真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「宇能鴻一郎原作 むれむれ夫人」(昭和53/製作:?/提供なり配給:?/監督:向井寛/脚本:田中陽造・山本晋也/企画:向江寛城/撮影:鈴木史郎/照明:斉藤正治/美術:田金一/編集:田中修/音楽:芥川隆/助監督:小椋正彦/監督助手:中山潔・一ノ倉二郎/撮影助手:林兆・小松原茂/照明助手:斉藤健一・井上和夫/記録:浅木志乃/効果:小島進/スチール:津田鉄夫/美容:内海響子/メーキャップ:瀨木みどり/製作主任:佐野日出夫/録音:東映撮影所/現像:東映化学/主題歌:唄・嵯峨美子 ピアノ・美野春樹/協力:銀座山岡毛皮店、新宿ハッピー・コーナー、オールアーツ、目黒エンペラー、ニュー・愛/出演:飛鳥裕子《ミス着物》・サロメ角田・桜マミ・茜ゆう子・牧伸二・大泉滉・笑福亭鶴光・ジャイアント吉田・松浦康・立川陳・石太郎・泉キヨシ・仲村和男・プリティ光・多多笑笑・川口朱里・北乃魔子・砂塚英夫・小松方正)。出演者中、立川陳から多多笑笑までと、飛鳥裕子のミス着物特記は本篇クレジットのみ。企画の向江寛城は、向井寛の変名。タイトルにも入るウノコー原作はポスターには謳はれる反面、本篇クレジットでは通り過ぎられる。
 本来の執事、ではなく。齢の凄く離れた社長夫人の元々召使であつたものが、そのまゝオプションで屋敷に入つた今泉(大泉)に、役名不詳の会社社長(小松)は昨晩の夫婦生活の絶倫ぶりを、清々しいほどのガッハッハ調で誇りつつ当然ハイヤーで出社する。改めてググッてみると、大泉滉が十九年、小松方正は十四年前―二人は大正末年生まれの小松方正が一つ下―に亡くなつてゐたんだ。さて措き、すると―性豪自慢は―嘘なんですと、仮名小松の夫人・アケミ(飛鳥)が開巻速攻、かつ実も蓋もなくウノコー節を爆裂させほくそ笑んでタイトル・イン。ところで全篇を通して受ける雑感としては、取つてつけた気味に“ミス着物”の称号を纏ひながら、劇中のむれむれ夫人は和装よりも寧ろ、銀座山岡から提供された今時ではあんま見ない豪奢な毛皮の印象の方が強い。
 アルバイトの学生が休みゆゑ、今泉の制止も聞かず愛犬・ラッシーの散歩に出たアケミは、社長に書類を届けるだ何だと屋敷に日参する、仮称小松製作所平社員の佐藤(牧)と交錯する。佐藤が落として行つた舶来もののエロ写真に、衝撃を受けたアケミが仮名小松邸に帰還してみると、あらうことかメイドのカズエ(茜)と佐藤は密通してゐた。フル勃起時で3cmの夫のモノ―ついでに持続時間は平均一分二十秒。短くて小さくて早過ぎるだろ、社長―しか知らなかつたアケミは、エロ写真に続き佐藤の精々人並な大きさに改めて衝撃を受け、男根探訪を思ひたつ。
 例によつて巨大な謎を孕む配役残り、砂塚秀夫の前名義といふ扱ひらしい砂塚英夫は、伝説のホストクラブ「ニュー・愛」に赴いたアケミの、巨根オーダーに従ひ宛がはれる西田。サロメ角田とパッと見裕也似のジャイアント吉田が、アケミを見初め一緒に遊ぶよう持ちかける「ゴールデン金融」の女社長・遠藤みちよと、みちよに買はれたホスト・古田、四人で目黒エンペラーに入る。大人二人入れるベビーベッド風の昇降機が、最終的には泡風呂の浴槽にパイルダー・オンするギミックには度肝を抜かれた、これぞ大人の遊園地だ。ex.岡田洋介の石太郎は、アケミを喰ふだか喰はれるだかするゴルフ練習場のレッスンプロ。笑福亭鶴光は、再び今泉の制止を振り切り満員電車に乗つたアケミに、文字通り接触する痴漢師。後に仮名小松が夫人を同伴させる、新工場予定地視察の際の、「東京エアーラインズ」ヘリコプター操縦士といふ形での超絶藪蛇な再登場を果たす。ミイラ状態で入院中、素性を隠したアケミに五十六にして筆卸された今泉が、院内で拉致る大騒動を繰り広げる看護婦は、茜ゆう子よりも高いのは解せないがビリング推定で桜マミか。となると、台詞もそこそこある「ニュー・愛」のウェイター始め、そこかしこで意識的に抜かれる頭数がなくもない、石太郎を除く本篇クレジットのみ部隊に手も足も出ないのは百歩譲つて仕方もないにせよ、男優部中、裸映画畑から唯一出撃し気を吐いて、ゐる筈の松浦康と、相ッ変らず川口朱里に北乃魔子が何処に出てゐたのかどうにも判らん。少なくとももう一度は観に行くが、本当に上映プリントに映つてゐるのか?
 エクセス提供東映ナウポルノ第六弾は、jmdbからも漏れてゐる謎の一作。といふか、異常に豪華な男優部の面子を見るに、厳密には東映ナウポルノではなく、東映本体製作のニューポルノなのかも知れない。笑福亭鶴光が自機に乗せてゐるのが電車で痴漢した令夫人であるのを知り、俄かに揺れ始めたヘリからまづ小松方正が配偶者も残して退散。再び飛び始めたヘリでの機内プレイを経てむれむれ夫人と鶴光は機外に投げ出され、たにしては怪我ひとつせず。無人で飛び去るJA7438を、「待つとくれーッ」と鶴光が間抜けに追ひ駆けるのが、どうでもいいクライマックス。といふと男性遍歴と称した要は濡れ場をつらつら連ねるに終始する、やつゝけた裸映画となりかねないところが、推定桜マミの出演直前、肛門科医(立川陳?)に華麗な人違ひで菊穴性交を仕込まれたむれむれ夫人が、超短小の亭主との夫婦生活に活路を見出す展開は、破綻する以前に満足に成立すらしかねなかつた物語を紙一重で救ふ。ヒロインの独白調の文体と、アヴァンギャルドな句読点の打ち方で知られるウノコーに関しても、過去に一度手に取つてみはしたものの、兎にも角にも文章が―たとへば煙草と同じ感覚で―合はず一行読めずに断念してゐたものだが、映画のモノローグとしては、全く何の痛痒もなく機能する。

 以下は再見に際しての付記< 松浦康と川口朱里と北乃魔子が、矢張りどうしても見つけられず


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コメント
 
 
 
鶴光の使い方にはびっくり (横浜のロマンポルノファン)
2017-08-08 00:18:48
最初は落語家なんて痴漢師だけのカメオと思ってたんですよ。鶴光は当時ラジオのDJ(死語w)で人気あったし、再度セスナの操縦士で登場しても、飛鳥裕子と絡ませちゃうのかなとか、まだわかります。でも、セスナ機が勝手に飛んでっちゃうという最後の落ちの部分まで背負わせるのはやりすぎ?いかにも東映的だ。これもポルノっていうんかな。
 
 
 
>鶴光の使い方にはびっくり (ドロップアウト@管理人)
2017-08-08 07:06:15
 挙句誰が主役なのか判んなくなるレベルの
 スローモーションまで長々持ち出したりして(笑、
 一幕丸ごと理解に苦しむ迷クライマックスですね、クライマックスなのか?
 
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