真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「痴漢電車 秘芯まさぐる」(2002/製作:多呂プロ/提供:オーピー映画/監督・出演:荒木太郎/脚本:内藤忠司/撮影・照明:前井一作/編集:酒井正次/音楽:ヤマ/助監督《ポスターには“演出助手”》:下垣外純/制作:小林徹哉/協力:佐倉萌、他二名/出演:山咲小春・林由美香・篠塚あやみ《ポスターには“篠塚あゆみ”》・縄文人・小嶋尚樹・太田始、他)。
 御存知「キャラバン野郎」シリーズの第八作、「キャラバン野郎」シリーズに関して過去に感想を書いたものとしては、この辺や、この辺り
 前作ラストに登場する時任歩には矢張り何時の間にか逃げられたのか、今回真二(荒木)が白黒ショウの相手方として出会ふのは、電車の車中にて、無表情で痴漢男(太田)の為すがままにされてゐたナナ(山咲)。駅のホームで声をかけると、正月の善光寺での再会を期して一旦は別れる。今回花枝(林)は、初めから真二と行動を共にしてゐる。真二はテキ屋の源さん(小嶋)と各地を巡り、花枝は源さんと男女の仲にある。初めは男達に肌を曝すことに激しく躊躇するナナではあつたが、初々しいショウは、結果的に観客からの激しい喝采を浴びる。ショウは好評を博しつつ、ある日終演後に客からの御祝儀とオカリナを託けられたナナは、不意に姿を消す。
 縄文人は、オカリナの贈り主・志村。その筋では「トゥナイト2」に登場するほど有名―源さん談―な、ハメ撮りを得意とするAV監督である。篠塚あやみは、志村子飼ひのAV嬢・愛。オカリナを受け取つたナナが訪れたスタジオでのAV撮影シーンでは、豪快に口の動きと喘ぎ声とが合つてゐない。久々に改めて押さへておくとピンク映画は、香港映画や東映のスーパー戦隊シリーズと同様、撮影と同録ではなくアフレコを主としてゐる。勿論その方が、製作費が安く上がるからである。明け方の暗がりの中、真二が氷の張る富士五湖湖畔で何者かから激しい暴行を受ける件は、プロジェク太上映の画質にも助けられ妨げられ暴漢が誰であつたのかが、後のフォローも足りぬ故いまひとつ判然としなかつた。ライダース・ブーツの足元から鑑みるに、矢張り単車乗りでもある縄文人、即ち志村であらうか。ショウとテキ屋の客要員で、今回も多数登場。顔を見てその人と知れたのは、内藤忠司だけであつた。
 抜け殻のやうになつてしまつた真二の下に戻つて来たナナは、それまでの停止しか感じさせない人格をかなぐり捨て、俄然能動的に真二の心を操り始める。起承転結の転部としてさういふ転換は必ずしも悪くはないものの、ナナの言葉が覆るまでが、土台尺は六十分に過ぎないピンクにしても、些か早急に過ぎよう。落差が全く埋められない上でののどんでん返しは、取つて付けたやうにしか見えない。ここで尺の不足を補ふ論理的な技術といふものは、荒木太郎には期待出来まい。加へて、謎めいたクール・ビューティーに翻弄される、男が女の意のままに翻弄されるからこそ却つて純真さが際立つラブ・ストーリーの相手方。といふのは、荒木太郎は今回、自らにイイ役を当て過ぎではなからうか。役者としては好きだがこの人は、立ち止まると単に何もしてゐないやうにしか見えない。役者荒木太郎の本領は、気弱で妻、あるいは同居する父親に頭の上がらず狼狽するばかりのダメ夫役か、何を考へてゐるのか全く判らない、セクシャル・レプリカント然とした大変態役にこそある、と見るものである。

 今作も、ナナは真二の下を離れずに映画は幕を閉ぢる。事実上最終作の次作は、真二と花枝の出会ひを描いたいはゆるエピソード0につき、今作が時間軸上描かれた花枝と真二の、最後の姿といふことになる。


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