真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「美しい新妻 気持ちよくて狂ひそう」(1996『聖まどか 美乳妻生本番』の2005年旧作改題版/製作:プロダクション鷹/配給:新東宝映画/脚本・監督:珠瑠美/企画:中田新太郎/撮影:伊東英男/照明:石部肇/美術:衣恭介/効果:協立音響編集:井上編集室/現像:東映化学工業株式会社/録音:ニューメグロスタジオ/助監督:近藤英総/出演:聖まどか・中井淳子・里中未来・竹田雅則・鈴木秀和・中田新太郎)。美術の衣恭介は、木俣堯喬の変名。
 開巻、適当なSEに乗せ数枚のスチール写真を次々見せる。だけなのであるが、何と映画は湾岸戦争の情景から始まる。旧華族の彩王子英樹(竹田)は戦場カメラマンとして従軍するも、被弾し下半身の自由と男性自身を喪ふ。戦場の英樹が銃撃を受け負傷する件は、どれだけ安からうとも無理してそこは一応撮つてある。これはもしや、珠瑠美の癖に反戦映画なのか?と一瞬だけ仰天させられかけたが、英樹が被弾した次のカットから、早速、負傷した旧家の当主とその妻とその秘書、を軸に間男と相続遺産といふテーマが展開する、ばかりの何てこともない裸映画に何時も通り落ち着いてしまふのであつた。
 聖まどかは英樹の妻・詠子、わざわざハイレグの水着を着せられ、元々は英樹リハビリ用のエアロバイクに跨がされ―過剰なまでに―汗だくになつてみせるショットに、勿論ドラマとしての必然性なんぞ欠片もない。が、桃色的にはもう100%正しい。そこにそのシークエンスを設ける必要があるのかと問ふならば、勿論断然ないところから更に一層正しい。里中未来は元々彩王子家の執事を務めて来た一族の末裔で、現在は秘書といふ肩書きの由美子。どうでもいゝが、その目の下の隈を胡麻化さうといふ気すら全く窺へないのは、そこに何程かの演出意図があるのか?と殊更に疑問を呈しておいて、勿論そのやうなものありはしないのは端から判つてゐる。どうでもよかないのは、頼むから口跡の心許ない人間にダラダラ説明台詞を喋らせるなよ。芝居が達者だとて、ダラダラした説明台詞は頂けないが。鈴木秀和は、英樹の担当医師・室田、中田新太郎は室田の上司・浅野。鈴木秀和といふ人は、今でもヤクザ役や端役でVシネなりTVの再現フィルム等で活躍されてゐるらしく、「タケシズ」冒頭の銃撃戦にも出演してゐるとのこと。無論、覚えてゐた訳ではない。もう一度「タケシズ」を見てみたならば、映り方によつては判別出来るやも知れぬ。中井淳子は室田の彼女で、肉感的なアーパー淫乱娘、役名不詳。

 全く不可思議なのは、通常、画面の上から下に傷が流れるのなら判る。が、今回観たプリントは、何故か右から左に傷が流れて行くのである。一体どうしたら、あゝいふ傷のつき方がするのか。咥へて、もとい加へて。元来珠瑠美といふ人は、滅茶苦茶なイメージの挿入を仕出かす人である。更にフィルムがあちこち飛ぶに至つては、最早殆ど実験映画のやうな様相すら呈して来る。珠瑠美のピンクと、実験映画。表面的な意味での立ち位置は、最も遠いところにあらう二者ではあれ。


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