真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「義母と息子 痴乱の関係」(1999『義母の寝室 寝乱れ襦袢』の2007年旧作改題版/製作:フィルムハウス/提供:Xces Film/監督:勝利一/脚本:国見岳志/企画:稲山悌二/プロデューサー:伍代俊介/撮影:天野健一/照明:小野弘文/編集:金子尚樹/助監督:高田宝重/ヘアーメイク:塚本ゆき/製作担当:真弓学/出演:秋山まり子・麻生みゅう・佐々木基子・山内健嗣・岡田謙一郎・久須美欽一)。
 背中を向けた和服姿の女が、画面一杯に拡がる石畳の階段を上がる。映画的なショットが、いい感じの開巻だ。細くなつた階段が斜めに交錯する踊り場で、和服姿の女・田島翠(秋山)は、上から下りて来た彼女連れの義息・治(山内)と鉢合はせる。妙にどぎまぎし自分のことを義母に紹介して呉れぬ情けない彼氏に、治の彼女・後藤美鈴(麻生)はむくれる。翠と周平(岡田)との夫婦生活、周平は声の大きな翠に、浪人して受験勉強中の息子を気遣ふ。とはいへ、そんな勉強してゐる筈の治はといふと、カメラが逆パンすると吃驚させられるくらゐの至近距離から、義母と父親とのセクロスを覗いてゐた。明くる朝治を起こしに翠が部屋に入ると、勉強机に頬杖を突いたままの不自然な格好で、治はこれ見よがしに朝立ちの屹立を誇示させながら眠りこけてゐた。治の大きさに思はず胸ときめかせた翠は、不自然極まりないシークエンスを如何にも自然に、吸ひ寄せられるかのやうにスェットのパンツ越しに怒張に指を這はせると、明るく治の朝立ちを咥へ込む。発射の拍子に、治は漸く目を覚ます。主演の秋山まり子は、所作も台詞回しも女優と呼べるレベルには達してゐないが、とてもポップでスマートな美人である。そんな秋山まり子が朝立ちさせたまま寝呆けてゐると、気軽に尺八を吹いて下さつたりなんかする。俺もこんな義母が欲しいなあ・・・、さう思はせ得た時点で、この映画の勝ちだ。といふか、俺は今年で幾つになるのだ、与太を吹く前に嫁を貰へ><
 翠の幼馴染で芸者の、小柳桃子(佐々木)が栗羊羹を手土産に遊びに来る。桃子の贔屓客の中に治の志望大学の教授が居ることを聞きつけると、翠は美しい瞳を輝かせる。一方美鈴は治の志望大学に、現役で合格してゐた。適度ならしさに判り易いいやらしさ、フレキシブルな軽やかさとで好演する久須美欽一は、桃子の贔屓客、兼治志望大学の教授、更に美鈴が講義を受講してゐたりなんかもする、素敵な劇中世間の狭さをスパークさせる椎名十進。幼児プレイに興じる桃子との濡れ場で、椎名が尺八を吹かれると玩具のラッパをプープカプープカ吹き鳴らすのは物凄く下らないが爆発的に可笑しい。椎名の対翠戦では、無理から和服の帯を解かれた翠が、「ア~レ~!」と叫びながら独楽のやうにクルクル回る。21世紀も間近に堂々とさういふ古典的なアクションを繰り出してみせる勝利一にも畏れ入るが、このシーンでも火を噴く秋山まり子のたどたどしさは最早清々しい。秋山まり子と並べてみると、改めて佐々木基子の安定感とポテンシャルの高さとが際立つ。
 とか何とかいふ訳で、翠が高級洋酒を手土産に訪れたところで、好色な椎名に何のかんのと誑し込まれたり、童貞の治が事を上手く運べず遊びに来てゐた美鈴を怒らせてしまつたことを看て取ると、青い性を手解いて呉れたりなんかもする。若く美しい義母が浪人中の義息の為に一肌二肌脱ぐ、観終つた後に残るものは欠片となく、全く出来合ひの物語といへばそれまででもありながら、爽やかに仕立て上げられた暗さの要素の一切無い、いはゆる義母ものの高目の水準作である。どうでもいいとしか思へなかつた桃子が開業した弁当屋の伏線で、取つてつけたやうに見えなくもないが最終的には締めの翠と周平との濡れ場を上手く纏め上げた辺りには、娯楽映画の勘所を弁へた的確な論理が光る。若さは驚く程に感じられないものの勝利一は1999年といふと実は未だデビュー二年目であることを思へば、脚本の国見岳志の功によるところが大きいといへるのかも知れないが。“エクセスの加藤義一”、あるいは順番からいへば加藤義一をして“オーピーの勝利一”、と称することが許されるならば、勝利一といふ人は、実はもう少し高く評価されてゐてもいいのかも知れない。

 後注< 後に辿り着いた事実として、脚本の国見岳志といふのは、何のことはない、勝利一の変名である。


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