真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「痴漢と奥さま 尻に欲情」(1995『人妻痴漢体験-まさぐる-』の2005年旧作改題版/製作:プロダクション鷹/配給:新東宝映画/監督・脚本:珠瑠美/企画:中田新太郎/撮影:伊東英男/照明:石部肇/音楽:鷹選曲/美術:衣恭介/編集:井上和夫/助監督:国沢実/現像:東映化学/録音:ニューメグロスタジオ/出演:柴田はるか・本城未織・栞野ありな・杉本まこと・山本清彦・太田始)。 出演者で、ポスターにのみ珠瑠美。
 早朝、には見えない空の明るさは兎も角、無闇に天気のいゝ川原を襟子(柴田)がジョギングする。のつけから話は反れるが、この“襟子 柴田はるか”といふのだけ、何故かオープニング・クレジットに役名が併記される、それゆゑどうにかトレース出来た。そこに現れた、といふか立つてゐたのはカーキ色のコートを着込んだ、判り易い変質者ルックの山本清彦。襟子を草むらに追ひ込むと、やをら一物を取り出し自慰、大量の精液を襟子に浴びせかける。妙に豪華な家―ミサトスタジオか?内部の画だけだとチと自信が持てない―に帰り、襟子が警察に通報しかけて―電話の向かうの警官声は、多分夫役の杉本まことが兼務―止めたり、シャワーを浴びたりしたのち、何がしたいのか唐突にコーラ瓶のイメージが挿入される。すると急に催した襟子は、会社には具合が悪いゆゑ休むと勝手に連絡を入れ、疲れてゐると渋る夫を無理矢理叩き起こし夫婦生活に持ち込む。反応を見せぬ夫の男性自身に無理から尺八を吹き勃たせようとする場面に於ける、杉本まことの「おい、何てことするんだ?」といふ台詞は笑かせる。場面変り、隣家の奥さん(本城)が回覧板を持つて来る。本城未織といふのは、現在:林田ちなみの旧名義。・・・・一体林田ちなみは今幾つなんd・・・いやいやいや
 閑話休題、回覧板のメイン・テーマは“痴漢に注意”。何やらその痴漢野郎のモノは、コーラ瓶並にデカいといふ。そんな話題を、隣家の奥さんが興味津津に切り出す。先刻のコーラ瓶イメージは、こゝに繋がつて来るのか。まるでパズルのやうな映画だ、といふか、もう少し見せ方に工夫は出来ないものか。イメージの前に、一拍づつコートの前をはだける山本清彦と、そのモノの大きさに思はず股間を凝視してしまふ襟子のショットを挿み込む、であるとか。襟子が山本清彦と遭遇した話をすると、本城未織は益々瞳を輝かせる。次の朝、早速同じ川原に本城未織も早朝ジョギングに繰り出す。お目当ての痴漢氏を前に、これ見よがしに周囲を走つてみたり、オッパイを丸出しにしTシャツで汗を拭いてみせたりする、本城未織が。このシークエンスで、初めて珠瑠美をマトモに評価する気になれた、この大らかな底の抜け具合だけは天才的だ。ところが、山本清彦は全く興味を示さない。「こつちだつて選ぶ権利はあるよ」と、ボソッと呟き山本清彦は立ち去る。袖に振られた格好の本城未織、当サイトなら200%本城未織に行くがね   >知らねえよ
 映画はこのあと、家でコーラ瓶を前にボンヤリ黄昏る本城未織の下に夫(太田)が帰宅。満たされなかつた欲求を妻が夫にぶつけた事後、お話は急に杉本まことが街で拾つた、田舎から出てきたばかりのアーパー娘(栞野)を主軸にまるで別の話に移行、山本清彦は以降どうでもいゝワンシーンにしか出て来ない。何を考へてゐたら斯くも自由過ぎる脚本が書けるのか、といふか何も考へてゐないからこそ書けるにさうゐない。ラブホテルで一発ヤッた挙句、何をトチ狂つたか杉本まことは栞野ありなを親戚の娘だと偽り家に連れて帰る。映画は、こゝから先さうしたドタバタ夫婦ドラマになつてみせる、冠の痴漢は一体何処に行つたのか。栞野ありなも栞野ありなで綺麗な体をした女につき、楽しめるのは楽しめるのだが。といふか、少なくとも個人的にはこの映画、メインの柴田はるかより残りの二人の方が絶対に美人である。さて措き栞野ありなが、劇中設定でいふところの十八歳にはとても見えない。
 ラストは、真相が発覚しキレた襟子が栞野ありなにしたことを私にもしろ、と杉本まことに栞野ありなを先に連れ込んだ「HOTEL JAPAN」に連れて行かせ、栞野ありなの見る前で夫に抱かれる。などといふリアリティの欠片も感じられない難解な濡れ場の最中、尺が尽きたのか映画は唐突に終る。珠瑠美には女小林悟の名を進呈したい、などといへば祟られるであらうか。といふか、こんな映画ばかりを観てゐるくらゐなら、いつそ小林悟の映画を観たい、最早何をいつてゐるのだか我ながら訳が判らない。初期設定に未練でも残してゐたのか、栞野ありなが瓶コーラを飲むカットがある。

 出演者残り、本篇クレジットには名前が載らない珠瑠美は、やまきよ母親役の文化人系タレント。山本清彦の痴漢が、実はさういふセレブの息子であつたとの設定には、もう恐ろしくて恐ろしくて、手元に核ミサイルのボタンでもあつたならついうつかり押しかねないほどに、力の限り全く清々しく意味はない。要は一言で片づけてのけると、別にこんな代物観なくとも全く人生に何の支障も一切ない映画でもあれ、山本清彦の痴漢が川原に出没する件の、雲ひとつなく晴れ渡つた空の色は、不思議なくらゐ美しく撮られてある。フィルムで撮られた美しい空の色を見てゐるだけで、昨今のビデオ撮りの腐れ映画よりは余程マシなやうにやゝもすると思へかねないのは、複雑な心境であり、望ましくはない状況でもある。 後もうひとつ印象深かつたのは、劇中杉本まことが使ふ携帯電話がデケえデケえ、小ぶりなカステラ程度の大きさはある。判り易く、時代の変遷を感じさせるガジェットではある。

 今作の作品データを調べてゐる最中出喰はした、林田ちなみさんの公式サイトは凄く丁寧に作られてあり感服する。と同時に、助かることこの上ない。


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