真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「うづく人妻たち 連続不倫」(2006/製作・配給:新東宝映画/脚本・監督:福原彰/企画:福俵満/プロデューサー:深町章/撮影・照明:清水正二/編集:酒井正次/音楽:大場一魅/助監督:佐藤吏・金沢勇大/撮影助手:海津真也・関根悠太/協力:報映産業株式会社/出演:佐々木麻由子・岡田智宏・里見瑤子・中村方隆・美月ゆう子・なかみつせいじ・池島ゆたか)。
 これまで新東宝で脚本や内トラを多数務めて来た、福原彰の監督デビュー作。くどいやうであるが、改めて最初に繰り返すと福原彰とは、今作の企画も担当する新東宝映画の社員プロデューサー・福俵満の変名である。
 1995年、高柳光枝(佐々木)は女友達との旅行と偽り、小説家志望の宮下俊夫(岡田)と伊豆での不倫旅行を楽しんでゐた。不意に、残して来た夫から光枝に電話が入る。娘が、交通事故で死んでしまつたといふのだ。一足早い現在。宮下は後に小さな賞も受賞し小説家としてデビューを果たすも、現在は滞りがちな筆と妻の男性問題にも悩み、苦しんでゐた。死を決意した宮下は、十二年前に光枝と逗留した伊豆の宿を再び訪れる。一方光枝は、夫・啓一(中村)が会社勤めを辞め、光枝の実家の群馬で農業をして暮らしてゐた。数年前に啓一が農薬で体を壊して以来、年に数度は各地の温泉を湯治で回つてゐた。ネットで見付けたといふ方便で、十二年前と同じ宿を訪ねた光枝は、宮下と驚きの再会を果たす。
 印象的な台詞と丹念な演出とに彩られた各シークエンスは、それらひとつひとつの単体としては確かにある程度は見応へがある。とはいへ、新人監督のデビュー作に過大な要求をしてしまつてゐるやうでもあるが、最終的には積み重ねられた一幕一幕が何処かの何某かに辿り着くのかといふと、些か以上に―あるいは以下か―弱いといはざるを得ない。結局人生を生き抜く秘訣は全てをありのままに受け容れることと、カミさんは大事にしろよ、では、日めくりカレンダーの脇にでも書いてある、出来合ひの御座なりな人生訓とさして変りはしまい。加へて、初陣に際する若―くもなからうが―武者の気負ひと捉へるならば微笑ましくないこともないが、台詞のひとつひとつが一々少々臭い。尤もこれは、台詞自体のものなのか、単に岡田智宏と中村方隆の臭さではないのか、といつた点は議論の分かれるところであるのかも知れないが。ただ確かにいへることは、宮下と啓一のそれぞれの長講釈が、強弱の別が多少あるだけで、文体が基本的には同一である。ここは工夫を欠く点であらう。
 美月ゆう子は、十二年前の過去、宮下が光枝の他に関係を持つてゐた佐伯信子。純然たる濡れ場要員のポジションながら、「家庭は家庭、セックスは別」なる名言を吐く。里見瑤子は宮下の妻・美紀、夫との生活に疲れ、上司の岡本浩史(なかみつ)と不倫関係にある。十二年前に、宮下が信子と使つてゐたのと同じ部屋を使ふ。端々に繰り返し挿み込まれる様々な時計のイメージ・ショットといひ、時間の流れといふものが今作の主要なテーマとなつてはゐるやうなのだが、詰まるところは何がいひたかつたのかは、私の浅はかどころではないプアな読解力からは読み取れなかつた。池島ゆたかは、十二年前と現在とに光枝と宮下が都合二度訪れる伊豆の宿の主人。この人の判り易過ぎる老けメイクといひ、演出に緊張度の高いところと、呆れるくらゐにベタなところとが同居してゐる。それもひとつのメリハリだといふならば、それもそれでアリかとも、今回は思はないでもないが。

 最後に、さりげない瑣末を。今作、実は「美人家庭教師 ふくよかな谷間」(2002/監督:小川欽也)と同じロケ先を使用してゐる。探せばもつと他にも、あれこれ出て来さうな気がする。

 地元駅前ロマンにての再見を踏まへての付記< 要は劇中登場する伊豆の宿の物件とは、御馴染み花宴。門扉も抜かれる他、電話を受ける池島ゆたかの科白中に実名登場するが、その際はペンションではなく、ホテルとされる。


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