦は劣勢に立たされつつ、二手に別れてゐた珊瑚のアシストも借り、未来は由香の股間にバイブけん玉を叩き込む。するとあれよあれよといふ間に、何故か由香は全裸に。捻じ込まれたけん玉―の玉部分―と、それに添へた両手のみで巧みに日本の法律では映つてゐては怒られる部分を隠した、長身の清川鮎が大股開きで悶え狂ふ画は箆棒にダイナミック。中々お目にかゝれる代物でもない映画的と即物的両面兼ね備へた強力には、大いに感服させられた。若さゆゑやも知れないが、濡れ場の演出ならぬ艶出に関しては、そこかしこで今より随分とアグレッシブだ。

 そして例によつて、とはいへ正確な時期が不明なのは詮ないところでもあれ、今作は少なくとも既に一度、「欲情する制服」とかいふ新題で新版公開されてゐるらしい。


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