真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「THEレイプ いきなり!ぶち込む」(2014/製作:多呂プロ/提供:オーピー映画/監督・出演:荒木太郎/脚本:荒木太郎/脚本協力:光永淳・小谷香織/撮影・照明:飯岡聖英/編集:酒井正次/撮影・照明助手:宇野寛之・金山翔郎・藤田朋則、もう一名/助監督:三上紗恵子・光永淳/制作:佐藤選人・小林徹哉/タイミング:安斎公一/出演:西園寺れお・河西あみ・杉原えり・冨田訓広・みつ・小林徹哉・佐藤選人・淡島小鞠・里見瑤子)。OPロゴに続きど初つ端に叩き込まれる、「L'ETS ACME」が原題なのか?ポスターによると宮川透が音楽担当の筈なのだが、クレジットレス。ビリング頭四人に、エンド・クレジットでは括弧新人特記。
 ジューズ・ハープがビヨンビヨン鳴る中、「L'ETS ACME」と大書されたスケッチブックを一枚一枚捲つて行くと、キャスト・スタッフの順にクレジットして最後にインしたタイトルに、何の意味があるのか土がかけられる。一枚一枚捲るスピードは別に問題ない反面、字が勢ひがあるといふよりは単に乱雑で直截に読みにくい。
 夫(みつ=光永淳)とのある意味積極的に気乗りしない夫婦生活明け、燐(西園寺)はパート先に出勤がてらその旨明言して家を出る。ロケーション的には天野商事、だけれども劇中では「日野オイル」。平然とガソリンスタンド内で煙草を吸ふ燐に、社長の中山(荒木)が下心を覗かせながらも手を焼く中、燐は仕事を終へ帰宅する研修生・浩(冨田)のライトバンに同乗。尺八を一吹きした事後、二人連れの男(まづ特定不能)に尾けられる女子大生(河西)を更に燐が浩とともに尾けてみると、ここは正直時間が飛んでしまつてゐるやうにしか見えないのだが、女子大生は犯された後だつた。助けるでもなく、燐は浩をけしかけ河西あみを更に陵辱。燐が私物を自宅に取りに戻る、濡れ場の途中にその件を差し挿む意図が見えない正体不明の繋ぎはさて措き、燐と浩はかつて体験したことのない苛烈な快感を覚える。
 配役残り杉原えりは、女子大生をレイプした際のアクメを再び求め、燐と浩が―荒木組が土地勘のある―富士五湖近辺で拉致する人妻国語教師。スタンドから拝借した何かで昏睡させた杉原えりを車に押し込むカット、遠目に見切れるのが小林節彦に見えたのは気の所為か?そこそこ攻め込まれこそすれ、ギリギリ脱ぎはしない里見瑤子は選挙ポスターには“東京にエクスタシーを”なる文言も踊る、藪から棒に荒木太郎は山邦紀共々近年俳優部として重用される浜野佐知に被れたのか、“女だつて男を犯したい”と底の抜けた女性上位スローガンを旗印に戦ふ民自党候補者・磯野和代。小林徹哉はチャリンコの磯野センセイに走つて追随する運動員、出演者クレジットは人が抜けてゐたやうな気がする茶髪の佐藤選人が、遊説中の磯野にテンションの上がるスタンド客。久し振りに、といふか戦線復帰以来初めて単騎の淡島小鞠は、姿を探した浩を捜し奔走する燐を、何故か狂騒的に笑ふ派手な格好の女。
 荒木太郎2014年第四作は、近年事ある毎に―映画用35mm―フィルム文化の終焉を声高に嘆き続けた荒木太郎にとつて、事態が革命級に派手に転びでもしない限りフィルム最終作。強姦の悦楽に目覚めた女と男が、強烈な体験を忘れられずに次々と新たな獲物を狩る。となると、最終的に殺しまではしないものの「暴行切り裂きジャック」(昭和51/監督:長谷部安春/脚本:桂千穂/主演:桂たまき・林ゆたか)と似たやうなお話なのかと思ひきや、やがて暴走を始めた男が、当初は連れられる格好であつた女を振り切り独走する、鮮やかなまでにまんまな展開に突入してみせるのにはグルッと一周して驚いた。要は映画史上空前に無体で、同時にフリーダムな結末を撃ち抜いた「暴行切り裂きジャック」に対し、「レッツ・アクメ!」の決まり文句で最低限の形を成したともいへ、中途半端にオチをつけ損なつた今作といふ仕方のない対比で元も子もないケリがついてしまふやうにも思へつつ、パンチの利いた主演女優と、いい感じに歪んだ劣情を刺激する何れも肉感的な二番手と三番手。女優部に恵まれたことと、余計な意匠は廃しハードなシークエンスを叩き込み続けることに徹した結果、ザクッとした裸映画としては普通に見応へがある。まんま切り裂きジャックに関しても、一見線の細い小僧つ子に見えた演劇畑から初参戦の冨田訓広が、案外浩が狂気を膨らませる風呂敷を十全に拡げてみせる地力に長けてゐたのはサプライズな見所。恐らくフィルムで撮る最後の機会に、荒木太郎が何でまたこのやうな負け戦臭が濃厚な企画を選んだなり挑んだのかと、一体淡島小鞠は何しに出て来たのかはよく―後者は全く―判らないが、下手なメロドラマを力なく燻るか萎ませるくらゐならば、頭あるいは腰の下ひとつ抜けた印象も確かに感じたものである。


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